フランスのプログレッシヴ・ロック・グループ「XII ALFONSO」。 88 年結成。 作品は 2009 年現在ライヴ盤含め六枚。 気品あるニューエイジ、トラッド風シンフォニック・ロック。 2012 年新作は、チャールズ・ダーウィンをテーマにした三枚組の超大作。
| Philippe Claerhout | guitars | Francois Claerhout | keyboards programming |
| Stephane Merlin | keyboards | Caroline Lafue | vocals |
| Mickey Simmonds | keyboards | Laure Oltra | texts |
| Bernard Auzerol | bass | Laurent Dupont | bass |
| Dan Ar Bras | guitar | Thierry Volto | drums |
| Caroline Monteil | flute | Laurent Sindicq | contrabass |
| Thierry Moreno | drums, percussion |
96 年発表のアルバム「The Lost Frontier」。
結成メンバーによる第一作にして唯一作(本作以前にも 93 年にシングルは製作したらしい)。
内容は、透明感あふれる音色によるクラシカルかつノーブルなシンフォニック・ロック。
シンセサイザーによる雄大な管弦楽に加え、ヨーロッパ・ジャズやワールド・ミュージック/ニューエイジ系の音をたっぷりと用いた、美しい作品である。
90 年代の流行であるケルト色(女性ヴォーカルと合わせて、マイク・オールドフィールドとの共通点もある)もあり。
キーボードによるストリングスや管楽器の音は本物のオーケストラとなんら区別はつかず、他の楽器とのバランスも申し分ない。
リズムレスのインストゥルメンタル・パートは、もはやシンフォニック・ロックというよりも電子オーケストラといった方が、実体をより的確に示しているかもしれない。
7 曲目や 8 曲目はまさにその典型である。
また全体に、叙景的なストーリー・テリングも巧みであり、あたかも台詞の少ないヨーロッパ映画でも見るような安らかな気持で、アルバム一枚を聴き通すことができる。
こういうサウンドだとメロディアス、ハーモニックなあまりに、ダイナミックさや力強さを欠くこともあるのだが、本作はそういうことも全くなく、安定感と躍動感を備えた演奏になっている。
リズミカルな演奏の一部ではネオプログレ風のイージーさ(リズム・パターンやありきたりのギター・ソロなど)も露呈するのだが、それ以上に美しいサウンドと気品のある雰囲気の印象が強く、そういう点があまり気にならない。
ひょっとするとお姉ちゃんヴォーカルのやや安っぽい「しな」は、アカデミックで固すぎるというイメージを抱かれないための工夫なのかもしれない。
同じキーボード主体の作風でも、CHANCE がいかにもエレクトリック然とした音を活かしたシンフォニック・ロックの最右翼とするならば、こちらはアコースティックなタッチを活かしたシンフォニック・ロックの筆頭といえるだろう。
特に、誠実なアルペジオを奏でるアコースティック・ギターとピアノそして木管系のシンセサイザーの表現は出色である。
元 CAMEL のミッキー・シモンズがゲスト参加。
ヴォーカルは英語。
ISILDURS BANE や TRIBUTE のファンへもお薦め。
「Hadrian's Wall Overture」(5:08)ややお約束の感あるもアコースティック・ギターのアルペジオが美しい序曲。
「Hello You」(4:18)美しい音色を活かしたポップス。
「Mist」(5:06)
「Minstrel's Tale」(8:27)
「The Ghost's Song」(4:03)
「Lazy Day In Haltwhistle」(3:32)
「Back To Northumberland」(3:33)美しきクラシカル・ロック。
「Edges Of Empire」(2:29)
「Diving Into The Coal Womb」(2:29)
「Breathing, Scarcely」(5:49)
「Wheels Of Change」(4:58)
「Another Day In Haltwhistle」(2:17)
「Health」(5:14)
「Revival」(3:50)
「Thirteen Winds」(5:06)
「Anthem」(4:48)
