ベルギーのチェンバー・ロック・グループ「UNIVERS ZERO」。 74 年ダニエル・デニとロジェ・トリゴーを中心にブリュッセルで結成。 78 年アルバム・デビュー。 87 年解散。 五枚のアルバムを残す。 MAGMA の影響に始まり、RIO に参画して HENRY COW らの薫陶も受けつつ独自の「室内楽ロック」に磨きをかけた。 98 年のリユニオン・ライヴを契機に再編、99 年末から、すでに三作を発表。 2006 年、初のフル・ライヴ・アルバム発表。
| Michel Berckmans | bassoon |
| Daniel Denis | percussion |
| Marcel Dufrance | violin |
| Christian Genet | bass |
| Patrick Hanappier | violin, viola, pocket cello |
| Emmanuel Nicaise | harmonium, spnet |
| Roger Trigaux | guitar |
77 年発表の第一作「1313」。
84 年の再発にあたり、表題を「Univers Zero」から改め、リミックスを行った。
CD もこの版を採用している。(2008 年現在、新ミックスの CD も存在する)
ジャケットは、左が CUNEIFORM 発の CD、右がオリジナル LP のもの。
編成は、バスーンと弦楽器、鍵盤楽器のアンサンブルにエレキベース、ギターとドラムス、パーカッションが加わった、文字通り、室内楽アンサンブルとロック・バンドの融合体である。
演奏は、多様な楽器の音質のヴァリエーションを活用し、変拍子パターンの反復や、現代音楽的な無調/不協和音を駆使した複雑怪奇なものである。
音圧やスピード感はさほどではないが、悪夢のように執拗にまとわりつくタイプの音といえるだろう。
きわめて厳格なのだが、どこか逸脱したようなところもあるという不思議な特徴をもつ。
以下各曲を鑑賞してゆこう。
「Ronde」(14:45)
いくつものシリアスな変拍子反復パターンからなる恐怖に満ちたロンド。
導入部、リズムがリフに合わせて複雑に変化する中間部 1、ヴァイオリンがクライマックスに達する中間部 2、轟音の決めの後アンサンブルが形を取り戻しエンディングに向かう最終部の 4 部から成る明確な構成を持つ。
中間部 1 の狂気じみた変拍子アンサンブルと中間部 2 の恐怖が窮るクライマックスは凄絶の一言。
最終部、次第に秩序が復活する様子は感動的ですらある。
フレーズ、アンサンブル、全てにわたり暗いパワーが満ち溢れている。
恐怖感と高揚感が交錯し、心底疲弊する。
デニの作品。
「Carabosse」(3:40)
バスーンとヴァイオリンが気味悪いハーモニーを成して進み、ドラムスが厳しく音を入れ込みビートを強調する。
小品だが峻厳だ。
デニの作品。
「Docteur Petiot」(7:25)
前半は狂気のアンサンブル。
一旦小康状態になるが、再び狂気を迸らせてゆくところで終わる。
すでに前半で十分疲れているので、思わずほっとする。
トリゴーの作品。
「Malaise」(7:42)
切れ味鋭くアクセントの強いリズミカルなパッセージが絡み合うアンサンブル。
胸のすく過激さである。
KING CRIMSON を思わせる部分もある。
疾走するユニゾンと急激な停止、そして狂おしい決めの連続がめまぐるしく展開し、緊張を強いられる。
トリゴーの作品。
「Complainte」(3:18)
最後までドラムレスで進行し、弦楽とバスーン、ハーモニウムの暗いアンサンブルを聴かせる曲。
バスーンの音色豊かな旋律と中間部のヴィオラの思い切った旋律が印象的。
デニの作品。
恐怖の暗黒室内楽。
緊張感のある弦の音に、生々しいバスーンとパーカッシヴな音が加わることで、非常に不気味で強迫的な音楽になっている。
リズム・セクションの存在は、この音楽を特徴付ける上できわめて重要である。
また、我関せず風のとぼけた音をもつバスーンと、凄まじいまでの深刻さをもって迫るヴァイオリン/ヴィオラの対比も面白い。
オープニングの「Ronde」における、重量感あるドラムとともに迫る狂気のアンサンブルには、背筋が寒くなり、心臓が締めつけられるような恐怖を覚える。
