イタリアのネオ・プログレッシヴ・ロック・グループ「THE NIGHT WATCH」。 93 年 MALLIRION や GENESIS、KING CRIMSON のコピーを行なっていたシモネ・ロセッティとベースのアントニオ・モーリを中心に結成。 97 年アルバム・デビュー。 2010 年現在、作品は六枚。 第二作からグループ名を THE WATCH に改めている。 現代最強のオールド GENESIS クローン。GENESIS のカヴァーも盛り込んだツアーも大好評のようだ。 2010 年新作「Planet Earth?」に続き、2011 年 1 月にも新作発表予定。
| Simone Rossetti | vocals, moog, mellotron, solina synth, flute |
| Ettore Satati | guitars, bass pedal |
| Roberto Leoni | drums, percussion |
| Marco Schembri | bass, guitars |
| Fabio Mancini | organs, pianos, synth, mellotron |
| guest: | |
|---|---|
| Sergio Taglioni | arrangement, piano, analog & digital orchestrations, moog solo on 7 |
2007 年発表の第四作「Primitive」。
内容については、初期 GENESIS そのもの、ヴォーカル含め演奏があり得ないことにほとんど同じ、という以外あまりいうことはありません。
ヴィンテージ・キーボード類があまりに普通に使われているのだが、本家ならここにこういう音があるな、というところにずばりそういう音がある。
ナリキリ度という点では今までの作品の中で一番なのは間違いない。
その上、バラード系が主のパフォーマンスが非常に安定している。
ただし、安定感はワンパターンとほぼ同義であり、最大限に振り切っても本家の芸風の範囲内なので予想外の展開というのがほとんどない。
個人的にはクローン完璧度だけを期待しているわけではないので、独自性でそういう面を見せてくれても全然かまわないのだが。
たとえば、前作で見せたハードロック風味はけっこう新鮮だった。
4 曲目はなんとかそういう揺らぎを見せてくれる佳作。
6 曲目は、「The Battle Of Epping Forest」を思わせる堂々たる物語調シンフォニック・ロック。(ただし APR シンセではなくオルガンとメロトロン)
最終曲は、浄福と慈愛の響きがまるでキューブリックの映画のエンディングのようにアイロニカルに胸を打つ美しい作品。
歌詞が本家の変態文学系に倣えばほぼ完璧である。
そして、最終曲は LE ORME のように豊かなイマジネーションとロマンチシズムを打ち出した「イタリアン・ロック」としての傑作。デジタル・オーケストラが効果的に使われている。
この作品は、本アルバムではゲストになっている前任キーボーディストの寄与が大きいようだ。
ヴォーカルは英語。
かそけきメロトロンが古の夢を描きます。
(LIZARD CD0051)
| Simone Rossetti | vocals |
| Antonio Mauri | bass |
| Francesco Zago | guitars, programming |
| Giovanni Alessi | keyboards |
| Diego Donadio | vocals |
97 年発表のデビュー・アルバム「twilight」。
内容は、GENESIS、KING CRIMSON の影響を強く受けたネオ・プログレらしいシンフォニック・ロック。
ヘヴィだがするするとすべるよう歌うギター、ストリングス系を主に背景を淡く彩るキーボード、そして表情豊かなヴォーカルなどを手駒に、ヘヴィなナンバーから叙情的な小品まで多様性を誇る作品。
第一印象は「劇的」。
プレイには安定感があり、音量/音質の変化も巧みである。
イタリア的なものよりも、初期 MARILLION をフォローするネオ・プログレの様式を感じさせる。
他のネオ・プログレのバンドと異なるのは、KING CRIMSON を思わせる重量感あるダークな演奏もあること。
ヴォーカルは英語でピーター・ガブリエルに酷似。
PICK UP/LIZARD レーベル。
「My Ivory Soul」(8:40)
ヘヴィなインストとシアトリカルなヴォーカルをフィーチュアした MARILLION 風のナンバー。
重量感たっぷりの演奏と表情・声色を駆使する悲壮なヴォーカルの取り合わせは、CRIMSON と GENESIS の中間とも HR/HM とネオ・プログレの中間とも取れる。
ナーバスでややヒステリックなギターは、ハケットよりはフリップ。
また、ヴォリューム、ダイナミクスの幅も大きく、演出はひたすら劇的である。
特に空ろな静寂へと落ち込むシーンが印象的だ。
ストリングス調のメロトロンも使われている。
歌詞は内省的。
「The Theme」(1:30)クラシック・ギターとアコースティック・ギターのニ重奏。
