WEATHER REPORT

  アメリカのジャズロック・グループ「WEATHER REPORT」。 マイルス・グループを経たメンバーが、新たな即興音楽の創造を掲げ、70 年に結成。 エレクトリック・ジャズの草分けの一つである。 編成は、キーボードとサックスを双頭とし、ギターレス。 中後期がポピュラーだが、SOFT MACHINE ファンはぜひ初期を。

 Weather Report

 
Joe Zawinul electric piano
Wayne Shorter soprano sax
Miroslav Vitousbass, electric bass
Alphonze Mouzon drums, voice
Airto Moreira percussion
Burbara Burtondrums

  71 年発表の第一作「Weather Report」。 マイルス・デイヴィスに「Bitches Brew」を作らせたザヴィヌルの美的感覚が生み出した傑作。 内容は、音響美を活かしたエレクトリックなフリー・ジャズという表現がぴったりだが、ということは、即興と音響を重視したプログレともいえる。 アトモスフェリックにして緊張感を伴ったミステリアスなサウンドが新鮮だ。

  「Milky Way」(2:30) シンセサイザーのような音(エレクトリック・ピアノのヴォリューム奏法だろうか)が舞うスペイシーで神秘的な序曲。 どうやら、編集作業によってフレーズが重ねられているようだ。 密やかにして大胆な印象である。 意図的なのかどうか定かでないが、ミスタッチのような音含め、さまざまなノイズが聴こえる。 「2001 年宇宙の旅」をイメージさせるサウンドだ。

  「Umbrella」(3:24) スネアが激しく叩き出す生々しく強烈なビート。 ファンキーなファズ・ベースも暴れながら、加わる。 サックスとピアノが、前曲を思わせるテーマを提示。
  リズムがファンキーなビートで細分化されると、エレクトリック・ピアノとベース、パーカッションによるせめぎあうような演奏が始まる。 荒々しい演奏のなかで、サックスだけは、自己主張がしなやかだ。 最後は、再び冒頭のファズ・ベースがリードする一直線な演奏へ。
  ストリートっぽいテーマと即興演奏によるジャズロック。 エレピはマイルス・デイヴィスのフィルモア・ライヴを思わせるワイルドなタッチ。 ベースも思い切り前面に出て、自己主張する。 ざらついた空間を鮮やかに切り裂くサックスが印象的。

  「Seventh Arrow」(5:20) タム回しとサックスによるせわしないユニゾンが決まるオープニング。 硬質なライド・シンバルの連打とうねるベース、そしてきまぐれなエレピ、パーカッションによる小手調べは、やがてアドリヴ風にふらつくサックスを呼び覚ます。 それぞれ勝手なプレイをするのだが、ポイント・ポイントでドラムスが険しい表情で高まり、仕切り捲くる。 サックスとエレピがハーモニーを成すも、ワイルドな調子は変わらず鋭いユニゾンで章を改める。 再び金切り声を上げるサックス、暴れまわるドラムス、ジャジーなアドリヴに徹するエレピ、ベース。 エレピとサックスの間にだけはコミュニケーションができているようだ。 ベース、ドラムス、パーカッションは一貫して攻め込むような調子である。 エレピは次第にノイジーな音を立て始め、サックスも狂おしく変化する。 ドラムスにあおられて、すべてが熱っぽく汗びっしょりのイメージ。 軽やかなタム回しで終わり。
  終始ハイ・テンションで突っ走るエレクトリック・ジャズ、もしくはフリーなジャズロック。 音だけで RETURN TO FOREVER と区別するのは、なかなか困難である。 すべての楽器がエネルギーを放出し、煮え立つような演奏である。 超絶なドラミングに注目。

