SOLARIS

  ハンガリーのプログレッシヴ・ロック・グループ「SOLARIS」。 80 年結成。 ライヴ活動を経て、84 年「Marsbeli Kronikak」でデビュー。 86 年、活動停止するも 90 年に復活。 作品は四枚。 2000 年に結成 20 周年を迎え、三枚の未発表音源が発表予定。
  インストゥルメンタル主体のハードなシンフォニック・ロック。 シンセサイザー、フルート、ギターをフィーチュアした硬質な音色による荘厳な作風が特徴。

 Testament

 
Valeria Barcsik composer, keyboards
Peter Foldesi flute
Andras Kaptalan guitar
Laszlo Gomor drums, percussion
Tamas Pocs bass
guest:
Peter Nagi guitar, bass

  2008 年発表の作品「Testament」。 SOLARIS のリズム・セクションを中心とする後継グループ「NOSTRADAMUS」による第一作である。 フルートを大きくフィーチュアするなど基本的な芸風は SOLARIS と同じだが、より現代的なメリハリを効かせた、ロック色の強いサウンドになっている。 そして、荘厳さとけたたましさの均衡がみごとに図られている。 キーボード・サウンドの充実は今まで以上だろう。 へヴィなモダン・シンフォニック・サウンドに絡みつく独特の伝奇調、クラシカルな重厚さ、フォーキーで深い哀愁など、LITTLE TRAGEDIES にまったく引けを取らない内容である。 ワールド・ミュージック的な表現も効果的であり、なんというか「大物」感が随所に漂う。 クラシカルなシンフォニック・ロックのファンにお薦め。 元からのファンは一曲目でぶっ飛ばされると思います。

(BGCD 187)

 Marsbeli Kronikak

 
Istvan Czigman electric & acoustic guitar, synthesizer, keyboard efect, percussion
Robert Erdesz piano, organ, synthesizer, keyboard efect
Laszlo Gomor drums, percussion, synthesizer
Attila Kollar flute, recorder, synthesizer, keyboard efect, percussion, vocals
Tamas Pocs bass
guest:
Casaba Bogdan guitar
Gabor Kisszabo bass
Ferenc Raus drums, percussion
Vilmos Toth percussion

