X-LEGGED SALLY

  ベルギーのアヴァンギャルド・ロック・グループ「X-LEGGED SALLY」。 ピエール・ヴァーヴローセンとペーター・ヴァーメルシュらを中心に結成、90 年 Knitting Factory のライヴで注目を浴び、91 年アルバム・デビュー。 97 年解散。 作品は六枚。 絶叫型フリー・ジャズ、ファンク、ロックが合体したしなやかにして凶暴なサウンド。 パワーとスピードを備える近未来型ヘヴィ・ジャズロックの急先鋒だ。

 Slow Up

 
Danny Van Hoeck drums Bruno Deneuter bass
Pierre Vervloesem guitar, vocals Jean Luc Plouvier keyboards
Michel Mast bariton & tenor sax Eric Sleichim alto sax
Sally C.S. x-noise, twists Peter Vermeersch tenor sax, clarinet

  91 年発表の第一作「Slow Up」。 内容は、凶暴にしてスピード感あふれるフリー・ジャズロック。 ビッグ・バンド調のホーン・アンサンブルの押し出す強烈なユニゾンと過激に突出するソロ、メタリックなギター、さらにはハードロック風の切れ味をもつリズム・セクションが、スピーディなプレイの応酬を繰り広げる。 エネルギッシュかつ小気味いい疾走を基本に、レコメン風の反転/屈折やサディスティックな狂気やせせら笑うようなユーモアも散りばめられている。 ほぼ全曲インストゥルメンタル。

  1曲目「Ffwd」(5:35) サックス・アンサンブルを核に、けたたましいリフでたたみかけ、疾走するジャズロック・チューン。 金属的なギターには生音に近いニュアンスもあり、それに気がつくと全体にアコースティックなイメージになる。 しかしそれでも十分過激でデンジャラス。 切れ味鋭いベースと叩きまくるドラムの生む硬質なリズムがなんとも凄まじい。 オルタナティヴ風味もたっぷりの過激なジャズロックだ。

  2曲目「Zippo Raid」(4:19) シリアスなオープニングを経て、サックス・アンサンブルが中心になって走るジャズロック・チューン。 ピアノ、ドラム、ベースとそれぞれに壮絶なプレイを繰り広げつつ疾走し、中盤のサックスではかなりフリー・ジャズになる。 後半、ノイジーなギターとサックスが反応しあう展開は、攻撃的かつモダンなスリル満点。

  3曲目「Xls」(6:53) 走っては停まり発散しては収束するという、自立的な運動性を持つ不気味な生き物のようにエネルギッシュなアンサンブル。 ベースのスラップやサックスによるサスペンス映画風のテーマなど、カッコいいところはいろいろある。 しかし全体を通して感じられるのは、KING CRIMSONAREA が合体したような、パワフルでミステリアスな危うさである。 崩壊寸前の狂気を孕むハイ・エナジーの名曲。

  4曲目「Down At The Dinghy」(4:34) アルト、テナーのサックスとクラリネットによるアンサンブル。 ムーディなジャズ風のソロとリフの組み合せが、いつしかクラシカルな室内楽のイメージに近づく。 不気味な低音のリフが常に悪い予感を抱かせるため、緊張が解けず、前曲までですでにかなり消耗した耳を完璧に休めるには至らない。 それでも一息という感じではある。 ドラムレス。

  5曲目「Bacon & Eggs」(5:25) メタリックなギターと狂気のヴォーカルを前面に押し出した世紀末ハードロック。 キャプテン・ビーフハートを思わせるパンキッシュなヴォーカルとヘヴィなギターの応酬から、凶暴なギター・ソロを経て、終盤一気にスカパラ風のゴージャスなビッグバンドへ突っ込む。 ピアノの使い方も面白い。 わめき散らすヴォーカルの頭悪そうなイメージとは裏腹に、シャープで綿密な演奏が冴え渡る。 痛快。

  6曲目「34th Street」(4:59) サックスによるビッグバンド風のユニゾン・リフを軸に繰り広げられるジャズ。 シャープなリフとミドル・テンポの落ちついた演奏が意外。 いい曲です。