  「Orange Lady」(8:41) 自らを抱きしめようと身悶えるようなエレピの響き。 ダブル・ベースのボウイングとサックスが忍び寄り、泡立ちきらめくエレピの調べに、ユニゾンが重なってゆく。 ニューエイジ/ヒーリング系にもつながりそうな夢想世界である。 サックスを軸にゆっくりと流れができてくる。
  エレピの柔らかな和音がダブル・ベースと呼応し、パーカッションがさざ波を立てる。(4:00) 新たな展開だ。 きらめくパーカッションとたゆとうエレピ。 サックスがまるでフルートのように柔らかな調べを歌う。 ベースとエレピによる幾何学模様のような伴奏。 サックスは、凛とした力強さを見せて湧きあがる。 散りばめられた音は、微妙な距離を保ちながら漂っている。
  再びサックスを中心とした核ができてくる。(6:40) ゆるやかなうねりを成す演奏。 やがて、何ごともなかったかのように静けさが戻ってくる。
  美しく幻想的な即興曲。 前半は、ドラムレスのたゆとうような曲調であり、後半は心地よい流れ/動きを見せる。 サックスとベースのボウイングの織り成すハーモニーに、エレピが美しい装飾をしてゆく。 後半は、パーカッションが現れ、ベースもエレクトリックなエフェクトを用いている。 RETURN TO FOREVER の一作目同様「暗黒のフリー」の終焉時代に優美なセンスで光明を投げかけた代表作。 雅楽にも通じるデリケートな世界である。

  「Morning Lake」(4:23)

  「Waterfall」(6:17) 3 連パターンを用いたエレピによるノリのいいリフレイン。 朴訥なウッド・ベースに導かれて、サックスがゆったりとテーマを示す。 左右のチャネルから転がるようなエレピのハーモニーが流れる。 ベースも主張を怠りない。 ドラムスは、ほとんどミュートしたハイハットのビートのみだが、要所でフィルを入れ安定を保っている。 サックスを中心にうねりを作ってゆく。 いつの間にか、ベースはエレクトリックへ。 次第にドラムスの音が増え、エレピ、サックス、ベースによる反応のいいアンサンブルが快調に続いてゆく。 酩酊させるような 3 連フレーズ。
  幻想的な中にも躍動感のあるジャズ・アンサンブル。一部を除き即興と思われる。

  「Tears」(3:22)

  「Eurydice」(5:44) きわめてジャジーな 4 ビート・ナンバー。 いかにもジャズという印象はランニング・ベースからだろう。 終盤、再び謎めいた幻想を提示してアルバムは終わる。


  さざめくように揺らぐエレピの余韻と、サックスの短く柔らかなフレーズが干渉し合い、輪郭をにじませてゆく官能美の世界。 このとき、時を刻むリズム楽器は必須ではない。 無限の広がりのなかで出会ったことを感謝するように、いつまでも音の会話を聴いていたいからだ。 また、タイトでダイナミックなリズムと音響の共存が生み出すグルーヴ。 そして、音数少なくあくまで静謐ながらも即興演奏に漂う緊張感。 美しさと晦渋さが同居するところもある。 このアプローチは、音響の美と組み合わせの自由さを積極的に求めてゆこうとするものであり、古典的なジャズの図式を破壊し、その両者の境界を取っ払ったところに新たな世界を作るという目標に向かうものである。 美しい音に身を委ねることのできる作品である。 即興の一部を編集したためか、フェード・イン、フェード・アウトが多い。 ここの音は本質的にライヴにて味わうべきものなので、スタジオ盤はあくまでその片鱗に過ぎぬということの表明なのだろう。

(SRCS 9138)

 I Sing The Body Electric

 
Joe Zawinul electric & acoustic keyboards
Wayne Shorter reeds
Miroslav Vitous bass
Eric Gravatt drums
Dom Um Romao percussion on 2
guest:
Andrew White English horn on 1
Hubert Laws.Jr flute
Wilmer Wise D & piccolo trumpet
Ralph Towner 12 string guitar on 2

