YES

  イギリスのプログレッシヴ・ロック・グループ「YES」。 60 年代末の結成から常に新鮮なサウンドを生み出し、今なお現役で活動する驚異的な生命力を誇る。 緻密にして華麗、そして軽快にしてハードなアンサンブル指向のサウンドは、数多くのミュージシャンに影響を与えている。 2001 年オーケストラとの共演が話題の新譜「Magnification」発表。 2003 年 9 月ワールド・ツアーの一環で来日。

 The Yes Album

Jon Anderson Vocals, Percussion
Chris Squire Bass, Vocals
Steve Howe Electric & Acoustic Guitars, Vachalia, Vocals
Tony Kaye Piano, Organ, Moog
Bill Bruford Drums

  71 年発表の第三作「The Yes Album(サード・アルバム)」。 スティーヴ・ハウの加入(交代させられたピーター・バンクスは、脱退後に結成した FLASH を聴く限り、音楽的な方向性は決してずれていないので、ちょっとかわいそう)をきっかけに、オリジナリティあふれるアンサンブルが完成に近づいた作品である。 前作までのカヴァー曲は姿を消し、今なおライヴで頻繁に取り上げられる、エネルギッシュかつきちんとした構築美をもつオリジナルの名曲揃い。 コーラス・ワークや器楽テクニックもぐんと向上し、「カッコいいロック」としての YES サウンドが充実している。 「Yours Is No Disgrace」や組曲「Starship Trooper」など、かなり長い曲でも、中だるみすることなく、メリハリある構成と巧みなアンサンブルそしてフィーチュア・プレイの切れ味で、躍動感いっぱいのノリを感じさせてくれる。 「Clap」はハウによるアコースティック・ギター・ソロ。小品ながらもチェット・アトキンズ風の超絶技巧をリズミカルに放つ名品である。 そして「Your Move」、「All Good People」で見せるパストラルな雰囲気も、YES サウンドを特徴つける一面である。 すべての曲が、後々までライヴの定番となってゆく大傑作。


  さまざまなグループの音楽を研究した成果として、YES 流のロックが完成したアルバム。 アンサンブルとソロのバランスやヴォーカルと演奏の絡み、コーラス・ワークなどテクニカルにも音楽的にも申し分のないハイ・クオリティのサウンドだ。 スティーヴ・ハウの加入は、ギターのプレイの幅を広げ、演奏のヴァリエーションに大きく貢献していると思う。 構築性と勢いのよさが理想的な均衡を見せており、一音で YES と分かるフレッシュなサウンドをつくり上げているといえるだろう。

(20P2-2112)

 Fragile

 
Jon Anderson Vocals
Bill Bruford Drums, Percussion
Steve Howe Electric & Acoustic Guitars, Vocals
Chris Squire Bass, Vocals
Rick Wakeman Organ, Grand Piano, Electric Piano, Harpsichord, Mellotron, Synthesizer

  72 年発表の「Fragile(こわれもの)」。 各メンバーのソロをフィーチュアした小品をはさみ、緻密でダイナミックな四つの大作が並ぶ傑作アルバム。 STRAWBS から加入したリック・ウェイクマンのツボを押さえたキーボード・プレイと、ハウの破天荒なギターに加えて、ビル・ブルフォードのドラミングが冴えわたっている。 オープニングの「Round About」は、アコースティック・ギターによるクラシカルなイントロダクションから一気に躍動感あるアンサンブルになだれ込み、ハイ・テンションの演奏が繰り広げられる名作。 カッコいいソロとドライヴ感あふれる変拍子がじつに決まっている。 緊迫した一糸乱れぬアンサンブルが、イントロダクションと同じギターでまるで宝石箱を閉じるように幕を引くエンディングは、もう息を呑むばかり。 まるで、YES からの音の贈り物のようなナンバーだ。 そして、なかなかライヴ・テイクにお目にかかれない(FULL CIRLCE ツアーの目玉でした)「South Side Of The Sky」は、硬質なドラミングとギターの絡みがスリリングなナンバー。 ヘヴィなリフとギターの奔放なオブリガートがカッコいい。 さらに「Heart Of Sunrise」は、トレモロ風のヘヴィなリフがドライヴするメイン・パートとリリカルなヴォーカル・パートを軸にさまざまなシーンが繰り広げられるシンフォニック・ロック大作。 ポリリズミックな緊張感とパストラルな和やかさが、くっきりと対比し「Close To The Edge」以降のドラマチックな大作主義の端緒となる作品とも考えられる。


