スイスのプログレッシヴ・ロック・グループ「WELCOME」。 75 年結成。 バーゼル出身。 81 年解散。 作品は二枚。
| Francis Jost | vocals, bass, electric & acoustic guitar, tuba |
| Tommy Strebel | vocals, drums, tubular bells, 12 & 6 string acoustic guitar |
| Bernie Krauer | vocals, grand & electric piano, organ, mini moog, mellotron |
76 年発表の第一作「Welcome」。
内容は、YES 風のベース・ラインとハイトーンのヴォーカル、コーラス・ワークによる清涼感とバタバタしたリズムのコントラストが、なんともいえぬ味わいをもつシンフォニック・ロック。
どちらかといえば、キーボード主体の内容である。
メロトロン、オルガン、ピアノといったキーボードの的確なプレイが、楽曲に整理/構築されたイメージを与え、パーカッシヴで鋭角的なアンサンブルが、ワイルドで躍動的なイメージを生む。
オルガンは、ときに EL&P を思わせるシャープなソロを放つも、シンセサイザーは、どちらかといえば、堅実なプレイが主である。
そして、何より特徴的なのは、コーラス・ハーモニーだろう。
YES 風のハイトーンから、2 曲目のようなフレンチ・ロックばりの怪しげなものまで、全曲にわたって、コーラスがフィーチュアされている。
このコーラスとアコースティック・ギターのキラキラした音色が重なり合ってできる世界は、ファンタジックで牧歌的なものである。
イタリアン・ロックに比べると品がよく、ブリティッシュ・ロックほどの翳りもない。
もっとも近いのは、ドイツ風の野暮ったさだろうか。
そして、YES 的な涼感が、重苦しく野暮ったいドイツ流の風通しをよくしているところが、本作の特徴だろう。
単なるオルガン・ロックと思って聴けば、シンフォニックな広がりにびっくりするだろう。
メロトロンも充実。
「The Rag Fair」(8:52)
フェード・インからのオープニングのリフが MAGMA の某曲を思わせるも、メロトロン、ムーグ、リッケンバッカー特有の硬質なベース・ランニングと鼓笛隊型のドラムによってせわしなく奏でられるアンサンブルは、やはりシンフォニックなプログレ特有のものだ。
メイン・ヴォーカルにハイトーンのコーラスが付き従う様子や、歌を乗せるにはあまりに凝り捲くったメロディ・ラインが、まさに YES 流。
忙しく音を詰め込むパートと、メロトロン、オルガンがゆるゆると流れるシーンのメリハリがいい。
YES と異なるのは、ギターがない分、キーボードが活躍することだ。
オブリガートやソロはムーグがきっちりと決めてゆき、要所ではピアノも現れる。
ヘヴィなオープニングからは想像がつかない牧歌調シンフォニック・ロックである。
力作。
「古着市」とは奇妙なタイトルだ。
「Dizzy Tune」(7:40)
オルガン、ベースと音数の多いドラムスによるシャープなイントロダクション。
息継ぎもしないままに、演奏はやや柔らかく表情を変えてゆき、メイン・ヴォーカル・パートではミステリアスな雰囲気が満ちる。
3 人のコーラスがきわめて怪しいのだ。
サビでは伸びやかに歌うも、3 連で打ち鳴らすドラムスとともに、再び不気味な呪文のようなコーラスが重なる。
目の醒めるようなムーグ・ソロ。
クラシカルである。
この変化の妙は GENESIS 風。
続いて、硬いベースがきっちりと支えるオルガン・ソロ。
そして華やかなピアノ。
再びドラムが 3 連で打ち鳴らされる。
クラシカルなムーグのソロから、静々と流れるオルガンへ。
やがてチャーチ・オルガンが厳かな響きで湧きあがる。
最後は、慈愛に満ちたアコースティック・ギターの調べ。