  71 年発表の第二作「I Sing The Body Electric」。 ドラムス、パーカッションにメンバー変更はあったものの、ザヴィヌル、ショーター、ヴィトウスのユニットは揺るぎなく、前衛ジャズの実験は続く。 それは、まさに、次々と浮かび上がるアドリヴ・ソロとヴィヴィッドに反応しあうインタープレイによる、幻想的かつスリリングなエレクトリック・ミュージックである。 どんなに暴れてもデリケートなタッチをもつサックスと、時にワイルドなエレピ、そしてさまざまなアイデアを駆使するベース。 フリー・ジャズ、ジャズロック、サイケデリック・ロック、すべてを呑み込んだプログレッシヴな世界がある。 A 面は、テープ編集によるコラージュ/サンプリングのタッチが奇妙に生々しさを加えている。 B 面は、日本公演の模様を収めたライヴ録音。 司会が入る辺りが「ジャズ・コンサート」である。 タイトルは、ブラドベリイの小説から。 ヴィトウスのファズ・ベースがカッコいい。 「Black Market」辺りからファンになった我が世代は、初期の姿を見たときに、SOFT MACHINE に出会ったときとおなじ感動を味わった。

  「Unknown Soldier」(7:57) 煽り立てるようなハイハット連打にスキャットが重なる謎めいたオープニング。 サックスの明快な音色がその謎めいたムードを切り裂く。 ウッド・ベースのうめきとともに、フリー・ジャズらしい小爆発が起こる。 ようやく油が全体に回った感じだ。 サックスがなめらかなフレーズを提供するが、なかなか回りが追従しない。 ベースとピアノのさりげないバトル。 管楽器はユニゾン、ハーモニーで高まる。 再びドラムスが爆発。 サイレンを思わせる管楽器処理、マーチング・スネア、暴れるウッドベース。
  サックス、トランペットのエネルギッシュなブロウとともにフリー・ジャズのスタートだ。 重低音から過激な打音を発するピアノ、轟々たるウッドベース、不気味なスキャットも復活し、生々しい電子音も炸裂する。 怪しい祈祷に朗々たるサックスが重なり、次第に管楽器アンサンブルが形作られてゆく。 カンタベリー風のアンサンブルが、高音へと抜け出ていきそうで、なかなかいかない。 せわしないドラムス、ベースと対照的に印象的なロングトーンは木管楽器だろうか。
   妖しい物語を独特の美感で伝えるフリー・ジャズ。 意外にも電気楽器はほとんどない。 ややハッタリ気味の効果音もあるのだが、演奏のキレがそういう感じに聴こえさせない。 終盤の管楽器のアンサンブルが美しい。 ザビヌル作。

  「The Moors」(4:40) ラルフ・タウナーの 12 弦ギターをフィーチュアした作品。 透明にして硬質な音色(ナイロンではなく金属弦である)を使って、自信たっぷりにフレーズを繰り出してくる。 ストロークも過激であり、カントリー色が皆無なのもおもしろい。
   バラバラと砕け散りそうなリズム・セクションとともに、ソプラノ・サックスによるスリリングなロングトーン・フレーズが提示される。 ファズ・ベースが唸りを上げ、エレクトリック・ピアノのコードが打ち込まれる。 トランペットによる高らかな歌唱。 三味線の如きギターのストローク、ファズ・ベース、手数の多いドラミングによるざわめきを管楽器が鮮やかに貫く。 ふとねじ切られるように空中へと音が消えてゆく。
  BRAND X 辺りが影響を受けたのでは、と想像してしまうミステリアスかつ凶暴なインプロヴィゼーション。 ヴィトウスは得意のファズ・ベースで暴れ捲くる。 1 曲目よりも格段にロックである。 ショーターの管楽器による透徹な音とファズ・ベースらによるざらついた音のコントラストが、初期の本グループの特徴であることを再認識する。 ショーター作。