ソフトなメロディとアルペジオによるクラシカルなデュオだ。
バックを静かにそめあげるシンセサイザーは、宇宙を感じさせる。
エンディングは、なぜかカモメの鳴き声と潮騒である。
おもわず一息だ。
「The Fisherman」(8:41)オープニングは、叙情的なピアノ伴奏とハケット風のギター、そしてガブリエル風ヴォーカルなど、完全に GENESIS ワールド。
しかし、リズムが入ってからのシンセサイザー、ギターとヴォーカルによるハードなサウンドは、ぐっと現代的である。
激情と虚無を揺れるヴォーカル・パートには、優れたドラマがあり、そして、あたかも別の曲のような後半のインスト・パートでは、静寂を彩るシンセサイザー、アコースティック・ギターと破壊的なアンサンブルとの対比が見事。
シンセサイザーは地味な音色だが、強弱の振幅が大きい曲の中では、とても効果的だ。
「Tomorrow Happened」(9:47)核の脅威をテーマにしたストーリー仕立ての大作。
うなりをあげるベースと叩きまくるドラムが攻撃的なリズムを作り出し、カラフルなシンセサイザーとメロディックなギターがストーリーを支えて行く。
ヴォーカルは、幾通りかの役を声色も使って表情豊かに歌い上げており、このドラマの主役である。
短い周期で静と動を激しく行き交う前半は、動の部分のバッキングがとても激しくスリリング。
多彩でストレートな音色のギターのフレージングとシンセサイザーの無機的な響きの使い方もうまい。
Siegfrid のモノローグで始まる後半は、オープニングの情感ある雰囲気がすばらしい。
ハードなアンサンブルとピアノを使った引きの部分を組み合わせつつ、クライマックスに向けて駆け上って行く。
ドラマチックだ。
前後半ともに、ギター/シンセサイザー、ドラム/ベースによるハードなインストゥルメンタルが冴えており、ヴォーカルとの絡みも迫力満点である。
「The Black Cage」(8:43)全体に静かな落ちつきと繊細さを感じさせる歌もの。
演奏は、ヴォーカルを支えることを一義にしており、他の曲のように凄まじいダイナミクスはない。
エモーショナルなヴォーカルとバッキングががっちりと手を組んで進む、重厚で正統的なシンフォニック・ロックといえるだろう。
メロトロンの音はシンセサイザーだろうか。
ピアノも美しい。
エンディングに向けて盛り上がる演奏が、やがてギターへと収斂してゆく様子はかなり感動的だ。
「A Game with Shifting Mirror」(8:02)ヘヴィ・メタリックで破壊的なインスト・ナンバー。
変拍子や攻撃的なフレーズ、ビジーなユニゾン、急激なブレイクなどを駆使した、あたかも嵐が吹き荒れるようなけたたましい演奏である。
極端な静と動が交代しめまぐるしく展開してゆく。
前半ギター・リフがリードする場面では、様々な音が絡み合ってゆき、重みと迫力はまさに KING CRIMSON。
中盤、ミステリアスな演奏が次第にシンフォニックな様相を見せはじめるところも美しい。
だがそれも、アグレッシヴな演奏に取って代わられ、息つく暇もない。
そして最後の過激なユニゾン。
オルガンやギターのコンビネーションは、胸のすくカッコよさだ。
音量の変化も大きく、終わりそうで終わらない悪夢のような曲だ。
トリッキーな変化にも富む。
特筆すべきはドラムだろうか。
「Flower of Innocence」(3:50)静かでメランコリックな小品。
存在感のあるクラシック・ギターによる、突き抜けるような色調をもつメロディが美しい。
フルートとの重奏は美しくも沈痛である。
無邪気な子供時代の裏で何かが失われてゆくというテーマも重い。
ドラマチックな曲展開が印象的な作品。
このドラマ性は、パワフルかつ重厚なアンサンブルとシアトリカルなヴォーカルの組み合わせによって生まれる。
英国ネオ・プログレの影響は大きいのだろうが、緩急/音量の変化、頻繁な曲調の変化などに、イタリア独特のしつこさというべきオリジナリティを感じる。
リズム・セクションのうまさとミドル・テンポを主とした重みのある曲調は、不遇の 80 年代を経て花開いたネオ・プログレッシヴ・ロックの成長の証である。
6 曲目のインスト・ナンバーの大作などは象徴的だ。
スタイルの基本は、ヘヴィでテクニカルなものであることがよく分かる。
また、厚さのあるメロディアスなアンサンブルとアコースティックな音によるパートのコントラストを用いた展開は、きわめて堂に入っている。
GENESIS 風のドラマ性に加えて KING CRIMSON のダイナミクスを持ちあわせたスーパーな作品といえるだろう。
しかしながら、製作の中心となっているお化粧ヴォーカリストのスタンスは、完全に CITIZEN CAIN とおなじようなので、ガブリエルが脱退しなかったら GENESIS は今頃どういう音楽になっただろうということを道を歩きながら考えるくらい、GENESIS が好きな方にしかお薦めできません。
(LIZARD CD5490072)
| Simone Rossetti | vocals, flute |
| Marco Schembri | bass |
| Simone Stucchi | programming |
