TRACE

  オランダのプログレッシヴ・ロック・グループ「TRACE」。 74 年、EKSEPTION を脱退したリック・ファン・デル・リンデンが洗練されたクラシカル・ロックを目指して結成。 テクニカルなキーボードをフィーチュアしたバロック/古典音楽調のキーボード・ロック。 荒削りの魅力なら第一作、完成度なら第二作がお薦め。まさしくクラシックの「トレース」である。

 Trace

 
Rick Van Der Linden keyboards
Jaap Van Eik bass, guitar
Pierre Van Der Linden drums

  74 年発表の第一作「Trace」。 オランダ版 THE NICE というべき内容の、クラシカル・キーボード・ロック作品である。 破天荒なスケールではキース・エマーソンに一歩譲るも、大胆なクラシックの吸収と再現では負けていない。 フレーズの切り貼りどころか、クラシック曲を三分の一くらい、そのまんま演ってしまう。 それでいて、接ぎ木のような不自然さがなく、なめらかな表現となっているところが、大したものである。 ロックとしてのカッコよさという点では今一つかもしれないが、エンタテインメントと開き直れば、なかなか面白い。 THE NICE のように、荒々しさを強調した演奏(モッズ/サイケ時代のキーボード・ロックなので当然ではある)ではなく、クラシックから、技巧とともに洗練も拝借しているところがユニークだ。

  1曲目「Gaillarde」(6:22+2:04+4:36)は、3部構成の作品。 2部にベース・ソロの小曲をはさみ、1 部と 3 部で華麗なるキーボード・ワークが堪能できる。 モチーフは、ポーランド舞曲とバッハのイタリア協奏曲の第三楽章。 イタリア協奏曲は、ヘルムート・ヴァルハも真っ青のオルガン演奏である。 スピーディな 8 ビートにのったフリーなプレイにおいては、明確な音を用いて激しいフレーズを叩きつけており、かなりの迫力である。 シンセサイザーによるまとめの旋律も壮大で美しい。 中間部のベース・ソロも、歯切れいい音によるアグレッシヴなプレイだ。 聖歌隊のコーラスを背負ってシンセサイザーが壮大なスペクタクルの始まりを告げる。 次第にハモンド・オルガンが暴れ始める演出が見事。 ポーランド舞曲のフレーズが飛び出して、テンポはどんどん上がってゆく。 シンセサイザー、チェンバロ、オルガンのアンサンブルにメロトロンが響き、キーボードの独壇場である。 その勢いのまま再びバッハに戻り、今度は、ハモンド・オルガンにチェンバロとコーラスがオーヴァーラップし、感動的なエンディングを迎える。
  バロック音楽を現代のキーボードで再現しロック的なリズム、ビートを持ち込んだ作品。 なめらかなキーボード・ワークと手数の多いリズム・セクションによる痛快な演奏だ。 勢いで押し切った作品である。 シンセサイザーによる金管楽器やメロトロンのコーラス、ストリングスが印象的。

  2曲目「The Death Of Ace」(5:15)は「ペール・ギュント」より。 ピアノが沈痛なテーマを奏で、再び聖歌隊コーラス(メロトロン)が響く。 テーマがシンセサイザーに移る。 メロトロンのストリングス。 ハモンド、メロトロン、聖歌隊のアンサンブルが盛り上げる。 ピアノの伴奏でややファンキーなシンセサイザーのアドリヴが入る。 ピアノとメロトロンのユニゾンでメロディが始まるとチェンバロ、オルガン、聖歌隊がテーマを再び響かせる。 最後はシンセサイザーの静かなリフレインで終わる。
  テーマをさまざまなキーボードで再現する演奏。 中盤のムーグのソロはエマーソンをやや線を細くした感じ。 ドラムがやや不安定ではないだろうか。

  3曲目「The Escape Of The Piper」(3:13)は、中間部のバグパイプ風シンセサイザー・ソロがユニークなナンバー。 スピーディなピアノ・ソロが繰り広げられ、ドラム・ロールと合わせて、バグパイプ風シンセサイザーが響く。 再びピアノのテーマが繰返され、せわしないフレーズも繰り出す。 ピアノ低音の 8 分の 21 拍子のリフレインに、ムーグやハモンドが重なり激しい演奏が続く。 そしてそのままフェードアウト。
  バグパイプ調シンセサイザーをフィーチュアした作品。 ピアノの演奏に変拍子はあるわ、すさまじいスピードでたたみかけるわで、見せ場が多い小曲。

