スウェーデンのアヴァンギャルド・ロック・グループ「SAMLA MAMMAS MANNA」。69 年結成。71 年アルバム・デビュー。76 年解散。 77 年「ZAMLA MAMMAZ MANNA」で復活。 80 年再分裂、解散。 解散後リーダーのホルメルは、VON ZAMLA で復活を目論み、二枚の作品を残す。以後散発的に再結成し、ライヴ活動を行うが、99 年なんとオリジナル・メンバーで 19 年ぶりの新作発表。 グループ名は「ママのマナを集めろ!」の意(?!)。 サウンドは、トラッド、ジャズ、ロックらをユーモアでまとめあげた、ラディカルで奇妙奇天烈なもの。 2008 年、バンドは伝説になりました。
| Lars Hollmer | piano, organ, vocals |
| Lars Krantz | bass |
| Hanssse Bruniusson | drums, vocals |
| Henrik "Bebben" Oberg | congas, percussion |
71 年の第一作「Samla Mammas Manna」。ギターなしでキーボードがリードをとる。
ピアノは主としてエレクトリック。
ドギツイなユーモアを見せるところはあるのだが、マイルドなラウンジ風ジャズロックやリリカルなソロもあり、アルバムとしてはそちらの印象の方が強い。
フォーク・ダンスを思わせる土臭いメロディは、ふんだんに使われている。
2001 年ようやく CD 化。
旧 B 面はライヴ録音のようです。
ボーナス・トラック 2 曲つき。
(SILENCE SRSCD 3603)
| Lars Hollmer | electric piano, piano, vocals |
| Coste Apetrea | guitar, vocals |
| Lars Krantz | bass, vocals |
| Henrik Oberg | congas |
| Hanssse Bruniusson | drums, percussion, vocals |
73年の第二作「Maltid」。
ギターに名手コステ・アペトレアが加入。
内容はは、エレピとギターが駆け巡る、初期型クロスオーヴァー/ジャズロックの過激な亜種。
濃厚なトラッド色のあるメロディ・ラインと、コミカルというにはあまりにオバカな効果音、ヴォーカルが特徴だ。
なぜか昭和の歌謡曲に通じるトラッド調のテーマをめぐって、変拍子を駆使した超絶アンサンブルが挑発的/暴力的に駆け巡る。
快速ユニゾン、急激な方向転換など、演奏技術にはまさに目をみはるものがある。
そして、ギターの入った SOFT MACHINE ともいうべき一体感のあるテクニカルな演奏に、どぎつ過ぎるユーモア感覚でひねりを加えている。
とにかく、超絶アンサンブルが突如チンドン屋/盆踊りになるわ、奇声は渦巻くわ、リズムは妙にそわそわし始めるわ、変態裏声コーラスは始まるわ、子供の歌のようなデタラメさが横溢するのである。
珍妙なヴォーカルや効果音は、元来ペーソスのある民謡風のテーマにさらなる脱力感を加えており、ユーモアを越えた、いわば「真剣な不真面目」の迫力を感じさせる。
哀愁と情感あふれる演奏も、2 曲目のようなファルセットのおかげで、何ともいえぬけだるさにすりかわってしまうのだ。
ジャズ、ブルーズ、トラッドと積み上げたにもかかわらず、毒気たっぷりのユーモアで、大胆にも一度ぶっ壊してしまうのだ。
そして、壊れたおもちゃのようなアンサンブルは、笑い声を上げながらどこまでも転げ落ちてゆく。
過剰なまでのスピード感は、ダンス・ミュージックとしてのトラッドの素地に違いない。
さて、楽器を見てみよう。
ギターの表現力には、ただならぬものがある。
ナチュラル・ディストーション・トーンによるサスティンとヴィブラートを効かせたプレイは、いわゆるロック・ギターとしては最上級だろう。
ヤン・アッカーマンがジャズ・ギターを練習したようなイメージだ。
