「英さん、怒ってるかも」
「大丈夫だって。それに真剣に探せばすぐ見つかるよ。狭いんだから」
 二人は今、観覧車の列に並んでいた。
「新生花やしきの目玉大観覧車だって」
「何か、思いっきり浮いてるね」

 確かに浅草の町にお台場やみなとみらい横浜風の観覧車は似合わない。というか花やしきに作るのは無理がある。が、ここはお話として読んでいただきたい。

「たとえ英に見つかっても、十五分は二人っきりでいられるな」
 嬉しそうな博之に、なぜか紫も赤くなってうなずいた。
「博之さん」
「紫」
 観覧車が動き出してすぐ博之は紫の隣に席を移して、その可愛いらしい唇に自分のそれを重ねて、舌の先でくすぐった。
「ふぁ」
紫の唇はすぐに開いて、その舌を迎え入れる。
「んっ……」
 紫の手が博之の背中に回る。互いの体温が伝わって、心臓の音が重なって、そして唇から全身に広がった熱でドロドロに溶けていく。
(ひとつになりたい……)
 互いの濡れた瞳が語っている。
 しかしここはゴンドラの中とはいえども、思いっきり野外。

「紫」
 我慢できずに博之の指が、紫のセーターの下に滑り込む。
「あっ」
 シャツの上から尖りを探られて、紫は甘い声をあげた。
「ダメ……」
「うん」
 うなずきながら、博之の指は紫の敏感な突起をつまんでは押しつぶす。 紫は、片手でその手を押さえる。
「ダメだって」
 睨む瞳は欲情に染まって、涙まで浮かべている。
「その顔だけで、俺、イッちゃいそ」
「ばか。…は…ぁ」
 胸の刺激にビクンと身体を震わせて、喉を反らすと唇が薄く開く。博之は、そこから覗く小さな舌を再び絡め取って強く吸い上げた。
「ん…っ…んっ」
 くちゅくちゅという音がゴンドラの中に響いて、その音のいやらしさに、紫は気が遠くなる。あふれる唾液が、甘く喉を滑り落ちる。
 キスと胸への愛撫だけで頭の中が真っ白になっていた紫だったけれど、博之の手がベルトを緩めてズボンの中に入ってきたときは、さすがにハッとして抵抗した。
「ダメ。何するの」
「ちょっとだけ」
「ダメだって、やだ、こんなところで」
 真っ赤になって慌てる紫がひどく可愛らしく、博之にもほんの少しはある嗜虐心というものを煽り立てる。
「紫を気持ちよくしたいんだよ」
「やあっ」
「目を閉じて」
「嫌だ。やめて」
 下着の中に手を入れると、紫のまだ幼いそれは、勃ちあがってふるふると涙をこぼしている。もうこんなになっているというのが嬉しくて、博之はゆっくりとその竿に指を絡めた。
「あ…っ」
 直接握られたというだけで、紫のそれは弾けそうになっている。
「博之さん……いやだ……やめて、恥ずかしい」
 二人の乗ったゴンドラはとっくにてっぺんを過ぎて、下へ下へと向かっている。いつ誰に覗き込まれるかわからない。
「じゃあ、すぐ終わるから目をつぶってろよ」
 博之の手が、激しく巧みに動いた。
「いやっ、あっ、あっ……あ、もっ……んっ」
 一分と持たずに紫は博之の手の中に放ってしまって、グッタリと脱力した身体を預けた。博之は、満足そうにハンカチで手を拭くと、
「続きは、あとで」
 紫の耳元でささやいた。


 その三分後に二人の乗ったゴンドラは地面に達した。そこから出てきた二人は何も知らない係員が驚くほど赤い顔をしていたが、博之の頬には明らかに紅葉のような手型がついていた。




すみません。こんな話で(笑) ただ観覧車エッチが書きたかったという。しかし、花やしきに観覧車は……