  前作で完成の域に達したアンサンブルを、さらにテクニカルにソフィスティケートする方向へと推し進めた大傑作。 きら星の如くならぶ大作を小品でつなぎあわせた、流れるようなアルバム構成も実にみごと。 文字通り、ガラス細工のようなきらめきと緊張感そしてダイナミックさを併せ持つ作品である。 サウンドとともに SF 的な感覚を表現したジャケット・ワークもすばらしい。 この作品で感じられる一種独特の緊張感・閉塞感は、明らかにいわゆるロックのアルバムとは一線画している。
あまりに語られたせいか、この辺りの作品は聴いていないのに聴いたつもりになっている人も多いのでは。仕事(家事、子作り他)の手を休めて居住まい正してちゃんと聴いてみましょう。

(20P2-2052)


 Close To The Edge

Jon Anderson Vocals
Bill Bruford Percussion
Steve Howe Guitars, Vocals
Chris Squire Bass, Vocals
Rick Wakeman Keyboards

  72 年発表の「Close To The Edge(危機)」。 すべての楽器が噴出する個性的なフレーズが、ガラスの織物ようにきらめきながら、どこまでも飛翔してゆくようなイメージを与える、空前絶後の大傑作。 爆発しっぱなしのハウのギターと、頭のネジがぶっ飛びそうなウェイクマンのオルガンが目立つが、空隙を縫うように浮上するゴンゴンのベースと特徴あるシンバルから成るリズム・セクションのプレイもすさまじい。 途方もない緊迫感と完璧な構築美を見せるタイトル・チューン「Close To The Edge」はいうに及ばず、「And You And I」のようなリリカルなナンバーまでもが、あらゆるエネルギーを注ぎ込まれて、破裂寸前のようなハイ・テンションをキープしているのだ。 唖然である。 さらに「Siberian Khatru」は、ギターを中心に牧歌的なテーマを、アヴァンギャルドといっていいほどの大胆さと奔放さで振り回すダイナミックな YES 流ハードロック。 こういうアルバムは、奇跡みたいなもので、意図的に作ろうったってそうできるもんじゃない。 したがって、ロジャー・ディーンによるシンプルなグリーンのジャケット・デザインが、静かなる暴走をクールに表現したように見えてしょうがないのだ。 また、当時は人気グループは最低でも年に一枚はアルバムが出たのだが(PINK FLOYD は別格扱いになっていた)、72 年に関しては「Fragile」、「Close To The Edge」の二作が発表され、まさに YES は絶頂期にあった。 ファン至福の 1 年である。


  遂にテクニカルなアンサンブルが深遠なコンセプトも得て一種の極限にまで到達してしまったアルバム。 緻密に構成された大作を、すばらしく大胆な演奏でぶっ飛ばす様子は、まさに唯一無比。 特にギターとドラムは、想像を絶するプレイを繰り広げている。 全編を緊迫感が貫き、幻想的かつ荘厳な美とメカニカルな荒々しさが渾然となり、そそり立つような音楽を構築している。 間違いなくプログレッシヴ・ロックの最高峰の一つ。 細部のアレンジはいろいろとあるかもしれないし、ギター・インプロヴィゼーションなんてかなりきわどかったりするんだが、全く気にならないどころか、かくあるべきのような気持ちにさせられてしまう問答無用の説得力をもっている。 プログレッシヴ・ロックのアルバムから一枚選べといわれたら、最終的にはこのアルバムと KING CRIMSON の一作目を並べてうんうん悩むに違いない。

