SYNKOPY & Oldrich Vesely

  チェコスロバキアのシンフォニック・ロック・グループ「SYNKOPY & Oldrich Vesely」。 ビートグループを母体にキーボーディスト、オルドリッチ・ヴェゼリをリーダーに再編。 80 年代に四枚の作品を残す(うち一枚は第二作の英語盤)。 英米各国で受難の日々を過ごすプログレッシヴ・ロックは、東欧で脈々と生き続けていた。

 Slunecni Hodiny

 
Oldrich Vesely Micromoog, ARP Omni, Clavinet, Fender piano,organ, piano, vocals
Vratislav Lukas Ovation acoustic guitar, Mircomoog, Clavinet, cello, vocals
Pavel Pokorny Micromoog, ARP Omni, organ, Fender piano, violin, vocals
Emil Kopriva guitar, vocals
Petr Smeja guitar
Jiri Rybar drums, percussion, Micromoog, vocals

  81 年発表の第一作「Slunecni Hodiny」。 アルバム・タイトルは「Clockwise」の意味。 内容は、70 年代プログレッシヴ・ロックのエッセンスを積め込んだ、ハードなシンフォニック・ロック大会。 ハードかつクラシカルな曲調を基本に、キーボードとヴォーカルがごり押しし、ほとんどテンションを落とすことなく、一直線に突き進む演奏である。 迸るキーボード、強いブルーズ・テイストのあるヴォーカル、テクニカルなギターらが、ひたすら叩きまくるドラムとともに、繰り広げる一大スペクタクルである。 曲間にはほぼ切れ目がない、つまり無窮動であり、全体で一つの大きな作品になっているといってもいいだろう。 ムーグ、アープの両シンセサイザーにオルガン、エレピも用いて、これでもかといわんばかりに分厚く音を塗り込め、怒涛の勢いでひた走る。 ギターによるハードロックやブルーズ風味も交えるが、基本は、EL&P に迫るパワフルなハードネスと YES 流のファンタジックな演出の効いたプログレッシヴ・ロックの系統である。 まさしく、ジャケット通りの音の奔流だ。 この手の音楽は、古臭くセンスに欠けると見なすか、涙を流して聴き惚れるかどちらかしかない。 もちろん、男性的なヴォーカルを中心にした叙情と哀愁のシーンもたっぷりある。 昨今、たおやかなケルト風味を漂わすアコースティックでシンフォニック、やや女性的なサウンドが一つの流れとなっているが、個人的にこういった音は、メロディアスで叙情的でありこそすれ、いわゆるプログレとはニュアンスが異なるように思う。 そして、シンフォニック・ロックというのは、後期ロマン派からワーグナー、ストラヴィンスキー、バルトークのロック的解釈という面が強いと思っているので、本作のような男性的な音こそが正鵠を射たものに感じられる。 無論、これは雑談です。
  5 曲目は、ファン同定のためのリトマス試験紙、いや試金石として最適の重厚な作品。 全体に YESEL&P のインストゥルメンタル・パートを思わせ、ICONOCLASTASOLARIS とも共通する音である。 5 曲目から発揮され始める壮絶な昂揚は、そのまま長いクライマックスとなり、8 曲目の大団円を迎える。

  「Introdukce」(2:54)
  「Hul V Slunecnich Hodinach」(6:04)
  「Jsi Nadherne Praveka」(8:21)
  「Intermezzo」(2:14)
  「Cerny Racek」(7:41)
  「Klavesove Extempore」(4:03)
  「Vodopad」(3:39)
  「Toulka Je Obla」(7:28)

(493163 2)

 Kridleni

 
Oldrich Vesely piano, organ, Hohner clavinet, Micromoog, Korg polysix, vocals
Milos Makovsky electric & Ovation acoustic guitar, bass
Pavel Pokorny piano, organ, Hohner clavinet, Micromoog, Polysix, housle, violin, vocals
Vratislav Lukas cello, bass, Ovation acoustic guitar, vocals
Jiri Rybar percussion

  84 年発表の第二作「Kridleni」。 内容は、ツイン・キーボードを含む 5 人編成によるハード・タッチのシンフォニック・ロック。 曲は前作に比べるとやや小粒でありポップにこなれた面もあるのだが、男臭いヴォーカルは変わらずサウンドや表現にも「濃さ」がにじみ出ている。 ハードポップ調の聴きやすさとともに前作のような攻めのクラシカル・プログレ・テイストが若干後退しているものの、不協和音や変拍子を用いた展開がしっかりあってシンフォニックに高まるときに遠慮がない辺りに「素地のままプログレ」な辺境世界らしさがあふれている。 プラスティックな感触のポリフォニック・シンセサイザーが幅を効かせているところやストレートにハードロックな速弾きギターに 70 年代後半以降のやや様式化したものを感じてしまう可能性もあるが、それでも、冷ややかなシンセサイザーで強引に押し切るような演奏や一見時代錯誤的なロックンロール調こそが、英米とは異なる、東欧ならではの個性と気づけば、84 年にして出来過ぎの内容である。 また、アコースティック・ピアノやムーグは叙情的なアクセントとして配されていて、いい感じで機能している。
   リズム・セクションは、70 年代的な手数を惜しまないプレイであり、ヴォーカルはいかにも男臭く熱気にあふれている。 コブシの効かせ方は、ハードロックというよりはソウル、ゴスペル系である。 きわめてエキゾチックな響きのある原語のヴォーカルは非常に魅力的だが、同時に好みを分けるポイントにもなり得るだろう。 また、讃美歌風のハーモニーも用いられている。
   一部しか分からないタイトルから類推するに、哲学的テーマをもつ組曲形式の作品ではないだろうか。 楽曲は、二つのシンセサイザーとギターによるスリリングなアンサンブルに加えて、多声のコーラスやチェロなどによるブリッジも用いて、ドラマティックにうねりながら間断なく展開してゆく。 B 面ではややテクノ/エレクトロがかったところもあるが、これは時代を考えると自然なんだろうし、今となっては、そういう音がすでにノスタルジックなものになっている。 終盤のクライマックスは U.K. を思わせるスピーディな演奏が続く。 本作の英語盤「Flying Time」も発表された。

  「Kridleni」(1:23)
  「Kyvadlo(pendulum)」(1:37)
  「Homo Sapiens」(5:13)
  「Krupej(drop)」(3:49)
  「Krat Kolikrat(By how many times)」(2:48)
  「Spor(cause)」(2:15)
  「Leco」(0:53)
  「Blues O Vycepu」(4:01)
  「Kytarove Extempore」(1:11)
  「Modrinna Soustava」(4:38)
  「Srdce」(5:30)
  「Masox」(3:05)
  「Souzneni」(2:25)
  「Kridleni」(4:41)

(STEREO 8133 0407)


  close