そしてキーボード。
エレピとピアノのプレイは、音量の豊かさと音色の暖かみが特徴だろう。
耳になじみやすい親しみのあふれるフレーズを次々と繰り出すセンスには脱帽だ。
そして、クラシックやジャズの直接的な影響を感じさせない、オリジナリティのある音でもある。
変拍子のリフの上で、ギターとキーボードが主導権を取り合いつつ螺旋を描くように登りつめてゆく様子は、息を呑むほどにスリリングだ。
演奏力があるだけに、長大な即興ものが特に聴き応えあり。
ソロは圧巻、アンサンブルは超絶、しかしモチーフとアレンジはお笑いとペーソスという驚異のハイテク・コミック・バンド。
元来トラッド畑では、こういうアーティストが多いのかもしれない。
全体に古臭い音であるのは間違いないが、英国ロック絶頂期に、イギリス独特の含みのあるユーモアとは趣を異にする能天気かつサディスティックなセンスの音が北欧に生まれていたとは、なんとも感動的ではないか。
本 CD は、第一作から 1 曲と本作と同時期のセッションから 2 曲 の計 3 曲のボーナス・トラックつき。
1 曲目は個性爆発、名刺代わりの名作。
何もかもを巻き込んで突っ走る、壮絶なトラッド・ジャズロックである。
ユーモラスなテーマとテクニカルなソロ・パートの調合が絶妙。
ジャジーなエレピとブルージーなギターのバトルも痛快だ。
また、クレジットにはないが、メロトロンが使われている。
3 曲目では深刻さとユーモアが紙一重になっている、不思議な演奏を聴くこともできる。
「Dundrets Fröjder」(10:43)トラッド風のテーマを用い、8 分の 6 拍子中心にさまざまなスタイルを目まぐるしく変転する超絶ジャズロック。
珍妙なスキャットは入るが、ほぼインストゥルメンタル。
一糸乱れぬユニゾンで走るギターとキーボード、リズムを細かく刻み捲くるドラムスなど、みごとな演奏を見せる。
ユーモアとペーソスあふれるトラッド調のやりとりが印象的。
代表作。
「Oförutsedd Förlossning」(3:10)
絶叫ファルセットによるオペラチックな歌唱をジャジーなインストが支える、メランコリックな歌もの。
ブルージーなハードロック・ギター、クラシカルなピアノなど、演奏はきわめて正統的。
歌メロには切実に訴えかけるものが感じられる。
何いってんのか全然分かりませんが。
「Den Återupplivade Låten 」(5:53)一応ハードにして切れ味鋭いブルージーなジャズロック。
特殊奏法によるさまざまなノイズが渦巻くイントロから、一転してハードなアンサンブルへと変化し、息を呑む。
たたみかけるトゥッティとフルート(?)も交えた叙情的な「受け」のパートまで、初期 KING CRIMSON のようなブリティッシュ・ロック的センスにあふれる。
マイナーからメジャーへと表情を変えつつ走るピアノとブルーズ・ギターの一体感がみごと。
後半は、奇妙な即興のブリッジから運動会風のピアノ・リフ、ヘヴィなトゥッティを経て、場末のビヤホールの BGM のようなコミカルな調子や、ハードロックが現れる。
そして、エピローグはなんとリリカルなピアノ・ソロ。
インストゥルメンタル。
みごとな変転だ。
「Folkvisa I Morse」(2:07)アコースティック・ギターとエレピがリードするトラッド・フォーク・ソング。
うっすら聴こえる不気味な鼻歌以外はインストゥルメンタル。
親しみやすくユーモラスなテーマ。
一瞬ヤバげな展開も見せるが、基本はのどかで調子のよい曲である。
「Syster System」(2:27)ピアノの刻む 16 分の 5 拍子のリフが小気味いい、ユーモラスなナンバー。
たたみかけるピアノ、スネア・ドラムのビートで、ファルセットによるふざけたコーラスがせわしなく突っ走る。
強迫的なリズムとネジは外れているが、メロディアスなコーラスの対比。
嬌声は次第に高まり、狂気を帯びてゆく。
「Tärningen」(3:33)