(7567-82666-2)

 Tales From Topographic Oceans

 
Jon Anderson 
Steve Howe 
Chris Squire 
Rick Wakeman 
Alan White 

  アナログ LP 三枚組という驚異的ヴォリュームのライヴ・アルバム「Yes Songs」に続くスタジオ・アルバムは、73 年発表の LP 二枚組の大作「Tales From Topographic Oceans(海洋地形学の物語)」。 アンダーソンが宗教書からヒントを得た瞑想的な主題を軸に、約 20 分の作品が 4 曲というアルバム構成で、神秘的なシンフォニック・ロックが繰り広げられる。 サウンド的には、「Close To The Edge」の拡大版ということになりそうだ。 ドラムスにアラン・ホワイトを迎えた初のスタジオ作であると同時に、リック・ウェイクマン脱退の引き金となった作品でもある。 壮大なイメージのわりには、まったり感の漂う作品です。

  アンダーソンのヴォーカルとコーラス・ワークを中心に繰り広げられる「The Revealing Science Of God Dance Of The Dawn」(20:27)は、「The Yes Album」で見せたキャッチーにしてメロディアスなロックと、「Close To The Edge」で培われたストーリー・テリング、瞑想性がブレンドした作品。 モノローグ風の冒頭からはもっと破天荒で幻想的な展開を予想したが、意外にインテンポでストレートに、おだやかに流れてゆく。 飛びぬけたテンションは感じられない一方、メロディアスで聴きやすい。 メロトロン、ストリングス/ムーグ・シンセサイザー、ピアノが次々現れて重なり合うリッチなキーボード・ワークがみごと。
  「The Remembering High The Memory」(20:38)は、オープニングからヴォーカルのリードで牧歌調に進み、キーボードが厳粛な深みのある空間を演出する。 リリカルな演奏とともに、歌詞もロマンを感じさせるものだ。 中間部にリズミカルなトラッド・フォーク風の展開(アンダーソンに中世のトルバドールのイメージがだぶる)をはさみ、遂には、ベースが唸りを上げるドライヴ感たっぷりの演奏へとなだれ込む。 そしてその果てに、再びキーボードによる夢幻の空間が広がり、壮大なシンフォニーを結ぶドラマチックで感動的な作品だ。 エンディングは、まさに YES らしさ満載の演奏。

  「The Ancient Giants Under the Sun」(18:34)は、民族楽器風のパーカッションと、スライド・ギターによるエキゾチックな古代の歌に導かれるテクニカルなアンサンブルから幕を開ける。 メイン・ヴォーカル・パートは、ヘヴィなリズムとブレイクを用いた緊張感と、メロトロンと思われるストリングス系のキーボード、ギターによる包み込むような感触が交錯した、パーカッシヴにしてアヴァンギャルドなものだ。 明確なリード・メロディ不在のポリリズミックなアンサンブルや、ギター主導のフリー・フォームに近い演奏は新境地だろう。 終盤クラシカルなアコースティック・ギターのカデンツァをはさみ、メロディアスなヴォーカル・パートがようやく現れる。 最後はリリカルなアンサンブルから、スライド・ギターによる牧歌的な演奏とパーカッシヴな演奏を回顧しつつ終わってゆく。 全般にギターがフィーチュアされた作品であり、前半のインストゥルメンタルの展開は今までの YES にはなかった革新的なアンサンブルである。 ところどころでギターが「Close To The Edge」のフレーズを弾くのは、手癖かくすぐりか。

