農夫ミラーズは友達の頼みを聞いて、ハロウィンの国を目指す。
腕に、小さなカボチャを抱えて。
ぽつり。
「おや。」
「にゅ?」
ぽつり。ぽつり。
2人の頬を、雨が打つ。
空から落ちてくる雨を追って、ミラーズの目が地面に向いた。
「おや。ランタン坊や、下を見てごらん。面白いよ。」
「きゅー!きゃー!」
雨が土を打つと小さな緑が応えるように芽吹く。
もう1滴、雨が緑を打つと、花が咲く。
雨が緑を奏でていく。
柔らかな土はいつしか、色鮮やかな命に覆われていた。
「これはすごいな。まさしく「恵みの雨」だな。」
ミラーズは嬉しくなった。
腕の中の小さなカボチャも、おおはしゃぎしている。
濡れても濡れても、雨は身体を冷やさなかった。
それどころか、だんだんと暑くなってくるような気すらした。
「ふう、ふう、少し休もうか。」
「ぷい。」
ミラーズが真っ赤な顔で道端の石の上に座り込むと、アーチ状の虹が見えた。
「ああ、綺麗な虹だね。」
七色の光の帯が放つとても控えめな輝きが、ミラーズは好きだった。
雨や風に打たれ、疲れた身体を労ってくれるような気がして。
「ハロウィンの国は、あの向こうかな。」
火照った頬を、涼やかな風がかすめていく。
『暦の靴』の色も、知らぬ間に赤茶けてきている。
ハロウィンが、近付いていた。
今回は短め…あと1つか2つ続きます。