「Svackorpoängen」(3:11)
「Minareten」(8:21)
「Vaerel Tilbud」(2:26)
以下ボーナス・トラック。
「Minareten II」(4:37)
「Circus Apparatha」(6:02)第一作から。
「Probably The Probably」(3:54)
(SILENCE SRSCD 3604)
| Lars Hollmer | piano, accordion, yodelling, vocals |
| Coste Apetrea | guitars, vocals |
| Lars Krantz | bass, vocals |
| Hanssse Bruniusson | drums, vocals |
| Brynn Settels | accordion (on song #8) |
74 年の第三作「Klossa Knapitatet(踊る鳥人間)」。
アルバム・タイトルは、「資本主義をぶっ潰せ」という左傾スローガンをもじったものらしい。
RIO 的なマインドたっぷりのキツいシャレなのだろう。
サウンドは、前作の延長上にあるテクニカル・ジャズロックに、更なる民族音楽風味とセサミ・ストリートと玉川カルテット風の泥臭いユーモアを交えたもの。
「Ingenting/Nothing」(2:09)
観客を巻き込んだ軽妙かつフォーキーな演奏から、しっかりと超絶アンサンブルへと突っ込んでゆく。
続く「Liten Dialektik/Small Dialectics」(10:10)
再びユーモラスなオープニングから、一転してメロディアスに変化し、ギター、エレピのリードする緊迫感のあるジャズロックへと引き継がれてゆく。
音楽的な力量を見せつける作品だ。
このオープニング 2 曲で度肝を抜かれることうけあいます。
「Sucken/The Sigh」(1:14)ピアノがシリアスに和音を刻み、アコースティック・ギターがかき鳴らされる民族色の濃い小品。
「Lang ner i ett Kaninhal/Way Down a Rabbithole」(4:13)
ピアノ、ギターのリードする超絶フォルクローレ。
ユーモラスなリフレインを、難なく超スピードで弾き飛ばしてゆく。
ユニゾンは完璧、変拍子は平然、おまけにヨーデルは飛び出すわ、鳥はさえずるわ、自転車のベルは鳴るわ、タイトル通り狂気満載。絶好調。
「Kom lite narmare/Come a Little Closer」(1:30)
ドモるような会話とピアノを叩きつける音の繰り返し、自転車のベルや「パフー」という警笛の繰り返しからピアノ演奏へと突っ込む、妙な音に溢れた音楽漫才。
「Musmjolkningsmaskinen/The Mousemilkingmachine」(6:36)
ハイスピード・ジャズロック風ごった煮。
ギターとピアノが中心になってフォーク風、ブルーズ風と様々なリフレインを烈しくスピーディに繰り出す。
ブルージーなジャズ・ギターのプレイが圧倒的。
一転ピアノの刻むリズムがペーソスあふれるフォークソングを奏でるが、最後はクラシックのパロディのような演奏になりパーカッションがメチャクチャに鳴って終わり。
「Influenser/Influences」(6:58)
妙なヴォーカルとコーラスで始まるアヴァンギャルドな作品。
ヴォーカル、ギター、エレピの断続的なフレーズがたたみかけられる。
ドラムがリズムをキープするが、なかなか真面目にノってこない。
ようやくギターが動き始め、ベース、エレピと追いついてゆく。
それでも、変な声が入ってくると、フレーズは細切れになり、代わって妙なメロディが圧倒する。
再び、ギターとアコーディオンによるアンサンブルが立ち上がり、ヘヴィな展開へと突入する。
最後は、エレピが穏やかに幕を引く。
かなり壊れたジャズロック・ナンバー。
部分的には、すさまじくセンスのよいプレイを見せているのだが。
