カンタベリー・ジャズロックの最高峰「SOFT MACHINE」。
尖鋭的かつ知的なサウンドでイギリス・ジャズロック・シーンをリードし続けたグループ。
サウンドは、キーとなるメンバーによって過激に変遷を遂げ、最後のオリジナル・メンバー、マイク・ラトリッジが脱退した後も、カール・ジェンキンスという只者ならぬオジサンが、独自のジャズ・フュージョン路線を打ち出してグループを存続した。
グループのサウンドが各自の集合体以上にまで高まっていったという意味で、KING CRIMSON とともに、怪物的といえるグループの一つだろう。
66 年 WILD FLOWERS を母体として結成。
結成ラインアップは、後に GONG へ移るデヴィッド・アレン(guitar)、ケヴィン・エアーズ(bass/vocals)、ロバート・ワイアット(drums/vocals)、マイク・ラトリッジ(keyboards)。
前述の通り、サウンドは変遷を重ね、最初期のサイケデリックでシュールなロックから始まり、管楽器の参加に伴ってジャズロック化が進み、ジェンキンス時代にはフュージョンからミニマル的なサウンドにまで到達した。
| Mike Ratledge | Organ, Piano, Electric piano |
| Hugh Hopper | Bass |
| Robert Wyatt | Drums, Vocal, Organ, Electric piano, Bass |
| Elton Dean | Alto sax, Saxello |
| Rad Spail | Violin on 3 |
| Lyn Dobson | Flute on 1, Soprano sax on 1 |
| Nick Evans | Trombone on 2 |
| Jimmy Hastings | Flute on 2, Bass clarinet on 2 |
70 年 6 月発表の「3(Third)」は、これぞジャズロック、という意気込みが感じられる好盤。
アナログは、二枚組で片面一曲、計四曲のみ。
この CD は、十年ほど前に買ったままずっとラックの飾りになってたが、最近ふと思いついて聴いてみたところ、吃驚仰天、一気に頭と体にキてしまった。
この時点のサウンドは、まだファースト/セカンド時の退廃的なポップ感覚がほんの少し残っているせいか、単なるジャズではなく、もっと微妙なサイケデリック・ジャズロックとでもいうものになっている。
ホッパー、ディーンの強烈なジャズ感覚とワイアットのサイケ/アヴァンギャルド感覚がバランスしている、といってもいいだろう。
また、変則的な拍子の多用や頻繁なテンポの変化を交えつつも、即興性は抑えられ、きっちりと計算された器楽アンサンブルが貫かれている。
ホッパーのファズ・ベースの音がとても面白い。
なお、録音は、1 曲目が 1970 年 1 月 4 日、他の曲は同年 4 月 10 日及び 5 月 6 日に行われている。
2007 年、BMG より久々の再マスタリング盤が予定されているそうです。ボーナスは「Promos」丸ごと。
「Facelift」(18:45)は、エレクトリックなカオスが痺れるほどカッコいい決めのフレーズへと収斂する、血沸き肉踊る代表作の一つ。
ちょっと ZAPPA の「King Kong」に似てません?
序盤は、何の楽器か判別のつかない電気の混沌。イザナギ、イザナミが稲妻の矛で電子の海をかき回す。
モジュレータで歪んだオルガンのインプロヴィゼーションは、かなり初めの方で決めのテーマを奏でている(同時にエレクトリック・ピアノが演奏しているようにも聴える)のだが、次第に湧き上がってくるブラスの混沌によって、すぐにかき消されてしまう。
バスドラのキックとともにオルガンがテーマを提示し、ブラスが次第に反応し始める(5:15)。
8 分の 7 拍子の演奏。
スネアとシンバルを打ち鳴らし、アクセントをつけ、ロールを繰り返すドラム。
テーマに沿った演奏だ。
そして、一気に走り出すアンサンブルでは、ブラスがテーマを発展させる。
(5:54)不安定に揺らぎつつ背景に響くオルガン。
テンポが上り(7:02)、オルガンがせわしない第 2 テーマを提示すると、ブラスのユニゾンが反応してオルガンとサクセロの烈しい応酬が続く。
狂おしいインプロヴィゼーション・パートである。
ベースとサクセロが、初め交互に、やがてユニゾンで第 3 テーマともいうべきリフを刻む。
再び 8 分の 7 拍子の演奏である。
烈しいアンサンブルを経て、オルガンによって第 2 テーマが再現され、ブラスとユニゾンする。
(10:09)クロス・フェード(後述のように、ここは苦しまぎれの編集の結果かもしれない)で始まる新たなアンサンブルは、ベースのリフとインダストリアル風のドラムのノイズが轟く 8 分の 7 拍子。
(11:02)再び、クロス・フェードでベースとブラスが動き出すが、すぐにオルガンのエレクトリックなノイズに吸い込まれる。
フルートが思うさま暴れるも(11:29)、次第にバロック風のソロへと落ちついてゆく。
オルガンのノイズは、まだ続いている。
空から降るようにブラスとドラム、8 分の 7 拍子を刻むベースが戻り(13:00)、不機嫌なブラスが吠え、フルートが再びフリー・ジャズ風に舞い踊る。
バッキングは、エレピとブラスのリノイジーなフレイン。
ベースのリフ以外は、8 分の 6 拍子も交えているようだ。
暴れるドラムとサックス。
暴力的な演奏だ。
再びベースのリフが浮かび上がると、サックスをバックにサクセロがけたたましく叫び始める(15:00)。
パワフルでしなやかな見事なソロだ。
シンコペーションをうまく使ったスリリングなフレーズに、説得力がある。
8 分の 7 拍子に戻り、ピアノとベースがリズミカルな第 3 テーマ・リフを刻み始める。
(17:05)
そして、オルガン、サクセロのユニゾンで第 1 テーマの堂々たる再現。
突如テープ逆回転効果音がかぶさり、エレクトリックな混沌のイメージのまま終ってゆく。
挑戦的なテーマが印象深いインダストリアル・ジャズロックの傑作。
管楽器とは思えないいくつものノイズが、オルガンの金属音に導かれてまとまっていく様子は、ゾクゾクするようなスリルを生み、不安定に揺らぐフレーズが、サイケデリックな快感を呼ぶ。
非常に新鮮なサウンドである。
部分を取ると強く即興性が感じられるが、全体を見渡すと、変拍子の展開や印象的なテーマなど、意外に明確なシナリオがあるように思える。
過剰なまでに混沌としたエレクトリックなサウンドは、ラトリッジのほかに、ワイアットやホッパーのアイデアも盛り込んでいるにちがいない。
ホッパー作。
ちなみに、収録後、編集作業が行われており、特に 1 月 10 日のテイクが挿入されているとのこと。
これはおそらく、曲中のクロス・フェードの部分だろう。
ラトリッジ作の「Slightly All The Time」(18:12)は、クロスオーヴァー的なスリリングなグルーヴとメロディアスな安定感のある作品。
ドラムとベース・リフによる巧まざるリズム・チェンジに支えられて、次々と管楽器による魅力的なソロ、インタープレイが繰り広げられ、なおかつ、発散せずにアンサンブルとしてみごとなまとまりを見せている。
ハーモニクスを巧みに交えるベース・リフに導かれたブラス・セクションが、落ちついた雰囲気のテーマ演奏を繰り広げ、ステージを作り上げてゆく序盤。
ラトリッジはエレピ伴奏。
シャープな新テーマを一瞬だけ提示して、ディーンのソロへ。
絶叫する寸前でテーマを思い出すような、どちらかといえばメロディアスなプレイである。
ブラス・アンサンブルによるグルーヴィなテーマ演奏も現れて、サックスとまとまろうとする。
シンバルさばきにも注目したい。
やがて、再びおだやかなブラス・アンサンブルへと収束(5:00)。
テンポが上がるとともに、以前一瞬だけ提示されたスピーディなサックスのテーマが再現し、ベース・リフのリードによる 16 分 11 拍子のパターンとともに、ヘイスティングスによる幻惑的なフルート・アンサンブル(多重録音だろうか)が始まる。
ファンタジックなサウンドとスリリングな変拍子パターンが混然となる世界は、初期 KING CRIMSON 的だ。
アンサンブルは力を増して疾走する。
唐突に、淡々とした 8 分の 9 拍子をエレピが刻み始め、タイトなドラミングとともに、サックスが朗々と歌いだす。
続いてオルガン・ソロ。
オルガンがクロス・フェード・インするが、伴奏のエレピも、クレジットはないものの、おそらくディーンに代わるのだろう。
ヘイスティングスは、フルートからバス・クラリネットへ持ちかえて、柔らかな低音でベースの役割を果たしている。
リズムが唐突に止み(編集だろう)、サックスがうねるような息の長いテーマを静かに繰り返す。
(「Noisette」ホッパー作)
そして 13 分付近からは、フェイザーのかかったオルガン伴奏で、サクセロが静かに歌う。
このシーンは、サイケデリックな幻想性とともにに、意外なほどストレート・アヘッドなジャズらしいグルーヴをもつ。
メロディは美しく官能的。
ベースも非常に優美である。
しかし、一転リズムは 8 分の 9 拍子へ変化してテンポ・アップ、饒舌なベースとエレピが刻むリズムに支えられて、サックスが疾走する。
やがて、エレピはオルガンに切り換わる。
(「Backwards」ラトリッジ作)最後は、うねうねとした長いサックスのリフレインが再び現われる。
(「Noisette」再現)
管楽器をフィーチュアしたファンタジックでメロディアスな作品。
パワーだけではない、優美な表現でリードするサックス、サクセロとともに、脇役のフルート、バス・クラリネットが美しい。
「Moon In June」(19:08)は、ワイアットのセクシーなかすれ声のヴォーカルをフィーチュアした超名曲。
本作で最後となる SOFT MACHINE のヴォーカル・ナンバーである。
ヴォーカルにまで器楽と同じ電気で痺れてしまったようなマジカルなタッチがあるところが面白い。
そして、ヴォーカルにぴったり寄り添い、しなやかに進んでゆくバッキングのカッコいいこと!