  「Ritual Nous Sommes Du Soleil」(21:35)は、いかにも YES 風のテーマ・リフがドライヴ感を生むスクワイア色濃い作品だ。 ヴォーカル・パートもストレートに力強く、きらめく尾を見せながら夜空を駆けてゆく彗星のようなイメージである。 12 分あたりから始まるインスト・パートでは、リズム・セクションのリードで強烈にリフをアピールしている。 メロトロンが響く中をギターのリードで疾走するアンサンブルは、ただただカッコいい。 そして意外なパーカッション・ソロ。 ここでも、民族的なビートを強調したドラムが、キーボードとオーヴァー・ラップしてミスティカルかつ未来的なイメージのサウンドをつくり上げている。 ギターの歌に導かれて懐かしさを憶えるヴォーカルへと静かに回帰し、エネルギッシュな演奏が静かに去ってゆく。 リズム・セクションがフィーチュアされ、リフの切れ味もすばらしい。 そしていかにも YES らしい、緊迫感のあるアンサンブルができあがっている。 一番エネルギッシュな作品ではないだろうか。


  重厚なテーマを軸に、さまざまなプレイをフィーチュアした濃厚な力作が並ぶアルバム。 コンセプトを明確に語るヴォーカルを中心にしており、テーマと演奏の必然的な結びつきがなされた構築性のある内容である。 火花散るようなハイ・テンションのアドリヴ的瞬間の連続という方向ではなく、決められたシナリオに則って、分厚く色を積み重ねてゆく丹念な作業の結実というイメージである。 各プレイヤーの色もしっかり出ている。 散りばめられた YES 的なイディオムも、守りに入っているというよりは、分かりやすさ・親しみやすさを優先しているとるべきだろう。 後半、キーボードがやや手薄に感じられることや、あまりに個性的であったドラムがパワフルなロック・ドラムになったことなど、サウンドに若干の変化はあるのだが、トータルでは凄まじい充実度をもつ作品といえる。 さまざまな音楽的なアイデアを詰め込んだわりに、しっかり聴きやすさも維持されているところが、センスでありベテランの風格である。 スティーヴ・ハウによる 3 曲目の新境地が興味深い。 また「Ritual」のエンディングのドラムの演奏には、前任者への相当な意識を感じる。

(AMCY-4032-3)

 Relayer

 
Steve Howe 
Alan White 
Chris Squire 
Jon Anderson 
Patrick Moratz 

  74 年発表の「Relayer(リレイヤー)」。 ウェイクマンに代わって、REFUGEE よりパトリック・モラーツを迎えた作品。 「Close To The Edge」と同様な曲構成によって、続編的な雰囲気を持ちながらも、サウンドはギター中心により幻想的でワイルドな方向へ移行した。 「The Gate Of Derilium(錯乱の扉)」は、激しいインストゥルメンタルとリリカルなエンディングが印象的な 20 分にわたる大作。 続く「Sound Chaser」は、モラーツのエレピとホワイトのドラムによるジャジーで強烈なインタープレイから始まって、ベースやギターも暴れまくるアグレッシヴなナンバー。 ハウのパフォーマンスが堪能できる力作だが、エンディングのクラヴィネットのソロなどジャズ色が濃いという点では異色かもしれない。 何にせよ爆発的なパワーを感じさせる作品だ。 「To Be Over」は、一転リリカルなオープニングからエキゾチックなアンサンブルが静かに奏でられ、ソフトなヴォーカルが歌いだすフォーク・ロック風のナンバー。 中間部では再びギターが独走し、烈しいソロを繰り広げるが、次第に厚みのある美しいアンサンブルへと変化してゆく。 そして最終的には、YES らしい空想世界の山河を思わせる幻想的なアンサンブルにまとまってゆく。


  オープニングの大作の展開、ストーリーはさすがだが、キーボード・サウンドに若干垢抜けなさを感じてしまうのは酷だろうか。 ジャズ色が強い点も今までは露にならなかった特徴なので、モラーツの加入は、かなりサウンド・カラーに変化をもたらしたといっていいだろう。 ハウがくびきを解かれたように暴走気味に弾きまくるのも面白い。 このギター・プレイは、いわゆる YES フォロワーに大いに影響を与えているように思える。 モラーツの個性を活かしつつ YES としてのサウンドを保持しようとした結果の異色作といえるかもしれない。