まさしく悪夢の BGM だ。
「Malaise」は、驚異的なテクニックを認められる、スピーディかつトリックに満ちた曲。
しかし、全編を貫くのは、暗闇で牙を研ぐ異形のパワーであり、最後まで緊張を解かずにスピーカの前で音楽と対峙しなくてはならない。
ポー、ラヴクラフトの系譜にあるべき音である。
(CUNEIFORM RUNE 20 CD)
| Michel Berckmans | oboe, bassoon |
| Daniel Denis | drums,percussion |
| Guy Segers | bass, voice |
| Patrick Hanappier | violin, viola |
| Roger Trigaux | guitar, piano, organ, harmonium |
79 年発表の第二作「Heresie」。
ジャケットは、左が CUNEIFORM 発の CD、右がオリジナル LP のもの。
ヴァイオリンとキーボード奏者が脱退し、ベースはギ・セガーズに交代。
ロック・トリオに、管弦一人づつの 5 人編成である。
内容は、三つの大作で迫る暗黒ゴシック・チェンバー・ロック。
精密なドラミングとハーモニウムのドローンに支えられ、木管とヴァイオリンが悲鳴をあげる怪奇の宴である。
管弦による不気味な伸音と力強い打撃音の組み合わせが、ロック的なドライヴ感を生み出しており、アンサンブルは闇の力を得たような荒々しさで唐突に驀進し始める。
眩暈がするような変拍子は当然だ。
呪術的なアジテーションが先導するゴシック・ホラー調の 1 曲目は、ただただ強烈。
渦巻く呪いの調べは、胎教には絶対不向き。
ジャケットは再発盤のものであり、CD でも採用されている。
各曲も鑑賞予定。
「La Faulx」(25:18)サステインを活かした不気味なドローンが重なり合い、やがて古の機械が蒸気を吹き上げて狂ったように歯車を回し始める。
前半はノイズを有効に使って演出するゴシック・ホラーそのもののようなパフォーマンスである。
中盤は、変拍子のリフの上で木管やヴァイオリンが挑戦的なアンサンブルを繰り広げる。
デニの作品。
「Jack The Ripper」(13:29)デニ、トリゴーの作品。
「Vous Le Saurez En Temps Voulu」(12:56)トリゴーの作品。
(CUNEIFORM RUNE 29)
| Michel Berckmans | oboe, bassoon, English horn |
| Daniel Denis | drums, percussion |
| Guy Segers | bass, voice |
| Patrick Hanappier | violin, viola |
| Andy Kirk | piano, organ, harmonium, mellotron |
81 年発表の第三作「Ceux Du Dehors」。
邦題は「祝祭の時」。
ジャケットは、左が CUNEIFORM 発の CD、右がオリジナル LP のもの。
暗黒のパワーが全編を貫く戦慄の 45 分である。
オリジナル・メンバーのギタリスト、ロジェ・トリゴーは、本作収録前に PRESENT 結成のため脱退、代わってキーボーディストのアンディ・カークが加入した。
変拍子を刻むドラムとともに、ピアノとバスーン、ベースらの低音部が圧倒的な推進力を見せ、その上でヴァイオリンらの旋律パートが、尋常ならざる緊張感を高めてゆく。
過剰なほどのアクセントや無機的なフレーズもあり、現代音楽の影響は強そうだ。
そして、特筆すべきは、ロック的なダイナミズムをもつ展開である。
強いビート感とヴォリューム/テンポの変化を用い、明確なドラマを生み出しているのだ。
個人的には、ミニマルな面をもちながらも比較的つかみやすい流れがあること、暗黒ゴシック調という明解な特徴などから、きわめて重苦しい音楽にも関わらず、意外に取りつきやすかった。
ニューウェーブだ、テクノだと喧しい世の音とは、完全に隔絶した孤高の暗黒音楽である。
ジャケットは CD 用のもの。
「Dense(濃厚)」(12:23)。
室内楽的な音楽形態を用いてダイナミックなロックを演じた名曲。