得意のスキャットも交えたインスト・パートは、スペイシーに浮遊する楽しさを追求しているに違いないのだが、そういうサイケデリックな酩酊と熱気を孕みつつも、あくまで均整が取れている。
こういうところが、インテリジェントなグループといわれる理由なのだろう。
無闇に発散せず、自らの昂揚を冷静に見つめるような演奏になっている。
そこがじつに気持ちいい。
壊れた TV のような色合いと酸味をもつ、いわばドラッグ幻想の極致のようなサウンドと、計画的で緊密なアンサンブルの絶妙のバランスともいえるだろう。
シャープなリフを中心にしたテーマ部もインタープレイも、じつにきちんとしている。
また、クレジットはないが、ディーン以下ホーンが登場しないことからも、本作はワイアット自身の多重録音も交えているようだ。
おそらくコード主体のエレピの演奏も、ワイアットだろう(もちろんディーンの可能性もある)。
エンディング部のテープ操作による緩やかな音響効果など、いかにもワイアットらしいスタイルが見られる。
ちょっぴりジョン・レノンの「I Am The Walrus」を思わせるところもある。
一つわからないのは、オープニング、オルガン伴奏で歌う部分に続く間奏。
明らかにギターと思うが、本当はどうなのだろう?(後日再び聴いてやはりベースかなあとも思いました。ホッパーはワイアットの名作「Rock Bottom」でも無茶なベース・ソロを見せてたし)
ところで、なぜか僕にとっては、ワイアットの声がシリトーの小説に出てくる徹底して反抗的な主人公のイメージと重なる。
「Out-Bloody-Rageous」(19:14)。
テープ逆回転のようなオルガンとエレピを重ねた、エレクトリックで幻惑的なプロローグ(エピローグも同じ)。
長い長いクレシェンドは、虚空をさ迷うような、サイケデリックな酩酊感のあるエフェクトを生む。このサイケなイントロが 5 分間あまり続く。
しかし、テーマに導かれて始まる中心部は、ピアノの刻む 15/8 拍子のスリリングなリフの上で管楽器群が力強いテーマを押し出す、明確極まる演奏である。
スタッカートのオブリガートをきっかけに、管楽器はオルガンと交代、オルガンによるアグレッシヴなソロが続く。(伴奏のピアノはここでディーンに交代?)
9:30 付近からブラス・セクションが復活するも、サックスの謎めいたエコーも一瞬のこと、再びオープニングのようなカオスへと落ち込んでゆく。
アンサンブルは、厳めしい現代音楽風のピアノ独奏に導かれて帰ってくる。
サックスとトロンボーンによる気品あるデュオを経て、フェイズ・シフタ系でエフェクトされたオルガンとベース・リフがゆるやかに渦を巻き始める。
そして、サックスがやや憂鬱に、それでもしなやかに歌い出す。
遠景には、サックスによる遠景のクールなフリー・ジャズ、そして、前景にはスペイシーなサイケデリック・サウンドがゆるゆると模様ならぬ模様を描く。
融合の妙だ。
マイルス・デイヴィスの種子は、ここでも実を結んでいる。
サックスのソロにエコーとともに管楽器が重なり合い、やがてユニゾンへと変化し、ピアノの和音による 8 分の 5 拍子のリフで一気に演奏はクライマックスへ達する。
管楽器とエレピによる渦を巻くリフ、そしてノイジーなオルガンが一閃すると、再び電気の混沌へ。
エレピのオスティナートは次々と折り重なり、やがて打ち寄せる宇宙の波動のように現われては、消えてゆく。
感覚を麻痺させるような幻想的な雰囲気としなやかなアンサンブルによるスリルを兼ね備えた名作だ。
WEATHER REPORT の最初期と共通するサイケデリックでアシッドなジャズロックである。
ラトリッジ作。
まるでサイケ・ポップとジャズ、現代音楽がグツグツと煮込まれて、ちょうどいいスープができあがっているようなアルバムだ。
いわばこのアルバムこそが、本当の「フュージョン」なのではないだろうか。
フリー・ジャズとサイケデリック・ロックの微妙なところで作り上げられた、初期の傑作である。
(ESCA 5535)
| Mike Ratledge | Organ, Piano |
| Hugh Hopper | Bass |
| Robert Wyatt | Drums |
| Elton Dean | Alto sax, Saxello |
| Roy Babbington | Double bass on 1,3,4,6 |
| Nick Evans | Trombone on 1,2,4 |
| Mark Charig | Cornet on 2,3,4 |
| Jimmy Hastings | Alto flute, Bass clarinet on 1, 6 |
| Alan Skidmore | Tenor sax on 1,6 |
71 年 2 月発表の「4(Fourth)」。
本作から、エルトン・ディーンが正式メンバーとなり、作品は、前作の作風を引き継ぐも管楽器を大幅にフィーチュアした、よりフリージャズ色の強いものとなる。
サックスとオルガン、エレクトリック・ピアノのせめぎ合いから生まれるスリルがいや増す一方、サイケでケイオティックなエレクトリック・サウンドは相対的に引っ込み、爆発的なソロとアンサンブルがはっきりとした、ジャジーで明確な輪郭をもつスタイルとなる。
ワイアットのドラミングは、タイムキーパーを越えた多彩な表情を見せている。
とはいえ、旧 B 面を占める組曲は、フリー・ジャズを注入しつつも、前作の世界に直結するサイケデリックな傑作である。
即興の味わいは初期の KING CRIMSON に酷似。
ゲストの演奏では、後に「7(Seven)」からメンバーとして参加するロイ・バビントンのダブル・ベースが印象的。
ミロスラフ・ヴィトウス在籍時の初期 WEATHER REPORT と聴き比べるのも、おもしろいだろう。
録音は 1970 年 10、11 月。
(ゲストの管楽器奏者のクレジットが実際とは異なる気がする。バスクラやスキッドモアのプレイは 4、5 曲目のように思う)
1 曲目「Teeth」(9:12)
パワフルなフリージャズ感覚と疾走する変拍子パターンが生む知的なイメージが融合した力作。
ジャズの鋭い運動性を象徴するのは、明確なテーマを打ち出すサックスである。
ダブル・ベースをフィーチュアし、サックスがリードする序盤の展開は、アコースティックなジャズ・コンボを意識した表現なのだろうか。
鋭いタッチのアルト・サックスがカッコいい。
ラトリッジは、エレピのバッキングに徹し、ディーンの饒舌なサックスとの呼応を見せつつも、引き立て役に回っている感じだ。
マイルス・ディヴィスの「In A Silent Way」の世界にも通じるものもあり。
一方、ワイアットは、奔放で手数の多い打撃で鋭いリズムを打ち出して、モダン・ジャズ風の安定感をあえて拒否しているようだ。
サックスがリードする、スリリングだがしなやかなイメージのアンサンブルが続いてゆく。
3:30 付近でダブルベース(バビングトンとホッパーのデュオ?)がイントロのパターンを回顧し、管楽器とオルガンによる得意のノイジーなユニゾンが提示される、前作を思わせるサイケデリック調が浮かび上がる。轟音はファズ・ベースだろうか。
オルガン中心の幻惑的な 8 分の 9 拍子のリフレインから、一瞬、エレクトリック・ピアノ主導でエキサイティングな変拍子演奏へと飛び込むが、三度ダブル・ベースのきっかけとともに、ブラス・セクションのユニゾンが応酬、すぐさま走り出す。
唐突なブレイクで思わせぶりな息を整えて、8 分の 6 拍子管楽器(アルト、トロンボーン)のユニゾンによるジャジーでなめらかな演奏へ。
ここまで、短時間にじつに目まぐるしい展開だ。
再び 8 分の 9 拍子をメリーゴーランドのように刻むエレクトリック・ピアノ、そして管楽器セクションのユニゾンがゆったりと誠実に高鳴る。
そして、遂にラトリッジがオルガンで荒々しく切り込んでくる。
攻めたてるように激しいアドリヴだ。
管楽器セクションは、ゆったりと懐の深いビッグ・バンド風のバッキングへと追い立てられる。
ここのエレピのバッキングはディーンか。
激しいドラミングとオルガンに触発されて、オルガン vs 管楽器セクションのアンサンブルによる疾走が続く。
リズミカルに音を刻む管楽器、そして暴れまわるオルガン。
乱れるブラス・セクションによるノイズの混沌をオルガンが貫いて、力技の勝負が続く。
最後は、変調されたノイズの混沌が渦を巻く。
8 分の 9 拍子による切れ味鋭いプレイの交錯とスピード感あるアンサンブルが印象的な名作。
オープニング、バビングトンのダブル・ベースとサックスによるシビアな対話は、明快なジャズ路線の決意表明に思えてくる。
サックスをフィーチュアしながら、ラトリッジのオルガンとワイアットのドラムが正面切って勝負を挑む姿が、感動的だ。
なめらかな運動性とクロスオーヴァー風にこなれた音が新鮮である。
次々と意外性をもってオムニバス風に進展し、ややまとまりに欠けるが、サイケデリックで混沌としたサウンドからジャズへと変化する瞬間をとらえた、いわば遷移途中の作品と解釈できるだろう。
HENRY COW を思わせる瞬間もあり。
ラトリッジ作。
ホッパーの演奏は、後半のベース・ランニングのみ?
