今日こそ、彼女に告白しよう。
彼女を好きになってから、僕の人生は劇的に変化した。
とにかくそれまで僕は僕なりに自分のことしか考えておらず、
世間は冷たくて他人なんてまったく当てにならないし、
うまい話には必ず裏があって、感情にすら流行り廃りがあって…、と、
まあとにかくくだらないことばかり考えていたのだ。
けれど。
彼女をきっかけに、彼女の周囲の人間に対して意識が向くようになり、
あいつも彼女を狙ってるんじゃないかとか、
あの子は彼女といつも一緒にいるとか、
あの人は彼女に似ているなとか、
あれは彼女の先生だとか、
そして僕に好きな人ができたと知るや否や、
からかうヤツもいたけれど真剣に相談にのってくれるヤツもいたりして。
以前の僕では考えられないくらい、喜怒哀楽が激しくなったり。
何を見てもすぐに彼女に結び付けてしまうようになったり。
でも明らかに僕の人生は幸せな方へと転がり始めたのだ。
だから、そのきっかけを与えてくれた彼女に、想いを告げようと思ったんだ。
万が一、振られた時のこともきちんと考えて、
場所も、時間も、僕自身の服装や告白の言葉も、
きっちり準備して彼女に会った。
「付き合ってください。」
思えば簡単すぎるけれど、変に曲がった表現を使って彼女を混乱させたくない。
それに、そういう物言いにはセンスがいる。
僕にはそういうセンスがない。
彼女は大きな目で僕を見つめていた。
「…私の全てを、愛してくれるのなら。」
何て素敵な答えだろう。
僕は即座に頷いた。
すると彼女は服を脱ぎだしたんだ!
肌寒くなってきたこの季節、
彼女はまずカーディガンを脱ぎ、
ブラウスを脱ぎ、
ブラジャーを外し、
どんどんと冷静さを失っていく僕の前でスカートを脱いだ。
靴下を脱ぎ、
靴を脱ぎ、
パンツも脱ぎ、
髪の毛をもぎ取り、
皮膚を剥がし、
筋肉を分け、
神経や血管を引き抜き、
内臓を取り出し、
そうして「全て」を僕の前に並べて見せた。
僕は骨格標本のような彼女と向き合って立っている。
ひどく速く脈打っている心臓が目に付く。
あれは、僕の告白のせいだろうか。
そういえば、見も知らない奴に
「彼女はやめておけ。」
といわれたっけ。
「彼女は美人だからな。だから好きなんだろ。なら、絶対にやめたほうがいい。」
そいつはひどく青ざめた顔でそういった。
確かに彼女は美人かもしれないが、
僕はそんなところに惹かれた訳ではないから、
目の前に並ぶ彼女の全てを舐めるように眺めながら微笑んだ。
「君って思っていたよりずっと大胆な人だったんだね。
嬉しいよ。」
僕も何だか抑えていたものが吹き飛んで、
彼女にキスしたかったが、
どこにすればいいのかちょっと迷ったので、
とりあえず彼女の右手の骨をとって掌の方にキスした。
今、彼女が僕の隣にいる。
青い目が、とても綺麗だ。
了