  4曲目「Once」(4:13) アップテンポで始まり、オルガンによるクラシカルなメロディのリフレインから、一転してジャジーなアドリヴに変化する。 チェンバロをきっかけに、本格的な 4 ビート・ジャズへと移り、ランニング・ベースとともにスピーディなハモンド・オルガン・ソロが続く。 心地よい緊張感。 シンセサイザーがペールギュントの「山の魔王の宮殿」のテーマをユーモラスにコラージュする。 リズム・ブレイクし、チェンバロ、ハモンド・オルガンによる凄まじいユニゾンが延々と走り続ける。 最後は、クラシカルな変拍子テーマへと戻り、再びフリーキーなハモンド・オルガンのリードで走る。 チェンバロとハモンド・オルガンの熱っぽい決めで終わり。
  シンコペーションのクラシック調フレーズから、いきなりジャズへと展開するところにキーボード・プログレの醍醐味を感じさせる作品。 ジャジーなハモンド・オルガンの演奏は迫力満点。 ジャズから戻ってくるところのユニゾンは痛快。

  5曲目「Progression」(12:00) ヘンリー・マンシーニの「ピーター・ガン」を思わせるピアノのテーマによるイントロダクション。 グニャグニャしたムーグ・シンセサイザーがオブリガートを刻む。 第二テーマは、レガートなハモンド・オルガンである。 3 拍目を強くアクセントするリズム。 オルガンは、ジャジーなアドリヴへと突っ込む。 リタルダンドともに、メロトロン・ストリングスをバックにムーグによるテーマが朗々と歌われる。
  再びハモンド・オルガンの激しいソロ。 ブルージーなフレーズを繰り出し緊張感が高まる。 激しい決めの連続。 ファズ・ベースが凄い音だ。 オルガンはバロック風のフレーズを巧みに絡める。 メロトロンのコーラスも挿入される。
  突如飛び込むチェンバロをきっかけに、再びリズムが落ちつき、オルガンによる力強いテーマ。 オルガンは自在に緩急をつけ走り回る。
  オルガンのリフレインを突如断ち切るのは、派手なクラヴィネットだ。 クラヴィネットとオルガンのブルージーなユニゾン。 メロトロンは適宜挿入される。
  そしてアナログ特有のレゾナンスをもつシンセサイザー・ソロ。 クラヴィネットもリフを刻む。 せわしなく激しい演奏だ。 クラヴィネットのビジーなフレーズが繰返される。 オルガン、メロトロンが高鳴り、オルガンが挑戦的なフレーズを決めてゆく。
  最後は、オープニングの「ピーターガン」風のピアノが再現。 オルガンによる第二テーマ。 最後はオルガン、メロトロンが大見得切って決めを連発、激しいドラムとともに加速し、和音を叩きつけて凶暴に終わり。
  多彩なキーボードをフィーチュアしたジャム・セッション風の大作。 緩急/音量の変化に乏しいためドラマ性はないのだが、アグレッシヴにしてロマンティック、豊富なネタと一定のテンションを維持して強引に突っ走って、FOCUS に匹敵するパフォーマンスを見せつける。 独特のけたたましさは、キーボードのみならず、隙間を埋め尽くすようなドラムのプレイのせいでもある。 「悪の経典」を思わせる凶暴なエンディングが印象的。

  6曲目「A Memory」(3:47+3:26+1:40) 風が吹き抜けるような音を背景に寂しげなオルガンが入ってくる。 ムーグのメロディが湧き上がり、リズムが入る。 ムーグの奏でるメロディはシャンソン風の物悲しさ。 オルガンの伴奏。 ドラマチックに盛り上げるドラム。 やや泣きが入るが詩的なアンサンブルである。 ムーグの音はフルート系。 アンサンブルがメロトロンを残してフェードアウトすると、クロスフェードでドラムのロールが轟き「The Lost Part」へ。 スネアのロール中心のドラム・ソロ。 音はやや軽目。 そして再び「A Memory」ヘ。 オルガンのリードするヘヴィなアンサンブルがテーマを繰り返す。 音量が落ち、遠くでオルガンが点描風に歌う。 コーラス、そして鳥がさえずる。
  ハモンド・オルガン、ムーグ、メロトロンを使いドラム・ソロを挟んだ 3 部構成の小組曲。 スウェーデン民謡といわれる「A Memory」の哀愁溢れるテーマが印象的。