複合拍子で煽り立てるトゥッティのテーマに、ヴァイオリンやオルガンの旋律が絡みながら疾走してゆく。
インダストリアル系やハードコア・パンクに比べれば、音圧は低いかもしれないが、音の異様さは特筆すべきである。
音に、ガラスをひっかくような神経を逆なでする感触がある。
ドラムのビートが抑えられた場面では、管楽器と弦楽器が室内楽というには、あまりに凶凶しい秘教的なアンサンブルをなす。
そして極めつけは、深刻さと表裏一体を成す、ナンセンスのようなものが感じられるバスーンである。
変拍子でたたみかける「動」の部分と不気味過ぎる「静」のコントラストを際立たせつつ、アンサンブルは走り続ける。
最初のクライマックスを通過し、静寂の中オーボエをきっかけに、長い斜面を登るように着々と勢いを獲得してゆくアンサンブル。
圧倒的だ。
そして、クライマックスで軽やかにすべりだす演奏の異形の美。
MAGMA 的な重低音爆走型とはやや異なり、隙あらばソロで飛翔しようとする管弦を、ドラムがつなぎとめる形をとっている。
しかし、輝かしき狂気のような昂揚感を孕むという意味では、共通している。
これは、百鬼夜行の御囃子である。
このダイナミックな展開にはぞくっとさせられる。
アコーディオンのようなハーモニウムの明るさをもつ音も、かえって不気味さを煽る。
チェンバー・ロックの代名詞足りうる傑作。
「La Corne Du Bois Des Pendus(コルヌ・ドゥ・ボア・デ・ペンドゥス村)」(8:38)
ドラムによるビート感とスピードを抑え、キーボード、ヴァイオリン、木管楽器のメロディアスなアンサンブルを主役にした作品。
重厚なテーマにミステリアスなメロディが、次々と重なってゆく。
ヴォカリーズも含めてサステインを活かし、静かな妖気を漂わせる。
暗黒の室内楽。
邪教の祝詞か魔の楽隊か。
バルトーク風のバーバリズムも感じられる。
オーボエとヴァイオリンは恐るべきデュオを成し、死霊の喚きのようなヴォカリーズが轟く。
途中 5 分付近で、ざわめきのような SE が入る。
これは、村の様子を現しているのだろう。
終盤は、オーボエとオルガン、ベースによる、闇夜の深淵を称えるような輝かしき演奏が続く。
1 曲目を攻めとするとこちらは引きである。
しかし引いても恐ろしい。
真っ暗な宇宙の広がりを感じさせる作品である。
「Bonjour Chez Vous(こんにちは、諸君)」(3:48)。
ドアの開く音とともに、現代音楽調ながらもユーモラスなアンサンブルが動きはじめる。
再びビートがきつい。
そして目眩がするような変拍子トゥッティ。
弦楽器と木管楽器によるヒステリックながらも、どこか艶めかしい絡みと、アラレが降るようなピアノ。
小気味のいいインタープレイである。
最後はシリアスなフレーズをたたみかけ、ドアがきしみながら閉まる。
1 曲目をコンパクトにしたような超高密度の演奏。
シェーンベルグ風のピアノが顔をのぞかせる。
「Combat(戦闘)」(12:50)。
サスティンを活かした管弦の旋律部と低音及びドラムのリズム部が明確に自らの役割を知り、真の力を解き放った作品。
「Dense」がせわしないトゥッティを駆使したドライブ感重視の作品であったのに対し、こちらは、深刻さと強迫さは同等ながらも演奏全体に色彩がある。
ポリフォニーも抑揚も変化に富んでいる。
全楽器がフル・スロットルで運転しながらも、神秘的な調和がある。
最初のクライマックスに続くピアノとオーボエのデュオ、ヴァイオリンとオーボエのソロは、完全に現代クラシック。
音には広がりもある。
メロトロンを用いた怪奇小説的な場面も面白い。
やがて、再び激しいリフレインへとアンサンブルはなだれ込む。
それでも音響の明確さと美しさは、迫力よりもアンサンブルの妙を感じさせる。
再びハーモニウム、ヴァイオリン、オーボエによるトリオへ。
ここでは、アンサンブルの美しさがクローズ・アップされ、ファルセットのヴォカリーズが入るにいたっては、完全に MAGMA を連想せざるを得ない。
やがて、みたび演奏は激しいトゥッティへと流れ込み、まさに MAGMA 的な暴走を続ける。
輝かしき狂気。
壮大な構築性をもつクラシック作品。
重厚である。
「La Musique D'enrich Zann(エーリッヒ・ツァンの音楽)」(3:25)。