(19135-2)

 Going For The One

 
Jon Anderson Vocals, Harp
Steve Howe Steel & Electric & Acoustic Guitar, Vachalia, Vocals
Chris Squire Bass, Vocals
Rick Wakeman Piano, Church Organ, Polymoog, Electric Keyboards
Alan White Drums, Percussion

  77 年発表の「Going For The One(究極)」。 リック・ウェイクマンの復帰とともに、即興性やジャズ色の強かった前作から、シンフォニックな重厚さとポップ・フィーリングのあるサウンドへとゆり戻した傑作。 個人的には、前作よりも YES らしさが感じられ、親しみがもてる。 ハードで直線的なナンバー、幻想的な大作、リリカルなヴォーカル・ナンバーらから構成されるバランスの取れた内容は、ディーンからヒプノシスへと変わったジャケットとともに、YES のグループとしての再出発とも考えられる。 しかしながら、その作風は、以前の作品に見られた複雑な構築性やそれに伴う緊張感からは解き放たれ、より明快で余裕のあるものになったようだ。
   タイトル・ナンバー「Going For The One(究極)」は、ハウのスライド・ギターとアンダーソンのヴォーカルの交歓が白熱しつつもファンキーさも感じさせる YES 流ハードロック・ナンバー。 エネルギッシュなヴォーカルを巡ってギターとシンセサイザーが華やかな演奏を繰り広げ、間奏ではスライド・ギターとピアノがファンキーに踊る。 ハードエッジだが、ファンタジックな空気を守り続けているところが、非常に YES らしい。 シンプルなリズムが、かつてほど息づまるようなテンションを感じさせないところが、時代といえば時代である。 「90125」の片鱗というか、現在の YES のサウンドの基本は、ここにあるような気がする。 そして目一杯のロマンチシズムと静けさの中に、大作の構築美の片鱗を見せる「Turn Of The Century(世紀の曲り角)」。 かつての大作の「静」の部分のみを抽出したような、もしくは「Round About」のたおやかな変奏曲というイメージの作品だ。終盤へ向け、打ち寄せる波がいつしか大きな潮流となってゆくような盛り上がりに胸が熱くなる。 対して「Parallels(パラレルは宝)」は、再びダイナミックな演奏を見せつけるハードなシンフォニック・チューン。 チャーチ・オルガンによる荘厳なオープニングから、怒涛のリフを刻むベース、疾走するギターそして天まで突き抜けるヴォーカル・コーラスが一体となって、すばらしいプレイを繰り広げる。 ストレートな高揚感が、YES の「動」の部分を見事に表現している。 「Wonderous Stories(不思議なお話を)」は、アンダーソンのヴォーカルをフィーチュアした瑞々しいナンバー。 「Time And A Word」を思い出させる佳曲である。 そして、畢生の大作「Awaken(悟りの境地)」は、壮大なドラマをもった起死回生の一発。 幻想性、物語性、スリリングな演奏、どれを取ってもプログレッシヴ・ロックの代表作といって間違いない。 海洋地形学をコンパクトにまとめ密度を上げ、前作同様の奔放なプレイをつぎ込むも、どこまでも明快である。 黄金期のメンバーが一体感のある演奏を見せる最後の作品、といってもいいかもしれない。 チャーチ・オルガンの乱れ弾きと深く広がるエコーが印象的だ。