「Klossa Knapitatet」(1:23)アコーディオンによるフォルクローレ小品。
タイトル・ナンバーにもかかわらず、あっという間に終わり。
「Ramlosa Kvallar/Frameless Nights」(5:30)
鮮やかなニューエイジ風ピアノとディストーション・ギターの絡みから始まる恐ろしげなナンバー。
静かなフォービート・ナンバーのパロディのように、ピアノとギターが断続的なフレーズでかけあい、不気味な音を立てる。
ドラム・ロールからリズムが生まれるも、フォーク・ダンスのような雰囲気になってゆく。
ピアノが刻むビートに支えられたギターにも、ほんのりとフォーク・タッチあり。
アヴァンギャルドなフォークロック。
ボケは烈しく、ツッコミはさらに烈しい、コミック・バンド的な面がクローズアップされた作品。
テクニックの冴えも、今まで以上のものを見せつける。
また、フォーク色は全体に散りばめられて大作、小品それぞれに効果を上げている。
もっとも、トラッド的なペーソスよりは、いかに山出しのバカに徹するかに力が入った作品だろう。
赤塚不二夫的バカ・ハイテク・ジャズロック。
(SILENCE SRSCD 3617)
| Coste Apetrea | guitar, balalaika |
| Lars Hollmer | keyboards |
| Hans Bruniusson | drums, percussion |
| Lars Krantz | bass |
| Kalle Eriksson | trumpet |
| Artan Wallander | saxophone |
| Gregry Allan FrizPatrick | composer |
76 年の第四作「Snorungarnas Symfoni」。
グレゴリー・アラン・パトリックによって作曲された作品を、SAMLA が演奏するという本作は、むしろパトリックのソロ・アルバムと取るべきかもしれない。
しかし、SAMLA のスタイルを意識し、活かした楽曲となっており、牧歌的なナンバーから独特のユーモア、毒、超絶プレイを盛り込んだ曲までを幅広く味わうことができる。
もっとも、他の作品と比べるとドギツさは抑え目であり、黄昏トラッド風味と子供じみたユーモアをもつシンフォニック・ジャズロックといった感じになっている。
フランク・ザッパ の初期ジャズロック・インスト作品に通じるところもあれば、ガっと一気にハード・フュージョン路線で決めまくるところもあり、この目まぐるしさが一番の特徴だ。
サックスは、現在 THE FLOWER KINGS でもゲストをつとめるウォランダー氏。
各曲も鑑賞予定。
本作発表後グループは一時休息期間を迎える。
「Forsta Satsen」(11:46)緩急自在の一体感のある快演。
シンフォニックに主題を奏で上げる序盤、無声映画の警官と泥棒の追いかけっこ場面でかかりそうな中盤、叙情的な終盤までをしなやかに駆け抜ける。
改めて巧みな演奏/表現力に驚かされます。
「Andra Satsen」(5:39)ハードなフュージョン・タッチの後半がカッコいい。
「Tredje Satsen」(7:45)のどかにして大仰なワルツ。
ブルニゥッソンの卓越したドラミングを聴くことができる。
終盤、どえらいテンションのまま爆発寸前まで登りつめる。
「Fjarde Satsen」(8:43)ゴージャスな大団円。
(MNWCD 70)

| Hans Bruniusson | drums, xylophone, chimes, vibraphone, pinochet, radio, song |
| Eino Haapala | electric & acoustic guitar, vibraphone, song |
| Lars Hollmer | electric & acoustic, synthesizer, accordion, organ, song |