ノイジーな擦過音が次第に渦を巻いてゆく。
じりじりと何かが迫りくるような恐怖感。
閾下で蠢くノイズが遂に表面へと触手を伸ばし、最後の理性を奪い取ってゆく。
完全な即興であろう。
タイトルはもちろんラブクラフトの作品から。
「La Tete Du Corbeau(烏の頭)」(3:08)
オルガン、ベースおよびバスーンと思われる重厚なるオープニング。
荒々しいプレイからヴァイオリンとオーボエのテーマへと進んでゆく。
分厚くじわじわと進んでゆくアンサンブル。
慄然たる演奏だ。
狂おしい弦の響きと対を成す地を穿つベース。
濃密な演奏だ。
「Triomphe Des Mouches(蝿の凱旋)」(5:34)。
メンバー脱退後残った、デニ、カーク、セガーズの 3 人で録音された CD ボーナス・トラック。
恐怖に満ちた低音ノイズから喘ぎ声を経て、地を這うが如きリズムが刻まれる。
ピアノの危険なリフレイン。
あまりに轟々たる低音。
地獄へまっしぐら。
ピアノの変拍子リフレインによってアンサンブルは昂揚する。
荒い息のようなヴォイス。
とどめをさすようなドラム。
噴出する狂気の如きピアノ。
急旋回を繰り返し、メールストロムの直中へと進んでゆく。
動悸すら変拍子になりそうだ。
そして急激なポーズ。
悪夢から覚めたような後味の悪さが残る。
怪奇な音楽性をコンパクトに表現した佳作。
音は暗黒ゴシック指向、アンサンブルは室内楽、たたみかけるような展開はロック。
こういってしまうといかにもキワモノだが、高度な作曲と充実したテクニックが、音楽にありきたりでないリアルな重みと優れた芸術性を与えている。
ヘヴィさだけではなく、ここまで徹底して奇怪であることがすごい。
本作は、キーボードの存在感にも注目すべきだろう。
お薦めは(ライナーと同じになってしまったが)、音楽を一通り俯瞰できるということで「Combat(戦闘)」と「Dense(濃厚)」。
「Troimphe Des Mouches(蝿の凱旋)」も入れておこう。
曲のタイトルからは、ポーや梶井基次郎など、精神を削って狂気とともに芸術の至高を極めた文学作品をイメージさせる。
底知れぬ暗闇にいながら、力強く蠢くパワーがあり、いつしか無尽蔵のエネルギーとともに輝かしい狂気を爆発させる。
暴走する室内楽といえるだろう。
名盤。
(CUNEIFORM RUNE 39)
| Daniel Denis | drums, percussion |
| Dirk Descheemaeker | soprano sax, clarinet, bass clarinet |
| Christian Genet | bass, balafon, tapes, whistle, bowed guitar |
| Andre Mergen | cello, alto sax, voice |
| Jean-Luc Plouvier | electric & acoustic piano, synthesizer, piano strings, percussion |
| guest: | |
|---|---|
| Michel Delory | guitar |
| Marc Verbist | violin |
84 年発表の第四作「Uzed」。
メンバーを刷新し、ゴシック室内楽を基調にするもエレクトリックなサウンドも積極的に用いて、ダイナミズムを強めた作品。
新しい木管奏者は加入しているが、ベルクマンの不在はそのまま室内楽的なニュアンスの減退につながっているようだ。
モダン・クラシック風の厳格なアンサンブルというイメージに加えて、運動性に優れた邪悪なジャズ・ロックというイメージも現れている。
ロック的なビートを強めたドラムスとメタリックなスラップを多用するベースがアンサンブルを力強くスピーディに駆動し、その影響か、金管楽器の演奏にフリー・ジャズ的な爆発性が生じ、また、幾何学的な構築性が SOFT MACHINE に接近した。
その一方で、木管/弦楽とともにキーボード類がクラシックのイメージをキープする。
特に、怪奇な弾力を持つ演奏にクールな秩序と安定性を付与するピアノの存在感が大きい。
演奏の中心は、変拍子パターンでたたみかける一体感あるアンサンブル。