2 曲目「Kings And Queens」(5:02)
ミドルテンポの 8 分の 6 拍子による堂々たる歩みが、次第にロマンティックな響きを帯びてゆく傑作。
穏かながらも緊張を孕んだベースのリフが静かにしかしきっぱりと進行を司り、その上でサックスがメランコリックな調子ながらも表情豊かに歌い続ける。
幾何学性、無機性の果て、ついには呪術的な響きすら帯びたベースパターンと、息遣いのあるサックスの対比が本作の醍醐味だろう。
ドラムスは、いずれとも異なる即興的な独自性を発揮しているが、エレピとともに背景として機能する。
ディーンの叙情性がよく分かる。
パワフルにしてしなやかなブロウは感動的ですらある。
リフと奔放なソロという形がきっちりと保たれており、完成されたイメージを与える作品になっている。
ラトリッジはエレピに専念。
2 コードを中心とした、抑制された雰囲気がすばらしい。
最後にエヴァンスのトロンボーンが遠くに聴こえる。
ホッパー作。
3 曲目「Fletcher's Blemish」(4:35)では、ディーン主導のフリー・ジャズ志向がはっきりと現れる。
ときおりテーマは浮かび上がるものの、基本的にはサックス、コルネットがリードするキナ臭いインプロヴィゼーションが繰り広げられる。
コルネット、サックス、ダブルベースのボウイングによる邪悪で挑戦的なオープニングがカッコいい。
ドラムスもバスドラ連打を多用して不気味さを強調する。
「Third」のような漂流感あるサイケデリック・タッチはなく、あくまで力と力が拮抗しては雪崩を打つような爆発を繰り返す、挑戦的なジャズ・インプロヴィゼーションだ。
ダブル・ベースのノイジーなボウイング、沸き立つようなドラミング、狂乱するエレクトリック・ピアノ、そして絶叫する管楽器。
全体のイメージは、轟音とともに永遠に崩れ落ち続ける巨大な構築物、もしくは管楽器をフィーチュアした KING CRIMSON。
ワイアットの即興が冴える。
ディーン作。
組曲「Virtually」は、四部構成のきわめて幻想的な即興組曲である。
パート 1(5:17)
エレピとベース、トロンボーンの迫力ある低音リフにダブル・ベース、ブラスが応酬するサスペンスフルなオープニング。
ダブル・ベースのハーモニクスを交えたソロとワイアットのシンバル・ワークが、静かにすべり出すような疾走を演出する。
低音パートが主役である。
4 分の 7 拍子によるベース、エレピのリフが再現すると、リムショットとともに演奏は快調に動き出し、うねるようにドライヴする演奏の表面に、バス・クラリネットら管楽器ソロが次々と浮き上がり、もつれ合う。
そして高まる緊張。
息づくブラス群。
最高潮へあと少し。
クライマックスは、オルガンとサックスによる KING CRIMSON 風の鋭くも怪しく、そして感傷的な響きもあるユニゾン。
すでに、パート 2(7:06)である。
祈りのようなユニゾンは、せめぎあうようなハーモニーへと解きほぐれてゆく。
デュオの周囲で烈しく暴れまわるドラムスとベース。
力強く明確な音を連ねるオルガンとサックスのデュオは、すばしこく動くリズム・セクションの即興と鮮やかに対比する。
そして中盤、パート 1 のエレピによる 4 分の 7 拍子リフの変奏が出現し、管楽器の力強さはそのままにアンサンブルは安定感を確保する。
ラトリッジがエレピへ回り、ゲストが一歩退くと、サックスのソロへ。
エネルギッシュでもつれるようなコルトレーン風のソロは、アラン・スキッドモアか。
カルテットによる 4 分の 7 拍子の引き締ったジャズロックである。
縦揺れのリズムが強調されるととともに、ゲストの管楽器も参入して音の流れの厚味を増すが、あまりに唐突な一瞬のブレイク。
パート 3(4:33)。
テープ逆回転による効果音を背景に、管楽器が無秩序にざわめく。
断続的な管楽器の鳴き声を聴きながら、ベースがゆっくりと歌い始め、位相系エフェクトをかけたオルガンがゆったりと響く。
ダブル・ベースのボウイング。小刻みなサックス。
「Slightly All The Time」に通じる表現であり、フリー・ジャズとはニュアンスの異なるエレクトリックなインプロヴィゼーションである。
ファズ・ベースがギターのように吠え、エフェクトで丸まったオルガンが応える。
リズムレス。
サックスは静かに歌い始める。
もがき苦しむようなファズ・ベース。
三者による緩慢で混沌としたインタープレイが続く。
パート 4(3:22)へと続き、ファズを外したベース、にじむオルガン、サックスが静かに響き合う。
位相をずらしつつ広がる、幻想的なオルガンの音。
もどかしげに蠢くベース。
演奏はサックスが提示するリフに向かって次第にまとまり、スネアが静かにロールして応答する。
すべてがリフへ収束することを暗示したまま、すべてが静かに消えてゆく。
リフと即興、そしてエレクトリックな効果を駆使して徹底的に幻惑的にスリリングに迫る佳作。
「Third」の作風に通じるホッパーの傑作である。
これだけ「盛り上がりそうで盛り上げない」スタイルもおもしろい。
やはり、SOFT MACHINE のサウンドにこの人を欠くわけにはいかないようだ。
パワフルでストレートな感触は、フリー・ジャズに傾倒するエルトン・ディーンが持ち込んだものだろう。
しかし、フリー一辺倒に流れないところが、ラトリッジ、ホッパーのコンビのバランス感覚だろう。
コンポーザーとしてのホッパーの力量も感じさせる作品だ。
(A 26254)
| Elton Dean | Alto sax, Saxello, Electric piano |
| Roy Babbington | Double bass |
| Hugh Hopper | Bass |
| Mike Ratledge | Organ, Electric piano |
| Phil Howard | Drums on 1,2,3 |
| John Marshall | Drums on 4,5,6,7 |
72 年 6 月発表の「5(Fifth)」。
遂にロバート・ワイアットが脱退、新ドラマーを迎えた作品となる。
当初エルトン・ディーンのグループからフィル・ハワードが加入するが、アルバムの前半収録の段階で脱退、その後 NUCLEUS からジョン・マーシャルが加入して後半が収録された。
同時に、前作までフィーチュアされた管楽器セクションは解消され、管楽器はエルトン・ディーン(一部エレピも担当)のサックスのみとなる。
管楽器数のスケールダウンは、そのまま全体のサウンドのコンパクトかつ引き締まったイメージにつながっており、フリー・ジャズ的でありながら、抑制されたストイックな作風が貫かれている。
前作までの太く分厚いサウンドによるパワフルなノリとはまた違った味わいだ。
演奏面でソリストの地位を確定したディーンだったが、音楽的な発展を望んでかホッパー/ラトリッジによるジャズロック路線と意見を異にしたか、本作収録直後の 5 月には SOFT MACHINEを脱退(代わって NUCLEUS からカール・ジェンキンズが参加)、発表時にはすでにメンバーではない。
この交代劇は、「変拍子リフとサイケデリック・サウンドによるアドホックなアンサンブル」スタイルの終焉を象徴する。次に進む方向は、旧 NUCLEUS 人脈による個性派フュージョン路線である。
録音は 1971 年 11、12 月及び 72 年 2 月。
電化マイルス、初期 WEATHER REPORT、初期 RETURN TO FOREVER と同列に並べるべき好作品である。
オープニング「All White」(5:59) ディレイと深い残響を持つサックスによるミステリアスなイントロから、疾走するジャズロックへと静かにすべるように展開する作品。
8 分の 7 拍子を中心に変拍子を刻むホッパーのリフの上で、エレピと残響から浮かび上がったサックスが自信あふれる平行線を辿り、攻守を切り換えつつ、最後に劇的なユニゾンへと発展する。
サックスのしなやかさ、力強さが目立つが、エレピも烈しく動いてサックスとからみあう。
ラトリッジ作。
2 曲目「Drop」(7:47) イントロは、水の滴るエフェクト音。
クリスタルに反響するようなエレピやテープによる残響効果など、WEATHER REPORT/SOFT MACHINE らしい神秘幻惑的な空間を演出する。
ディーンの力強いエレピとエフェクトで緩んだラトリッジのエレピが交歓を続け、ベース、ファズ・オルガンが細やかに動き出すと、一気に世界は躍動、7 拍子による疾走感ある演奏になってゆく。
オルガンによる圧倒的なアドリヴ、バッキングというにはあまりに呼吸よく空隙を攻めるエレクトリック・ピアノ、俊敏なベース。
フィル・ハワードは、きめ細かいシンバル・ワークと緩めのスネア・ドラムが特徴的。
ワイアットに共通するスタイルであり、ジャズ・ドラマーらしいプレイを持ち味とするようだ。
四者による白熱したぶつかりあいが痛快な、前二作と共通する作風の傑作。
ラトリッジ作。ディーンはエレピに専念。
3 曲目「MC」(4:52)深い残響空間における静謐かつミステリアスな即興チューン。
転がるようなエレクトリック・ピアノ、遠く崩れ落ちる打楽器、思いのほか抑制され苦悩するサックスなど、フリー・フォームに近い演奏が、ヴォリューム制御の下に繰り広げられる。
音より先に走り出そうとする想像力は、抑えつければつけるほどに、あらぬ方向へと広がり始める。
エレクトリック・マイルスの英国らしい発展形である。
ホッパー作。
4 曲目「As If」(8:21)
オルガン、サックスの爆発的なユニゾンが迸る衝撃的なイントロダクション。
ラトリッジのエレピとディーンのサックスの双頭によるリードというパターンが復活する。
名インプロヴァイザーとして狂おしく熱気を迸らせるサックスとは対照的に、キーボードは終始謎めいたアドリヴで応酬し、リズム・セクションは非常にクールなスタンスを貫く。
演奏は途中から音量が落ち、8 分の 11 拍子のリフを刻むベースの上で、エレピとダブル・ベースのボウイングが空ろなダンスを続ける。
緊張と弛緩が繰り返し訪れ、火を噴くような決めとともに、ドラム・ソロへとなだれ込む。
このテイクから、ドラマーはジョン・マーシャル。
オープニング、ハワードに比べて、ロック風の豪快さでアピールしている。
ラトリッジ作。
5 曲目「LBO」(1:31)マーシャルによる自己紹介ドラム・ソロ・ナンバー。
6 曲目「Pigling Bland」(4:22)
7 拍子の 2 つのパターンを繰り返して、疾走と停滞を演出するスタイリッシュな作品。
フロントはサックスの独壇場だが、イントロダクションにおけるメローなイメージそのままに、意外に軽快なアドリヴでひた走る。
エレピ、ベース、ドラムスによる音の疎密の制御が鮮やかだ。
終盤一気にテンポ・アップ、緊迫感あふれる演奏になる。
ラトリッジ作。
7 曲目「Bone」(3:30)
波打つシンバルとざわめき揺らぐノイズの中を、オルガンが深い残響、ディレイとともに浮かび上がる。
旋律はやや東洋風ではないだろうか。
深淵を覗き込むような神秘的なムードは、1 曲目と共通する。
管楽器ともフィードバック音ともつかぬ音が、暗闇で振り回される刃のように、一瞬のきらめきを残しつつ消えてゆく。
ディーンの作品。
ミステリアスな空気と、ルーズさのない引き締まった演奏が、すばらしい作品。
エネルギッシュなプレイの連続にもかかわらず、全体の印象は落ちつきとしみ入るような美しさである。
あたかも混沌から浮かび上がったかのように、フリー・ジャズ的なジャズロックが明快に提示されている。
(ESCA 5418)
| Mike Ratledge | Organ, Synthesizer, Electric piano |
| John Marshall | Drums |
| Hugh Hopper | Bass |
| Karl Jenkins | Oboe, Baritone sax, Soprano sax, Electric piano |
73 年 2 月発表の「6(Six)」は、一枚目がギルフォードでのライヴ・テイク、二枚目がスタジオ・テイクのアナログ二枚組。