  7曲目「Blackhead Blue Blues」(5:08) 珍しくスローテンポのバラード調インストゥルメンタル。 初めはサックスとクラリネットの不気味なリフレインにどうなることかと心配したが、ギターやキーボードが穏やかにしっかりと歌っておりグルーヴィな作品にしている。 テナーとギターのバトルもあるが、今回はギターが一歩先んじた感じ。 まあ他の曲であんまり前面に出ないからね。

  8曲目「Lacto B.」(1:06) ストレス解消か。 大爆発 1 分間。 ぐわあああああああああああ。

  9曲目「Fuck & Coffee」(2:50) クラリネットをフィーチュアしたエロティックなムードの横溢するミドル・テンポのバラード。 メロディアスにしてモダン・ジャズ調のスリリングなクラリネットのテーマに、サックスとオルガンが寄り添い絡み合う。 後半は管楽器の提示したテーマを大胆にエフェクトしたギターが変奏する。 古典的、オーソドックスなジャズ・コンボをエレクトリックなギターとベースが揺らがせるイメージである。 最後はベースが激しく暴れる。

  10曲目「Turkish Bath」(5:21) 7 拍子による変態ジャズロック。 シャープな変拍子リフと自由に暴れまわるサックス群。 ベース、ドラムが弾むようなビートをキープし、ギターのコード・カッティングが、ファンキーではあるが比較的ストレートなノリを生み出している。 アルト・サックスとクラリネットのリードするテーマから、サックスやクラリネットのソロを経て、終盤はダイナミックで肉感的な管楽器による力強い演奏が続く。

  11曲目「Little Hearts」(4:24) 再び現れたパンク調のヴォーカルを中心とした快速オルタナティヴ・ロック。 小刻みなサックスのリフに支えられたヴォーカルとナチュラルな金属音が特徴的な凶暴ギター、ベース、ドラムスが快調に走り続ける。 KING CRIMSON のような荒々しさをもつギターと種馬のように雄々しくブロウするサックス。 終盤はクシャクシャにエフェクトされたギターとサックス、オルガンが重なり合うながらまるでもつれつように突っ走る。 扇情的で挑戦的なナンバーである。

  12曲目「Liquid」(4:06) 重苦しいティンパニが轟き、ギターとサックスがおどろおどろしくささやくゴシック風味あふれる暗黒ジャズ。 巨大な古代機械が蒸気を噴き出しながら恐ろしい音を立てて動き出すイメージである。 重厚な儀式を思わせるビートの上で、管楽器を組み合わせた祈りのようなテーマが流れる。 オルガンやスライド・ギターそしてサックスもおり触れては浮上し、何か一言騙るのだが再び沈み込んでゆく。 陰鬱。

  13曲目「Picocchio」(5:05) 快調なブギー風のジャズ・ビートにのって繰り広げられるビッグバンド演奏。 モードまたは不協和音のせいで傾いだようなイメージのあるアンサンブルが、次第にシャープに切れ味を増し、クールな演奏へと進化する。 3 人が連続して現れるサックス・ソロは本格ジャズを思わせるみごとなもの。 中盤のフリー・ミュージック空間はさほど効果を感じないが、変化をつけるという程度の意図だろう。 しかしバラけてしまった演奏が、ドラムのピック・アップで一気に復活するカッコよさは格別だ。 最初期のジャズロックという見方もできるだろう。

  14曲目「Memphis」(4:49) ソロ回しの充実したファンキーでパワフルなビッグバンド・ジャズロック。 再びスカパラを思わせるゴージャスな演奏である。 アルト、ギター(ソロも冴えているがバッキングがまたカッコいい)、テナーのソロが続き、その合い間にインタープレイやピアノのアクセントが放り込まれている。 本作ではかなりまともでカッコいい部類のジャズロックに入る。