| Lars Krantz | bass, double bass, acoustic guitar, trumpet, song |
77 年の第五作はスタジオ盤とライヴ盤の二枚組「Schlagerns Mystik/For Aldre Nybegynnare」。
休息期間を終え、ギターに新メンバーを迎えて活動再開後の作品。
グループ名も SAMLA MAMMAS MANNA から ZAMLA MAMMAZ MANNA に変更されている。
スタジオ盤は、ユーモラスなフォーク歌謡路線。
変態じみた奇天烈さと同時に、童謡風の暖かみが感じられる内容であり、ホルメル氏のソロやアルベル・マルクールにも近い世界のようだ。
(サディスティックな面はハンス・ブルニッセンに負うところが多そうだ)
そして、B 面を占める大作「The Fate」は、グルーヴィななかにも鋭利な緊張感もあるインストゥルメンタルであり、逞しい演奏力とサイケな即興パワーを見せつける傑作。
田舎臭くも力強いテーマのリフが、くやしいがカッコいい。
新加入のギタリストは、粘りつくようなロングトーンが特徴のシリアス派だろうか。
ライヴ盤は、77 年の即興演奏ツアーを収めたもの。
奇声や鳩時計などいかにもなシーンに加えて、KING CRIMSON や HENRY COW にも通じる狂暴さが爆発するインプロヴィゼーションを堪能できる。
(SRSCD 3610)
| Lars Hollmer | keyboards, accordion, song |
| Eino Haapala | guitar, song |
| Lars Krantz | bass, song |
| Vilgot Hansson | drums, percussion |
| Hans Bruniusson | drums, percussion on 6 |
2 年に及ぶ RIO の活動を経て発表された 80 年の最終作「FamilyCracks(Familjesprickor)」。
ドラムにも新メンバーを迎え、ブルニッソンは一曲のみのゲスト参加となった。
作風も変化し、あからさまなオフザケ/脱構築よりも、技巧を活かした明快さを目指しているようである。
メンバー交代によって阿吽の呼吸を失うことを余儀なくされたことを追い風に変えたということだ。
もちろん魅力的なバカっぽさはあるのだが、それ以上に、キレのあるアンサンブルの疾走に惹かれてしまう、そういう内容である。
つまり、作風はテクニカルにしてアグレッシヴそして素っ頓狂なトラッド風ジャズロックであり、芸風的にはもはや孤高の極みに到達しているということだ。
サディスティックな底意地の悪さに生真面目に作り上げられた超絶技巧の衝撃が加わったのだ。
すべての楽器からメチャクチャに叩き出される喧騒が一転して一糸乱れぬアンサンブルへと変貌するスリリングな瞬間が次々と現れる。
そして、技巧路線へ傾斜したとはいえ、ニヤニヤ笑いながら悪意たっぷりに生み出される「おちゃらけ」は普通のバンドのレベルを遥かに超えている。
ひたすらな暴走と急転直下にはもはや唖然とするしかない。
ひょっとすると彼等は、音楽によってリスナーが何かのイメージを喚起したり感情移入したりすることを、一切拒絶しているのではないだろうか。
目まぐるしい演奏は、あたかも、リスナーが追いかければ追いかけるほど先へ先へと猛烈な勢いで走り去ってゆく、逃げ水のようなのだ。
邦題は「家庭のひび割れ」。
1 曲目「Five Single Combats」(6:00)
ラジオのジングルのような、気違いじみたトイ・ピアノのパッセージが続くオープニング。
ギターの一声からリズムが打ち出され、5 拍子のベース・リフとともに、ノイジーなエレピが走る。
タイトルも、5 拍子を意味しているようだ。
ピアノはアコースティックに代わり、転がるようなソロを繰り広げる。
ハンド・クラッピングも入って、快調にすっ飛ばす。
たたみかけるリフから、急ブレーキ!