| Roberto Leoni | drums, percussion |
| Valerio Vado | guitars |
| Gabriele Manzini | keyboards |
2001 年発表の第二作「Ghost」。
ヴォーカリスト以外、メンバーが全員交代。
GENESIS、初期 MARILLION 風味はさらに強まり、そこへ現代のロックらしい自然なヘヴィネスを交えている。
ポンプというよりは、「正統 GENESIS リヴァイヴァル」という称号で呼ぶべきだろう。
轟々たるメロトロン、暗鬱に高鳴るオルガン、アタックよりもサスティンを活かしたギターなどが蹴っつまづきそうな変拍子で弾け、奇怪な和声によるハーモニーでミステリアスな危うさをもつ世界をみごとに描き出している。
リード・ヴォーカリストは、往年のピーター・ゲイブリエルそのものな歌唱に加えて、フルートも奏でる。
切々と訴えかける表情にはすでに風格すらあり、単なる「なり切り」では済まされない存在感がある。
そして、minor の泣き泣きパートだけではなく、major の愛らしいところやコミカルなところも、きちんと演じ分けている。
元祖 GENESIS と比べると、貧血を起こしそうなほど印象的な旋律やプレイは見当たらないのだが、これだけ雰囲気ができあがっているのだがら、アレンジは相当研究しているに違いない。
ドラマの流れはきわめて自然である。
(ただしややワンパターン。コード進行にとらわれすぎていて、大胆さを欠くように思う。また、リズムの切れはさすがに本家に及ばず)
IQ と比べるとねじくれたような暗さと陰湿さがある。
かなりの出来にもかかわらずなぜか地味であり、なかなか印象に残りにくいところが弱点。
ちょっとくらいハッタリがあってもいいのだが、あえてそうしないところにプライドがありそうだ。
ヴォーカルは英語。
プロデュースは Programming 担当のシモーヌ・ステュッチ。
「DNAlien」(8:36)冒頭から OLD GENESIS 節炸裂。オルガンとメロトロンの轟きに気が遠くなる。
「The Ghost And The Teenager」(8:38)
アコースティック・ピアノが美しく病的なバラード。
「Heroes」(9:27) GENESIS ではなく初期 MARILLION な作品。
どうやら GS か 一部 HM のような訴えかけ調が強すぎると、知性が感じられずに、GENESIS に聴こえない模様。
「Moving Red」(6:34)
「Riding The Elephant」(3:38)
「...And The Winner Is...」(10:11)
(LIZARD CD0022)
| Simone Rossetti | vocals, flute, dtambou, atmospheres |
| Marco Schembri | bass, guitars |
| Roberto Leoni | drums, percussion |
| Ettore Satati | guitars, bass pedal |
| Sergio Taglioni | piano, mellotron, organ, moogs, synthesizers |
2004 年発表の第三作「Vacuum」。
ギタリスト、キーボーディストはメンバー交代。
クラシック GENESIS スタイル継承を基本に、同時代的なサウンドや表現も盛り込んでいる。
器楽を中心に、前作よりも作品の表情に幅が出たようだ。
たとえば、小気味よさや弾力性など。
音とパターンは毎度おなじみだが、作風の向きが若干違うといえばいいだろうか。
怪しい語り部調の歌と怪奇幻想がベッタリと続くという感じはなく、的確な演出が施されてメリハリができている。
キレのいい目まぐるしい器楽に耳を奪われることも多い。
(GENESIS 風の演奏をする P.F.M に通じる、というややこしい連想も)
オルガンのほとばしりやギターの咆哮とともに風を巻いて走る姿がじつに決まっている。
また、製作面も充実している。
個人的には、4 曲目「Shining Bald Heads」がお気に入り。
6 曲目「Goddess」は、コンパクトながら 25 年にわたるポンプ・ロックの収穫として満足のゆくものである。
表題作は、グロテスク趣味(パノラマ島奇譚か、ドクターモローの島か)が微妙なマイナー感を伴いながらも、正統的なプログレッシヴ、シンフォニック・ロックとしての力強さを見せる不思議な作品。ハードロック風の表現やサイケデリックな音響なども大胆に取り入れた展開は、あたかも、本家が 75 年以降に歩んだかもしれない別の歴史を現実のものとしているかのようだ。
ヴォーカルの力量とバンドの演奏力がバランスして音楽全体の調和が取れた傑作アルバムといえるだろう。
ヴォーカルは英語。
プロデュースは、シモーヌ・ステュッチ。
「Hills」
「Damage Mode」
「Wonderland」
「Shining Bald Heads」
「Out Of The Land」
「Goddess」
「Deeper Still」
「The Vacuum」
(LIZARD CD0035)