  15曲目「Ongenaam」(1:54) サックス・アンサンブルによるバロック対位法的な現代音楽小品。 ミステリアスで宙ぶらりんな後味の悪さがある。


  聴いたことのない種類の音楽である。 形容に困るが、敢えていうなればハードロックのグルーヴを基本にフリー・ジャズが駆け巡り、ヘヴィ・メタルになったりモダン・ジャズへと逆転したりと変容を重ねつつ不気味に蠢き続ける音楽である。 ギターとリズム・セクションに象徴されるメタリックで鋭角的・メカニカルなものと、サックス・アンサンブルに象徴されるジャジーな人間臭さが一つになったサウンドといってもいいだろう。
  フリー・ジャズの混沌をメ一杯持ったまま疾走するため、悪酔いすることうけあいの疾走型ハイパー・ジャズロック。 このサディスティックで邪気たっぷりの音楽を聴いていると、ユーモアと深刻さが表裏一体であることを改めて感じる。 落ちつきのないミドル・テンポのナンバーに妙にアトラクティヴなメロディが浮き上がる不気味さ。 そして変拍子こそさほどではないものの、急停止と全力疾走を一瞬で切りかえる激しいテンポの変化をニヤニヤしながら何気なくこなしてしまうセンス・テクニック。 開いた口がふさがらない。 さらに恐るべきは本当の不気味さは疾走する曲よりもミドル・テンポの曲やバラードの方にあるのだ。 怒涛の 15 曲はモウ死にそう。

(SUB ROSA SUB CD024-46)

 Killed By Charity

 
Danny Van Hoeck drums Paul Belgrado bass
Pierre Vervloesem guitar, vocals, shaker Jean Luc Plouvier keyboards
Michel Mast saxes Bart Maris trumpet
Peter Vermeersch clarinet, vocals

  93 年発表の第二作「Killed By Charity」 第一作同様ジャズをコアにしながらも、勢い余ってさらにとんでもない方向へと弾け飛んでいる。 テクニカルにして素っ頓狂、切れ味とコワレっぷりはたいしたものである。 トランペットの加入とサックスの減少という管楽器編成の変化のせいか、ビッグ・バンド的なニュアンスよりも、即興/フリー的なエネルギッシュでスピーディな面が強調されている。 ユーモラスで危うくてカッコいいのです。 昔のヤンキーみたいな感じです。

  1曲目「Eddies」(1:26) 「コッケコッコー」で幕を開ける凶暴にしてスピーディなジャズロック。 デンジャラスなギター・リフと舌足らずな管楽器セクションがたたみかけ、蹴っつまづきながらグルグル渦を巻くようなオープニング。 倍速村祭りのような強烈なアクセントをもつリズムで突っ走って、噛みついてはぱっと退く。 ブレイクでは、奇妙なホイッスルとブリキのガムをくちゃくちゃ噛んでいるようなベース・スラップが怪しくうろつく。 ストリート系のヤクザなドラムスがカッコいい。 一体感ある演奏だ。

  2曲目「Dum Dum」(3:34) キナ臭いベース・リフ、ノイズが突き刺さり、再びドラムスが乾いたリズムをフィルもたっぷりに繰り出す。 管楽器セクションの変拍子リフはオルガンにも引き継がれる。 パワフル全体演奏でテーマ・リフを繰り返し、中盤はクロマティックな超絶ギター・ソロ。 続いてトランペット・ソロ。 バッキングは徹頭徹尾落ちつかない。 全員が息せき切って突っ走る。 最後はテーマの全体演奏。 1 曲目と 2 曲目の間に切れ目はない。 ひょうきんでカッコいいオープニング・チューンだ。

  3曲目「Still Life With Ray」(3:38) フィードバックのようなサックスの金切り声で幕を開け、一気に不良っぽいリズムが飛び込む。 ヒョロヒョロなヴォーカルは、肺病を病んだエイドリアン・ブリュー。 ブラスがたたみかけそうなところだが、まずはオルガンに危ないオブリガートをゆずり、管楽器は意外やメロディアスに迫る。 ガンガン突っ込むドラムス、そしてろれつの回らないトランペット、キーボードがむやみに元気だ。 なめらかなブラス、つぶやきヴォイス。 空気の抜ける音のようなキーボード。 オルガン・ソロをヘヴィなギターが支え、最後もなめらかな管楽器セクションで決める。 スカパラや渋さを連想させるパワー・チューン。 オルガンをフィーチュアする。