  ハードにして構築美を備えたアンサンブルは、みごとなまでに健在である。 YES 復活といって間違いない。 同時に、シンプルなリズム処理や曲構成の直線性により、ストレートな娯楽性をアピールしようとしたグループの意図が見え隠れする。 もちろんそれでも、各曲とも性格の明快な高品位のポップ・ミュージックであり、最後の大作のように、自らの技を知り尽くした手練の繰り出す魔術的なサウンド・コンクレーションは充分に魅力的だ。 「Awaken」は「Close To The Edge」に匹敵する傑作であり、すでに翳りが見えてきたプログレッシヴ・ロックの最後の輝きの一つといっていいだろう。(他の一つはもちろん U.K. である) 結論として本作は、ポップ化の波をうまく操りながら自らのアイデンティティを失わないプロフェッショナル達の渾身の作品である、といえるだろう。 スイス録音。

(82670-2)

 Drama

 
Geoff Downes Keyboards, Vocoder
Trevor Horn Vocals, Bass on 5
Steve Howe Guitars, Vocals
Chris Squire Bass, Vocals, Piano on 5
Alan White Percussion, Vocals

  アンダーソンとウェイクマンというキーパーソンが脱退、存続の危機に瀕した YES。 しかし、BUGGLES からトレヴァー・ホーンとジェフ・ダウンズを迎え、80 年に「Drama」を発表。 アルバムの評価はかなり賛否が分かれるようだが、クリス・スクワイアがソング・ライティングに力を注ぎ、ニューウェーヴらしくスリムに削ぎ落としたクールネスとともに「The Yes Album」を思わせるロックらしいダイナミズムが発揮されている。 時機をとらえた好作品ではないだろうか。 名プロデューサーのトレヴァー・ホーンが、がんばってジョン・アンダーソン風に歌ってくれたという努力にも感謝しなくてはならない。 当時僕は、ほんのりテクノの香りも漂う新生 YES がこのまま 80 年代を突っ走っても OK だな、と思いました。

  「Machine Messiah」(10:27)ミステリアスにしてシンフォニック、なおかつメタリックでシンプルなビートのテクノという、なかなかあり得ない作品。ハウのギターが活躍。 すべてを見透かす単眼の機械神という強烈なイメージが浮かんでくる音である。
  
  「White Car」(1:21)YMO に端を発した中華風味もこの頃の流行でした。
  
  「Does It Really Happen ?」(6:34) クールな余裕を見せるテクニカル・ニューウェーヴ・チューン。 YES のリズム・セクションのカッコよさを十二分に発揮した作品でもある。 U.K. と共通する、この時代の音だ。 キーボードをフィーチュアしているが意外にも、シンセサイザーと同じくらいオルガンが使われている。 ギターは得意のスライド。
  
  「Into The Lens」(8:31) うつむきがちのオタク少年のような内省的なヴォーカル・チューン。 元々 BUGGLES 用の作品だったらしい。メランコリックな表情にもかかわらず、「I Am A Camera...」というフレーズから漂うテクノ・フェティッシュでキッチュな香りがいかにもこの時代らしい。 後半のヴォーカルとギターのからみ、ダイナミックなリズムは完全に YES のもの。
  
  「Run Through The Light」(4:39)フレットレス・ベースのプレイはホーンによる。ミスター YES からベースを奪うとは、なかなか大胆です。
  
  「Tempus Fugit」(5:14)痛快極まる疾走チューン。名曲です。

(16019-2)



  「Drama」発表後、同年に再びライヴ・アルバム「Yes Shows」を発表。 その後スティーヴ・ハウ、ジェフ・ダウンズも脱退し、アンダーソンが復帰、さらにスクワイアが新たなギタリストを獲得、キーボードにもトニー・ケイをサード・アルバム以来復帰させ、「90125」、「Big Generator」でみごとに 80 年代ハードポップへの路線変更を成功させた。 その後アンダーソンが再脱退、事実上の解散状態になるが、90 年の「Anderson, Wakeman, Bruford and Howe」を契機にして 91 年、8 人体制で再結成、「Union」を発表した。 現在は黄金期のメンバーで YES 流プログレッシヴ・ロックの王道をさらに前進中。