  83 年発表の第一作「Marsbeli Kronikak(火星年代記)」。 内容は、きわめて「電子音」的ニュアンスのシンセサイザーとヘヴィなギターが走り周る、ハード・シンフォニック・ロック。 テーマは、もちろんレイ・ブラドベリィの古典ファンタジー SF である。(もっとも、本作のサウンドが、この古典 SF のもつ、悲哀を帯びた幻想性と無常感とシュールなタッチが入り交じった不可思議な味わいをよく現せているかは、疑問である) シンセサイザーは、70 年代という時代を象徴するかのように登場し、未来的ハイ・テクノロジーというイメージを、今なおかきたてる。 本作は、そのシンセサイザーの魅力を大いに利用した冷厳なサウンドと、真正面から突進するようなダイナミックな演奏によって、いかにも SF らしい壮大な作品となっている。 シンセサイザーは、金管オーケストラ風のファンファーレのような演奏からテクノポップ風のビートまで、さまざまな種類の音をカバーしている。 冒頭のシーケンスを用いた演奏は、70 年代初期には決してなかったスタイルだ。 時期的に、80 年代初頭らしいエレ・ポップ的な面も当然ある。 一方、ギターはコテコテの「ハードロックなエレキギター」。 シンセサイザーの提示するイメージと比べて、プレイがやや紋切り型で古臭いのだが、じつに伸び伸びと前面に出てリードしてゆく。 そして、これらエレクトリック、メタリック極まりない音と、みごとなまでに対比して効果を上げるのが、フルートである。 一方に、フルートに象徴されるアコースティックなサウンドとフォーキーで哀感の強いメロディ・ラインがあり、もう一方に、メロディアスかつヘヴィなギターや管楽器らのアンサンブルによる雄大な規模感があり、これらが同居するところが大きな特徴だろう。 つまり、ややピコピコ気味ながらも濃厚な歌心もある、ということだ。 また、いわゆるクラシカル・テイストに民族風のアクの強さがあるところは、東欧、ハンガリーらしいというべきだろう。
   叙情的な場面の演出には、もっぱらフルートやコーラスが効果的に使用され、攻め込む場面では、緊張感のあるリズム・セクションとギター、シンセサイザーが、がっちりとスクラムを組んで突き進む。 特にギターは、ややメタリックな音色を活かして、メロディ・パートからバッキングまで、武骨なまでに力強いプレイを見せる。 そして、アコースティック・ピアノやフルートは、素朴にして美しい調べで「引き」のパートをリードしている。 シンセサイザーやギターとの表情/抑揚の違いによるコントラストの妙は、聴いて納得していただく他はない。 特に、アルバム終曲やボーナス・トラックでは、このフルートがみごとな存在感を示している。 (さらに味わうと、フルートのもつ独特の無機質な音色が、じつはシンセサイザーに通じていることが分かる。こうなると、「対比/対立」という構図が一気に崩れるのだが、そういう発見こそ鑑賞の醍醐味である)
  これらさまざまな複合作用の結果として、アンサンブルはきわめてシンフォニックなものとなっているのだが、音色、演奏、展開らをまとめた全体のイメージに、どこか硬質で非人間的な感触がある。 陳腐な例えだが、無表情にギクシャクしながら演奏する、ロボットのオーケストラのようなのだ。 誠実に展開する演奏とやや不器用な印象が表裏一体となっている、ともいえるだろう。 もちろん、それでも、曲の流れは勇壮にしてメリハリのあるものであり、語り口も滔々としている。 プログレッシヴ・ロックの秀作と呼ぶべきであるのは間違いない。
  四人のメンバーが操るシンセサイザーは、全体を通してリードにバッキングにフル回転であり、演奏の中心はこのキーボード・オーケストレーションである。 ソロでは、いかにもアナログらしい音色を様々に使い分けており、EL&P を思わせる純正プログレ調のプレイも多い。 ギターとともに疾走し、たたみかける場面におけるハードロック的なニュアンスも、EL&P と共通する。 また、もう一つの特徴である技巧的なフルートは、シンセサイザーに比して(類似性はありながらも)音色に暖かみがあり、トラッド風のメロディ・ラインが微妙な陰影をもっている。
  あえて難をいえば、せわしないリズムのためか、単純なシャフル・ビートに頼りすぎているせいか、演奏の切れが悪くやや野暮ったい印象を与えている。 そして、フォーク風のメロディ・ラインの歌わせ方、抑揚がやや雑な気がする。
  結論としては、硬質でメタリックな音によるクラシカル・ロックという表現が無難である。 STERN COMBO MEISSEN と比べると、ギターの存在とトラッド・フォーク的なメロディに特徴がある。 全編インストゥルメンタル。 3 曲目は、ドラマチックな大作。ギターが寺内タケシか加山雄三なのが気にならなければ、かなり楽しめる。 4 曲目は、EL&P 風のヘヴィネスと疾走感のあるゴリ押しロック。DEEP PURPLE の影響もあり。 6 曲目は、小曲だが勇壮なシンセサイザーのテーマがすばらしい傑作。 これを聴くと、ネタ的には MASTERMIND は、完全に三番煎じくらいかなと思います。 最終曲はフルートのメロディが哀しい、やや歌謡曲風の佳作。 ロマンティックです。 各曲も鑑賞予定。 なお、本作品以前にも EP を発表しているらしい。

  「Marsbeli Kronika 1.(The Martian Chronicle 1.)」(3:34)
  「Marsbeli Kronika 2-3.(The Martian Chronicle 2-3.)」(6:32)
  「Marsbeli Kronika 4-6.(The Martian Chronicle 4-6.)」(13:15)
  「M'ars Poetica」(6:39)
  「Ha Felszall A Kod(If The Fog Ascends)」(3:58)
  「Apokalipszis(Apokalypse)」(3:44)シンセサイザーによる勇壮なテーマが印象的。
  「E-moll Elojatek(Prelude In E Minor)」(0:29)
  「Legyozhetetlen(Undefeatable)」(2:46)
  「Solaris」(4:53)
  「Orchideak Bolygoja(The Planet Of Orchids)」(3:17)ボーナス・トラック。
  「A Sarga Kor(The Yellow Circle)」(4:54)ボーナス・トラック。

(GONG HCD 17819)

 1990

 
Casaba Bogdan guitar
Istvan Czigman guitar
Robert Erdesz keyboards
Laszlo Gomor drums, percussion
Attila Kollar flute, recorder
Tamas Pocs bass
Gabor Kisszabo bass