管絃楽器による狂おしくもつれる演奏がいやがうえにも緊張感を高め、モノクロのゴシック様式と毒々しい色彩のアヴァンギャルド・ジャズの間を絶え間なく揺れ動いている。
ピアノとギターがフィーチュアされた 3 曲目は、美しくも恐怖に満ちた傑作。
5 曲目の大作は、シンフォニックな昂揚感もあるゴシック・ロマン。
シンセサイザーと金管の光沢のある響きが、重厚な演奏にきらめくような新しい魅力を加えている。
全作品デニによる。
全体に MAGMA、KING CRIMSON、SOFT MACHINE といったグループの音楽性に共通する面もある充実した内容なので、プログレ・ファンには聴きやすいはず。
「Presage」(9:48)邪悪な変拍子パターンのテーマが折れ曲がったまま解き放たれてゆく傑作。
「L'Etrange Mixture Du Docteur Schwartz」(3:52)前作の作風に近い怪奇モノ。
「Celesta(for Chantal)」(6:55) シンフォニックな広がりを見せる美しい作品。個人的には、VdGG の初期作品との共通性を感じた。
「Parade」(6:37)スピーディな演奏に新境地を見せる傑作。木管が冴える。
「Emmanations」(15:43)キーボードを活かしたヘヴィ・シンフォニック・チューン。突き進む力、断ち切る力、解き放つ力、これらの拮抗の上に、呪いと祈りのエッセンスを注ぎ込んだ痛快作である。室内楽でサイケデリック・ロックと同じ効用を(ドラッグなしで)成し遂げた曲です。
エピローグ直前、一瞬の爆発で溜飲を下げてください。ところで、Emmanation というのはどういう意味なのでしょう。
(CUNEIFORM RUNE 15 CD)
| Michel Delory | guitar |
| Daniel Denis | drums,percussion, voice |
| Dirk Descheemaeker | soprano sax, clarinet, bass clarinet |
| Christian Genet | bass, nailsnake |
| Patrick Hanappier | violin, viola |
| Andy Kirk | piano, sythesizer, voice |
| Jean-Luc Plouvier | piano, sythesizer, voice |
87 年発表の第五作「Heatwave」。
最終作。
ヴァイオリン、キーボードのメンバーが復帰し、ギターも正式メンバーとなって再び大所帯となる。
アコースティックなゴシック室内楽路線とエレクトリック・サウンドの融合はここに極まれり、インダストリアル・ミュージック的なサウンド傾向も現れる。
小刻みにたたみかけるドラム、ヘヴィ・メタリックなギター、凶々しいヴァイオリン、狂気を孕んで絶叫する管楽器、金属的に振動するキーボードが綾なすアンサンブルには、異様な圧迫感のみならず、常軌を外れた逸脱感がある。
電化の度合いは強まったのだが、ロックっぽさはそのものはじつは前作ほどではなく、元々の複雑な怪奇室内楽を電気楽器の音を大幅に取り入れてやっている、というのが正しいようだ。
したがって、シンセサイザーは新たな室内楽のメンバーとして、冷ややかで無機的、調子ッ外れな表情を貫く役割を果たしている。
4 曲目は、クライマックスへ向けてひた走る異常な高揚感が見事なダーク・シンフォニー。
序盤はアコースティック・ピアノ、管絃がフィーチュアされてクラシカルな調子だが、打楽器とともに一気に荒々しく怪しいアンサンブルへと変化し、中盤からはノイズも巻きこんだ不機嫌で険しい変拍子演奏、つまりこのグループを特徴付ける演奏になってゆく。
終盤にかけてのヘヴィな演奏は、ややスリムな MAGMA といったイメージ。ギターも大きく前面に出る。
「heatwave」(8:34)
「chinavox」(4:49)
「bruit dans les murs」(8:25)
「the funeral plain」(20:24)
(CUNEIFORM RUNE 9 CD)
| Michel Berckmans | bassoon, oboe, English horn, melodica, piano on 8,9 |