  7曲目「Final Trace」(3:52)オルガンとチャーチ・オルガンの穏やかなアンサンブル。 オルガンのテーマはいかにもヨーロッパ調の哀愁を漂わすセンチメンタルなもの。 展開部はピアノ伴奏でシンセサイザー・ソロ。 ユニゾンから再びオルガン・アンサンブルへ。 「G線上のアリア」を思わせるオルガンのテーマ。 続いてチャーチ・オルガンのスケール大きな演奏。 雄大な和音が響き渡りエンディングである。
  叙情的でシンフォニックな作品。 オルガンのテーマは PROCOL PARUM 風である。 チャーチ・オルガンとのアンサンブルやオルガンのフレーズは FOCUS を思わせる部分もある。 中盤のムーグのソロでアクセントをつけている。

  8曲目「Progress」(4:05)ボーナス・トラック。 「Progression」より抜粋。 クラヴィネットのリフとムーグのテーマを取り出している。
  8曲目「Tabu」(4:14)ボーナス・トラック。 シャープで邪悪なテーマは EL&P 風。 サウンド・エフェクト風のムーグ・ソロが面白い。


  メロトロン、ハモンド・オルガン、チェンバロ、ピアノと多彩なキーボードを巧みに操るクラシカル・ロック作品。 作風は、クラシックの名フレーズ、パートを大胆に取り入れた典型的なキーボード・ロック・スタイルである。 リンデンのプレイは、音色の使い分けが巧みであり、フレーズを丹念に積み重ねてゆくところに特徴がある。 クラシックのみならず、ジャズもきっちりと弾ける人のようだ。 オリジナルのフレーズには、どこか人懐こさもある。 全体としては、主旋律の活かされた整然としたアンサンブルといえるだろう。 一方、プレイのワイルドな力強さという点では、エマーソンには一歩譲るかも知れない。 クラシックの換骨奪胎という手法は、既に経年変化の著しいアプローチだが、それでもなお、本作におけるメロディと勢い/小気味よさは魅力だ。 数多の THE NICEEL&P タイプのキーボード・ロックの中では、徹底した本格クラシックからのアプローチという点でチェコの COLLEGIUM MUSICUM とともに、際立つ出来映えといっていいだろう。 FOCUS にも共通するヨーロッパ大陸風の哀感は、「A Memory」に顕著。

(MUSEA FGBG 4144.AR)

 Birds

 
Rick Van Der Linden keyboards
Jaap Van Eik bass, guitar, vocals
Ian Mosley drums, timpani, gong, tambourine
guest:
Darry Way acoustic & electric violin on 4
Coen Hoedeman assorted monkeys on 1

  75 年発表の第二作「Birds(鳥人王国)」。 ドラムスは、元 WOLF のイアン・モズレイに交代、ダリル・ウェイ本人もゲスト参加している。 クラシックをベースとするキーボード・プレイは、さらなる技巧の冴えと安定感を誇り、特に後半の大作では、縦横無尽の演奏を見せる。 力作。

  1曲目「Bourree」(2:27)目の醒めるような華麗なるクラシカル・ロック。 オルガンを中心にチェンバロやクラヴィネットも使ったスピーディな演奏だ。 バロック音楽の面影を残しつつもスピード・緊張感そしてブルージーなグルーヴももたせる巧みなアレンジである。 バッハのイギリス組曲第二番より抜粋。

  2曲目「Snuff」(2:28)ベース、ドラムなどリズム・パートをフィーチュアしたと思われるハードな快速ナンバー。 シャフル・ビートで攻め立てるような調子である。 リリカルなピアノ、激しいクライヴネットや速弾きオルガンとともにベース、ドラムがジャジーにして迫力ある演奏を見せる。 ロカビリー風の横揺れリズムが強烈。 フェード・アウトはもったいない。

  3曲目「Janny」(1:15)ジャズ・ピアノ・ソロ。 華のある音色と柔らかなタッチによるジャジーな演奏。 ややホンキートンク風の崩しも見せる。 洒脱だが丹念な演奏だ。