前半は、奇怪なお芝居風のコーラスが奇妙な雰囲気を醸し出し、後半は、クラシカルなキーボードが活躍するシンフォニック・ロック。
無窮動の演奏は YES 風だが、クラシカルなオルガン、シンセサイザーやたたみかけるように打ち鳴らされるドラムスは、完全に GENESIS。
「Glory」(3:43)前曲のおだやかなアコースティック・ギターの調べをそのまま受けて始まる、リリカルなフォーク風のナンバー。
1 曲目同様、3 人の透明なコーラス・ハーモニーがフィーチュアされる。
アコースティック・ギターに重なるフルート・メロトロン、コーラス・ハーモニーを支えるストリングス・メロトロンなど、メロトロンも充実。
TRADER HORNE や MELLOW CANDLE にも通じる世界である。
コーラスは、ここでも YES 風。
「Chain Of Days」(8:50)スピード感とスリルのあるキーボード・シンフォニック・ロック。
シンプルなメイン・テーマを巡り、キーボード・ソロが何回かはさまれる。
スピード感の一因は、力強く走るベースと小気味いいアコースティック・ギターのストロークに加えて、メイン・ヴォーカル・パートのシンプルで転げ落ちるようなリフレインだろう。
これが耳について離れなくなる。
歌の伴奏は、主としてメロトロン、間奏部のソロは最初がオルガン、2 回目がムーグである。
ギターも使われており、ワウも用いてキーボードとハーモニーを見せる。
後半のインストは、オルガンとベースがタイトな音でリードする。
ベースのトレモロ、ドラムスのばたつくロールが B 級 YES といった味わいをもたらす。
「Durge」(12:31)「同志」を思わせるリリカルなヴォーカル・ハーモニーとピアノ伴奏によるフォーク・タッチの素朴な作品。
素直なポップ・センスが顔を出している。
透明感のあるアコースティック・ギターは GENESIS か。
コーラスの高まりとともに、オルガンが熱くなってゆくところは、「Third Album」辺りの YES に似る。
芝居ッ気たっぷりの下品なモノローグをさえぎり、フルート・メロトロンが哀愁の調べを奏でるも、コーラスはどこか能天気だ。
長閑なムード。
再びハーモニーとオルガンが高まってゆく。
間奏はオルガン・ソロ。
オルガンとともに、再びヴォーカル・ハーモニーが切々と続き、メロトロンも分厚く支える。
アコースティックでなめらかな歌と、ヘヴィなオルガンの対比がドラチックなオープニングである。
今度は、ワウを用いたエレピとシャープなベースのアンサンブルに、トニー・ケイを思わせる荒々しいファズ・オルガンが重なり緊張も高まる。
ややアラビックなメロディを奏でるギターの登場。
珍しく大きなノリで叩くドラムス。
アドリヴ風のギターを、いつの間にか現れたムーグがドラムとともに支える。
ギターとムーグの対位的な演奏がおもしろい。
フェード・アウト。
クロス・フェード・インするのは、重い足取りのようなアコースティック・ギターのストロークと、哀しげにさえずるようなムーグである。
沈み込むアルペジオと悩ましげに朗々と流れるムーグ。
シンバルのざわめきとともにコーラス・ハーモニーが復活。
オルガンと手数の多いドラムスがヴォーカルを取り巻く。
オブリガートで飛び込むメロトロン。
雄大な流れができあがると、ムーグが朗々たるテーマを奏で、フルート・メロトロンとハーモニーを成す。
重なりあう音と力強いドラムスがフェード・アウトしてゆく。
最後は、ラジオのスイッチを切るように、音がふっと消え、口笛とともに扉が閉まる。
ポップで優しげなメイン・テーマを、多彩なアンサンブル/ソロによるインストゥルメンタル・パートで取り巻く大作。
「Yours Is No Disgrace」を思わせるところもある。
荒々しさよりもデリケートなメロディや音が重視されているようだ。
(BRR006)