  「Crystal」(7:16) 吹きすさぶ隙間風のような電子音とトムトムのようなパーカッションによるミステリアスなオープニング。 サックスがキュートなアドリヴで歌いだす。 得意の電子音ノイズ、そしてオルガンが湧き上がる。 ベースはブリッジの反対側を弾いているのだろうか、雑音のような音を立てる。 ファズをかけた凶暴な音だ。 テープ編集の痕跡も明らかにされ、不安定な音像が、まるで世界が傾いているような不思議な効果を生む。 サックスはただ一人明晰な存在感をもち、時にヴォカリーズのようなみごとなニュアンスで屹立する。 トランペットがサックスに絡んでゆく。 エフェクトされたエレピが和音のリフを刻み始めると、ファズ・ベースが応じて、サックスのアドリヴとともに有機的は動きが生まれる。 スリリングだが、微妙な距離を感じさせるトリオが間合いを保ちつつ、ときに密度を変えながら続いてゆく。 テンポはエレピが握っているのだろうか、先導しては後の二人の追従を待つようなところがある。 ほとんどリズムレスでソプラノ・サックス、エレピ、ファズ・ベースによる反応性の高い即興アンサンブルが続く。
  ファズ・ベースと独特の緊張感が KING CRIMSONSOFT MACHINE を思わせる名曲。 ほぼドラムレスながらも、トリオの呼吸を感じさせるスリリングな演奏だ。 アメリカのグループとは思えない作風である。 ややアンビエント・サイケ調もあり。 ヴィトウス作。

  「Second Sunday in August」(4:09) アコースティック・ピアノ、ファズ・ベース、サックスが力強く勇ましく前進する作品。 サックスをリーダーに、安定したビートに支えられた一体感ある演奏である。 2 管によるなめらかなユニゾンが鮮やかだ。 フロア・タムによる地響きのようなフィルが、演奏にダイナミックなドライヴ感をもたらす。 スタンピードのシーンを俯瞰したときに流れる西部劇のサウンド・トラックのようなイメージだ。 メロトロンもあり。 ザビヌル作。

  「Medley」(10:10)日本でのライヴ録音。
     「Vertical Invader」 激しいアフロ風のドラミングに挑発されるように、ノイジーなエレピが荒々しく動き出す。 サックスがつややかなブローでエレピと呼応。 エレピはフィルモアのチック・コリアやライヴ・イブルのキース・ジャレットを思わせる荒々しいプレイ。 シュアーなベースのリフも加わり、サックス対エレピの挑発合戦が続く。 サックスとエレピの応酬はどんどん加熱、猛然たるドラムスとともにアグレッシヴな演奏が続く。 即興によるファンク・ジャズ。ザビヌル作。
    「T.H.」エフェクトを使ったベース・ソロ。 ドラムスは地鳴りのようなプレイで迫る。 アルコだろうか。 荒々しいエレピの和音が演奏を断ち切る。 (ヴィトウスの曲は必ずエフェクト・ベースあり) ヴィトウス作。
    「Dr.Hornoris Causa(from Zawinul's solo album)」 ドリーミーなエレピのささやきは、すぐに歪んだ音へと変化して、スピーディな音の応酬が甦る。 サックス、エレピが呼応、パーカッションも放たれ、ベースもすぐに追いかけてくる。 細やかなエレピのパッセージをきっかけに、サックスは伸びやかに応じ、ベースもかみつくようなプレイを見せる。 結局、三者が互いに他を圧することを目指すようなアドリヴ合戦になってゆく。 ザビヌル作。
  トリオのバトルが繰り広げられるワイルドな即興演奏。 このグループにしては、それほどすごい演奏ではない。