本作から、タイトルが序数ではなくなった。
さて、このアルバムに先立つ 72 年半ばから、ディーンに代わって元 NUCLEUS のカール・ジェンキンスが、管楽器及びキーボード奏者として加入する。
マーシャルに続く NUCLEUS 人脈からの参加だ。
ジェンキンスは、演奏面のみならず、作曲でも力をふるう。
演奏に着目しよう。
基本的には、従来と同じ楽器構成なのだが、キーボードに若干の変化がある。
つまり、ジェンキンスのエレピとラトリッジのエレピ/シンセサイザーが新しい音色のアンサンブルを生む一方、オルガン・プレイはやや後退している。
主としてこれを理由に、ゆるやかにしてスペイシーなクロスオーヴァー・タッチが強まる。
最初期の WEATHER REPORT を連想させるところもある。
また、ジェンキンスはサックスに加えてオーボエもプレイする。
この音色が新鮮だ。
そして、ミニマルなリフによる独特のトランス効果を生む手法もすでに導入されている。
録音は、前半のライヴが 72 年 11 月、後半が同年 12 月。
結論、ディーンの脱退によるフリー・ジャズらしさの後退とフュージョン/クロスオーヴァー・タッチの微妙な均衡が、クールで薄暗い個性的な色彩の音楽につながった佳作である。
以下ライヴ・テイク。基本的にメドレーである。
「Fanfare」(0:42)強烈なサックスのブロウによるコルトレーン風のモダン・ジャズ・イントロダクション。
「All White」(4:46)「5」より。
スタジオ版の神秘的なイントロダクションは省いて、一気にシャープな 7 拍子リフとともにあの独特の音色を持つオーボエとエレクトリック・ピアノのリードで走り出す。
マーシャルのドラミングがワイアットを彷彿させる。
「Between」(2:33)エレピ・デュオによる幻想的な即興演奏。
「Riff」(4:28)前曲をイントロダクションに、ベースが 13/8 拍子のリフ(どこかで聴いたリフだ、NUCLEUS だろうか)を提示し、このホッパー作と思われる凝ったリフの上で、得意の歪みきったオルガンのアドリヴが走る。
ジェンキンズはベースとともにエレクトリック・ピアノでリフを刻み、オブリガートする。
ホッパー、ラトリッジの数少ない主張である。
「37 1/2」(6:53)
再び軽妙なベースによる 7+6/8 拍子のリフでサックスがテーマを示す。
続いて、エレピとオーボエのインタープレイが続く。
ドラムスは安定したリズムを供給しつつ、さまざまなプレイを繰り広げている。
ベースは、ときおり 8 ビートのリフをブリッジにはさむ。
そして、クラシカルで典雅なイメージのオーボエの音色が、ジャジーなフレーズを紡ぐ無類の面白さ。
変拍子にもかかわらず、どっしりとした安定感となめらかな動きを感じさせる佳曲である。
静かな躍動感がいい。
ここまで 旧 LP 1 枚目 A 面。
「Gesolreut」(6:13)
5+7/8 のリフでサックスとエレピが歯切れよくユニゾンするイントロ。
ジェンキンスもエレピを演奏し始めるが、エフェクトでオルガンのような音である。
アクセントの位置のせいか、微妙な不安定感あり。
リズムも 5+7 から 4+8、8+4、5+7 と変化する。
エレピのデュオ。
再びオープニングのサックス、エレピによるテーマに戻って終る。
多様なリズム/アクセント変化を見せ、ファンキーな調子のある作品だが、洒脱で秀逸なテーマ以外は、アブストラクトでややかったるい演奏である。
「E.P.V.」(2:50)
再びドリーミーなエレピ、そして深いエコーをしたがえたサックスの透き通るようなメロディが突き刺さる。
サックスのささやきは、ややオリエンタルなイメージだ。
シンバルを打ち鳴らすドラムとともに、次第に演奏は熱を増してゆく。
最後はオーボエが静かに歌う。
初期の WEATHER REPORT にきわめて近い、スペイシーでロマンに満ちた演奏だ。
「Lefty」(5:02)
様々なエフェクト音、ノイズが飛び交い漂う実験的な作品。
狂ったように叩き捲くるドラム。
ノイズは、エフェクトされたエレピによるようだ。
エンディング近くで、久しぶりにオルガンが暴れ出す。
初期のサイケデリックなスタイルに通じる演奏だ。
「Stumble」(1:36)一転ファズ・オルガンとアコースティック・ピアノによる明確でやや挑戦的なアンサンブルが始まる。
もつれるような変拍子テーマ、続いて、エレピとピアノのデュオによる新たな変拍子テーマ。
ようやくホッパーのファズ・ベースが聴こえてくる。
SOFT MACHINE らしいアンサンブルの断片。
「5 from 13(For Phil Seaman with love & thanks)」(5:15)
ドラム・ソロ。
前半はスネア、タム周りで軽やかに進むが、後半にゆくにしたがい激しくなる。
「Riff II」(1:27)再び前曲から切れ目なく続く。
ベース・リフが入ったところで、ひそめていた息を吐き出すように聴衆が拍手する。
ステレオから臨場感があふれでる。
オルガンとエレピがシャープなユニゾン・リフを決める。
初めて公開されたライヴ録音は、個性的な演奏スタイルを再認識させるものである。
ジャズロックといいながらも、いわゆるフュージョン・サウンドとは異なり、むしろスペイシーで緻密な実験音楽に近い。
込み入った作りをもつだけに、スリリングなリフで一気に攻め込むシーンのカタルシスも格別である。
ホッパーの存在感がかなり薄まっているのが残念。
ここまで 旧 LP 1 枚目 B 面。以下、LP 2 枚目のスタジオ・テイク。
「The Soft Weed Factor」(11:16)
複数キーボードのテーマ反復による眩惑的な効果が印象的なオープニング。
リズム・セクションの開始とともに、ベースが新たなリフを提示し、演奏はさらにポリリズミックな展開を見せる。
続いて演奏をリードし始めるのは、ジェンキンスのサックスとファズ・オルガンのユニゾンだろうか。
謎めいた呪文のようなロングトーンが、リフのモワレの上をすべってゆく。
執拗な反復が、やがてすべての基準を曖昧にし、自分の足がちゃんと地についているのかどうか分からなくなる。
マーシャルの打撃も、この催眠術で揺らいでいるのでは。
フリー・ジャズからの揺り戻しによる均一な構築世界である。
おそらくジェンキンズの作風であり、次作への展開が予見される。
「Stanley Stamps Gibbon Album(For B.O.)」(5:58)アコースティック・ピアノが右手で 8 分の 5 拍子のリフを提示し、左手で奔放なアドリヴを見せる強烈なオープニング。
一気にリズムが走り出し、8 分の 7 拍子のピアノのリフの上で、オルガンがパワフルに暴れる。
アフロ・ラテン系の音数の多いパーカッション/ドラムスが、カッコいい。
全体にハイテンションを維持した、エネルギッシュな演奏である。
珍しく疾走感のある作品なのだが、跳ねるようなファンキーさは感じられず、結局強圧的でスクエア、そして硬く尖ったイメージがある。
終盤 1 分間は再び 5 拍子による無機的なパターン反復。
不気味である。
「Chloe And The Pirates」(9:30)位相変調(テープ逆回転?)されたキーボードなど電子音がうねり渦を巻くオープニング。
無機的な世界にソプラノ・サックスのメロディアスなフレージングが暖かい人智を感じさせ、一安心。
こうなると、世界は急激にソフトなクロスオーヴァー・サウンドに彩られてゆく。
エレクトリック・ピアノの和音のゆらぎがフュージョン的なグルーヴを演じる一方、ソプラノ・サックスの調べはやや現代音楽調でもある。
電化マイルス、初期 WEATHER REPORT につながる音ではあるが、こちらのほうがリリカルであり、また堅固で融通が利かない感じでもある。
ダイナミックではないのだ。
エピローグも電子音のうねり。
「1983」(7:56)
アコースティック・ピアノとエフェクトされたベースなど、エレクトリック・ノイズによるきわめて深刻、重厚な現代音楽。
電化マイルス的な即興という面もあるのだが、SOFT MACHINE の作品では最も PINK FLOYD や KING CRIMSON などのヘヴィなプログレに迫った異色作ではないだろうか。
明らかにホッパーの作品であり、ドラムスや管楽器が入っていないことなどから 1 人多重録音の可能性もある。
(ESCA 5536)
| Mike Ratledge | Organ, Synthesizer, Electric piano |
| John Marshall | Drums |
| Roy Babbington | Bass |
| Karl Jenkins | Oboe, Soprano sax, Electric piano |
73 年 10 月発表の「7(Seven)」。
前作でついにヒュー・ホッパーも脱退。
そして、本作では、露なフリー・ジャズ色はほぼ消え、「6」の延長であるフュージョン・タッチのあるエレクトリック・ジャズ路線を突き進む。
テーマ、ソロ、リフの明快さが際立ってきたのは確かなのだが、SOFT MACHINE 独自色がなくなったわけでは、決してない。
エレクトリックな混沌と入り組んだ構築性は、一見後退したように見えて、その実ジェンキンスの手法である徹底した反復の中に新たな形をとって現れている。
そして、パーツとしてのフュージョン的なグルーヴをもつ一方で、管楽器のソロやアンサンブルには、いまだ SOFT MACHINE らしい緊張感とシニシズムがある。
反復の多用は、アンサンブルを支えており、サイケデリックな浮遊感をも呼び覚ます新たな魅力といっていいだろう。
したがって、全体のサウンドの感触は、「4」や「5」よりも「Third」に近いような気がする。
また、大作がなくなり、短いモチーフ的な作品が多くなったのは、新たなアプローチの模索に伴う実験的/過渡的な作品だということを示すのだろうか。
ひょっとすると NUCLEUS の第一作に通じる状況があったのかもしれない。
73 年 7 月録音。
僕の SOFT MACHINE 初体験である。
ちなみにロイ・バビングトンは、以前の作品では主としてダブルベースを演奏していたが、本作の頃は Fender の 6 弦エレクトリック・ベースを愛用していた模様。
ジャケットの写真でも、ギターのような 6 弦の楽器を手にしている。
「Nettle Bed」(4:49)冒頭にも書いたように、ファズ・ベースとオルガンの 8 分の 15 のユニゾン・リフが、あまりに印象的。
前作の「Riff」にて提示されたスタイルである。
このスキップするような躍動感のある執拗なリフに絡むように、ムーグ・シンセサイザーが暴れる。
アンサンブルは、リフで溜まったエネルギーを噴き出すように、軌道を外れ奈落へと消えてゆく。
ジェンキンス作。
「Carol Ann」(3:43)ベースとシンセサイザーの静かな交歓にエレピがきらめく幻想世界。
いわゆるフュージョンらしい、都会的なイメージが浮かんでくるイントロだ。
シンセサイザーによる、はかなくも穏やかなメロディ。
AOR 風だがエモーショナルななかに、どことなくメカニカルなところがある。
陳腐な例えだが、「ロボットの涙」のようなニュアンスなのだ。
エンディングのシンセサイザーとエレピのインタープレイも美しい。
ジェンキンス作。
「Day's Eye」(5:02)ベースとエレピによるジャジーな 8 分の 9 拍子のリフレインに、サックスが穏やかにすべり込む。
サックスのプレイには、ディーンのようなフリー・ジャズ的な力強さはなく、どちらかといえば「お洒落」なセンスを感じる。
そしてシャープな音色によるオルガン・ソロ。
ジェンキンスは、このタイミングで、サックスからエレピ伴奏に移動するようだ。
このオルガンが出てきた途端、世界は一気に「Third」である。
こうなると、ベースもファズなしのホッパーに思えてくる。
最後はオーボエに導かれるように、再びサックスの穏やかなメロディが現れる。
従来の SOFT MACHINE の姿を残した作品といえるだろう。
ラトリッジ作。
「Bone Fire」(0:31)