  4曲目「Opus 1065」(7:46)キーボード、ヴァイオリンをフィーチュアしたオムニバス風の華やかな好作品。 ポップス風の爽やかなテーマ・ピアノからムーグ、エレクトリック・ヴァイオリン、アコースティック・ヴァイオリンとチェンバロによるバロック・アンサンブル(ヴィヴァルディ風)、そのままアコースティック・ヴァイオリンのカデンツァ(バッハのヴァイオリン・ソナタ風)、さらに、チェンバロを経てオルガンと次々とソロ/アンサンブルが続いてゆく。 テンポ・リズムの変化がないためややだれるが、一つ一つのプレイは聴き応えあり。 特に、ヴァイオリンは二声を弾き分け、自在のテンポ・ルパートでエモーショナルなソロを見せる。 ベースも加わったトリオ・ソナタも圧巻。 続くオルガン・ソロは、R&B、ブルーズ・フィーリングあふれるもの。 最初と最後に現れるピアノによるテーマは、何か原典があるのかもしれないが、みごとなポップ・センスをもっている。 この作品では、可愛らしい曲想と丁寧な演奏がマッチして、すばらしい効果を上げている。(原典はバッハの「4 台のチェンバロのための協奏曲イ短調」だそうです)

  5曲目「Penny」(2:53)ヨーロッパ・ジャズ調の幻想的なピアノ・トリオ。 メランコリックにしてあくまでロマンティックなピアノのリードするメローなジャズである。 中盤からは、4 ビートの本格的なモダン・ジャズ・トリオと化す。 ピアノのメロディ・ラインに、微妙にクラシカルな響きが見て取れる。 ドラムはブラシ。 エマーソンのオスカー・ピーターソン路線と比べると、若干ではあるが上品。

  6曲目「Trixie-Dixie」(0:38)カーニバルのバンド演奏がテープの早回しのようにスピードアップすると、爆発音。 SP 盤のようなモノラル。 これは何なんでしょう。

