TASAVALLAN PRESIDENTTI

  フィンランドのジャズロック・グループ「TASAVALLAN PRESIDENTTI」。 68 年、ギタリストのユッカ・トローネンを中心に結成。 74 年解散。 アルバムは四枚。 ブルージーな英国風のジャズロック・サウンド。 ライヴ・アルバムの発掘を願っています。

 Tasavallan Presidentti

 
Jukka Tolonen guitar
Frank Robson vocals, piano, organ
Juhani Aaltonen saxes, flute
Vesa Aaltonen drums, percussion
Mans Groundstroem bass

  69 年発表の第一作「Tasavallan Presidentti」。 内容は、ずばり同時期のブリティッシュ・ロック。 ブルーズ・ロックをベースに、ジャズ・テイストを交え、管楽器や鍵盤も多用してギター・ソロも充実させた演奏である。 TRAFFICCOLOSSEUM ほどの迫力は到底ないが、さまざまな音楽が奔放に跳ね回り、若々しく大胆なイメージがある。 リフ主体の演奏にソロを交えてゆくジャズ・スタイルを基本に、思い切りジミヘン調のギター・ソロ、フリーに近い暴れ方をするサックス、ブルーズ・ハープの代役のようなフルート、挙句はシンフォニックに高まるオルガンなどいかにもプログレッシヴな内容である。 CREAM のような快調なブルーズ・ロックへ管楽器がはっしと切り込むスリリングなナンバーから、フルートを用いた PROCOL HARUM 風(そう思うとギターがロビン・トロワーに聴こえてくる)のバラード、果てはポエトリー・リーディングまで、60 年代末の空気がたっぷりと入っている。 そして、歌メロのテーマは、ブルーズよりはややメロディアスでピースフルなものになっている。 また、ヴォーカルは英国人らしく、英語は自然。 WIGWAM のジム・ペンブローク同様、ゲイリー・ブルッカーを思わせるソウルフルな悪声型なのは、偶然なのだろうか。
  短いブリッジ風のイントロをちりばめたアルバム作りなど、アーティスティックな工夫はみられるが、音楽そのものは、まだビートポップ色が強く、思いほどは整理され切っていない。 しかし、それでも、ジャズロックの芽は、しっかりと育ち始めている。 聴きものは、縦横無尽に弾きまくるトローネンのギターだろう。 ブルーズ・ギターのエネルギッシュなソロから、ウエス風オクターヴが冴えるジャズ・ギターまで、堂に入ったプレイを見せている。 10 曲目は、北欧ジャズの香りもする野心的なジャズロック・インストゥルメンタル。 エンディング・ナンバーもセンスよいピアノ・ソロである。

  「Introduction - You'll Be Back For More」(6:15)
  「Obsolete Machine」(3:54)
  「Who's Free」(3:28)
  「I Love You Teddy Bear」(3:39)
  「Crazy Thing Nr 1」(0:45)
  「Drinking」(3:14)
  「Crazy Thing Nr 2」(0:14)
  「Driving Through」(4:31)
  「Ancient Mariner」(3:25)
  「Wutu-Banale」(6:37)
  「Woman Of The World」(2:52)
  「Roll Over Yourself」(2:26)
  「Thinking Back」(3:01)
  「Solitary」(3:43)
  「Deep Thinker」(2:42)

(LRCD 7)

 Lambert Land

 
Jukka Tolonen guitar
Eero Raittinen vocals
Pekka Poyry saxes, flute
Vesa Aaltonen drums
Mans Groundstroem bass

  72 年発表の第三作「Lambert Land」。 ヴォーカリストが交代し、管楽器に夭折の名手ペッカ・ポイリが加入。 トローネンは作曲でもリーダーシップを発揮し、ギターと管楽器をフロントとしたインストゥルメンタル中心のジャズロック色が大いに広まった。 英国同様、アートロック的なアプローチでロックとジャズを混交しているのだが、こちらはプレイヤーのジャズの素養のレベルが高いせいか、とにかくファンキーかつスリリングで、キレもいい。 けたたましく突っ走っても余裕があり、神秘的な場面も演出も冴えている。 COLOSSEUM ほど骨太ではないが、そのセンスは十分に匹敵している。 それでいて、フォーキーな幻想性によるしっとりとした抑えも効いている。 加工されすぎない、つまり、生っぽい素朴さをもつ音も魅力だ。 英国ロック・ファンには、たまらない逸品でしょう。 NEON、DAWN あたりのジャズロック・サウンドを期待して正解です。 タイトル・ナンバーは、エフェクトを利用したファンタジックな作品。 メロトロン(あるいは音質調整したハモンド・オルガン)も聴こえるように思います。 プロデュースは、サム・チャーターズ(Samuel Charters、なかなか変わった経歴の人のようです)。

  「Lounge」(8:25)サックスとワウ・ギターのスリリングなインタープレイに酔う。

  「Lambertland」(6:59) SAMURAI/WEB を思い出させる幻想的な作品。 サイケデリックなようでいて、なめらかに走り出す瞬間の切れ味がすばらしくいい。

  「Celebration Of The Saved Nine」(3:33)

  「The Bargain」(7:17)

  「Dance」(5:57)クラシカルなアンサンブルに爆発的なワウ・ギターが飛び込むユニークな作品。 フルートもギターに負けず大活躍。

  「Last Quarters」(8:14)

(LRCD 60)

 Milky Way Moses

 
Jukka Tolonen guitar, keyboards
Eero Raittinen vocals
Pekka Poyry saxes, flute, pianos
Vesa Aaltonen drums, percussion
Heikki Virtanen bass

  74 年発表の第四作「Milky Way Moses」。 WIGWAM へ加入したマンス・グランドストロムに代わって、ヒッキ・ヴィルタネンが加入。 作詞には、同じく WIGWAM のジム・ペンブロークが名を連ねる。 内容は、AVARAGE WHITE BAND のようなファンキーでエキサイティングな演奏と、メロディアスなヴォーカルが生む抜群のポップ・フィーリングをもつジャズロック。 超絶的にテクニカルで軽やかなサウンドの TRAFFIC なぞというものがあるとしたら(ないと思うが)、こんな感じだろう。 第一作と比べて、演奏の切れとサウンドの洗練度合いは、驚くほど進歩している。 ワウ・ギターやサックスが、甘みと汗臭さを両方とも抑え、絶妙のバランスに立っている。 即興的でハイテンションのインストゥルメンタルにもかかわらず、常にほのかなユーモアが漂い、耳にやさしい。 ブルーズ・テイストよりも、ポップなメロディとクロスオーヴァー的な緊密なアンサンブルが印象的な傑作だ。 ヴォーカルは英語。

  「Milky Way Moses」(8:18)センチメンタルなテーマを巡って、北欧ポップスらしいビロードのような管楽器アレンジ、トローネンのワウ・ギターとチャーリー・マリアーノのようなポイリのサックスによるスリリングかつユーモラスな対話、クラシカルなエレクトリック・ピアノ、ソウルフルなヴォーカルが冴える。 ヴォーカルは WIGWAM によく似ている。 テクニカルにしてまろやかな傑作である。
 
  「Caught From The Air」(11:36)

  「Jelly」(3:33) みごとなテクニカル・チューン。
  「Confusing The Issue」(5:42)
  「How To Start The Day」(13:45)
  「Piece Of Mind」(4:00)

(LRCD 102)


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