前曲をそのまま引継ぎ、サックスがやや高揚し、新たなリフを示唆すると、オルガンとのユニゾンへと変化、再びたたみかけるようなユニゾンで新たな展開を求めてゆく。
ラトリッジ作。
ブリッジ的な小品である。
「Tarabos」(4:30)ファズ・ベースとエレピによるうねるような 8 分の 18 拍子のリフレインに支えられて、なかなかセクシーなオーボエ・ソロが繰り広げられる。
オーボエは微妙に電気処理されており、ディーンのサクセロ同様、にわかにはオルガンと区別がつかない。(ラトリッジの作品なので、じつはオルガンかもしれない)
リフの上下でオーボエとドラムが、それぞれ次第に高揚してゆき、一気にドラムロールがたたみかける。
そしてオルガン主導のヒステリックなリフへと移る。
ドラムも乱れ打ちだ。
最後は一瞬の決めで終わり。
ここまで 3 曲は、あたかも一つの組曲のようだ。
ラトリッジ作。
「D.I.S」(3:01)エフェクトでうねる電子音と化すオルガン、そしてドラの一撃。
その後は、カリンバのような金属音がこだまとともに切れ切れに宙を舞うパーカッション・ソロである。
シンバル・ワークを電気加工した音だろうか。
悪夢のようなイメージ。
マーシャル作。
「Snodland」(1:50)
神秘的なドローンの上でオルゴールのようなエレクトリック・ピアノとシンバルがさざめく小品。
音片は吹き上げられたようにゆっくりと中空を漂う。
ジェンキンス作。
「Penny Hitch」(6:37)
キーボード、ベースによるメカニカルな反復の上で、サックスがクールに、厳かに歌う。
熱をはらみながらも、キーボードのシーケンスが熱気をにじませ、演奏には冷気が漂う。
ふと途切れるようなブレイクを経て、オーボエ・ソロ。
大きな波でうねるドローンは、次第に熱気を帯びたアドリヴへ。
ベースも高音へ抜けて挑発を繰り返し、新たなリフとともにタイトなアンサンブルへ。
ミドルテンポによるエレクトリックな酩酊感をもつ独特の世界である。
ジェンキンス作。
「Block」(4:17)
前曲エンディングのままテンポ・アップ、ベース・リフ上でオーボエとファズ・オルガンによるユニゾンが続く。
リズム・ブレイク、そしてユニゾンによる決め。
ユニゾンを経て、オルガン・ソロへ。
伴奏はジェンキンズのエレピ。
オルガンは自由に走り回る。
ベースも機敏に動き、たたみかけるような 8 分の 6 拍子で走る。
シャープなアンサンブルによる疾走感がいい。
複雑なユニゾン・フレーズなど、初期 SOFT MACHINE (特にホッパーの作風) に近いイメージの作品だ。
ジェンキンス作。
「Down The Road」(6:00)
8 分の 10 拍子による、ややフュージョン・タッチのエレピ、ベース・リフに導かれる、トーンを変調させたオルガン・ソロ(ホイッスル風だがオーボエではないと思う)。
ここでも、リフは執拗に反復される。
続いて提示されるのは、オーボエとファズ・オルガンによるユニゾンの主題。
やや調子っ外れなところが独特だ。
そしてダブル・ベースのボウイング・ソロ。
高音で引きつるベースとともに、エレピも次第に主張を始め、不気味なベースリフとともに、波紋が広がるようにすべてが茫洋としてゆく。
反復の生む魔術的効果とモーダルな旋律による浮遊感を組み合わせた、無機的な不気味な作品。
インダストリアルで危険なムードがカッコいい。
ジェンキンス作。
「The German Lesson」(1:22)
電子音が膨れ上がって可聴域いっぱいを埋め尽くし、電気の雲に覆われて視界すら漠とする中を、オルゴールのような音が舞い踊る。
「Moonchild」を思い出して正解。
うねり、ねじれ、脈動する電子音。
ラトリッジ作。
「The French Lesson」(1:14)
前曲がそのまま続く。変化の相は見抜けない。
ジェンキンス作。
「Third」が、サイケな即興演奏でもって構築された大作主義の名作とするならば、こちらは、シンセサイザーに代表される洗練されたエレクトリック・テクノロジーでもって、リフを中心に組みたてられた、コンパクトな未来型ジャズロックの名作といっていいだろう。
これはフュージョン、ジャズ、プログレ全てのファンに聴いていただきたい作品だ。
(ESCA 5419)
| Roy Babbington | Bass |
| Allan Holdsworth | Electric & Acoustic & 12 String guitar |
| Karl Jenkins | Oboe, Piano, Electric piano, Soprano saxophone |
| John Marshall | Drums, Percussion |
| Mike Ratledge | Organ, Electric piano, Synthesizer |
75 年発表の「Bundles」。
遂にギタリストが加入、管楽器/キーボード/ギターのラインナップで音色/アンサンブルの幅を広げた。
独特の長回しのリフを用いた作品では、ジェンキンスが、自分の作曲の実験を繰返しているようなイメージもある。
モダンなプレイを見せるジェンキンスに比べ、ラトリッジは、シンセサイザーを用いてもプレイ・スタイルそのものは、初期と同じくフリー・ジャズ的なアドリヴである。
ジェンキンスが、メロディアスなフュージョン・タッチと自己のアヴァンギャルドなセンスを折り合わせたのとは対照的に、ラトリッジは、それらに対立/拒絶することで緊張感を生み出しているような気がする。
さて、前作と異なるのは、テクニカルでスリリングなクロスオーヴァー/ジャズロックとしての面が強まったこと。
これは、主として、ギターの存在によるのだろう。
これまでの管楽器とキーボードによるインタープレイ/アンサンブルから、ギターとキーボード/管楽器のインタープレイへと移り、演奏のスピード感が増している。
ただ、アラン・ホールズワースのギターは、管楽器的な抑揚をもつ独特のスタイルであり、思ったよりもしっくり SOFT MACHINE のサウンドにとけ込んでいる。
ダイナミックでシャープなジャズロック調の曲が続く中、ジェンキンス得意のリフがあてどなく漂流するような感触を生む環境音楽風の最終曲「The Floating World」が、一際光る。
個人的には、オルガンのロングトーンがバックに響き続けるところにも惹かれる。
しかしアルバムは、いまだ過渡的。
74 年 7 月録音。
ラトリッジの参加した最後の作品である。
なぜか SEE FOR MILES の CD は 10 曲目と 11 曲目の切れ目がおかしい。
「Hazard Profile Part 1」(9:18) NUCLEUS の第二作 1 曲目のリフを主題として翻案したヘヴィ・チューン。
ジェンキンズの作家としての構成力を見せつける。
ホールズワースは、ここですでに全開。
「Part 2」(2:21)
「Part 3」(1:05)
「Part 4」(0:46)
「Part 5」(5:29)重厚にして挑戦的なエンディング。
「Gone Sailing」(0:59)現代音楽風のアコースティック・ギター・ソロ。
「Bundles」(3:14)RETURN TO FOREVER、MAHAVISHNU ORCHESTRA を思い出して間違いないハード・チューン。
ただしベースによる執拗な変拍子リフは SOFT MACHINE のもの。
「Land Of The Big Snake」(3:35)ホールズワースのプレイが爆発するスリリングなハード・フュージョン。
挑発的なドラミング、バッキングのオルガンもカッコいい。前曲から切れ目なしに進む。
「The Man Who Waved At Trains」(1:50)
「Peff」(1:57)
「Four Gongs Two Drums」(4:09)
「The Floating World」(7:12)
(SEE CD283)
| Roy Babbington | Bass |
| John Etheridge | Acoustic & Electric guitar |
| John Marshall | Drums, Percussion |
| Alan Wakeman | Soprano & Tenor saxophone |
| Karl Jenkins | Piano, Electric piano, Pianette, String & Mini moog |
| guest: | |
|---|---|
| Mike Ratledge | Synthesizer on 4 |
76年発表の「Softs」。
ついに、最後のオリジナル・メンバー、マイク・ラトリッジが脱退し、事実上のグループ最終作となった。
ギタリストは、アラン・ホールズワースから Darry Way's WOLF のジョン・エサリッジに交代し、管楽器奏者としてアラン・ウェイクマンが加入、ジェンキンスはキーボードに専念することになった。
サウンドは、ハード・エッジにしておおらかな情動をスケール豊かに表現するエサリッジのギターをフィーチュアし、キーボードが悠然と受けとめる、テクニカルかつメロディアスなジャズロック。
壮絶な緊迫感と耽美なリリシズムの間を大きく行き交う演奏は、後期 SOFT MACHINE 最大の見せ場だろう。
前作に比べると、詩的で豊かな広がりのある音楽という地平へ到達したおかげで、一貫した印象を与える作品となった。
また、ストリングス系のシンセサイザー(新兵器か?)が響きわたる空間を、情熱的なギターが貫いてゆく、ロマンあふれる演奏や、南欧風のアコースティック・ギターとピアノのデュオなど、抑制を効かせつつもメインストリーム・フュージョンへの接近が感じられる。
それでも迎合するようなところはなく、あくまで知的でプログレッシヴなジャズロックとなっているのは、エサリッジ、ジェンキンスらのクールなセンスのおかげだろう。
熱を帯びたプレイの一方、ジェンキンス得意のミニマル・パターンも曲間のつなぎをはじめあちこちに現れており、緻密に音を積み重ねる冷徹な計画性も露になっている。
結論として本作は、SOFT MACHINE という名前にこだわる必要はなさそうな傑作であり、ブリティッシュ・ジャズロックを代表する一枚といえるだろう。
76 年 3 月録音。
「Aubade」(1:51)ソプラノ・サックスとアコースティック・ギターによるおだやかなデュオ。
幻想的なイントロダクションである。
「The Tale Of Taliesin」(7:17)は幻想と叙情に満ちた、異色の大作。
悠然たる序章・終章の間にはギター、ドラムスが壮絶な疾走を見せ、世界は一瞬にして煮えたぎる。
ここでのエサリッジのプレイはジョン・マクラフリンを越えている。
「Ban-Ban Caliban」(9:22)は、穏やかなテーマとリズミカルなリフに支えられたシャープなソロをフィーチュアした作品。
シンセサイザーのシーケンスに続き、序盤をリードするのはソプラノ・サックス(これがジェンキンスのオーボエとよく似ている)とマリンバであり、歯切れいいギター・ソロ以降は、中期 RETURN TO FOREVER をやや小ぶりにしたような超絶演奏が続く。
ジョン・マーシャルがレニー・ホワイトに聴こえてしまう。
「Song Of Aeoius」(4:31)は、官能の疼きにメランコリーが翳を落とすバラード。
ソリッドなギターが、かえってリアルな重みと気品を感じさせる。
FOCUS を大人にしたようなサウンドだ。
「Out Of Season」(5:32)は、ピアノとアコースティック・ギターによるデュオからエレキギターの切ないテーマへと進む、ロマンティックなニューエイジ風のナンバー。
リラックスしたエレクトリック・ピアノが、いい感じだ。
「Second Bundle」(2:37)はキーボードの多重録音。
万華鏡のようにファンタジックで調和した世界。
「Kayoo」(3:27)は、東洋の民族打楽器を用いたと思われるパーカッション・ソロ。
前半で慣れない楽器にフラストしたか、後半は普通のドラムキットで叩き捲くる。
「The Camden Tandem」(2:01)は、快速ドラムスと超絶ギターによる弾けた即興デュオ。
現代のロックのリスナーには、向きかもしれない。