ここのエレピ、ギター、ドラムのユニゾンが際どい。
再びオープニングのピアノ、そして疾走するアンサンブルに、今度は浮かれたようなスキャットが加わる。
最初のエレピと同じく、スキャットもリフとは微妙にズレており気持ちが悪い。
ピアノ・ソロとベースがリードするスリリングな演奏だ。
軽妙なパーカッションのアクセントも効いている。
三度オープニングのピアノが流れを断ち切り(2:35)、一瞬凶暴な 7 拍子の全体演奏をはさんで、再びヘヴィな 5 拍子リフに戻る。
今度は一転して轟くギター、オルガンとともにテンポ・ダウン、7 拍子の重厚な全体演奏へ。
と思ったら、またもピアノのリードでオープニング・シーケンスの 7 拍子変奏版へ。
刻み込むように凶暴な 7 拍子パターンが続く。
そして、またもやオープニングのピアノ・シーケンスへ軽やかに変化。
目まぐるしいが鮮やかな演奏だ。
今度はギターが一閃(3:35)、思い切りヘヴィなパワー・コードが轟き、ピアノが苛立たしげに和音を刻む、8 ビートのスロー・パートへ。
ヒステリックでノイジーなエレピ・ソロ、そしてエレピが思いついたパターンに全員が追いすがるようなユニゾンと怪しいスキャットがかけあう。(4:35)
スキャットが、巧みに全体を 5 拍子に引きずり戻すところが面白い。
再びギターとともにテンポ・ダウンし、悠然と広がる全体演奏へ。
しかしそれも一瞬、狂的なユニゾンとギターで 10 拍子パターンを提示してゆく。
ヘヴィなギターとけたたましいシンセサイザー、スキャットによって、どんどん危ない雰囲気になってゆく。
一瞬、オープニングのピアノ(5:29)、そしてスピーディなユニゾン、スロー・ダウン、またもオープニング、スピーディなユニゾン、スキャット。
このギリギリ感がたまりません。
そのまま 2 曲目へ。
リズミカルなキーボードがリードする、快速奇天烈変拍子ジャズロック。
幼児番組風の珍妙なピアノで始まる演奏は、ユーモアと切れ味鋭い技巧をたっぷりと含んでいる。
8 分の 5 拍子による全体演奏を基調に、パーカッションとハンド・クラップがどんどんスピードをあおり、奇声が上がるともう誰も止められない。
繰り返しごとに、リズム・パターンを目まぐるしく変化させて、ひたすら疾走と急停止と急旋回を続けるのだ。
一糸乱れぬアンサンブルをリードするホルメルのキーボードは、「引きずり回す」というニュアンスが最も適している。
終わりたくない、終われないといった感じのエンディングまで、子供の遊びのような一種熱狂的な面と醒め切った計算が、身悶えるような調子で絡み合い、遂には弾け飛んでしまう。
情報密度高し。
2 曲目「Ventilation Calculation」(5:10)。
細かなパッセージで湧き上がり弾けるギター、キーボードそしてドラムス。
鮮やかなギターのきらめきとともに、なめらかな全体演奏へ。
ARTI+MESTIERI のようである。
ギターのリードによる、ややフュージョン・タッチの演奏である。
ピアノの提示するテーマはきわめて親しみやすい。
追いかけるメロディアスなギター、リズミカルなキーボード。
ベースのプレイもカッコいい。
ドラムスは緻密に音をくみ上げてゆくタイプ。
ジャジーでリラックスした演奏だ。
一人ギター・ハーモニーによるややシリアスなテーマ(1:56)も、大きく雰囲気を変えるには及ばない。
ジャジーなギター・ソロの伴奏に、瓶を吹くような奇妙な音が聴こえてくる。
またもオープニングの華やかな演奏が復活(3:15)、しなやかな全体演奏を繰り広げる。
オルガンはバッキングに徹している。
さらにオープニング・パターンを印象づけ、ピアノによる愛らしいテーマが再現。
ベースとピアノのデュオは、やさしげでいい感じだ。
ギターが受け止め、メロディアスなアンサンブルへ。
ギターを中心とした、メロディアスなフュージョン/ジャズロック。
鋭い技巧を豊かな歌心に封じ込めて優雅に歌う演奏であり、ARTI や AREA にも通じる感覚がある。
突然真面目になられても、困りますが。
ギターは、なかなかの好演を見せる。
ピアノ、ベースのサポートもみごと。
