6がつの、1ばんしあわせだったひ。
おてんきは、はれときどきあめときどきはれ。
きょう、ぼくは、いつもみたいにだいすきなあじさいさんにだっこしてもらいながら、おひるねをした。
あじさいさんのみどりのはっぱが、ぼくのことをたいようからまもってくれた。
ぼくはあんまりきもちがよかったので、とてもいいゆめをみた。
(ゆめのはなし)
おそらは、くもひとつない、それはそれはいいおてんきで、
ぼくは、かたつむりじゃなくて、あおいあじさいになっていた。
となりにはだいすきなあじさいさんがいて、ふたりならんでおしゃべりをしていた。
ただそれだけだったんだけど、はじめてぼくは、たいようがだいすきになった。
(ゆめのはなし、おしまい)
「かたつむりさん、かたつむりさん、あめですよ。あめがふってきましたよ」
ぼくがむにゃむにゃしていたら、あじさいさんがやさしくこえをかけてくれたので、
ぼくはちょっとざんねんだったけれど、
あじさいさんのはっぱのしたからかおをだした。
そうしたらあめがいっぱいくっついてきて、とてもきもちよかった。
「あじさいさん、ありがとう。きょうもとってもきもちよくおひるねできました」
ぼくはあじさいさんにおれいをいった。すると、あじさいさんは、
「いいえ、どういたしまして。またいつでもきてくださいね」
と、いってくれたので、ぼくは、
「まいにちきてもいいですか?」
と、きいてみた。そうしたらあじさいさんは、
「ええ、もちろんですよ」
と、にっこりわらっていってくれた。
なのでぼくは、きょうこそあじさいさんにいおうとおもっていたことをいった。
「それじゃあ、あじさいさん。ぼくのおよめさんになってください。
そうしたら、ぼくたちまいにちいっしょにいられますよね」
ぼくがそういうと、あじさいさんは、とてもおどろいたかおをした。
「わたしが、あなたのおよめさんに?」
ぼくはしんけんに「はい」といった。
でも、こころのなかではすごくしんぱいだった。
なぜって、ぼくはかたつむりで、あじさいさんはあじさいさんだから。
ともだちが、あじさいさんがあいてにしてくれるわけがない。
おおわらいされておわりだぜ、といっていたのをおもいだした。
そうかもしれない。
でもぼくは、いわずにいられなかった。
「・・・やっぱり、ぼくじゃだめでしょうか。
でも、あじさいさん、きいてください。ぼくはほんとうはあじさいにうまれたかった。
こんなちいさなかたつむりじゃなくて、あなたとおなじあじさいに。
あなたみたいにきれいにうまれたかった」
あじさいさんは、だまってぼくをみつめていた。
ぼくはもうなにがなんだかわからなくなってしまって、でもいっしょうけんめいいった。
「でもぼくはかたつむりで、あじさいじゃありません。
いまからあじさいになるのはむりだけど、かたつむりにできることをぜんぶやって、
あなたをしあわせにします。それでもだめでしょうか」
あんまりいっしょうけんめいになったので、ぼくはなみだがでてしまった。
あめがふっていてくれたので、あじさいさんにはきがつかれなくてよかった、とおもった。
ともだちが、おとこがなくなんてかっこわるい、といっていたのをおもいだした。
ぼくがだまっていると、あじさいさんがそっとぼくをだっこして、いってくれた。
「なかないで、かたつむりさん。わたし、あなたがだいすきです。あなたとわたし、なにがちがうというのですか?
こうやって、おなじつちのうえにいて、あめのにおいをかいで、しあわせになるあなたとわたし、
なにがちがうっていうんですか?
たしかにかたちはちがいます。いろもちがいます。
でも、だからだめなんて、だれがきめるのでしょう」
ないていたのがばれてしまって、ちょっとはずかしかったけれど、あじさいさんはこういってくれた。
「わたし、あなたのおよめさんになります。
かたつむりさん、わたしをおよめさんにしてください」
ぼくはもう、うれしすぎて、じぶんのからだがぜんぶしあわせでできているようなきぶんになった。
そのひ、あめはよるになってあがってしまったけれど、
ぼくたちはほしのひかりのしたで、けっこんしきをした。
あじさいさんのからだがあめのしずくできらきらして、
さいこうのきものをきているみたいだとおもった。
みんながおいわいをしてくれて、とくにともだちは1ばんよろこんでおいわいをしてくれた。
おしまい
このにっきをよんでくれたひとへ。
にっきをかくのははじめてで、たいへんだからもうやめようとおもうけれど、
このひのことだけはいっしょうわすれないために、
ぼくはこのにっきをかいた。
ぼくのしあわせのはなしをきいてくれて、ありがとう。