  90 年発表の第二作「1990」。 結成 10 周年記念のアルバムであり、新曲のほかに過去の未発表曲なども交えている。 フルートとへヴィなギターをフィーチュアした、フォルクローレ風味のある武骨なクラシカル・ロックという芸風は一貫している。 独特のせわしなさと不器用な感じが取っ付きを悪くしているが、慣れると実にさまざまなスタイルの演奏が盛り込まれていることが分かってくる。 アコースティック・ギターとフルートのデュオのようなアンサンブルでは典雅にして哀愁あふれる名演を披露するのだが、それを惜しげもなくヘヴィなギターとドラムスがぶっ潰し、ピコピコしたシンセサイザーが金切り声を上げたりする。 改めて唯一無二の個性派だと感じる。
   LP で発表後、ボーナス・トラック付で CD 再発された。 ここのジャケットは再発 CD のもの。

  「1980」未発表のラジオ用音源。7 曲。(LP では 5 曲だったが、再発 CD では 2 曲のボーナスつき)
  「Los Angeles 2026」元々 LP 第二作向けに録音された作品。23 分あまりの大作。
  「Éjszakai tárlat」10 曲から構成される、30 分長の組曲。
  「Ünnepi Koncert」「2026 年結成 40 周年記念コンサート」という副題の破天荒な作品。(80 年結成なのに 2026 年が結成 40 年なのは途中に活動停止時期があるからだろう)室内楽アンサンブルとの共演のようだ。全 7 曲。終曲はクラシックや映画音楽をコラージュしたおもしろい作品。

(HCD 37310-11)

 NOSTRADAMUS Book Of Prophecies

 
Casaba Bogdan guitar
Robert Erdesz Waldorf wave, Akai S6000, Moog prodigy, Emu protheus XR-2, Doepfer MS-404, Korg Mi, Yamaha TX 802
Laszlo Gomor Sonor drums, Zildjian cymbals
Gabor Kisszabo Washburn & Fernandes jazz-bass
Attila Kollar flute, vocals
Tamas Pocs Warwick fortress bass, Rickenbacker-4001
guest:
Ullmann Zsuzsa, Demeter Gyorgy, Gerdesits Ferenc Sr. vocals
Bator Tamas bass
Vamos Zsolt, Varga JanosEAST guitar
Muck Ferenc sax

  99 年発表の第四作「NOSTRADAMUS Book Of Prophecies」。 大預言者ノストラダムスを主人公に、時間と人間について思いを馳せた、架空の映画のサントラとしてつくられたコンセプト・アルバム。 重厚かつ劇的なサウンドの好作品である。 シンセサイザーとフルートをフィーチュアしたクラシカルなシンフォニック・ロックという特徴は、すでに確立されており、フルートやギターにトラッドなエレジー風味があるところも変わらない。 音そのものは、80 年代に比べて遥かに深みと写実性を高めており(特にシンセサイザーのサウンドに顕著)、息を呑むような迫力と広がり、そして鮮烈さがある。 ドキュメンタリー・フィルムの BGM のような高級なサウンドの上を、アナログ・シンセサイザーのファンファーレが流れるように響きわたるさまは、プログレ・ファンに、ああ生きててよかったという感慨のため息をつかせるに違いない。 コラールやヴォカリーズは、あまりに厳粛な美しさをもつために、巷のヒーリング・ミュージックがかって聴こえてしまうほどだ。 第三世界風のエキゾチックな効果音も、ADIEMUS や流行のケルト音楽を思わせる、本格的なものである。 これらだけでは、単なるゴージャスなニュー・エイジものになってしまうのだが、そこをぐっとロックへたぐり寄せ引き締めるのが、ギターの存在である。 層を成して重なり合うシンセサイザーの壁を貫いてゆくギターは、ハードロック的な激しい音とメロディアスなプレイでアンサンブルをひっぱっている。 やや懐かしめの泣きのプレイも多い。 また、リズム・セクションも音数を惜しまないプレイで、ギターとともに力強く演奏をドライヴしている。 特に、アルバム中盤では、乱れ吹きフルートとハードなギター、スピーディなロールを繰り返すドラムスが、ややジャジーな音も使いながら目一杯な演奏を繰り広げている。
  シンセサイザー、オルガンとギター、フルートが呼応しつつハードに攻め立てるトゥッティは、やはりプログレ以外の何ものでもない。 4 曲目でハッと目を醒ます方も、いるかもしれない。 また最終章、9 曲 10 曲目では、サックスやピアノ、アコースティック・ギターも現れて、スペインのフォリアにも似たテーマをもつ哀愁のシンフォニーからジャジーなバラードまでを、幅広くゆき渡る演奏を見せる。
  そして、これだけサウンドが洗練されても、クラシカルに角張った音色のアンサンブルがもつ、しなやかさとは無縁の、「ゴツさ」という特徴は変わっていない。 オペラチックなコラールなども交えた、多彩な楽器が絡んでゆく仰々しいサウンドだが、どこか洗練され切らない武骨さがあるのだ。 息抜きやユーモアといったものもあまり感じられず、不器用なまでに音が積み重ねられている。 愚直にして真剣なオーケストレーションが魅力の、本格シンフォニック・ロックである。 最初から最後まで緩むことなく一気呵成に突っ走る力作といえる。 各曲も鑑賞予定。