3 曲目「The Forge」(5:15)。
細かいリズムの上でキーボードの演奏が走る。
時おり低音が不安を煽るような音を立てるが、キーボードのアルペジオとギターの演奏で拭い去る。
すると突然リズムが変わって出てきたアコーディオンが民族風のフレーズを繰り返しているうち何か悪いものが現れて金属的なシンセサイザーと電子音の雑音で混沌となる。
アコーディオンはテーマをクリアに弾いて対抗するが最後は電子音のノイズで終わり。
金属的でインダストリアルなサウンドと民謡風のアコーディオンのテーマが交錯する、ZAMLA ならではの変拍子ヘヴィ・チューン。
ここでは、アコーディオンとギターが見事なコンビネーションを見せる。
ユニゾンで繰り返される 8 分の 13+8 分の 12 拍子。
中盤以降民族色も現れる。
ここまで 3 曲は切れ目がなく、ハイ・テンションの演奏が転がり落ちるように連続する。
1 曲目でガンと殴られて、フラフラのままここまでたどり着く、そんな感じです。
4 曲目「The Thrall」(5:10)。
音響の面白さを強調した即興作。
メロディやリズムは存在せず、各パートの発する音の断片を、気違い地味たスキャットが貫く。
こういう作品では、シンセサイザーの存在が大きい。
えもいわれぬ不気味な緊張が続く。
フランスでのライヴ録音より。
5 曲目「The Panting Short Story」(4:05)
フィードバックが唸りを上げる HM ギターをフィーチュアした変拍子ハード・チューン。
3 曲目と同じく、KING CRIMSON を思わせる厳格な調子と能天気な民謡風のニュアンスが交錯する。
テーマの旋律はけっこう感傷的。
全体演奏が目まぐるしいまでのリズム変化を繰り広げる。
6 曲目「Pappa(with right of vetto)」(4:30)
二部構成による、昔日を髣髴させる「変な曲」。
前半は、ブルージーなギターと素っ頓狂なオヤジ・コーラスがリードするレゲエ。
ドラムス、パーカッションの表情が豊かだ。
後半は、軽やかなマリンバ中心のアンサンブルが天上知らずの加速を見せる超絶曲。
Zappa の「Inca Road」と GONG の「You Can't Kill Me」を合わせたような曲です。
ドイツでのライヴ録音より。
マリンバはおそらく後からのオーバー・ダビングでしょう。
本曲のみ、ドラムスはハッセ・ブルニウソン。
7 曲目「The Farmhand」(7:45)
なんとなくトロピカル・ムード漂うベース・リフから始まる。
ピアノとギターが美しくユニゾンする。
スキャット(ちょっと変だが)とギターのオブリガートも決まっている。
ラテン・フュージョンのパロディか。
パーカッションがコミカルなリズムを刻んでギターも悪ノリ。
とにかくみんな弾きっぱなし。
音がぎゅう詰めである。
アフロっぽいスキャットに続いてギターがノリノリのリフを演奏する。
そしてソロ。
リズムが複雑に崩れる、すぐ持ち直し軽快な縦揺れリズムでスキャットとギターがユニゾン。
そしてギター・ソロ。
パーカッションがいい音だ。
オルガンの伴奏でギターがクチャクチャソロを続ける。
再びアフロなスキャットそしてギターが続く。
なんか疲れてきたぞ。
しかしテンション上がりっ放しで演奏は続く。
またギター・ソロ。
最後は 3 連のフレーズから決めが何度か続いて終り。
しかし、再びせわしないピアノのリフレインが始まる。
ベースのスピーディなリフそしてピアノのリフレイン。
リズムが変化しテンポも上がる。
ギターとオルガン、ピアノが反応しつつどんどん走る。
たたみかけるユニゾン・リフ。
ピアノとギターが絡まって終り
前半はメロディアスなフュージョン・タッチによるグルーヴィな演奏が延々続く。
そろそろ嫌になってきたところで突然終るが、ピアノとともに復活し得意の加速アンサンブルで駆け抜けてゆく。
もう少しブルーズ寄りだと、Zappa に迫ったかもしれない。
最後も凄いが、延々続く前半のアンサンブルの根底にある底意地の悪さが不気味。
8 曲目「Kernel in Short and Long Castling」(5:50)