  4曲目「Spix & Chaco」(4:19) キャッチーでやや東洋的、チンドン屋的なお下品ジャズ。 饒舌にしてなめらかな語り口のサックス、クラリネットが、ややお下劣ながらも、丹念にリードする。 ユーモラスでまとまりのある演奏だ。 後半はナチュラル・トーン・ギターのソロと管楽器セクションのやり取り。 日本のライヴ・ハウスで演奏されると似合いそうである。 なんというモードなのでしょう。

  5曲目「The Shah Of Blah」。 テンポはぐっと落ちるがひょうきんなギターとユーモラスなブラス、シンセサイザーが舌足らずなフレーズを置いてゆく。 ユニゾンも民族っぽいというか歌謡曲風というか。 アドリヴ風に暴れまわる不思議な音はシンセサイザーなんだろうか。 ギター、ブラスの刻む舌足らずなリフに乗って透明なシンセサイザーが舞いあがる。

  6曲目「Bleedproof」。 クラリネットのすべるようなフレーズが核になってはいるもの、ブラスの気まぐれなアンサンブルが走ったり止まったり予断を許さない。 一旦一塊と走り出すと恐るべき圧力で迫ってくる。 ブラスの響きはやはり強烈だ。 つっかかりながら次第に走り出すアンサンブル。 本当に骨折しそうなブレイクが凄いなと思っているうちに、SAMLA 風の妙な声やら音やら何かをぶち壊すような決めやらが繰り返される。 そして再び走り出す。 もうやってられん。 絶叫するクラリネットとメタリックなギターの轟音。 ピアノとクラリネットのよれよれ超絶デュオからフリージャズ風に騒然とするが最後はユニゾン・リフレインで決まり。 この曲がピークの一つでしょうか。

  7曲目「Break Too」。 ハードロック風のタイトなリズムとユニゾン・ブラスの挑発に乗ってシンセサイザーが唸りクレイジーなヴォーカルが歌い出す。 ブラスの突っ込み。 声色で迫るヴォーカル。 ビッグ・バンド風のブラス。 ヴォーカルは変だがやはりブラスの押し出す強烈なメロディがいかにもジャズっぽいナンバー。 ギターはメタル調ロバート・フリップ。 エンディングの荒々しく吹き荒れるブラスがカッコいい。

  8曲目「Did You Get Your Milk, Stewart?」。 ベース・リフとシンバル・ワークが意外な珍しく落着いたジャズ。 ブラシングにクラリネットとピアノ、サックスとソロが続く。 こういう正統的なナンバーでもちゃんとスリリングなところが流石である。 疾走遊爆アンサンブルが続く中一服の清涼剤。 これ聴いて残りもがんばらにゃ。

  9曲目「Mysterious Angelic Voices」。 メタリックなディストーション・ギターが唸りを上げるイントロからピアノとシンセサイザーがたたみかけブラス・アンサンブルがユニゾン・リフレインを押し出す。 リズムも完全にロック調。 縦揺れリズムでクラリネット、トランペットがユニゾン・リフレインを繰り返すがシリアスそうで結構能天気である。 珍しく引きを見せシンセサイザーとスキャットがスペイシーに響きエフェクトのかかったヴォーカルが呟くとブラスの決めでエンディングかと思いきや再びユニゾン・リフレインと狂ったようなヴォーカルが入って本当のおしまい。 過激である。

  10曲目「am tisch!」。 やはり骨折型変拍子のドラムに乗ってオルガンのスピーディなソロが繰り広げられる。 オルガンの音色が新鮮だ。 しかしフレージングはサックス、クラリネット同様変態的である。 ベースとオルガン、ドラムだけだがやはりカッコいい。

  11曲目「The Look Of Love」。 カヴァー曲。 おふざけなのか何か面白いモチーフとして加工してるのか不明。 ギターのトレモロのメロディとピアノのバッキング。 土人のタイコのようなドラムでブラスがゆったりとメロディを吹く。 バカラックだっけ。 メロディは普通なんだがだんだんリズムが大変なことになる。

  12曲目タイトル・ナンバー「Killed By Charity」。 ギターのクチャクチャ・カッティングのノリにキーボード、ブラスが旋律をいってさらにジャジーなピアノのソロも飛び出す。 なめらかなユニゾンはあるがシリアスなムードはない。 前進するというよりは回転トルクの大きな演奏。 リズムはノーマルな 8 ビート。 暴れるピアノとヘビメタ・ギターそしてブラスが攻める。