(MUSEA FGBG 4183.AR)
| Laure Oltra | lyrics | Tito Correa | lyrics | Jean Luc Payssan | mandolin, bass pedals |
| Judith Robert | vocals | Sandrine Rouge | vocals | Philippe Rouge | percussions, lithophones, flute |
| Antoine Tome | vocals | Laurent Dupont | bass | Thierry Moreno | musical glasses, drums, percussions, lithophones |
| Bernard Ozerol | bass | Lionel Gibaudan | bass | Francois Claerhout | keyboards, lithophone, rainstick, cymbales, percussion, programming |
| Michael Geyre | keyboards | Stephane Merlin | keyboards | Philippe Claerhout | bass, vali, lithophones, vocoder, e bow, keyboards, chapman stick, kora, balaphone |
| Mickey Simmonds | keyboards | Stephane Rolland | guitar | Stephane Barrincourt | guitar |
| Dan ar Braz | guitar | Thierry Payssan | organ | Julio Presas | guitars, bass, vocals |
1999 年発表の第二作「Odyssees」。
内容は、効果音など劇的な演出と透明感のあるサウンドによる、みずみずしくオシャレなシンフォニック・ロック。
メロディアスなロック・サウンドに、フレンチ・ヴォイスによるシャンソン・テイストからアフリカン、アジアンなワールド・ミュージック調、骨太なフォーク・タッチまで多彩な音楽性を入れ込み、アコースティックで透明感のあるイメージでまとめている。
ファンタジーというと暖かみが先立つような気がするが、本作のファンタジー性は、無常感ともいうべきクールネスをたたえている。
大人向けの音といえるだろう。
映画音楽に近いニュアンスも感じられる。
いわゆる「ロック」なビート感はさほど強調されていないが、全編パーカッション系の音に工夫を凝らしているところがおもしろい。
ギタリストは三人参加しているが、マイクオールド・フィールドとスティーヴ・ハケットの中間のような、メロディアスで弦の響きを大切にしたいいプレイを聴かせてくれる。
アコースティック・ギターの説得力ある演奏が光る。
また、ヴォーカリストは、前作の女性から別の三人の女性に代わり、男性ヴォーカルもフィーチュアしている。
今回もフランス語の響きがいい感じだが、9 曲目の訛りのある英語による男臭いバラードも悪くない。
アルバムは、スリーヴの写真やイラスト、曲名など判断して「未知への旅」、「探検」といった主題をもつと思われる。
今回も 70 分たっぷりのオディッセイであり、ロックらしさは前作を凌ぐ。
MINIMUM VITAL のペイサン兄弟も客演。
さて、3 曲目に LITHOPHONE という楽器がクレジットされているが、写真によると、鍾乳洞の岩を叩いて音を出すことのようだ。
(MUSEA FGBG 4303.AR)
| Laure Oltra | lyrics |
| Francois Claerhout | keyboards, acoustic guitar, percussions, brushes,drum sampling & programming |
| Philippe Claerhout | guitars, e-bow, bass, oud, lute, harmonica, keyboards, glockenspiel, gongs, percussions |
| Michael Geyre | keyboards, accordion, sampled percussions |
| Thierry Moreno | backing vocals, whistle, percussions |