1 曲目を思い出させるピアノのリードによるせわしないオープニング。
目の回るようなユニゾンで走り回り、いつまでも落ちつくことができない。
凶暴なギターが押さえつけるのだが、それでもピアノは止まず、いつしかギターのフィードバックとピアノの音による緊張感たっぷりの全体演奏へと進んでゆく。
テクニカルなドラムスが口火を切る演奏は、AREA や KING CRIMSON に匹敵するヘヴィで硬質な演奏である。
低音を強調するピアノのパターンの上で、ロング・トーン・ギターが細かな半音パッセージで暴れ回る。
ギターとエレピの呼応も荒々しい。
7 拍子の民謡風のギター・リフから、いつしかテンポは軽やかに上がり、ギターとエレピが快調なやり取りを見せ始める。
それでも diminish 系の和声・スケールによるリフが、ダークで歪んだイメージを突きつけてくる。
この快調さと暗さのバランスが奇妙だ。
再びオープニング・シーケンス(4:41)。
繰り返しごとにパターンを変化させて、せわしなくたたみかけてゆく。
1 曲目と同じだ。
猛烈な演奏をギターが受け止めて終わり。
ユーモラスなのだが無表情な変拍子パターンを駆使してドライヴされる CRIMSON 風のヘヴィ・ジャズロック。
ワイルドなギターと緻密なドラミングから、KING CRIMSON が連想されるのだが、変拍子によるうねうねとしたテーマは、SOFT MACHINE といえるかもしれない。
低音を強調したピアノによる伴奏も特徴的。
後半、diminish と major が切り換りながら突き進む展開が面白い。
ピアノがリードする超速変則パターンに悪酔いします。
超絶変態ジャズロックへと変身。
おバカさ加減は、ハイテクに乗せて機関銃のように撒き散らされる。
今までの子供番組的ギャグがグループとしての絶頂期における才能の迸りであったのに対し、ユーモラスな中にもテクニックを強調しようとする厳格な表情が見える本作の演奏は、ギリギリのところでグループの形態を維持した緊張感のなせる技のようにも思える。
過激さという意味では、まちがいなく筆頭の作品だろう。
パロディと悪ふざけを徹底して音楽を解体してしまいながら、それでも音楽を楽しんでいるような姿勢は、普通のグループを遥かに引き離して地平線の彼方を突っ走っている。
技巧そのものについては、もはや多くを語りません。
いったい誰が追いつくんでしょう。
ジャズロック・ファンおよび「変」なものが好きな人向け。
本作発表後、ドラム、ベースが相次いで脱退し、ハーパラとホルメルはフランスへの演奏旅行を経て VON ZAMLA を結成する。
(SILENCE SRSCD 3612)
| Coste Apetrea | guitar, bouzouki, veena, voice |
| Hans Bruniusson | drums, percussion, marimba, voice |
| Lars Hollmer | keyboards, accordion, melodica, voice |
| Lars Krantz | bass, voice |
99 年のアルバム「Kaka」。
90 年代初頭から散発的にライヴを行っていた SAMLA が遂に発表した新作。
オリジナル・メンバーが顔を揃え、スタジオ新録音/ライヴ録音を取りまぜた内容となっている。
ラジオ・ショー仕立てなのか、オープニングからいきなりアナウンサーが蹴っつまづいて、おバカに決めてくれる。
オフザケもいよいよ洗練されてきているが、そもそも気合の入り方とキャリアが違うのだ。
思わず身体が動いてしまう楽曲は、おなじみパンチの効いた超速変拍子民俗歌謡ハードジャズロック。
ワイルドにしてペーソスあふれるスーパーなロックであり、田舎臭くて超絶に聴こえない超絶演奏は、既に円熟の境地といえる。
もちろん哀愁のメロディカもあり。
そして、スタジオ録音のミックス・ダウンはなんとロイネ・ストルト。
タイトルは、「A piece of cake」らしいです。
各曲も鑑賞予定。
みなさま、途中で降りられない高速マラソンメリーゴーラウンドへ、ようこそ。
(AMCD 884)