  「Surucucu」(7:41)日本でのライヴ録音。 カリンバ系のパーカッションや奇妙な電子音が渦巻く妖しいオープニング。 ドラムスがビートを提供すると、サックスが放たれ、アコースティック・ベースとアコースティック・ピアノも加わってジャジーな演奏となる。 ピアノは弦を直接叩いたり、弾いたりしているようだ。 サックスのしなやかなブローを押さえ込むように、唐突にエレクトリック・ピアノが爆発。 ファズ・ベース、サックス、エレピによる、ザラザラした音のトリオが始まる。 とたんにブレイク。
  アルコによるベース高音が泣き叫ぶ。それもつかの間、サックスが絶叫し壮絶なバトルが復活する。 エレピのプレイは、かなり適当というか思いつきというか荒っぽいの何の。 電気フリージャズである。 主導権はエレピへ。 やや抑制されたエレピとベースの呼応が続く。 再びサックスのロングトーンにアコースティック・ピアノの衝撃が加わる。
   電化マイルスそのもののような電気フリージャズ。 SOFT MACHINE と同じような演奏なのだが、抽象的なイメージがあまりないのが不思議である。 タイトルからしてアフリカのイメージだろうか。 ショーター作。

  「Directions」(4:35)日本でのライヴ録音。 ドラムとエレピの素早いユニゾンの決めで幕を開ける。 サックス、エレピともに最初から飛ばす。 タイトなドラミング。 スピード感。 フリー・ジャズに近い展開。 最後もビシッと決める。 ザビヌル作。


  第一作と同路線にある作品。 キーボードの種類が増え、アンサンブルにも変化が現れる。 3 曲目「Crystal」は一作目の延長上にある美しい作品。 4 曲目「Medley」はそこにパワーが加わっている。 また、1 曲目「Unknown Soldier」は、緊張と迫力とに満ちた即興アンサンブルがすばらしい。 アコースティック・ピアノの効果を十分生かしている。 ライヴ録音の曲は、スタジオ曲独特の凍るような美しさではなく、ドライヴ感を中心に演奏を組み立てている。 混沌に熱気が加わった感じといえばいいだろう。 ヴィトウス、タウナーのせいだけではないだろうが、透徹で抽象的な ECM 風味も強い。

(CK 46017)

 Sweetnighter

 
Joe Zawinul keyboards
Wayne Shorter soprano sax
Miroslav Vitous bass
Eric Gravatt drums
Dom Um Romao percussion
Muruga percussion
Herschel Dwellingham drums
Andrew N. White III English horn, Fender bass

  ライヴ盤をはさみ、73 年発表の第四作「Sweetnighter」。 オープニングの「Boogie Woogie Waltz」が、ザヴィヌルの求めるサウンドの方向を物語る。 本作以降は、このファンキー・スタイルを突き詰めるために有能なメンバーを求めてゆく。 本作はいわばその出発点だ。 美しいタペストリかコラージュのようなヨーロッパ的な美意識を反映した曲調から、一気にラテンのファンクなグルーヴが追求されることになったわけだ。 具象を空間に溶かし込み、にじんだような広がりを感じさせたサウンドから、細かく正確なビートで時空を刻み、エクスタシーの瞬間を求めたサウンドへの変化。 ヴィトウスは「Will」を提供しているものの、演奏においては既に影が薄い。
  アナログの A/B 面のそれぞれトップを飾るザヴィヌル作曲の 2 つの大作が、アルバムを完璧に性格づける。 両曲とも、執拗なリフと単調なビート、シンセサイザーが官能的な効果をもつ。 もっとも、イケイケゴーゴー的なファンクではなく、熱気の中に醒めた意識と緊張がある。 ファンク的な陽性のものと一種ダークな計画性が幾重にも重なった構造が、音に独特の重みを与えているようだ。 ザビヌルのパーソナリティとも無縁ではないだろう。 一方、ショーターによるメロディアスなナンバーは、ザビヌルの「ファンキー」な楽曲とよくバランスしている。 叙景的な美しさを持つ「Adios」は、前作の音響路線の直接的延長上にあり、軽やかなサックスににじむ歌心にザビヌルのような屈折はあまり感じられない。 各曲も鑑賞予定。

  「Boogie Woogie Waltz」(13:04)
  「Manolete」(5:56)
  「Adios」(3:00)
  「125th Street Congress」(12:14)
  「Will」(6:21)
  「Non-Stop Home」(3:54)