  13曲目「It's A Baby」。 このバンドを象徴する作品のように思う。 せわしないフレーズにエモーションの無いブラス。 唐突なアンサンブルの激変。 そして張り詰めた緊張感。 一転落ちついたブラス・アンサンブルへと移りオルガンも入ってジャジーになるがメタル・ギターのせいで再び壮絶な雰囲気になってゆく。 そしてサックスがリードする激しい展開となるがペットやギターが絡んで失速寸前で強烈なリズムが戻ってくる。 最後はオープニング同様得意の凄まじいアンサンブル。 一気に調子を取り戻したぞ。

  14曲目「Shedded」。 サックス、クラリネット、トランペットがユーモラスに旋律を回して終わり。 お疲れ様ということか。


  短めの曲(最長で 6 曲目の 5:53)が次々に現れるが、密度が濃いことと常にハイ・テンションが維持されるせいで気分転換はできない。 むしろ振り回されっぱなしである。 デンジャラスな音もあるのだが聴きなれるに連れて「軽さ」が特徴だと思えてくる。 凶暴というよりは、徹底した性急さと奇妙なユーモア感覚が主なのだ。 アラビア風のモードも特徴的。 エネルギッシュなサックス、間の抜けたトランペット、ただただ変なクラリネット、デンジャラスなギター、そして小気味よすぎるリズム・セクションが、刺激し合って爆発して死に絶えて復活してまた走り出す。 力いっぱいだった前作を飄々と乗り越えた名作。 聴きつづけたら廃人になりそ。

(SUB ROSA SR 69)

 Eggs And Ashes

 
Danny Van Hoeck drums Paul Belgrado bass
Pierre Vervloesem electric guitar Peter Vandenberghe keyboards
Michel Mast tenor & bariton sax Bart Maris trumpet
Peter Vermeersch tenor sax, clarinet

  ダンス・パフォーマンスのための音楽として作編曲された 94 年発表の「Eggs And Ashes」。 いかにもヨーロッパ風ののどかなワルツが、サイバー・テロリスティックなサウンドにオーヴァーライドされると、そこはもう危険極まる XLS ワールドである。 映画のワンシーンを思わせる音声をコラージュしながら進むのだが、サウンドそのものはあいもかわらずデンジャラスな疾走型ハイパー・ビッグバンド・ジャズロック。 キナ臭いヴェルヴェレーゼンのギターと、饒舌にして狂気を孕むヴァーメルシュのリードを重金属的なリズムが支えるスタイルは、さらにパワー・アップしている。 今回も、突き抜けるようにクリアーなトランペットの存在がいい感じだ。 剥きだしの鉄骨のように硬質でざらついた音と刃物のような切れ味をもつ演奏は、やはりこのグループならではのもの。 打ち込みファンクやノイズ・アヴァンギャルドから、持ち前の「ハードコア・ジャズ」ともいうべき超速サウンドまで多彩。 管楽器のワイルドにしてなめらかなアンサンブルとファンキーなリズムが充実しており、スカパラや渋さ知らズ、エゴ・ラッピンのファンへもお薦め。

  「lulu」(2:40)
  「laut und leise」(3:39)
  「midwave」(9:47)ビッグバンドによる濃密なファンク・ジャズロック。マイルス・デイヴィスを思わせる瞬間もあり。なぜかオゲレツだが、一押し。

  「hate song」(4:27)歌うような金切り声サックス、スティール・ドラム風のシンセサイザーによるアフロ・ビート、猛獣の唸り声のようなギターらによる危なすぎるインプロヴィゼーション。

  「turkish bath」(7:06)第一作にも収録された西アジア風変拍子ファンク・ジャズ。 唸るサックスを中心に 4+3 でリズミカルに迫る。ギターのコード・カッティングもカッコいい。

