腫瘍が大きすぎる場合や肝門部にある場合など、手術ではどうしても取れない場合で、肝臓の外に転移が絶対ないと確認できる場合に行われます。欧米では脳死肝移植がほとんどですが、日本では子どもへの脳死肝移植はありませんので、ほとんどの場合親から正常な肝臓をもらって行う生体肝移植です。
                              (監修:福里吉充 (小児外科専門医。沖縄県立中部病院 小児外科))

 

1. 肝芽腫に対する生体肝移植
2. 肝移植の適応となる場合
3. 生体肝移植の前に化学療法をする理由
4. 肝移植の適応とならない場合
5. 肝移植が行われるまでのプロセス
6. 肝移植と親側の切除
7. 術後のプロセス
8. 肝移植後(免疫抑制剤・回復ペース)



  1.肝芽腫に対する生体肝移植 
生体肝移植は2007年現在保険適応になっていないため、研究として行われる以外は1500万円〜3000万円の全額自己負担となっています。しかし欧米の臨床や日本の研究としてのデータで肝芽腫に対しても有効であることが徐々に証明されてきており、次期プロトコールにも選択肢として入る予定であることから、今後増えることが予想されます。

日本では京都大学で、1997年から2002年までに9人の肝芽腫の子に肝移植を行っていますが、2005年の時点での術後の経過で6人が再発なく生存しています。手術や化学療法では救えなかったであろう子どもたちが肝移植をすることで66%助かったということです。

ただし肝移植は手術できない全てのケースに適応できるわけではなく、
まず『肝臓以外に転移がないことが確実』であることが第一条件です。



  2.肝移植の適応となる場合 



PRETEXT−3、PRETEXT−4で通常の手術では取りきれないほど大きいが肝臓だけにとどまっている腫瘍。
多発(たくさん出来ている)のPRETEXT−4の腫瘍。
肝門部という肝臓の中央に出来ている腫瘍。
ただしいずれの場合にも術前化学療法をします。



  3.生体肝移植の前に化学療法をする理由 


術後の再発や遠隔転移の予防
化学療法で腫瘍が小さくなり、生体肝移植をしなくてもすむようになる場合があるため。



  4.肝移植の適応とならない場合 

適応とならないのは、肝臓以外に転移があるときです。
転移があるかどうかは画像上だけでは分かりません。発症した時に以下のような状態であった場合は目に見えない転移がある可能性もあります。



腹腔内破裂があった場合
肝臓内で大きく3本に枝分かれしている門脈の本幹や左右療法の門脈に腫瘍がある場合
下大静脈や、肝静脈3本全てに腫瘍がある場合

こういう場合には画像上の転移がなくても血流に乗って腫瘍細胞が全身を回っている可能性が高いので、肝移植後短い期間内に再発してしまうことを避けるためにも、「本当に転移がないのかどうか」をさまざまな角度から検査し、慎重に判断しなくてはなりません。



  5.肝移植が行われるまでのプロセス 

肝移植をすることが決まると、移植予定日へ向けて患児(レシピエント)と親(ドナー)は必要な検査等をそれぞれ行います。



血液検査
肝機能検査
CT



健康であること、肝機能が正常であること、血液型が患児と同じであること、開腹手術をしたことがあるかどうか
(虫垂炎・帝王切開は問題ありません)などを調べます。
術中輸血のための自己血採血など



  6.肝移植と親側の切除 

術前の処置として、移植前日までの点滴、下剤、絶食、免疫抑制剤の開始などがあります。
手術室への入室後も、麻酔の導入、モニタリングのために1時間ほどかかります。
その後まず自己肝の摘出術を始めます。癒着がある場合は剥離(はくり)に時間がかかりますので、ドナーの手術と連絡を取りながら、手術を進めます。癒着をはがした後に、肝動脈、門脈、肝静脈、胆管を切り離して肝臓を摘出します。
その後この時点ですでに届いているドナーの肝臓を移植します。
肝静脈、門脈、肝動脈、胆管、空腸吻合の順に再建を行います。再建の後、血流に問題なければドレーンを留置して、手術を終了します。
手術は最短でも12時間はかかります。


普通の肝切除術と同じように術前処置(点滴、絶食、下剤)があります。
患児(レシピエント)の身体の大きさによって、切除する肝臓の量には違いがあります。
外側区域切除後、拡大外側区域切除、左葉切除術(『手術』の項を参照。)などがよく行われる術式です。
手術時間としては、3〜4時間ほどが普通で、ドレーンを留置して手術を終了します。



  7.術後のプロセス 

術後はICU管理が約1週間をめどに続けられます。その間、術後数日は完全鎮静を行い、人工呼吸管理とします。
24時間体制で全身管理を行い、肝臓の血流の評価、血液データ、免疫抑制剤の濃度を見ていきます。経過がよければ、次第に鎮静を浅くして、呼吸器をはずす時季を決めていきます。呼吸器がはずせるようになってから一般外科病棟へ移り、術後管理を続けていきます。
このころになると、口からの食事が開始され患児の全身状態は日に日によくなっていきます。肝機能と免疫抑制剤の量がコントロールされれば1ヶ月以内には退院の話も出てきます。拒絶反応、術後の合併症などがあると、その治療のため入院期間は延びていきます。


普通の肝切除の術後と同じで、数日後にドレーンを抜去し、経口摂取を開始します。1週間後には抜糸でき、退院を決めることになります。



  8.肝移植後(免疫抑制剤・回復ペース) 

免疫抑制剤は安定するまで、1日2回血中濃度を測定して、量を決めていきます。原則として、内服治療します。
免疫抑制剤が少ないと拒絶反応が起きる場合があり、逆に多いとEBウィルス、サイトメガロウィルスなどの感染が起こる可能性があります。
術後の問題を解決して退院できる頃には日常生活は可能なくらいに体力が回復してきていると思いますがまだ不十分ですから、ある程度の運動制限は必要です。
なお、免疫抑制剤は一生服用することになります。非常に稀ですがいらなくなる例もあるようですが、原則として一生必要な薬となり、小児期は親が、それ以降は自分で管理していきます。

術後1ヶ月は創部の痛みや不快感で不自由を感じるときがあると思います。
子どもに比べれば軽い手術ですが、肝臓を切るわけですから手術自体はなかなか大変ですし、子どものような回復力は大人にはありませんから仕事を持っている場合は充分に余裕を持って休みを取ることがかんじんです。たいていの場合、約3ヶ月ほど見たほうが無難です。6ヶ月くらい経つと手術の影響はほとんどなくなってきますが、人によっては天候の変化、季節の変わり目に傷口がうずくことがあります。
また実際にドナーとなった会員中には以前と比べて疲れやすくなったという報告もあります。