(SRCS 9142)

 Mysterious Traveller

 
Joe Zawinul keyboards
Wayne Shorter soprano sax
Miroslav Vitousbass
Alphonso Johnsonbass
Ishmael Wilburn drums
Skip Hadden drums
Dom Um Romao percussion
Isacoff tabla, finger cymbals

  74 年発表の第五作「Mysterious Traveller」。 ファンキーなテーマ、グルーヴィなビート、スペイシーなサウンド、エキゾティックなアクセントをまとめあげた労作。 アクセスしやすいメロディ・ラインやテーマ、サウンドがあるのに、実験的な作品としての緊張感が切れ目なく続くというきわどいバランスの上に成立している。 即興から作曲を積み上げているせいか、起承転結よりも一瞬のきらめきを重視したようなところがあり、曲の展開はわりとラフである。 こういうところは第一作から変わらない。(「Black Market」以降は、この点で飛躍する) 一方、ダンサブルなノリというかポップなサービス精神も若干あり、そういうところとアヴァンギャルドな姿勢とがぶつかって中途半端になっているところもある。 エレクトリック・マイルスのドロドロ感をシンセサイザー・サウンドで巧みに薄めたような感じもあり。 特に後半は、シンセサイザーによる音響派プログレと化してゆく。 本作品、僕には「陽性屈折 SOFT MACHINE」として響いてきます。第一作に続いてプログレ・ファンにお薦め。 ミロスラフ・ヴィトウスは本作品を最後に脱退。

  「Nubian Sundance」(10:40)名曲。本作品の後はこのグルーヴをよりストレートにしてゆく。
  「American Tango」(3:40)
  「Cucumber Slumber」(8:22)
  「Mysterious Traveller」(7:21)
  「Blackthorn Rose」(5:01) ザヴィヌル、ショーターによるデュオ。カッコいいフリー・ジャズ。
  「Scarlet Woman」(5:45)
  「Jungle Book」(7:24)
  「Miloslav's Tune」(5:25)ボーナストラック。未発表曲。

(SRCS 9143)

 Zawinul

 
Joe Zawinul electric piano Herbie Hancock electric piano
George Davis flute Hubert Laws flute on 4
Woody Show trumpet Jimmy Owens trumpet on 3
Earl Turbinton soprano sax Wayne Shorter soprano sax on 4
Miroslav Vitousbass Walter Booker bass
Joe Chambers percussion Billy Hart percussion
David Lee percussion Jack Dejohnette melodica on 3, percussion on 4

  70 年発表のアルバム「Zawinul」。 先ごろ亡くなったジョー・ザヴィヌルのソロ作品。 マイルス・グループを経た WEATHER REPORT 前夜の名作である。 「In A Silent Way」、「Bitch's Brew」を生み出した才能の一つが、自らの音楽観を内省的に現した作風は、エレクトリック・ピアノと管楽器、アコースティック・ベース、パーカッションによるきわめて幻想的なものであり、この音楽性はそのまま WEATHER REPORT の第一作へと引き継がれてゆく。 プログレ・ファンには、1 曲目に SOFT MACHINE の酩酊感を呼び覚ますリフの原点を感じてほしい。 また、KING CRIMSON の「Islands」のファンには絶対のお薦め。 混沌と美が矛盾なく、ほどよい抑制とともにキャンバスに描かれています。

  「Doctor Honoris Causa」(13:45)二つのエレクトリック・ピアノと管楽器が綾なすコズミックな幻想世界。

  「In A Slient Way」(4:47)マイルス・ディヴィスの同名作の再演。きわめてプライヴェートなニュアンスをもつ美しい作品である。

  「His Last Journey」(4:37)

  「Double Image」(10:37)1 曲目と対を成す「動」のアスペクト。デジョネットの力強いドラミングが印象的。

  「Arrival In New York」(1:59)一種のミュージック・コンクレート。

(ATLANTIC 1579-2)


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