| Daniel Denis | drums, all keyboards, percussion, melodica, voice on 5 |
| Dirk Descheemaeker | clarinet, bass clarinet |
| Igor Semenoff | violin |
| Reginald Trigaux | bass, voice on 10, acosutic guitar on 10 |
99 年発表の第六作「The Hard Quest」。
12 年ぶりの新作。
サウンドは初期のアコースティックへの回帰を見せ、アンサンブルは強圧的ながらも、スピード感は失っている。
クラシック室内楽とエレクトリック・ベース、ドラムスの融合の原点へと立ち戻り、一歩一歩確かめながら歩み直すような音である。
おそらく、味わうべきは、大地の鼓動を手にした幽鬼のような管弦鍵盤絵巻なのだろう。
個人的には、10 曲目のような、驀進する演奏を前面に押し出してほしいのだが。
さらに次作に期待。
ロジェ・トリゴーの子息レジナルドがメンバー入り、又共同プロデュースに ART ZOYD の名前も見える。
(CUNEIFORM RUNE 120)
| Michel Berckmans | bassoon, oboe, English horn |
| Aurelia Boven | cello on 1,5,9 |
| Ariane De Bievre | flute, piccolo on 2 |
| Daniel Denis | drums, keyboards, percussion, harmonium |
| Dirk Descheemaeker | clarinet, bass clarinet |
| Bart Maris | trumpet on 6,10,12 |
| Eric Plantain | bass |
| Christophe Pons | acoustic guitar on 1,3,5 |
| Bart Quartier | marimba, glockenspiel |
| Louison Renault | accordion on 1 |
2002 年発表の第七作「Rhythmix」。
内容は、人力変拍子シーケンスを取り巻いてさまざまな管絃が螺旋を描く、クラシック寄りのロック室内楽。
ドラムス、エレクトリック・ベース、木管管楽器を中心に、アコーディオン、チェロ、フルート、マリンバなどさまざまな楽器を作品ごとにフィーチュアして、管絃各種アンサンブルにダイナミックなリズム・セクションを持ち込んだこのグループの基本形を改めて感じさせる内容である。
もっとも、ドラムスにいわゆるロック的なビート感はさほどなく、どちらかといえば、打楽器本来の機能である「打による衝撃」を活かした使い方が主である。
ベースもかなりパーカッション的な表現をしている。
また、アンサンブルは、エキセントリックなプレイの集合体が生み出す混沌の力でねじ伏せるような表現よりも、複数の音が明快に有機的な連関を成す、いわば正調クラシック的な表現が中心なようだ。
また、このグループの作風の特徴の一つだった邪悪極悪狂気陰鬱さもさほどでなく、むしろ、無調の響きが透明感すら帯びていることがある。
オーボエ、クラリネット、バスーンも、血のにじんだ刻印を空間に刻みつけるように強烈な表現というよりは、精神の機微を伝える妙なる調べというべき表現をしている。
さらに、ゲストのアコーディオン、フルートという、どちらかといえば叙情性や長閑さの演出が得意な楽器が、意外なほどに UNIVERS ZERO の音楽ときちんと交差できている。
これもまた、本作の作風に、凶暴なヘヴィ・ロックというよりは、メカニカルな現代音楽としての側面が強いせいだろう。
個人的には、アコースティック・ギターの音がきわめて新鮮だった。
12 曲目「The Fly-Toxmen's Land」は、邪悪なプログレッシヴ・ロックの力作。トランペットがカッコいい。
チェンバー・ロックのバリエーションとして(本家なので当然といえば当然だが)、出色の内容である。
(CUNEIFORM RUNE 165)