ボイル、グッドソールを凌ぎ、マクラフリン、ホールズワースと並ぶ名手の一発芸である。
「Nexus」(0:49)
「One Over The Eight」(5:31)は、ファンキーなリズムが NUCLEUS を思わせる R&B 調のジャズロック。
サックスがフィーチュアされアメリカンなのだが、どこか陰のあるところは BRAND X と同じ。
「Etka」(2:21)ほのかにラテンの香りのするアコースティック・ギター・デュオ。
(SEE CD285)
| John Marshall | Drums, Percussion |
| Karl Jenkins | Piano, Electric keyboards, Synthesizer |
| John Etheridge | Acoustic & Electric guitar |
| Rick Sanders | Violin |
| Steve Cook | Bass |
78 年発表の「Alive & Well」。
再び新メンバーを迎えて、77 年パリの Theartre Le Palace で収録されたライヴ・アルバムである。
シンセサイザー、ヴァイオリンによる透明感ある音質とスリリングなプレイを堪能できる好作品だ。
本作の時点で、オリジナル・メンバーは不在であり、SOFT MACHINE は原形をとどめていない。(マイク・ラトリッジがいくつかの作品のアレンジ、サウンド・メイキングなどに関わっている可能性はある)
管楽器の代わりにヴァイオリンを投入して、エサリッジのギターとともに演奏をフロントを務めさせて、テクニカルなユーロ・ジャズロックを演奏している。
もはや、前作同様 SOFT MACHINE という名前にあまりこだわる必要はなく、別の技巧派のジャズロック・グループとして新鮮に聴くということでよいと思う。
さて、作品だが、そつのないリズム・セクションとともにつややかな音色で旋律を押し出して存在感を見せるヴァイオリンと音数の多いテクニカル・ギターが微妙にフロントを分けつつ疾走する作品から、各プレイヤーをフィーチュアしたソロ作品、キーボードによるサウンドスケープ風の作品まで、アンサンブルこそややラフで緩めながらも、聴きどころは多い。
矢継ぎ早のメドレーから変拍子パターン、無機的な反復など、SOFT MACHINE の遺伝子は脈々と続いているようだが、そういったリフにも、叙情性と分かりやすさ(テーマがメロディアスになった)が加わっているようだ。
また、中盤はエサリッジの超絶ギターがぐいぐいと引っ張っるエネルギッシュかつハイ・テンションの演奏なのだが、どちらかといえば、シンセサイザーのサウンドスケープを活かした、幻想的で瞑想的なイメージが主ではないだろうか。
最終曲の印象がそれだけ強いということもできる。
しかし、しかしだ、オリジナル・メンバー不在のこの地点まできてもなお、このサウンド、パフォーマンスが、人影のない「メトロポリス」のようなレトロ未来都市で機械だけが蒸気音を立てて動いている情景をイメージさせる。
これは間違いなく SOFT MACHINE のものである。
遺伝子どころか、グループのアイデンティティという見えない何かが、奏者を突き動かしているに違いない。
そして、特に 1 曲あげるならば、ラスト・ナンバー「Soft Space」。
すでにジャズロックというレッテルは不適切であり、シンセサイザー・ビートが強烈なテクノ・ジャズ (TANGERINE DREAM という話もありますが) といっていい。
エサリッジ得意のアコースティック・ギターなど多彩な音が入っており、ライヴ・アルバムとしては優れている。
ARTI+MESTIERI のファンは本作もお見逃しなく。
スティーヴ・クックは、GILGAMESH や SEVENTH WAVE、リック・サンダースは ALBION COUNTRY BAND で活動。この作品の後、エサリッジ、リック・サンダースは、SECOND VISION 結成へと進む。
「White Kite」(3:00)シンセサイザーによる神秘的な序章。
「EOS」(1:22)ヤン・アッカーマン風のギターが切なく叫ぶ。
「Odds Bullets And Blades PT I」(2:18)7 拍子のリフがドライヴするも、ややライトなフュージョン調。
「Odds Bullets And Blades PT II」(2:33)エサリッジの超絶ギターがリードするハード・ジャズロック。
「Songs Of The Sunbird」(1:24)シンセサイザーが静かに歌うナイト・ミュージック。
「Puffin」(1:18)ギターが加わり、力強く前進する。
「Huffin」(5:12)SOFT MACHINE または NUCLEUS らしい変拍子パターンが冴える。超絶ジャズギターのアドリヴを見せつける。ここまでメドレー。
「Number Three」(2:25)エサリッジの独演会。アコースティック・ギター 1 本によるスパニッシュなソロ。
「The Nodder」(7:13)6+5 拍子のリフでドライヴするミドル・テンポの作品。
抽象的にして揺ぎ無い自信があるこの味わいは、SOFT MACHINE ならでは。
「Surroundings Silence」(4:04)サンダースのややジプシー・フィドル調のヴァイオリンをフィーチュアした作品。ニューエイジ、ワールド・ミュージック風。
「Soft Space」(8:17)
(SEE CD 290)
| Mike Ratledge | Keyboards |
| Hugh Hopper | Bass |
| Elton Dean | Alto sax, Saxello |
| Robert Wyatt | Drums, Voice |
88 年発表の「Live At The Promos 1970」。
「3」リリースからニヶ月、1970 年 8 月、ロイヤル・アルバート・ホールでの BBC ライヴ録音。
選曲は、サードから 2 曲とセカンドのメドレー大作 1 曲。
最初の絶頂期を迎えたグループの姿を、タイミングよくとらえた作品である。
特に、アルバムに忠実なアレンジのテーマ部の演奏は、管楽器ゲストの不在はあるものの、完璧に近い。
また、ディーンのソロを突破口に白熱し拡大するインプロヴィゼーションもすばらしい。
しかし、演奏がややまとまり過ぎ、ライヴの迫力を削いだかもしれない。
メドレーではワイアット独特のシュールでアヴァンギャルドなヴォーカル・パフォーマンスが楽しめる。
ワイアットのドラミングもすばらしい。
2007 年「Third」再マスター盤のボーナス・ディスクとして復刻予定。
「Out-Bloody-Rageous」(11:54)プロローグのサイケデリックなテープ・エフェクト?がオリジナルに近く再現されている。
オルガンかファズ・ベースと思われるノイズすら、意図的なものに思えてしまう。
すべるように走り出すオープニングは、鳥肌がたつほどカッコよし。
「Facelist」(11:22)
「Esther's Nosejob」(15:39)
(CD RECK 5)
| Hugh Hopper | Bass | Robert Wyatt | Drums |
| Mike Ratledge | Electric piano, Organ | Elton Dean | Sax |
| Phil Howard | Drums | Ronnie Scott | Tenor sax |
| Marc Charig | Cornet | Paul Nieman | Trombone |
| Roy Babbington | Double bass | Neville Whitehead | Bass |
93 年発表の BBC ライヴ盤「BBC Radio 1 Live In Concert」。
「4」発表直後の 1971 年 3 月 11 日録音のライヴ盤である。
マーク・チャリグ以下管楽器と、ベースを二人ゲストに迎えている。
しかし何より、ワイアット脱退が濃厚となったためか、フィル・ハワードとのツイン・ドラム構成での演奏であるところが興味深い。
ディーン作曲のオープニング 2 曲がかなりの存在感を示すが、この 2 曲は、彼のファースト・ソロ・アルバムにも収録される。
1 曲目は、エレピの切れ味がいいジャズロック、そして 2 曲目は、フリー・ジャズ色の強い即興演奏である。
4 曲目は、幾つかのライヴに収録されているラトリッジの作品。
サウンドは正に「4」であり、ディーンのサックスが中心となったフリー・ジャズ期の SOFT MACHINE である。
全体に録音が優れており、管楽器がフィーチュアされた明確なジャズロックを堪能できる。
2005 年再発。
「Blind Badger」(10:08)二つの管楽器によるインタープレイは明確なユニゾンへと収束し、エレピのソロへと進む。
続いてコルネットのソロ。
サックスは、少しづつコルネットを攻め、自らのソロを奪い取る。
そして、サックス、コルネットのユニゾンが再現し、嵐のようなエンディングを迎える。
ベースは、非常にオーソドックスなジャズ・ベース。
ドラムもシンバル連打とバスドラ中心の演奏だ。
迫力は今一つだが、互いに火をつけるきっかけを探し回るような、緊張した演奏が面白い。
演奏はディーン(Sax)、チャリグ(Cornet)、ラトリッジ(El piano)、ホワイトヘッド(Bass)、ハワード(Drums)による。
ディーン作。
「Neo Caliban Grides」(5:43)サックスのダルなフレーズから始まる即興演奏。
ラトリッジのファズ・オルガンとディーンのサックスから始まり、ホッパーのファズ・ベースも加わって、ソロを交えつつ凄まじいインタープレイを繰り広げる。
ドラムは、ツインであることすら判然としないし、両者の区別もつかない。
管楽器を貫いて絶叫するオルガンは、いかにもこのグループらしい音だし、フリー・ジャズ的な展開に新鮮さを与えている。
ディーン(Sax)、ラトリッジ(Organ)、ホッパー(Bass)、ワイアット(Drums)、ハワード(Drums)による。
ディーン作。
ここからがメドレーのスタートである。
「Out Bloody Rageous」(5:19)「3」より。
同曲の中間部の抜粋。
エレピのバッキングによるサックスのストレートなソロ(原曲ではオルガン)をフィーチュアしている。
ベースは凄まじいファズだ。
アグレッシヴなのに洗練された明確な演奏がすばらしい。
ラトリッジ作。
「Eamonn Andrews」(1:27)ベース、サックス、エレピによるユニゾンの強烈なリフレイン、そしてエフェクトで狂暴に変容したベースが唸りを上げる。
シンバル/スネアを連打するドラム。
次曲へのブリッジである。
「All White」(4:58)「5」には、イントロにミステリアスなサックス・ソロが付け加わわった形で収録される。
ベースの静かなリフからオルガンが立ち上がり、波乱含みの演奏を予感させる。
何かを待つようなイントロダクションだ。
オルガンが口火を切るが、結局リードはサックスへ。
サックスの明確な力強いメロディ、そしてエレピが、バッキングにとどまらないプレイでサックスへと絡む。
「4」の世界を、さらにコンパクトに凝縮したような印象の曲だ。
ラトリッジ作。
ここからスコット(Tenor Sax)、チャリグ(Cornet)、ニーマン(Trombone)、バビントン(Double Bass)が加わる。
「Kings And Queens」(4:41)「4」より。
ベースの静かなリフで、サックスがメランコリックに歌う。
原曲のイメージ通り、抑制された中にロマンチシズムを孕んだ演奏である。
ホッパー作。
「Teeth/Pigling Bland」(15:53)前半は「4」より。
後半は「5」に収録される。
「Teeth」は全曲の荒々しい名残を吹き飛ばすドラムから始まって、バビントンのダブル・ベースをきっかけに、ホーンが吠えるエネルギッシュなオープニング。
テーマを繰返して演奏は走り出そうとするが、エレピがからまって出直し。
再び走り出した演奏の最初のソロはディーン。