 The Ladder

 
Jon Anderson Lead Vocals
Steve Howe Lead & Acoustic guitars, Steel, Mandolin, Vocals
Billy Sherwood Guitars, Vocals
Chris Squire Bass, Vocals
Alan White Drums, Percussion, Vocals
Igor Khoroshev Keyboards, Vocals

  99 年発表の「The Ladder」はスタジオ・アルバムとしては「Open Your Eyes」から約 2 年ぶりの作品。 前作から参加のキーボーディスト、イゴール・ホロシェフが正規メンバーに加えられている。 YES の新譜を買うのは「Drama」以来、18 年ぶりだ。
  ゴージャスで切れ味抜群の演奏をしたがえて、ジョン・アンダーソンが縦横無尽に歌いまくる世界音楽紀行。 エキゾチックな雰囲気を盛り込みながらも、YES 流ロックは驚くべきことに今だ健在だ。 独特のクリアーにして広がりのあるサウンドに胸が躍る。 ホロシェフのキーボードはウェイクマンをたっぷり意識しており、ハウのアコースティック・ギターさばきとともにオールド・ファンを唸らせる。 現代的なサウンドの中に YES の音楽をとけ込ませ、新たなポップ・テイストを生み出したブルース・フェアバーンの手腕に敬服だ。 新たなエネルギーを得た、爽快で明朗な YES サウンドに思わず微笑がこぼれ、気がつけば拍手喝さいである。 ただし、ロックのグルーヴが必ずしもジャスト・ビートには拠らないことを体現していたグループであるだけに、リズムが表情を失って単調になるところに若干不満があるのだが、ストレートにして色彩感のあるメロディ・ラインと品のある小気味よさが、そういった欠点を忘れさせてくれる。 正直にいって、ハウのギター、スクワイアのベース(音はチョットばかり今風になっているようだ)など、もはや記号と化した個性的なプレイが聴けるだけでもうれしい。 「Going For The One」やアンダーソンのソロ作品を思い出すところもある。 なんだかんだいっても、これは誰が聴いてもいいんじゃないかなあ。 なんせ分かりやすいし、やあ YES、お帰りって感じです。 本作は、製作中に急逝したプロデューサー、ブルース・フェアバーンに捧げられている。

  「Homeworld(The Ladder)」(9:32)アンダーソンの力いっぱいの歌唱が躍動的にリードし、YES らしいしかけのある演奏が冴える傑作。 シンプルなヴァースなだけに、サビのメロディのふわりと落ちつく感じがいい。 中盤のハモンド・オルガンは、もう少しワイルドでもよかったかも。 後半のシンセサイザーは音のイージーさがウェイクマンそっくり。 アコースティック・ギター、ピアノからおだやかな歌が始まるエピローグも泣かせる。

  「It Must Be A Good Day(The River)」(4:53)オリエンタルな音使いがおもしろい歌もの。 スクワイアのハーモニー、ハウ独特のオブリガート、ヴァイオリン奏法など、おなじみのプレイが散りばめられている。 こういうのを 84 年くらいにやっていれば、紆余曲折はなかったのかもしれない。 シンプルなリズムがあまり YES らしくはないのだが、エキゾチックなテイストをもつポップ・ミュージックとしてはなかなかのもの。

  「Lightning Strikes」(4:35)YES 流のすてきなラテン・ポップス。

  「Can I?」(1:31)「We Have Heaven」の翻案。

  「Face To Face」(5:01) キャッチーにして勢いたっぷりの傑作。 自信にあふれるヴォーカル・ハーモニーを前面に、全パートが弾けるような溌剌たる演奏を見せる。 とにかくカッコいいです。

  「If Only You Knew」(5:43)ハウのギターを中心に管弦楽も交えて YES らしい荘厳な音を散りばめつつも、実はかなりコマーシャルな方向への野心を感じさせるバラード・チューン。 やろうと思えばこういう曲だってできるんだよ、といっているようです。余裕というか無敵というか。