  そして「King-Bird(組曲 鳥人王国)」(22:01)鐘の音を経て厳粛なチャーチ・オルガンが響き渡るオープニング。 SE も聴こえて、映画を思わせる胸躍るオープニングだ。 こういう曲でいつも思うのは、リズムが単調になりがちということ。 とりあえず 8 ビートをキープしギター/キーボードで主題を奏でるという形が一般的だが、平板な曲調がイージー・リスニング風に聴こえることが多い。 ここでもチャーチ・オルガンに続くリズム入りのテーマ演奏は、やや野暮ったく聴こえる。 つくづく FOCUS というグループのセンスのよさを感じる。
  オルガンのおだやかなテーマから、輝くようなチェンバロのオブリガートを経てテーマをリードするのは、しなやかなギターである。 エリック・クラプトンの名曲を思わせる、いい表情をもつテーマだ。 オルガンはゆったりと伴奏で流れてゆく。 鋭いシンバルと低音をしっかりリードするベース。 要所で力強く決めてアクセントをつける演奏。
  続いて、軽やかなワウ・ギターとチェンバロによる華麗なユニゾンを経てオルガン・ソロへ。 キース・エマーソンを思わせるブルージーなソロだ。 ワウ・ギターとストリングスが分厚く伴奏する。
  再び調子はゆったりと元に戻り、シンセサイザーによって、メロディアスなギターのテーマが呼び覚まされる。 ギターを受け力強くアクセントする演奏。 チャーチ・オルガンが滔々と流れる。 まさしくクラシカル・ロックである。 最後のリタルダンドからドラム・ロールが呼び出され、チェンバロとオルガンがクラシカルな和音をうっすらと響かせるエンディング。 星を吹くストリングス・シンセサイザー。 (4:08)
  ピアノとチェンバロによるロマンティックなデュオ。 バックはストリングスが守り立て、クラシカルな雰囲気になる。
  今度はリズミカルなピアノとチェンバロによるイージー・リスニング風のアンサンブル。 バウンスするリズムによる軽やかな演奏だ。 オルガン、3 連リズムをはさみ、緊張感を高め、一気にカデンツァ風のチェンバロ、ピアノによるスピーディなリフレインへ。 華麗にして劇的。 再びリズミカルなテーマからオルガン、3 連リズムそしてチェンバロとピアノが走る。 溌剌としたチェンバロが美しい。 今度は金管を思わせるシンセサイザーが高らかに流れる。 (6:15)
  スピーディなリフレインにピアノがブレーキをかけると、スウィートなヴォイスが歌いだす(Preacher-Bird)。 このヴォーカル・パートでは、SOLUTION 辺りを思わせるメローなポップ・センスが光る。 ピアノ、チェンバロが的確なバッキングを施す。 間奏は PROCOL PARUM = ヘンデルを思わせる、やわらかく暖かいバロック・オルガン・ソロ。 ピアノとともに演奏をリードするバスドラ連打や、メロディアスなベースもいい感じだ。
  ピアノのリフレインとともにドラムの連打からテンポはアップ。 ストリングス・シンセサイザーがうねり始める。 激しいスネア・ドラムの連打が湧きあがる。 挑戦的なベースのリフへシンセサイザーとクラヴィネットによるビジーな演奏が重なる。 再びオルガンによる R&B 風の軽快な演奏。 続いてブルージーなピアノが加わる。 華麗なピアノとヘヴィなオルガンの応酬。 メロトロンも流れ続ける。 再びオルガンによる軽快なテーマ。 (9:50)
  今度はオルガンとチェンバロのユニゾンによるクラシカルなアンサンブル。 激しいオルガン、ピアノのオブリガートが応える。 ブレイク。 クラヴィネットが奇妙なフレーズをひとくさり、そしてメロトロンがざわめく。 インタールード。 再びベースによる挑戦的なリフが重なり、一気にヘヴィな調子を取り戻し、オルガンのテーマが復活する。 目まぐるしい展開だ。 (10:42)
  今度はキース・エマーソンを思わせるヘヴィなピアノ・ソロ。 激しいドラムが受けて立つ。 低音を強調したピアノは、大きく見得を切るようにリタルダンド。 ベートーベンを思わせる重厚悲痛な演奏が続く。 湧きあがるメロトロン・コーラス。 チェンバロも、分散和音でつきしたがっている。 ベースによるアルペジオの速弾きに導かれるように、ピアノ、メロトロンが応え、重厚なアンサンブルが甦る。 強いアクセントで重々しく進む演奏。 金管風のムーグ・シンセサイザーが華やかに歌い上げる。 チェンバロとピアノが支える。 長短微妙な転調の繰り返し。 ピアノとチェンバロによるアンサンブルは、やはりやや哀しげな表情だ。 再び高らかに歌い上げるムーグ・シンセサイザー。
  ハードなピアノ・ソロへと流れ込む。 ムーグの軽快なソロ。 バックにはストリングスが迸る。 テンポも軽快だ。 再び重いピアノのオスティナート。 重厚な演奏がたたみかけるように続く。 リタルダンド。
  そして、リズミカルなピアノ、チェンバロのアンサンブルが復活。 3 連も交えながらハイ・テンションの演奏が続く。さりげなくもバスドラもロールする。 (Scolptor-Bird - Second Avenue)(17:50)
  再び、ヴォーカル・パートへと着地。 ピアノ伴奏のブルーなタッチで御伽噺が囁かれる。 (Preacher-Bird
  ヴォーカルの最後から演奏の勢いは高まり、そして頂点を経て、ピアノに導かれるように、ほのかにブルージーで穏やかなギターのテーマへと帰ってゆく。 最後は、ストリングス、メロトロン・コーラス、チャーチ・オルガンが膨れ上がり、ドラム・ロールとともに唸りを上げる大団円。 無声部を経て、エピローグは、ピアノ伴奏によるオルガンのテーマ演奏が物語を回顧する。
  明快なテーマをもつ複数部構成の超大作。 ヴォーカル・パートも含む 20 分あまりの作品である。 基本的には、オルガン、ピアノ、チェンバロ、ムーグ・シンセサイザーなどキーボードのオンパレード。 このキーボードを軸にしたクラシカルなアンサンブルが、目まぐるしく展開してゆく。 また、ビジーなフレーズを叩きつけるキーボードとともにアンサンブルの熱気を強めているのは、手数の多いドラムである。 メロディをしっかりつかみ演奏をリードするギターも存在感がある。 EL&P のような無闇な勢いある破壊的再構築ではなく、クラシックのアンサンブルの枠組みを活かしながらリズム・セクションとエレクトリックなヴォリューム変化を縦横に駆使した作風といえるだろう。 クラシカルでトラジックな響きとブルージーなロックの響きをうまくブレンドしたほのかな哀感がいい。 力作です。

 「Birds」(3:41)ボーナス・トラック。 シングル B 面。
 「Tabu」(4:14)ボーナス・トラック。 シングル B 面。 前作のボーナス・トラックと同曲だが別テイク。