ワイアットのドラムが、息を吹き返したように自由闊達に叩きまわっているのが印象的だ。
バックではエレピが暴れる。
そしてダブル・ベースのテーマから、いよいよラトリッジがオルガンで飛び出し、ホーンと真っ向衝突する。
そして力強いホーンによるビッグ・バンド風の演奏が続くが、やがてオルガンが主導権を取りソロで走る。
オルガンとホーンがからみあってグシャグシャになるが、トロンボーンの下、次第に秩序が戻る。
穏かなブラス・アンサンブル。
そして「Pigling Bland」である。
なめらかに優美にサックスが歌い出す。
「5」ではホーンはディーンのみだが、ここではホーン・セクションがオブリガートに入ってくる。
いかにもジャズロックらしいスリリングなバッキングに対して、ディーンのサックスがとうとうと歌い続ける。
そしてエンディング。
オルガン主導の疾走するユニゾンがじつにカッコいい。
うねるように続くエネルギッシュな演奏に身を任せていると、メドレーこそこのグループの演奏スタイルなのだ、ということが改めて強く感じられる。
ラトリッジ作。
アルバムの再現というレベルはとうに超越した、驚異のスタジオ・ライヴ。
ディーン主体の時期ではあるが、ラトリッジの熱いバッキングやワイアットの荒々しくも表情のあるドラミングも魅力的だ。
ライヴ盤では一押しの作品。
(WINCD 031)
| Karl Jenkins | Sax, Keyboards, Electric piano |
| Hugh Hopper | Bass |
| John Marshall | Drums |
| Mike Ratledge | Electric piano, Organ |
94 年発表の「BBC Radio 1 Live In Concert」。
WINDSONG からの BBC Radio 1 ライヴ・シリーズ第二弾。
ディーン脱退後、カール・ジェンキンズの参加したライヴである。
72 年 7 月 20 日パリス・シアターにて収録(CD のクレジットは 71 年となっているが誤り)、放送は 72 年 9 月 2 日。
サックスの代わりにジェンキンズのオーボエをフィーチュアした「Slightly All The Time」が興味深い。
他は 5 作目、6 作目からの作品。
2005 年再発。
「Fanfare」(1:58)
「All White」(5:50)後期への橋渡しとなる代表作。ベースによるタイトな 8 分の 7 拍子のリフの上で、エレクトリック・ピアノとソプラノ・サックスによる挑戦的なアドリヴ合戦が続く。
心地よい緊張感そして開放。
「Slightly All The Time」(5:40)「Third」収録の名曲。
エレクトリック・ピアノのデュオによるイントロから、静かなベース・パターンに導かれてサックスのアドリヴへ。
ジェンキンズのプレイは狂的な熱気の中にリリシズムが浮き上がるディーンと比べると、テクニカルで冷徹なイメージがある。
「M.C.」(3:47)
「Drop」(10:06)
「Stumble」(5:54)
「L.B.O.」(3:30)
「As If」(3:19)
「Riff」(14:40)「Gesolreut」とのメドレーか。
(WINCD 056)
| Elton Dean | Saxello, Alto sax, Rhodes piano |
| Hugh Hopper | Bass |
| John Marshall | Drums |
| Mike Ratledge | Electric piano, Organ |
95 年発表の「Live In France」。72 年録音。
「3」以降「5」までの作品に、即興曲を交えたフル・コンサートを収めている。
マーシャルを加えた「Facelift」など「3」の作品が、珍しい。
「Facelift」は、ディーンのエレピをフィーチュアしたインプロヴィゼーションからラトリッジのテーマに移り、その後は 2 台のエレピのアンサンブルが続く変則的な演奏だ。
複数管による演奏ほどの迫力はなく、後半のサックスの相手もオルガンではなくエレピなので「3」とはかなり印象が異なる。
ただし、後半のディーンのサックスの切れはみごと。
この作品の後、5 月にはディーンが脱退し、7 月にはすでにカール・ジェンキンスが新サックス奏者として加入している。
したがって今のところディーン在籍時最後のライヴ・テイクになる。
CD 二枚組。
「Plain Tiffs」(3:32)即興による緩やかなイントロダクション。
「All White」(6:23)「Fifth」収録曲。4 分の 11 拍子のリフがドライヴする。
ラトリッジはエレクトリック・ピアノに専念。終盤、サックス、エレピのユニゾンが冴える。チック・コリアばりのラトリッジのアドリヴがカッコいい。
「Slightly All The Time」(13:09)「Third」収録曲。緩やかなテンポによるスイング感、メランコリックな響き、クールでアブストラクトなタッチが絶妙の配合を見せる傑作。
「Backwards」は省略されている。ラトリッジはオルガン、ディーンはエレピ。中間でラトリッジもエレピに移行。ついで、ディーンがサクセロでメランコリックな名テーマを演奏し、倍速展開への足懸りを作る。
「Drop」(7:43)2 台のエレピがディレイとフェイズ・シフタでにじみ、ドラムスが牙を剥く。エレピの示す和音パターンをきっかけにドラムス、ベースが鋭いビートを刻み始めると、ラトリッジのファズ・オルガン登場。ディーンはエレピで手堅く後方支援。いつもながらラトリッジのソロは奔放で無茶苦茶で、なおかつ創造性がある。終盤のアンサンブルの呼吸は抜群。
「M.C.」(2:59)前曲終盤から RETURN TO FOREVER を思わせる夢想的なエレクトリック・ピアノがたゆとい始める。ディーンのアルトもなかなかリリカルだ。
「Out-Bloody-Rageous」(13:25)エレピとアルト・サックスのロマンティックなデュオのままスタート。サックスはすでにテーマをゆったりと奏でている。
ブルージーなサックス・ソロの末尾を飾るロングトーンをきっかけにベースがリフを提示、一気にスリリングなテーマへ。
管楽器が一つなためテーマの押し出しは今一つだが、キメの後、ディーンがエレピに回り、オルガンのアドリヴが始まると、スリリングな演奏が盛り上がってゆく。6:30 辺りでエレピが交代、ディーンが再びサックスを手にして、角張った 4 分の 10 拍子の上でしなやかなアドリヴを放つ。7+6 拍子で倍速化、演奏は過熱するも、やや盛り上がりきらないまま終焉に。
「Facelift」(17:53)
「And Sevens」(8:55)
「As If」(8:30)
「LBO」(6:08)
「Pigling Bland」(6:05)
「At Sixes」(11:00)
(OW 31445)
| Mike Ratledge | Electric piano, Organ |
| Hugh Hopper | Bass |
| Robert Wyatt | Drums, Vocals |
オフィシャル・ブートレッグ、95 年発表の「Live at the Paradiso 1969」。
69 年 3 月のアムステルダムでの録音。
ヒュー・ホッパーをベースに迎えた 三人構成での演奏である。(もっとも内ジャケットの写真には第四の男エルトン・ディーンも写ってるのだが)
インストゥルメンタル・ジャズロックへと疾走り始める直前の演奏であり、いまだワイアットのヴォーカルもたくさん入っている。
三人とは思えない音圧と迫力のあるインプロヴィゼーション、切ないまでのリリシズムをたたえた表情に、優れたライヴ・バンドであることを再認識させられる。
変拍子を叩きながら絶叫するワイアット、クレイジーかつクールなフレーズをノイジーに繰り出すラトリッジ、そしてファズ・ベースでブンブンとスケールを駆けぬけるホッパー。
アドレナリンが頭に集まってしまい、チキショウこうなったら全作聴き倒すかとばかりに興奮させられる。
「Hulloder」(0:24)
「Dada Was Here」(8:21)
「Thank You Pierrot Lunaire」(0:45)
「Have You Even Bean Green?」(0:57)
「Pataphysical Introduction PtII」(1:00)
「As Long As He Lies Perfectly Still」(1:55)
「Fire Engine Passing With Bells Clanging」(2:17)
「Hibou, Anemone And Bear」(4:17)
「Fire Engine Passing With Bells Clanging(Reprise)」(3:26)
「Pig」(4:21)
「Orange Skin Food」(0:15)
「A Door Opens And Closes」(1:18)
「10:30 Returns To The Bedroom」(10:59)
(BP193CD)
| Elton Dean | Alto Sax, Saxello, Electric piano |
| Mike Ratledge | Electric piano, Organ |
| Hugh Hopper | Bass |
| Robert Wyatt | Drums, Vocals |
98 年に発表された 71 年のライヴ盤「Virtualy」。
「4」発表直後、ドイツ、ブレーメンにて 71 年 3 月録音。
録音時期の共通する「BBC Radio 1 Live In Concert」と、ほぼ同じ曲構成だ。
ただしこちらは、四人のみによる演奏である。
「Facelift」は、ラトリッジがソロでリードしディーンはエレピで伴奏する。
ホーンがディーンのみのためにパワーと広がりには欠けるものの、反面音の密度は上がりプレイのテンションも高い。
そして 2 曲目「Virtualy」になだれ込み、ディーンがサクセロでスリリングにたたみかける。
そして圧巻は、6 曲目の「Out-Bloody-Rageous」。
ディーンのエレピ伴奏によるラトリッジのオルガン・ソロは、まさに炸裂という表現が相応しい。
そしてオルガンを引き継ぎ、前面へと出るディーンのサックス・ソロ。
テーマとともに激しくもメロディアスなプレイがみごとだ。
ワイアットは、ディレイを用いたヴォーカル・パフォーマンスも見せる。
また、既発曲のみならず「5」へ入る曲も演奏されており、興味深い。
僕にはどうもスタジオ盤をひいきする傾向があって、ライヴ盤には点が辛くなるんだが、このライヴは別格です。
音質も演奏も、充分及第点がつけられる。
四人のみによるタイトにして一体感ある演奏が堪能できる。
「Facelift」(10:04)「3」より。
ホッパー作。
「Virtually」(8:17)「4」より。
ホッパー作。
「Slightly All The Time」(8:12)「3」より。
ラトリッジ作。
「Fletcher's Blemish」(5:41)「4」より。
ディーン作。
「Neo-Caliban Grides」(9:26)ディーン作。ディーンの初ソロ作に収録される。
「Out-Bloody-Rageous」(9:59)「3」より。
ラトリッジ作。
「Eamonn Andrews」(4:29)ラトリッジ作。
「All White」(3:16)後に「5」へ収録。
ラトリッジ作。
「Kings And Queens」(3:37)「4」より。
ホッパー作。
「Teeth」(9:20)「4」より。
ラトリッジ作。
「Pigling Bland」(4:55)後に「5」へ収録。
ラトリッジ作。
(CUNEIFORM RUNE 100)
| Robert Wyatt | Drums, Vocals |
| Mike Ratledge | Keyboards |
| Hugh Hopper | Bass |
| Lyn Dobson | Saxes(on 1,2) |
| Elton Dean | Saxes(on 3-8) |