  「Book Of Prophecies」(20:35)
  「The Duel」(7:20)
  「The Lion's Empire」(6:40)
  「Wings Of The Phoenix」(5:08)
  「Ship Of Darkness」(5:46)
  「Wargames」(4:28)
  「The Moment Of Truth」(6:40)
  「Book Of Porphecies-Radio Edit」(3:25)ボーナス・トラック。

(BGCD 025)

 Musical Witchcraft

 
Attila Kollar flute, recorder, whitsle, tambourine, keyboards
Casaba Bogdan acoustic & electric guitar
Gabor Naszadi acoustic guitar
Zsolt Vamos guitar
Robert Erdesz keyboards
Laszlo Gomor conga, percussion
Gabor Kisszabo bass
Tamas Pocs bass
Fernc Gerdesits vocals
Szilvia Attila vocals
Zsuzsa Ullmann vocals

  98 年発表のアルバム「Musical Witchcraft」。 SOLARIS のオリジナル・メンバーの一人であるフルーティスト、コラ・アッティラによる。 民族音楽風のエキゾチックなメロディを奏でるフルート、リコーダーをフィーチュアした、クラシカル・ロック・アルバムである。 心洗われるアコースティック・アンサンブルからヘヴィ・メタリックなギターの入ったハード・シンフォニック・ロックまで、多彩な曲想を楽しめる。 超絶技巧や息を呑むような緻密さ、スケールの大きさはないが、フォーク/民族音楽・タッチのメロディ・ラインに朴とつな暖かみがにじみ出ており、まとまりのあるイメージをもつ佳作である。 アクセントのつもりなのだろうが、エレキギターの表現に画一的な HR/HM スタイルが散見されるのが残念。 一曲目の第四部、バッハへ捧げられた擬バロック作品が、なかなかの力作。 SOLARIS のメンバーも参加。

  「Musical Witchcraft Suite」(19:16)4部から成る組曲。 フルートを中心としたクラシカルかつトラッド調の第一部「Wonderers from the 15th century」。 メロディアスなフルートとヘヴィなギターがコントラストする邪悪なヘヴィ・チューンの第二部「The dark middle age」。 アコースティック・ギターとフルートによるリリカルなデュオの第三部「Poseidon」ではクラシック、フォークからシャンソン風まで多彩な表情を見せる。 ギター、シンセサイザーを駆使したバロック音楽のヘヴィ・シンフォ的解釈である第四部「Ba'rock'」のフルートによる泣きのテーマは管弦楽組曲第二番風だ。

  「Music From The Spheres」(3:36)スタカートを活かしたフルートがリードしエレクトリックなビートでバウンスするリズミカルな舞曲。 フォーク・タッチのテーマを小気味よく歌うフルートに対しギターはメロディアス。 シンセサイザーがニューエイジっぽい。

  「Boleriade」(4:57)ボレロだろうか行進曲風のスネア・ドラムの上で朗々とフルートが歌う。 テレマン、ヘンデル風のシンセサイザー、ややオリエンタルな表情も見せるアンサンブル。 ギターのパワー・コードはやや違和感あり。

  「Morning Dance In The Garden Of Chenonceau Castle」(2:03)ストリングス系シンセサイザー、アコースティック・ギター、フルートによるアンサンブル。 ピチカートの音もシンセサイザーだろう。 快活で愛らしい演奏です。

  「Silent Man's Prayer」(7:22)パーカッション系のシンセサイザーを活かした宅録ニューエイジ風から、ハードロックへと変貌する不思議な作品。 前半フルートはリードを取り、中盤はギターと丁々発止渡り合う。 泣きのギター・ソロから奇妙な呪文をバックにした哀愁のフルート・デュオが続く。