  「immer carto」(1:46)いかにもヨーロピアンな歌もの。 ヴァイオリン、トランペットの伴奏とたどたどしい老人のヴォイスがペーソスを生む。

  「sparadrap」(7:15) 上ずりっ放しクラリネットが特徴的な轟音ハードコア・ジャズロック。 あえて規則的なリズム・パターンを避けるような奇怪なユニゾンで攻め立てる。 ドラムスはビートというより、無闇な打撃の連続である。 金属ノイズでひた走るギター、ベースもカッコいいです。 XLS らしさは本作品が一番。

  「two volcanoes」(4:37)アコースティック・ギター、オルガンによる黄昏のチンドン屋。 後半のトランペット、アコーディオンがいい感じだ。切なく愛らしいです。

  「mask」(17:24)うねうねしたベースと過剰に突っ込む管楽器による変拍子ジャズロック。 キレのいいリフと妙にぐねぐねとしたアドリヴのコントラストがおもしろい。 本作品もこのグループの音楽性を示す好例。

(SUB ROSA SR77/KKCP 45)

 The Land Of The Giant Dwarfs

 
Danny Van Hoeck drums, percussion Paul Belgrado bass
Pierre Vervloesem electric guitar, percussion Peter Vandenberghe keyboards
Michel Mast saxes Bart Maris trumpet
Peter Vermeersch clarinet, voice on 17 Thierry Mondelaers vocals
Christian Martin stick on 12

  95 年発表の「The Land Of The Giant Dwarfs」。 過激かつ快調な演奏はそのままに、不気味なヴォーカルやリリシズム(?)、ペーソスも盛り込んだ野心作。 演奏は、爆発的な変拍子ジャズロックからファンク、ハードロック、ユーモアとパロディ精神に満ちた大道芸にまで多岐にわたり、いわば、凶暴な鋭さと逸脱感が矛盾なく融けあう ビッグ・バンド風 HM ジャズロックである。 フランク・ザッパのバンドと同じく「冗談ばかりのようでいてテクニカル」、「グルーヴィな変拍子」な超絶演奏なのだ。 強引なリフで押し捲り、しなやかにしてゴリゴリなラインで突進、そして、意外にも軽やかに寂しげに舞う。 エレクトリックで尖がった、アカデミック・パンクなイメージもさることながら、なんと STORMY SIX や北欧ものを思わせるペーソスがたっぷりあるのだ。 通低するのは、押しの強さ、素っ頓狂さ、意地の悪さ、皮肉っぽさと苛立ち。 そして、熱狂的に攻め立てるのにどこかナンセンスなムード。 このグループの管楽器セクションのカッコよさには定評があるのだが、独特の気持ちいいヒネリの源として、ヴァミーッシュのクラリネットの存在が光る。 ヴァーサタイルなノイズ・ギター、そしてリズム・セクションも肩で風切るチンピラのようでいて実は凄腕という小面憎さである。 SE や歌詞から判断して、アルバム・タイトルはアメリカ合衆国を皮肉っているらしい。 とすると、冒頭のメロディは「双頭の鷲の旗の下に」なのかな。 今までの作品と比べると、怪我をしそうな過激さよりも、ジョーク(女性アナウンサーのコメントはケッサク)を撒き散らしながらもセンスよく華麗にまとめている感じが強い。 アーティスティックな完成度という点ではみごと。 馬鹿ロックをやってるのに実は頭いいのがチラ見えしてる、そんな感じです。

  「The Land Of The Giant Dwarfs(Anthem)」(1:06)
  「Fes II」(4:56)
  「R.I.P」(3:38)
  「Yesbody 2(Yesbody Goes for the Swallow-Juice)」(2:42)
  「Skip XXI」(6:29)
  「Yesbody 4(Yesbody Enjoys the Envious Eyes of His Moontan)」(2:11)
  「Charge」(2:11)
  「Yesbody 3(Yesbody's in Love and Looks for a Girl Now)」(1:50)
  「Lie To Me」(1:34)
  「Glad You're Dead」(1:27)
  「Home」(3:05)
  「Hair」(5:07)
  「Poor Man's Rain」(4:51)
  「Starfinger」(7:28)
  「Mono Dolby」(1:01)
  「Owl Harrry」(3:11)
  「Quorns」(3:27)
  「Yesbody 1(Yesbody Swallowed the Key)」(2:45)

(BANG! 20517)


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