2001 年発表の第三作「Claude Monet Vol.1」。
画家クロード・モネを題材とした叙景的な作品である。タイトルから第一部ということらしい。
フレンチ・ヴォイスとアコーディオンやギターなど、アコースティックな音の質感を活かした、メロディアスでややノスタルジックなサウンドである。
アコーディオンの響きとシャンソンなど、間違いなくフランスの音なのだが、どちらかといえば、都市部のいわゆる小粋なエレガンスというよりは、田舎のお祭りのダンスのような素朴なフォーク風味と内省的で厳かなクラシカル・タッチが主だろう。
アコースティック楽器を演じるようなシンセサイザー、キーボードの使い方も興味深い。
全体としては、ほのかな哀愁の漂う緩やかな歌もの/環境音楽といっていい。
それだけだとシンフォニック・ロックといえなくなってしまうのだが、そこはそれ、壮大なストリングス、シンセサイザー・オーケストレーションをフルに活かした、重厚にしてロマンティックな作品でバランスを取っている。
後半へゆくにしたがい、多彩な音楽性にびっくりさせられる作りになっているのだ。
8 曲目は御伽噺を語るような調子がすてきな歌もの。ピアノはブレンデルのハイドンのようです。
一転、重厚な 9 曲目から 10 曲目、トラッド調アンサンブルの 11 曲目への流れは感動的。
技巧的なアコーディオンと木管風のシンセサイザーが印象的だ。
マイク・オールドフィールドへの意識は相当強そうだ。
14 曲目はこの作品では異色の存在だが、ラテン・タッチのあるふっ切れたようなメロー・フュージョン。
もっとも、イントロとアウトロをクラシカルなソロ・ギターにするところがニクい。
また終曲は、オーケストラとともにジャジーな音も活かし、奔放な音使いでパノラマのようにアルバムを回想する、きわめて個性的な名曲。
エレクトリックな音を散りばめるセンスもすばらしい。
ピアノ(YAMAHA の電子ピアノ含む)、アコースティック・ギター、木管系の音が美しい。
アンニュイなナレーション、女性ヴォーカル(フランスものらしいシアトリカルなスタイルもあり)、一部のギターはゲストを迎えている。
カバー、ブックレットも非常に美しいです。
(MUSEA FGBG 4397.AR)
| Laure Oltra | |
| Francois Claerhout | |
| Philippe Claerhout | |
| Michael Geyre | |
| Thierry Moreno | |
| and more ... |
2005 年発表の第四作「Claude Monet Vol.2」。
画家クロード・モネを題材とした作品の第二部。
ちなみに、副題に「1889-1904」とあるが、1904 年は没年ではない。
1904年、睡蓮の画作に煮詰まったモネはスペインへの旅行を敢行し、ゴヤ、ベラスケス、エル・グレコの作品と見える。
そこで再び強いインスピレーションを得、製作を続けたそうだ。
さて、内容の方は、アコースティックな肌合いの音をすみずみまで行き渡らせた、クラシカルかつフォーキーなシンフォニック・ミュージック。
叙景的な小品を連ねた映画音楽に近い。
透明感あふれるファンタジックなサウンド・スケープをキャンバスに、モダン・ジャズ、フュージョン、クラシック、民族音楽、教会音楽などあらゆる音楽とモノローグを散りばめ、躍動する筆致で描いたみずみずしい夢物語である。
基調はライトなフュージョン・タッチとワールド・ミュージック、といってしまうと重要な特徴である「凛然とした気品」を打ち消しそうでこわいが、ジャジーなテイストを活かした軽快で爽やかなロマンを湛える作風である。
映像的な演出の効果音を含めじつにさまざまな音があるが、楽器の音色や使われ方で特に印象的なのはアコースティック・ギター、チェロ、木管楽器、アコーディオン。
エレクトリックなサウンド・メイキングは、ノスタルジックな演出をカットバックし、アコースティックな音を美しく聴かせるために利用しているという感じだ。
また、エレクトリック・ギターというのは、喧しくなければ、じつにいい楽器だと再認識した。
5 曲目は、小曲ながら、めまぐるしくさまざまな音楽をゆきかう名作。
今回も画集そのものといっていい美しいブックレット付き。
今の世ならば、こういう一種のジャンル超越の総合音楽のような作風のアーティストがもっといてもいいように思うが、意外に多くないようだ。
クラルホー兄弟のインスピレーションと編集力というのは、並々ならぬものなのだろう。
(MUSEA FGBG 4540.AR)