呼吸不全とは何か         人工呼吸ケア なぜ何大百科の一部抜粋     

1 呼吸不全とは

 呼吸不全(respiratory failure, pulmonary failure)とは、急性、または慢性に経過する低酸素血症、高二酸化炭素血症で、肺におけるガス交換の機能が生体の要求に応じきれなくなった状態である。これは、原因のいかんを問わず、酸素と二酸化炭素のガス交換が異常を来たし、生体が正常な機能を営めない状態を示す。


2 呼吸不全の診断

 呼吸不全は、動脈血酸素分圧値の変化で定義されている。

 室内気吸入時の動脈血酸素分圧が60torr以下となる呼吸障害、またはそれに相当する呼吸障害を呈する異常状態  を呼吸不全と診断する。

 動脈血酸素分圧値60torr以下は、混合静脈血酸素分圧値が35torr以下となる。同時に動脈血酸素飽和度(SaO2)あ るいは、経皮的動脈血酸素飽和度(SpO2)90%に相当する。

 これらの数値が重要な点は、生体組織が呈酸素状態に陥っていることを示し、酸素療法が必要となることである。

 動脈血酸素分圧が60torrを越え、70torr以下のものを準呼吸不全と呼ぶ。

 動脈血酸素分圧値60torr以下で、動脈血二酸化炭素分圧が45torrを超えない呼吸不全を「T型呼吸不全(hypoxemic failure)」 逆に45torrを越えて高二酸化炭素血症を呈する呼吸不全を「U型呼吸不全(ventilatory failure)」と分類している。つまり前者は  酸素化障害で、後者は換気障害が生じているいることになる。

 T型呼吸不全ではAーDO2が開大し、U型呼吸不全ではA-aDO2が変わらない場合(神経、筋疾患、胸郭異常、呼吸中枢機能低下 など)と開大する場合(肺気腫、慢性気管支炎などのCOPD急性憎悪例)がある。

 3 換気障害と酸素化障害の違い

  1)換気障害

 肺胞と大気中の間のガスの移動ができない状態で、酸素を肺胞に取り込めず二酸化炭素を肺胞から排泄できない状態。

 2)酸素化障害

 低酸素状態で二酸化炭素は正常が減少。急性の酸素化不全は、主にシャントやシャント様効果の増大によって起こる。

 3)混合型障害

 換気障害と酸素化障害が合併したもの。

4 急性呼吸不全と慢性呼吸不全の違い

呼吸不全の発症経過から急性呼吸不全と慢性呼吸不全に分類される。週単位で悪化するものを急性呼吸不全という。

呼吸不全の状態が少なくとも1ヵ月以上持続するものを慢性呼吸不全という。

急性呼吸不全は、呼吸不全となる前には肺機能には著しい異常がなく酸素化も正常な状態から、何らかの原因によって急激に低酸素血症となる。

発症が急速に進行するため生体の代償機転が不十分となり、生命の危機的状況となる場合も多く、人工呼吸管理はもとより周到な全身管理が必要となる。大手術後、外傷、ショックなどに続発する急性呼吸迫症候群(ARDS)が代表的疾患としてあげられる。

慢性呼吸不全は、呼吸器の慢性疾患を契機に発症し、病変の進行に伴い徐々に呼吸機能をはじめとする種々の代償機構が不十分となっていく。

閉塞性肺疾患、間質性肺炎、気管支拡張症などの慢性呼吸器疾患などがあげられる。これらの症状が急激に悪化した場合を慢性呼吸不全の急激憎悪と呼び、その原因は感染によるものがほとんどである。

呼吸不全の病態生理学的分類
呼吸不全   病態生理                     PaO2     PaCO2      A-aDO2
換気障害   肺胞低換気 死腔換気増大         
低下      上昇        変化なし

酸素化障害 換気ー血流比不均等シャント拡散障害    低下       低下/上昇    拡大

混合障害   上記の合併                   低下      上昇        拡大

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