  「To Be Alive(Hep Yadda)」(5:07)やや東洋風のニューエイジ・ロック。 コーラスは ENYA のようだが、ここには力強いリズムがある。 ハウのスライド・ギターも健在。

  「Finally」(6:01)テンションの高いファンタジック・ロックンロール。 後半の透明感あふれるキーボード・オーケストレーションと、ギターのプレイに酔いしれる。 こういう曲に違和感を感じないか感じるかで「Lonely Heart」以降のファンかどうかが分かる(かもしれない)。 アメリカのロックバンド風のオバカな感じは、あまり似合わないと思うのだが、後半、雄大なランドスケープが一気に広がるような展開や音使いの面白さはさすがである。

  「The Messenger」(5:13)ブルージーでアーシーな、どちらかといえばアメリカのオンエア向きの作風。 80 年代中盤の QUEEN 辺りと通じる、「米国にて売れる秘訣」を体現したような作品である。 ただし、ややステレオタイプなところがあるというだけで、音作りやなめらかな展開は前曲と同じく「さすが」としかいいようがない。 浅いようで深いのである。 YESSPOCK'S BEARD の真似をするとこうなりそうだ。

  「New Language」(9:19)ワクワクするようなオルガンとギターのせめぎあいがカッコいいオープニング。 爆発的なオルガン・ソロ、ヘヴィなリフ、おまけにメロトロンも一瞬聴こえる。 メイン・パート以降は、80 年代風のメロディ・ライン、サウンドによる分かりやすい展開。 終盤、ギターのリードで走る演奏がカッコいい。

  「Nine Voices(Longwalker)」(3:21)思索的にしてやさしさにあふれるエンディング。

(63985-78046-2)



  アルバムとしてのベストは、やはり 71 年発表の「The Yes Album」、72 年発表の「Fragile(こわれもの)」、73 年発表の「Close To The Edge(危機)」になるだろう。 大曲指向から一転コンパクトな曲でロックのパワーを取り戻した 77 年発表の「Going For The One(究極)」も捨て難い。

  YES の大きな特徴である、複雑な楽曲にもかかわらず聴きやすいというところは、アレンジに優れた工夫が凝らされている証拠である。 またそのアレンジにしても演奏にしても、研究と研鑚のたまものだろう。 おそらくたいていのバンドのコピーはできるんじゃないだろうか。 BBC ライヴを聴くと、いろいろな曲をカバーして見事に YES サウンドに仕立てている。 そして多くの成功したバンドの中でも、とりわけ各メンバーの音が個性的。 テナーというより女声に近い讃美歌系美声ハイトーン・ヴォーカルを筆頭に、豪快なピッキングと硬質なナチュラル・トーンが特徴的なテクニカル・ベース、ジャズ/クラシック/カントリーなどを自己流に束ねた掟破りのプレイが信条のギター、クラシックを基礎にした超絶テクニックと海千山千的な見せ場のうまいキーボード、そして天才ジャズ・ドラマーからなるラインアップは今見ても魅力的である。 音楽ルーツ的には THE BEATLES は当然として BIRDSCSN&YVANILLA FUDGE のようなアメリカのグループの影響も大きい。
  メンバー皆がテクニシャンだが、とりわけスティーブ・ハウのギターが個性的。 普通のロック・ギターとは違った、リードともバッキングとも区別できない独特のプレイがいっぱいで面白い。 脱退した初代ギタリストのピーター・バンクスに音やスタイルが似ているのも不思議なところだ。

  とにかく、後進の連中(特にアメリカのバンドに多いようだ)の鏡に足りえる、いまだ現役を続ける元気なオジサン達である。 90 年代に入ってからのライヴ作品「Key To Ascention」を聴いても全然衰えはなく、現代風の音で昔の曲を悠々演奏している。 おまけに新録の曲もいい出来映えだ。 (後日ライヴ録音にスタジオでの編集を加えたという事実を知ってちょっとガックリしましたが) 「プログレって?」という方には、「まずここから」とお勧めしたいアーティストです。


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