TRION

  オランダのプログレッシヴ・ロック・グループ「TRION」。 FLAMBOROUGH HEAD のキーボード奏者エド・スパニンハ氏の別ユニット。作品は二枚。 メインバンドのためのサウンド実験からそのままユニット結成に至ったらしい。

 Tortoise

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Menno Boomsma drums
Eddie Mulder guitars, mandolin, bass
Edo Spanninga mellotron of flute, oboe, strings, organ, cello, vibe and choir

  2003 年発表のアルバム「Tortoise」。 内容は、メロトロンを駆使したライトなシンフォニック・ロック・インストゥルメンタル。 初期 YESGENESIS、アンソニー・フィリップス、ゴードン・ギルトラップ辺りをベースにしたような 70 年代プログレ路線である。(余談だが、GENESIS には予想したほどは似ていないと感じた) したがって、メロトロンがゆるゆると流れ、アコースティック・ギターが静々とアルペジオを奏で、エレキギターが伸びやかなフレーズをとうとうと歌い上げる。 格段卓越した技量を見せるわけではないが、音と基本的な作りがいいために、音楽としてはきわめて優れたものになっている。
   また、キーボード・サウンドは、すべてメロトロン(サンプリング)によるものらしい。 おそらくユニット結成のきっかけとなった音響実験とは、メロトロン・サウンドのテストだったのだろう。(だいたい、ユニット名が「TRIO + TRON(メロトロン・トリオ)」なんだろうし) さまざまな音が使われているが、いかにもメロトロンらしいメロトロンとして耳になじむのは、やはり、ストリングス、フルート、あまり聴こえないがクワイヤだろう。 もともとサンプラーだったメロトロンが独自の再現性(再現性が悪いともいう)に着目されて活用されるようになって、挙句、メロトロンの音をサンプリングする、という奇妙な状況になっているのがおもしろい。 ちょっと不思議なのは、普通にハモンド・オルガンに聴こえるオルガンの音や、本当の木管に聴こえるオーボエ、つまりオルガンや木管については元の楽器の音をよく再現しているところである。 クレジットによればこれらもメロトロン経由の音なのだろうが、音の真正性(原楽器に似ているということです)から考えてサンプリング機能は現代の機器を使用して、キーボード・トリガーによるテープ再生のみ行わせている(正確には、それをさらにデータとして保存している?)ということだと理解している。
  特徴的なのは、クラシカルなアンサンブルだけでなく、ラウンジ調というかジャジーなイージー・リスニング風の演奏を見せるところだ。 テーマとなる旋律にしても親しみやすいものが主であり、こういった人懐こさは、ダッチ・ロックの伝統のような気がする。 90 年代の北欧辺りのメロトロン・ロックと比べると、暗鬱な感じが皆無であり、高校生バカップル的な甘さ、能天気さがほぼ 80% で後は文学青年的メランコリーが 20% くらい、深刻さはほとんどない。 だからといって、甘ったるすぎてうんざりすることもない。 それは、枯れ果てたメロトロンによる哀愁の調べが渋みを加えてうまくバランスを取っているせいでもあるし、基本的なポップ・テイストに嫌味がないせいでもある。 さらに、あからさまなクリシェやコピーもないので、クラシカルな格調の高さが素直に感じられるというのもある。 また、ドラムスがなかなかの名手なので、バンドとしてのノリもしっかりとある。 70 年代初期のサウンドの要素を使って 70 年代後半風のやや垢抜けたポップス風ロックを奏でている、といった妙な思いも浮かんでくる。
  明快な主題を軸に、70 年代プログレのエッセンスであるサウンドを丹念に並べて作られた佳作である。 WILLOWGLASS と同じようなアプローチながら、ヒネリを抑えてメロディアスな聴きやすさを進めたイメージである。 ヴォーカルはいないが、その代わりをギターやキーボードで丹念にやっている、というのが近い。 泣きのギターはあるものの、悲壮感がさほど強くないのでドラマに欠けるという感想もあるやもしれない。
  全曲インストゥルメンタル。 ジャケットに描かれた巨大なカメ、Jemetrion の物語を綴ったトータル・アルバムのようです。

  「Tortoise」(5:25)
  「The New Moon」(7:59)
  「Hindsight」(3:33)
  「Radiation part 1」(1:27)
  「Jemetrion」(6:05)
  「Radiation part 2」(1:16)
  「The Seagulls」(5:53)
  「Hurt」(1:47)
  「Tribulation」(7:03)力強いシンフォニック・チューン。
  「Spectrum Of Colours」(3:17)
  「Endgame」(5:39)ギターとメロトロンが高鳴る感動のエンディング。
  
(CYCL 135)

 Pilgrim

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Menno Boomsma drums
Eddie Mulder guitars, bass
Edo Spanninga keyboards

  2007 年発表のアルバム「Pilgrim」。 内容は、70 年代復古型のメロディアスなシンフォニック・ロック・インストゥルメンタル。 今回はメロトロンに加えて前作では使用しなかったシンセサイザーやハモンド・オルガン、アコースティック/エレクトリック・ピアノも使っている。 前作のなだらかな丘をたどるようなギターとメロトロンのコンビネーションもよかったが、ハモンド・オルガンやピアノによる独特の歯切れのよさや凛とした表情が、これまたすばらしい。 明朗快活にしてギミック感もある演奏はプログレ王道的であり、前作を上回るカラフルなサウンドもあわせると、すばらしいステップアップといえるだろう。 クラシカルな上品さと洒脱な感じは、CAMEL いや、FOCUS 直系。 エレキギターのプレイは、ヨーロッパの CAMEL フォロワーによくあるスタイルだが、かなり意図的に 70 年代風のブルージーな重みを演出して甘めのトーンと組み合わせていると思う。 また、アコースティック・ギターの透明で枯れた音色と密やかなタッチが、華やかなキーボード・サウンドといいコントラストを成している。 そして、5 曲目のような躍動感あふれるアンサンブルは、YES 系である。 ただ、個人的には、ギターが魅力的なリフを刻むような場面では「ここでヴォーカルが入れば」という思いが捨てられない。 アンサンブルを補完するためなので、初期の CAMEL のようなスキャット風のものでも一向に構わない。
   スリーヴによれば今回もカメの Jemetrion の旅が続いているらしい。(ジャケット裏にも、さり気なくカメの写真がある) ちなみに、ジャケットは前作がロジャー・ディーン風だったので、今回はヒプノシス風にしたんだそうです。 凝りすぎ。

  
(CYCL 161)


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