TITUS GROAN

  イギリスのジャズロック・グループ「TITUS GROAN」。 69 年結成。 グループ名はマーヴィン・ピークのアダルト・ファンタジー「GORMENGAHST」第一部のタイトルから。 DAWN レーベルに残した唯一作は、管楽器をフィーチュアした 70 年代初期の典型的ジャズロック。

 Titus Groan

 
Stuart Cowell guitars, organ, piano
Tony Priestland saxes, flute, oboe
John Lee bass
Jim Toomey drums, percussion

  70 年発表の唯一のアルバム「Titus Groan」。 内容は、トニー・プリーストランドの管楽器をフィーチュアした初期のジャズロック。 R&B に強く影響された 60 年代ビート・サウンドと、サックス、フルート、オーボエまでを動員した正統的なジャズ・プレイを基調に、ブルーズ・ロック、カントリー、フォーク・テイストまでも盛り込んだ、なかなか贅沢なサウンドである。 演奏は、パワフルにして安定したリズム・セクションを軸にがっちりまとまっており、メンバーのキャリアや素養がうかがわれる。 特に目立つのは、オーボエの音色だが、ロック・バンドでこの楽器を用いるのは珍しい。 他には、NUCLEUS のカール・ジェンキンスと HENRY COW のリンゼイ・クーパーくらいしか思い当たらない。 荒削りなギターやリズムのワイルドさを、ふくよかな音色の管楽器、オルガン、ビート風コーラス、アメリカンなメロディ・ラインで和らげてバランスをとり、全体に荒々しくも躍動的でキャッチーな曲調に仕上げている。 ワイルドなのに泥臭さがなく、粋な音なのだ。 また、フォーク・タッチのアコースティックかつメランコリックな味つけも、ていねいに施されている。 よく聴けば、ギターもリズム・セクションも健闘している(ドラムのプレイは多彩であり、ベーシストは敏捷にしてツボをおさえた達人)ことに気がつくが、やはりヘヴィな音とバランスするメロディアスな管楽器とコーラスあってのこの出来だろう。 別の見方をすれば、歌を中心に 60 年代風味が強く残るにもかかわらず、管楽器を中心とした器楽の充実が表現の幅を広げているともいえるだろう。 ジャケットやグループ名からは、渋いブリティッシュ・ロックというイメージが浮かぶかもしれないが、実はとても華やいだ熱気の感じられる作品である。 インストゥルメンタルの充実した大曲と、さわやかなアメリカ風ヴォーカル・ハーモニーのバランスもよし。 傑作といえるでしょう。 プロデュースはバリー・マレイ。 なお、ベーシストのジョン・リーは、ELEVENTH HOUSE の「あの」ジョン・リー。 本作後渡米し、フュージョン界の名士となる由。

  「It Wasn't For You」(5:31)ギター、サックスがユニゾンするブルージーなテーマをさまざまな音色で彩ったヘヴィ・ナンバー。 ヴォーカル、サックスを軸にオルガン、ピアノ、ギターがユニゾン、ハーモニー、バッキングにぜいたくに散りばめられている。 EAST OF EDEN からエキゾチズムと極端なヘヴィさを取り去った感じに近い。

  「Hall Of Bright Carvings」(11:36)トラッド調の印象的なテーマからスリリングな場面展開を繰り返して、リズミカルに突き進むヘヴィ・ロックへと変貌する大作。 オーボエの雅な音やフルートの侘しげな音が、アクセントする。 中盤以降、湧き上がるビートポップ風のコーラスが幻想的だ。 終盤鋭くたたみかけるリズムへと変化し、オーボエ・ソロがフィーチュアされる。 他のメンバーの丹念にして軽やかなプレイと比べると、ギターはやや分が悪いように感じてしまうのは、技量というよりもジャズとロックの表現の微妙な差異なのだろう。 ギターがバッキングに回り、管楽器がリードする全体演奏のほうが、まとまりはいい。

  「I Can't Change」(5:43)フルートをフィーチュアしたメランコリックなバラードがねじれてゆくプログレッシヴな作品。 哀愁のフルートに導かれて始まるは、メランコリックな歌メロ・コーラス。 沈み込むようなアコースティック・ギターのアルペジオとヴォーカルに広がりをつけるオルガン。 唐突なリズム変化から、メタリックなギター・フルートのリフがドライヴする間奏はかなり怪しい。 ギター・ソロから続くコーラスまでが、イキナリ西海岸風なのもおもしろい。 終盤はアップ・テンポでフルートとスキャットが走る。 キャッチーなナンバーに唐突な変化を押し込んだ意欲作である。

  「It's All Up With Us」(6:06)メロディアスなサックスと胸キュンのヴォーカル・ハーモニーが印象的なナンバー。 前曲でも一瞬現れた西海岸風のデリケートなメロディ・和音を思い出したかのように取り上げ、お洒落なジャズ風味を加えている。 後半、次第に走りながら盛り上がるインストもカッコいい。 しかし、加熱しても荒々しくなるのではなく、密度が上がり息づまるようなスリルがある。 ナチュラルな曲想で勝負した名曲。 何気ないオブリガートに、70 年とは思えない洗練を感じる。

  「Fuschia」(6:16)クールにしてあまやかなビート風コーラスをフィーチュアした快調なナンバー。 コーラスをしっかり支えて軽やかなフルートとギターが活躍する。 尖ったギターとまろやかなフルートの音色や節回しの違いもおもしろい。 ヘヴィなサウンドやギターの弾きまくりが下品にならないのは、ほのかにビター・スウィートなコーラスのおかげ。


  89 年の See For Miles からの CD にはオリジナル・アルバム未収録の作品がボーナスでついている。 また曲順は See For Miles のものも今回鑑賞に使用した日本盤も、オリジナル LP と異なる。 理由は不明。

(VICP-60930)


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