肝芽腫と診断するためには色々な検査が必要です。
たくさんの検査をすることに不安を感じるかもしれませんが、確実な診断をしなければ治療に入ることはできません。
 


1. 診断するための検査
2. AFPの正常値
3. 治療方針を決めるためにすること
治療はステージではなく、PRETEXTで決まる
4. 化学療法の前にする検査
5. 治療費はどのくらいかかる?
6. 治療計画は必ず聞こう!



  1.診断するための検査 




CT 
(放射線を使って調べる)
MRI 
(磁気を使って調べる)
シンチグラム 
(放射性物質を体内に入れて調べる)



画像検査は、肝臓に腫瘍が本当にあるのかどうか、あるとすればどのくらいの大きさなのか、また転移があるのかどうかを確かめるために必要です。








血液検査 
(特に血中のアルファ・フェト・プロテイン(AFP)の値が重要)
AFP(アルファ・フェト・プロテインの略。通常「エイ・エフ・ピー」と言います。)は、肝芽腫の腫瘍マーカーです。
肝芽腫ではほぼ100%でAFPの値が高くなります。
また治療をして腫瘍が小さくなればAFPの値が下がってきますので、治療の効果を見るためにも定期的に測ることが必要です。

生検 (肝臓の組織の一部を採取する)
もっとも確実な診断としては、「生検」という肝臓の組織の一部を採って病理診断をするという方法があり、手術の前に化学療法(抗がん剤を使った治療)をする場合にはこの検査も必要です。ただしこれは手術のように麻酔をかけて手術室で行いますので、その子の状態によってかえって危険と判断された場合にはしないこともあります。



  2.AFPの正常値 

   ← これを目指します!



  3.治療方針を決めるためにすること 

病期分類

病期分類とはがんの進行度を示すもので、肝芽腫では少し前まで日本小児外科学会の分類が広く使われていました。
これは一般に「
ステージ」ということばで表します。
しかし現在の治療はステージごとではなく、『
PRETEXT(プリテクスト)』によって決まります。
PRETEXTは、Pre-Treatment Extent of Disease の略で、肝臓を4つの部分に分け、どの部分を腫瘍が占めているかで分類します。初診時にPRETEXTが1、または2であれば手術で完全切除することが可能と考えられますが、3または4ではそれが困難なので、まず抗がん剤による化学療法を行い、腫瘍を小さくしてから手術をします。


PRETEXTの分類法

  


        


            


    

PRETEXTの他に、下の4つの『肝外進展』と『遠隔転移』の有無を確認して治療を行います。
V → 下大静脈または全ての肝静脈内へ腫瘍が入り込んでいる場合。
P → 門脈本幹、または左右両方の門脈内に腫瘍がある場合。
E → VやP以外の肝外進展がある場合。
R → 腫瘍破裂がある場合。

M → 遠隔転移がある場合。



  4.化学療法の前にする検査 

手術の前に術前化学療法という抗がん剤を使った治療をするときには、化学療法に入る前の状態を把握するために血液検査や画像検査の他にも次のような検査をします。










聴力検査 
(オージオメーターでの測定)
シスプラチン・カルボプラチン(商品名:ブリプラチン、ランダなど)などの抗がん剤の副作用として聴力が落ちることがあるために治療前の聴力を調べておきます。治療中は定期的に聴力を測り、聴力低下がないかどうかをチェックします。

心機能検査 (心エコー・心電図)
THP-アドリアマイシン(商品名:ピノルビン、テラルビシンなど)の副作用として心筋障害が出ることがあるために治療前の心臓の機能を調べておきます。

腎機能検査 (尿検査)
シスプラチンの副作用で起こることがあるために調べておきます。



  5.治療費はどのくらいかかる? 

肝芽腫を含めた小児がんは、『小児慢性特定疾患』の受給対象ですので、保険適応分の医療費は全額公的負担が受けられます。これについては役所に提出する書類など手続きのことも含めて病院あるいは主治医より説明が必ずあるはずですが、万が一説明がない場合には聞いてみるようにして下さい。(注:差額ベッドや食事代、付き添いの補助ベッド代など自費扱いのものは支払わなくてはなりません。)

また、『
特別児童扶養手当』というのもあります。
これを申請すると、1級認定の場合は月額約5万円、2級の場合は月額約3万円が補助されます。詳しくは各市町村の窓口にお問い合わせ下さい。




  6.治療計画は必ず聞こう! 

緊急手術が必要な場合以外は、肝芽腫の治療に入る前に必ず主治医から「病名」「病期」などの現在の病状と今後の治療内容や治療の予定日数についての詳しい説明があります。

現在日本では『日本小児肝がんスタディグループ(Japanese Study Group for Pediatric Liver Tumor。JPLTと略す。)』という、多数の施設が共同して肝臓の悪性腫瘍の治療研究を行っているグループがあり、肝芽腫のほとんどはこのグループで決めた治療方法により治療されています。
肝芽腫は小児がんの中でも発症数が少ない病気ですので、JPLTに登録された全国からのデータを集めながら肝芽腫の治療成績の向上のための努力がなされています。いわゆる「臨床試験」と呼ばれるものですが、治療を始めるにあたってはこの臨床試験の説明と参加への同意の有無なども聞かれます。
また、治療や手術で必要となる輸血の同意書など文書への署名捺印も求められます。

輸血は手術だけでなく、抗がん剤を使った『化学療法』でもほとんどの場合必要です。