98 年発表の「SOFT MACHINE Live 1970」。
70 年 2 月録音のリン・ドブソンのサックスによる「Facelift」と「Moon In June」に、いつもの四人による 70 年 8 月録音の数曲を加えた、ライヴ・コンピレーション。
おそらく 3 曲目以降は、「Live At The Proms」と同じ音源だろう。
クレジットは 8 曲だが、CD プレイヤーは 11 曲まで表示する。
音源の古い編集盤やブートまがいのものには、よくある現象だ。
曲のクレジットもインナーとスリーヴで異なっているが、スリーヴの表記が正しい。
内容は「3」のリリース前後の作品から。
前半のドブソンの加わった 2 曲は、残念ながら録音がかなり悪い。
しかし、インストのテンションの高さは、伝わってくる。
「Facelift」は、最後にテーマが出現するまではそれとはわからない。
「Moon In June」は、ヴォーカル・パートが終ってからのインストのみの演奏である。
音が薄く感じられるのは、ドラムの音がうまく録れていないせいだろう。
3 曲目からはレギュラー四人による演奏。
「Live At The Proms」よりも音質がやや落ち、若干の編集もなされているようだ。
まず「Out-Bloody-Rageous」は、「Proms」では入っていたオープニング部分(拍手・歓声含む)が切られて、フェード・インになっている。
これは、オルガンかベースの不調によるノイズが入っていたためだろう。
「Facelift」の始まりのタイミングも、「Proms」よりも 30 秒くらい早め。
もちろんメドレーなので、どこで切るかはあまり内容には関係はない。
「Facelift」は、ディーンが大爆発しハイ・テンションで数分にわたって吹きまくる。
そして、実にタイミングよく、ラトリッジがエンディングのきっかけを入れる。
しかし曲は終わらず、そのままドラムのロールとともに次へ。
ベースが走り出すとメロディが入りタイトな演奏が続く。
まったく切れ目なく次の曲へ。
遠くでワイアットが歌っているのが聴こえる。
「Proms」では「Esther's Nosejob」としてクレジットされていた「Pig」以降「10:30 Return to the bedroom」までは、セカンド・アルバム収録のメドレー。
スタジオ盤からは、ずいぶんと変形させて演っている。
「Facelift」(4:57)「3」より。
ホッパー作。
「Moon In June」(5:55)「3」より。
ワイアット作。
「Out-Bloody-Rageous」(8:46)「3」より。
ラトリッジ作。
「Facelift」(11:55)「3」より。
ホッパー作。
「Pig」(1:31)「2」より。
ラトリッジ作。
「Orange Skin Food」(1:26)「2」より。
ラトリッジ作。
「A Door Opens And Closes」(1:43)「2」より。
ラトリッジ作。
「10:30 Returns To The Bedroom」(1:12+1:04+2:08+6:34)「2」より。
ラトリッジ/ホッパー/ワイアット作。
(BP290CD)
| Elton Dean | Alto sax , Saxello |
| Lyn Dobson | Soprano sax, Flute, Vocals |
| Hugh Hopper | Bass |
| Mike Ratledge | Electric piano, Organ |
| Robert Wyatt | Drums, Vocals |
2000 年発表の「Noisette」。70 年 1 月 4 日、クロイドン・フェスティバル・ホールにおけるライヴ録音であり、「3」収録の「Facelift」が収録された日の他のテイクを集めた内容である。
編成は、ニック・エヴァンス、マーク・チャリグ離脱後のリン・ドブソンを交えたクィンテット。
スリーヴには、録音に際し全てのテープが曲の途中で終ったため、編集及び 1 月 10 日の録音で修復してようやく発表できた、と記載されている。
録音状態は悪くなく、熱気と疾走感のある演奏が楽しめる。
「Backward」では、ディーンのサックスに代わり、ドブソンがフルートとヴォーカルを披露する。
また、ワイアットのヴォーカル・パフォーマンスは「Hibou, Anemone And Bear」のエンディングのみに抑えられている。
したがって、「Moon In June」はインストゥルメンタル。
ディーンのエネルギッシュなソロが続く佳曲「12/8 Theme」は未発表曲のようだ。
「Eamonn Andrews」(12:15)ラトリッジ作。タイトルは司会者の名前のようだ。
「Facelift」に通じる前のめりのリフで突き進む、カッコいい演奏である。
「Mousetrap」(5:24)ホッパー作。
管楽器中心にいかにもフリー・ジャズらしいフレーズで攻め立てるも、リリカルな表情も失わない佳曲。
挑戦的にしてインテリジェントな 8 分の 9 拍子のリフとの対比も鮮やか。
「Noisette」(0:37)「3」より。
前曲を受け止めるように、ツイン・サックスで華やかにキメる。
ホッパー作。
「Backwards」(4:48)「3」より。
そしてカンタベリーの代表曲の 1 つへ。ファンタジックなオルガンの和音に包まれた、胸を締めつけるようなフルートの調べ。ドブソンのトーキング・スタイルが新鮮だ。
終盤、なめらかに走り出し、スリリングなアンサンブルへと発展する。
ラトリッジ作。
「Mousetrap(reprise)」(0:26)ホッパー作。
「Hibou, Anemone And Bear」(8:50)「2」より。
ディーンが張り切る、端正にしてエネルギッシュ、スピード感あふれる変拍子ジャズロック。
ノイジーなオルガン・ソロもカッコいい。
ラトリッジ/ワイアット作。
「Moon In June」(6:55)「3」より。
インストでも名曲。
ロマンティックで大仰で、オルガン炸裂。
初期 KING CRIMSON にも 後期 THE BEATLES にも聴こえるということは、本作の英国ロックとしての純血度の高さを物語るのか。
ワイアット作。
「12/8 Theme」(11:25)ホッパー作。
2 管の魅力をフルに生かしたジャジーなジャズロック。
堅実なベースランニング、エレクトリック・ピアノによるバッキングもいい感じだ。
「Esther's Nose Job」(14:30)「2」より。
ラトリッジ作。
「We Did It Again」(7:15)「2」より。
エヤーズ作。
(CUNEIFORM RUNE 130)
| Mike Ratledge | Electric piano, Organ |
| Robert Wyatt | Drums, Vocals |
| Hugh Hopper | Bass |
| Elton Dean | Alto sax , Saxello except 7 |
| Marc Charig | Cornet on 4,5,6 |
| Lyn Dobson | Soprano & Tenor sax on 4,5,6 |
| Nick Evans | Trombone on 4,5,6 |
2002 年発表の「Backwards」。70 年 5 月および 69 年 11 月収録のライヴ音源と、68-69 年収録ののロバート・ワイアットのデモから成る編集盤。
前半は 70 年 5 月収録の 40 分にわたるメドレーで 4 人編成によるもの。18 分を越える「Facelift」を筆頭に、ワイアットのヴォーカリゼーションを含む「Moon In June」の後半部分、「Esther's Nose Job」へと続く。
後半は 69 年 11 月収録、管楽器を迎えた 7 人編成。
「Esther's Nose Job」、「Facelift」、「Hibou Anemone And Bear」の三曲である。音質はやや劣る。
最終曲がワイアットの「Moon In June」のデモ録音。「Third」収録の作品のプロトタイプである。
(RUNE 170)
| Kevin Ayers | Bass, Vocals |
| Mike Ratledge | Electric piano, Organ |
| Robert Wyatt | Drums, Vocals |
| Hugh Hopper | Bass |
| Brian Hopper | Sax |
| Elton Dean | Alto sax , Saxello |
| Marc Charig | Cornet |
| Lyn Dobson | Flute, Sax |
| Nick Evans | Trombone |
2003 年発表の「BBC Radio 1967-1971」。BBC ラジオ・プログラム、ジョン・ピールの「Top Gear」でのセッション全テイク集。
90 年「The Peel Sessions」として発表された CD の内容をほぼカヴァー。
エアーズのトボけたヴォーカルとオルガンのオーギュメント・コードの奇妙なブレンドから、麻薬的陶酔感を呼ぶインストゥルメンタルまで、急激な音楽的進化の過程が記録されており、ファンとしては興奮を押さえ切れない。
有名なオルタネート・テイク「Moon In June」ももちろん入っている。
(HUX 037)
| Elton Dean | Alto sax , Saxello, Electric piano |
| Hugh Hopper | Bass |
| Phil Haward | Drums |
| Mike Ratledge | Electric piano, Organ, Synthesizer |
| Karl Jenkins | Electric piano, Synthesizer, Oboe |
| John Marshall | Drums |
| Roy Babbington | Bass, Double bass |
| Alan Holdsworth | Guitar |
2003 年発表の「BBC Radio 1971-1974」。BBC ラジオ・プログラム、ジョン・ピールの「Top Gear」でのセッション全テイク集。
90 年「The Peel Sessions」として発表された CD の一部と、カール・ジェンキンス、アラン・ホールズワース在籍時までの内容をカヴァー。
最大の聴きものは、後期の代表曲「Hazard Profile」。
(HUX 047)
さていろいろな人物が入り乱れた SOFT MACHINE だが、なかでも重要なミュージシャンについてはソロ含め別ユニットでの活動も見てみよう。 ミュージシャンの名前をクリックすると、そのページへと飛ぶので、参考にしていただきたい。 ヒュー・ホッパーは、ソロに加えて実に様々なバンド、ユニットに参加している。 追跡し甲斐のあるアーティストだ。 また、エルトン・ディーンも、ジャズ色を強めたユニットで活躍する。 なんとカール・ジェンキンスは、ADIEMUSなるユニットにて作曲家としてニューエイジ系のクラシック音楽を手がけており、アルバムもすでに数枚を数え、来日も果たしている。 SOFT MACHINE 出身では、もっとも商業的に成功したミュージシャンといえるだろう。
僕は、ファースト/セカンドのいわゆるカンタベリー風のポップな雰囲気よりも、明確にジャズを志向し始めた頃の音に惹かれています。 ちょっと退廃的なムードとお遊びたっぷりのポップ・ミュージックも面白いのですが、技術を身につけた結果として本格的なジャズ演奏へと向きを改め、ロックとジャズのはざまに際どい世界を開拓してゆく姿がなんともスリリングであり、そこから生まれる音は精神の高揚のみならず、肉体的な快感すら誘い出すように感じます。 セカンド・アルバムでは、ケヴィン・エアーズに代わりヒュー・ホッパーが加入して、よりジャズ色が強くなるといわれるのですが、個人的にはまださほどに思えません。 もちろん諸説あって当然でしょうが、サード・アルバムからが本当にスリリングなこのグループの音楽のスタートのような気がしてならないのです。