スペインのプログレッシヴ・ロック・グループ「TARANTULA」。ヴァレンシア出身。作品は二枚。
| Rafael Cabrera | vocals |
| M.G. Peydro | guitars |
| Vicente Guillot | keyboards |
| Jose Pereira | bass |
| Emilio Santonja | drums |
76 年発表のアルバム「Tarantula」。内容は、メロトロン、ストリングス・シンセサイザー、ピアノをフィーチュアしたシンフォニック・ロック。
ヘヴィなギターやうるさいリズム・セクションはきわめてハードロック調ながらも、オペラ風の歌唱からモノローグまでを見せるヴォーカルとキーボードの存在が全体を統御し、シンフォニック・ロックといえるサウンドになっている。
特に、キーボードを中心としたクラシカルなアンサンブルは、音こそワイルドながら、なかなかしっかりと曲想をつかんでいる。
メロトロン・フルートと丹念に刻むスネア・ドラムは、どちらかといえば、初期 KING CRIMSON というよりも、THE MOODY BLUES の初期作品を思わせる。
全体に、キーボード中心のクラシカルな演奏にスパニッシュなトーンを交えた、分かりやすい作品である。
楽曲の性格も明確であり、完成度の高い作品といえるだろう。
チープなシンセサイザーの音に我慢できれば、楽曲そのものは十分楽しめる。
ヴォーカルはスペイン語。
「Recuerdos(Remembrances)」(6:00)メイン・パートのフォーク・タッチからサビの朗々たるオペラまでをいきかうヴォーカル、メロトロン・フルート、ストリングス系シンセサイザーによるシンフォニック・ロック。
丹念なミドル・テンポがいい。
メロディ・ラインは、ほのかにスパニッシュ。キーボードは勇壮な交響曲風の演奏。
特に、中盤のオルガンのリードするアップテンポの演奏が、いかにもなシンフォニック調で微笑ましい。
「La Araña Y La Mosca(The Spider And The Fly)」(4:20)オルガン、ギターらによるクラシカルにしてせわしないトゥッティと、素朴でメロディアスなコーラスが交錯するイタリアン・ロック風の作品。
大仰なタム回しがじつに似合っている。
ヴォーカル・パートは、ピアノが入り、それなりに切ないポップ・フィーリングもある演奏だ。
一方、イントロから提示されるクラシカルなトゥッティは、アンサンブルそのものよりも音色の怪しさがすごい。
安っぽいシンセサイザーとメロトロン・フルート、手数の多い攻め立てるようなドラムスのせいだろう。
「Singladura Final(Final Run)」(6:16)スパニッシュな哀感の強い歌もの。
間奏は、二流のハードロケンロー。
メロトロン・フルート、アコースティック・ギターがフィーチュアされるも、マカロニ・ウェスタンの BGM のようである。
「Un Mundo Anterior(A Previous World)」(5:49)メロトロン・フルートをフィーチュアした、1 曲目にも通じる正調 THE MOODY BLUES 型シンフォニック・ロックから、ややリラックスしたファンタジー譚風の演奏へと進む叙情的な作品。
中盤はモノローグを含む幻想的な描写が続く。
THE MOODY BLUES を思い起こさせる理由は、メロトロンに対してワイルドにしてメロディアスなギターが絡んでくるせいだろう。
エンディングは、うっすらとコーラスも加わり、なかなか感動的。
A 面のまとめとしてはうってつけ。
「Imperio Muetro(Dead Empire)」(9:38)
シンセサイザーをフィーチュアしさまざまな演奏を巡る大作。
歪んだギターによる変則和音のアルペジオやヘヴィなユニゾンが KING CRIMSON を思わせる邪悪な演奏から、一転して、薫風たなびく世界へと突き抜ける。
素朴な味わいのシンセサイザーがリードする演奏から、伸びやかなヴォーカルへ進む。
ファンタジックなシンセサイザーが印象的だ。
中盤は、再び、JETHRO TULL 風の快速ヘヴィ・ロック。
髭もじゃの山賊の宴会のような趣である。
ギターとムーグによるかけあいは、ややもったりしているが、なんとかプログレらしさを演出。
やや迫力不足のユニゾンを経て、演奏は続く。
最後は、再び、朗々たるヴォーカルと乙女チックなシンセサイザーの演奏へ。
もう少しシャープに整えると、イタリアン・ロックの 1.2 流くらいと比肩したかもしれない。
「La Danza Del Diablo(The Devil's Dance)」(3:02)
オルガン、ギターのユニゾンによるテーマを軸とするリズミカルなハードロック。
唐突な笑い声やファルセットが不気味。
小気味いいハードロック・ギター、そして R&B 風味たっぷりのハモンド・オルガンが炸裂する。
このオルガン・プレイは出色。
「Lydia」(2:06)アコースティック・ギターをフィーチュアした小品。フェルナンド・ソル、デ・ラ・マーサの衣鉢を継ぐ哀愁のスペイン情趣あふれる作風。中盤のモーツァルト風のリズム、オルガンもカッコいい。インストゥルメンタル。
「Paisajes Pintorescos (Picturesque Landscape)」(7:06)
クラシカルなテーマによるヴォーカル・パートにヘヴィなギターを盛り込んだハードなシンフォニック・ロック。
チェンバロやオルガンを用いた細かなパッセージ、エモーショナルながらも教会音楽風の風格を備えたメロディ・ラインなど、ロマンティックにして重厚な響きがある。
中盤のヴォーカル・パートでは、ほのかにポップ・テイストも現れる。
ギター、オルガンによるスピーディでハードなアクセントも効いている。
全編存在感あるヴォーカルがリードするため、イタリアのカンタゥトレによるプログレ大作というような印象だ。
ヴェンチャーズと GENESIS が合体したようなコミカルなエピローグ風の展開が過激。
(NOVOLA 77 / SI-WAN SRMC 4003)