WILLOWGLASS

  イギリスのプログレッシヴ・ロック・ユニット「WILLOWGLASS」。作品は二枚。ひさびさの本格的ネオプログレ。

 Willowglass

 No Image
Andrew Marshall electric & acoustic guitars, 12-string guitar, classical guitar
bass, keyboards, flute, drums
Dave Brightman drums

  2005 年発表の第一作「Willowglass」。 内容は、アコースティック・ギター、メロトロン、オルガン、ピアノらをフィーチュアした古式ゆかしいシンフォニック・ロック。 初期 GENESISKING CRIMSON の深みのある叙情性を丸ごと取り出してパッケージしたような作風である。 シンセサイザーはバロック・トランペットのような輝かしくも気品ある響きで朝露とともに生の高まりを歌い、アコースティック・ギターはトルバドールの竪琴のように夕暮れに遥か遠国の思い出をささやき、メロトロンは夜毎訪れる王の霊を慰めて古城にこだまする幻の聖歌隊である。 英国プログレッシヴ・ロックらしいリリシズムのエキスを抽出できているという点では、ほぼ百点満点。 まんまなところもあるのだが、すべてがほどよく抑制されたところ、やりすぎないところが、奏効していると思う。 趣味的といってしまうと元も子もないが、確かに趣味の方向け。 全編インストゥルメンタル。 2 曲目のソロ・ギターは、CAMEL から出発して KAIPAKERRS PINKGANDALF など世界を巡って英国に帰ってきたような音です。 個人的には、アルバム冒頭のピアノの音があまりに昔聴いたレコードのようで驚きました。

  
(WGCD001)

 Book Of Hours

 No Image
Andrew Marshallelectric & acoustic guitars, 12-string guitar, classical guitar
keyboards, bass guitar, bass pedals, flute, recorders, drums, percussion
Dave Brightman drums, percussion

  2008 年発表の第二作「Book Of Hours」。内容は、70 年代 GENESIS/CAMEL 憧憬型の丹念で上品なシンフォニック・ロック・インストゥルメンタルである。 全編クラシカルで柔和で落ちつきがあり、のどかな音の流れが、愛らしく跳ねるかと思えば哀愁の淵でたゆたい、やがて、ほのかな明かりへ手を伸ばすようにゆったりと広がってゆく。 明朗に歌い上げるところの素直な表情と、押しつけがましさが微塵も感じられないうっすらとした哀感がよく、語り口が「濃くない」ところが特徴だろう。 一方、ミステリアスな表情付けやたたみかけるような場面もバランスよく盛り込まれている。 怪しい音が高まったかと思うと、すっと退いて厳かなチャーチ・オルガンが静々と入ってくるようなところに言い知れぬセンスを感じてしまう。 加えて、英国調としかいいようのない素朴で密やかなフォーク・ソングの響きがある。 メロトロン・フルートとアコースティック・ギターのアルペジオが重なるだけで、何故にこんなに昔語りの世界のイメージが広がるのだろう。 キーボード(シンセサイザー、メロトロン、オルガンなど)、ギター(アコースティック 12 弦も当然あり)、リズム・セクションすべてが彼の時代の音である。 歌を大事にして音を詰め込まず、しかし、肌理細かく音を紡ぎ上げてゆく。 そして、控えめで穏かな演奏なのだが、多重録音にもかかわらずバンド的なグルーヴある。 ハデハデな見せ場は作らないのだが、EGG を思わせるテクニカルで硬質な演出や、GANDALF のようなシンセサイザー・ミュージック調などは間違いなく意図的だろう。 そして、そのはまり具合は相当なものである。 これは天晴れだ。 同様なアプローチの SUBMARINE SILENCE と比べると、これだけ盛り込んで息苦しくさせない名場面集としての編集の巧みさと、バンドとしての呼吸の良さ、気候風土から来る枯淡の味わいで勝っている。 (もっとも、本アルバムはイタリアでマスタリングされたらしい) 予定調和と眉をひそめる前に、素直に音をあびると、普段忘れているものが心に浮かんでくるはず。 このど真ん中な具合は、おそらくここ数年の間で五指に入る。 とにかく聴き終えた後の余韻がいいです。 ただし、これで味のあるヴォーカリストがいたらと、いけないと知りつつも思ってしまうのですが。
   ジャケットとブックレットの絵は決して巧みなものではないのですが、子供の頃に読んだ童話の挿絵のように素朴な味わいと諧謔味があり、郷愁を呼び覚まします。二人の男は、おそらくサンチョ・パンサとドン・キホーテでしょう。
  GENESIS の「Trespass」のファンには絶対のオススメ。

  「Algamasilla」(11:07) メロトロン、まろやかにして華やかなシンセサイザーの調べに魅せられる傑作。 GENESIS 入ってます。 これだけ自信にあふれて主旋律を歌うメロトロンには久しぶりに出会いました。 全編を通してやさしげな表情と健康的に躍動するリズム(7 拍子)がいい。 プログレ・ファンの永遠の BGM になり得ます。

  「Willowglass」(4:02)アコースティック・ギター、フルートをフィーチュアしたフォークタッチの作品。 初期 GENESIS から苦味を抜いた感じ。

  「The Maythorne Cross」(10:39) ややつぎはぎ気味の大作。 GENESIS を中心に昔のプログレから好きなフレーズや音、アンサンブルを抜き出した感じといえばいいだろう。 跳ねるようなフルートの調べが VdGG を思わせる。

  「Book Of Hours」(7:13)「Stagnation」や「Dusk」のようなオルガン、アコースティック・ギター、ピアノ、メロトロン・ストリングスらのアンサンブル。 中盤、8 分の 6 拍子のアンサンブルには、ほんのりカンタベリー(EGG か)風味、もしくはよくできたイージー・リスニング調が加わる。 終盤、リプライズするアコースティック・ギターのアルペジオは、英国フォークの滋味をたっぷり含んだみごとなものである。 佳作。

  「The Labyrinth」(16:50) 前曲の終りをうまく受け止めるクラシカルなアコースティック・ギターの調べ。芸風は完全にハケットである。 8 分の 6 拍子によるジャジーなアンサンブルは、ここまでになくギターがリードする。 トニー・バンクス風の波打つようなシンセサイザーがリードする 7 拍子アンサンブルで重みあるアクセントを付けて、謎のノイズがチャーチ・オルガンへとつながってゆき、憂鬱ながらも静けさが取り戻される。 みごとな語り口だ。 再び、メロトロン・クワイアとオルガンによる 7 拍子のブリッジから、シンセサイザーがリフレインする 8+7 拍子アンサンブルへ。 そして、すべてをリセットするかのようにチャーチ・オルガンが轟く。 ピアノの和音が決然と刻まれ、やがてロマンティックなテーマが提示されて、高まるシンセサイザーとともにミドル・テンポの歩みが始まる。 最終章、再び冒頭のアコースティック・ギターが現れて丹念なアルペジオを刻む。 ギターの周囲にさまざまな音が集まり、流れを成し、終局への道筋となる。 エンディングの長和音へのカタルシスを目指すためか、やや和声進行に気取りはあるが、シンセサイザーがりゅうりゅうと歌い始めると、もはや拒むすべはない。 そして、意外にも結末を設けずに、そのままフェード・アウトする。これは何かの布石だろうか。 なめらかに展開する気持ちのいい大作です。
  
(WGCD002)


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