  バロック調のキーボードをフィーチュアした傑作。 前半は軽やかな小品、後半を大作組曲でまとめる、逆「Tarkus」構成である。 前半のバッハのアレンジものは、正確な技巧とヴァイオリンの参加のおかげで、かなりの成功を見せている。 リズムの工夫が今ひとつなため、原曲を聴いた後ではやや陳腐に響くのは、しかたないところだ。 原曲に忠実な表情のキーボードのプレイと、ロック的なワイルドさ、ある意味ルーズでアウトな感覚を代表するリズム・セクションをどう融合させるかは、かなりチャレンジングな課題なのだろう。 後半の組曲は、巧みなキーボード・プレイを綿密な構成にわりふった好作品。 前作同様音色やアンサンブルに品のよさがあり、エキサイトしてもリズムを乱すようなことはない。 ハモンド・オルガンのプレイやたたみかけるユニゾンなどワイルドな面もあるのだが、破天荒というよりは、全体の構成の中でしっかり計画されたプレイとして映る。 バランスのとれた好作品と見るか、パワーや意外性はさほどでもない凡作と見るかは、純粋に好みの問題だろう。 リンデンは EKSEPTION よりもソフィスティケートされた演奏を求めていたようなので、このでき映えは納得するものだったに違いない。 モズレイのシャープなドラムも冴え渡る一作目を凌ぐキーボード・ロックの名作。

(MUSEA FGBG 4176.AR)

 The White Ladies

 
Rick Van Der Linden keyboards
Cor Dekker bass
Peter de Leeuwe drums
Dick Remelink saxes, flute
Hans Jacobse additional keyboards
Hetty Smit vocals
Harry Schafer narrator
Job Maarse conductor of The Benny BEHR Strings

  77 年発表の第三作「The White Ladies」。 前作から二年を経た本作は、モズレーとエイクの脱退後旧 EKSEPTION のメンバーと弦楽アンサンブルの参加を得て、製作された。 グループ名のクレジットも「TRACE」ではなく、「Rick van der Linden & TRACE」となっており、グループからプロジェクトへと形を代えたことが分かる。 さて、内容は、「White Ladies」という不気味な妖精譚風の訓話を題材にした、トータル・アルバムである。 小曲が、ほぼ切れ目なしに続いて物語を成している。 サウンドは、リンデンのキーボードを中心としたクラシカルかつジャジーなキーボード・ロックであり、ムーグ・シンセサイザーの多用が特徴だろう。 他にはチェンバロ、ハモンド・オルガン、メロトロンなど。 EKSEPTION らしいパワフルな管楽器を用いたジャズ・タッチも盛り込んでいるのは、メロディアスな演奏に変化をつけて、イージー・リスニング化してしまうのを避けるためだろう。 プロデュースはリンデン、ピーター・ニーベル、ヨープ・マールセ。

  1曲目「Legend(Part 1)」(3:29)
  2曲目「Interlude I」(0:20)
  3曲目「Confrontation」(4:11)チェンバロと女性ヴォーカルをフィーチュアしたキャッチーなクラシカル・ロック。 音数の多いドラムスとチェンバロの小刻みなフレーズが、よくマッチしている。 ピアニカのようなキーボードが愛らしい。

  4曲目「Interlude II」(0:49)
  5曲目「Dance Of The White Ladies」(1:34)サックス、ムーグによるジャジーでコミカルな作品。

  6曲目「Doubts」(3:28)オルガン、ストリングスをフィーチュアした PROCOL PARUM 調の哀愁ある作品。 展開部はピアノ、木管、ピアニカ、チェンバロらによるアンサンブル。 ロマンティックです。

  7曲目「Trace I」(0:16)
  8曲目「Witche's Dance」(2:36)ムーグ、クラヴィネットをフィーチュアしたソウル・ジャズ調のナンバー。

  9曲目「Surrender」(2:13)オルガン、サックス、ピアノらによるメロディアスでロマンティックなナンバー。 エンディングのオルガン、ベースによる対位的なアンサンブルもいい。 FOCUSSOLUTION を思わせる世界である。

  10曲目「Interlude III」(0:30)
  11曲目「Parthétique」(2:26)ベートーベンの「悲愴」第二楽章のアレンジ。ピアノ、オルガンによる。後半生ストリングスもあり。

  12曲目「Legend(Part 2)」(2:20)モノローグ。
  13曲目「Interlude IV」(0:10)
  14曲目「The Rescue」(3:48)ベートーベンの「救出」のアレンジ。
  15曲目「Trace II」(0:25)
  16曲目「Back Home」(3:18)
  17曲目「Meditation」(3:58)メロトロン。
  18曲目「Flash Back」(0:33)
  19曲目「Conclusion」(3:34)

(MUSEA FGBG 4189.AR)


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