  「Rocks And Waves From Saint-Malo」(3:44)泣き叫ぶギターとスタカートを強調するフルートによるアンサンブル、そしてギター主導のハードロックへ。 後半もフルートが勇ましい。

  「Alchemy」(4:32)混声ヴォカリーズ、フルートらによるトラジックなテーマをもつトラッド・シンフォニック・チューン。 ワイルドなギターが吼える。

(BGCD 016)

 Musical Witchcraft II Utopia

 
Attila Kollar flute, recorder, tambourine
Gyorgy Bokor bassoon
Laszlo Gomor drums
Ferenc Kornis percussion
Gabor Naszadi acoustic guitar
Tamas Pocs bass
Peter Sarik piano, organ, synthesizer
Edina Szirtes violin, vocals
Zsolt Vamos electirc & acoustic guitar
Laszlo Vermes drums

  2002 年発表のコラ・アッティラのソロ第二作「Musical Witchcraft II Utopia」。 内容は、トラッド色を強めたリズミカルなアコースティック・アンサンブルとエレクトリック・ギターによるヘヴィな演奏をブレンドしたクラシック・ロック。 キーボード、ヴォーカルは抑えられ、フルートを中心に管絃楽器を活かした演奏が主になっている。 特に、フルートとヴァイオリン、アコースティック・ギターによるメランコリックな哀愁あるアンサンブルが魅力。 フォルクローレ風のテーマに、バスーンの音もいいアクセントとなっている。 もう一つの側面である、トラッド・アンサンブルと対を成すヘヴィ・シンフォニック調の中心的存在は、ギターである。 HM っぽいサウンドとやや決まりきった表現に、SOLARIS らしさとともに、クラシック畑のプレイヤーのロックの解釈の限界を見る。 とはいえ、聴き慣れると、躍動するフルートとギターのやりとりがなかなか呼吸がいいことが分かって楽しい 。 4 曲目では、HM とリズミカルなトラッドの融合路線に成功している。 70 年代プログレの影響/クリシェはなく、トラッド・フォーク、クラシックとロックを、ごく素直に自由に行き交う演奏であるといえるだろう。 そして、ジャジーなプレイも大胆に取り込まれている。
   ちなみに、フルートを多用するトラッド調の音ながらも、JETHRO TULL とはニュアンスが異なる。 強烈なヴォーカリストの不在はいうまでもなく、それ以上に、こちらには、ブルーズ・ロックにセンスあふれるヒネリを加えた TULL のような、ロックの核心に対してダイナミックに切り込む姿勢がない。 こちらは、あくまでクラシック、トラッドからのロックへの接近/ミクスチャであり、芸術性では決してひけをとらないのだが、しなやかで強引な存在の主張の迫真性では敵わないのだ。 なぞと余計なことはいったのだが、トラッド調のアコースティック、クラシカル・ロックのもつ叙情性は、アルゼンチンの名バンド ANACRUSA の諸作にも匹敵する味わいであり、その叙情性をモダンなサウンドを使ってきっちりと表現できている。
  フルートを主にアコースティックな音を散りばめたシンフォニック・ロックとしては、格別の内容といえるだろう。 まあ、どちらかといえば、年寄り向け。

  「Utopia szvit(Suite Utopia)」(19:53)四章からなる大作。
  「Kastelyok Rejteken(In The Hiding Place Of Castle)」(2:51)
  「Morus Titkai(Secrets Of Morus)」(3:52)
  「Lakoma A Lovagi Tornain(Feast On The Tornament)」(2:23)
  「Inkvizicio(Inquisition)」(4:44)ヴァイオリン、ギターをフィーチュアした、ややジャズロック調でアップテンポのなめらかな作品。

  「A Toronyszoba kodbe vesz...(The Tower's Room Lost In The Fog...)」(4:57)フルート、ピアノによるエレジーから、リズムとともにジャジーな AOR タッチ(ラテンポップ調のバラードというべきか)へと変化する異色作。 うっすらと女声のヴォカリーズも聴こえる。

  「Nagyvarosi Utopia(Utopia From The City)」(5:07)南米風の爽やかな作品。イントロのアコースティック・ギター、コード進行が BACAMARTE の唯一作の作品にそっくり。

  「Tundermese A Loire Menten(Fairy Tale Along The Loire)」(3:32)フルート、ヴァイオリン、アコースティック・ギター、女声ヴォカリーズによる安らぎの終曲。 パーカッションがおだやかに波うち、その上をゆったりと旋律が流れてゆく。

(BGCD 116)


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