SLOCHE

  カナダのジャズロック・グループ「SLOCHE」。ケベック出身。作品は RCA からの二枚。個性的なジャズロック。

 J'un Oeil

 
Rejean Yacola piano, Fender Rhodes, Wurlitzer piano, Horner clavinet, celesta, mini-moog, percussion, voice
Martin Murray Hammond B-3, mini-moog, Wurlitzer piano, Solina string ensemble, sax, percussion, voice
Caroll Berard electric & acoustic guitar, voice
Pierre Hebert bass, percussion, voice
Gilles Chiasson drums, percussion, voice

  75 年発表の第一作「J'un Oeil」。 内容は、テクニカルにしてハート・ウォーミング、ファンタジックな響きもあるジャズロック。 特徴は、シンセサイザー、エレピ、オルガンなどツイン・キーボードを活かした多彩な音色と、キーボードとギターのコンビネーションによってリードされるリズミカルな全体演奏である。 いわゆるファンキー一本槍の「フュージョン」では決してなく、カンタベリーよりもややスペイシーな広がりを持ちながらも、展開はさほど凝らずストレートに迫るという作風である。 このタイプのグループにしては、エレクトリックな演出やオルガンをフィーチュアしてシンフォニックなプログレ寄りのイメージを抱かせるところがユニークだ。 叙景的で明確な曲想が感じられるところも、プログレらしい。 たとえば、ストリングス・シンセサイザーをセンスよく用いたファンタジックなシーンの演出は、CAMELYES のスペイシーな部分にも通じる。 もっとも、アンサンブルを積み上げるのではなく、ジャジーな即興風のアプローチがメインであり、キーボード・ソロも大きくフィーチュアされている。 一方、ギターはナチュラル・ディストーションが小気味いい、どちらかといえばハードロックのグループにいそうなタイプ。 技巧的だが、パワーで押すのも忘れていない。 また、オルガンが非常にいい感じで使われているところは、プログレ・ファンには強く訴えるだろう。 ヘヴィな音が、こういったジャズロックではとても新鮮に感じられる。 ヴォーカルはフランス語であり、どうしても HARMONIUMET CETRA を髣髴させる。 ゆったりと厚ぼったいハーモニーがいい感じだ。
  ゆったりとしたテーマを綴る作風と、挑発するようなアヴァンギャルドな演奏が大胆に散りばめられて進むが、結局最後には、キーボードとハーモニーの魔術で納得させられてしまう。 さまざまな音楽的素地をはばかることなく打ち出した、多面的できまぐれ、ごちゃごちゃなイメージが魅力といえるだろう。

  「C'pas Fin Du Monde」(8:55)スキャット入りのスペイシーで SF チック、ややルーズな大作。 終盤はファンキーに跳ね、ムーグ、クラヴィネットとともにギターもうねる。

  「Le Kareme D'eros」(10:52)オムニバス風の大作。ロマンティックかつ技巧的なところは、フランス版 RTF か。前半は印象派+モダン・ジャズ風のアコースティック・ピアノ・ソロをフィーチュア。 中盤からはフランス語ヴォーカルと力強いリズムが加わり、分厚いアンサンブルでパワフルかつ神秘的に迫る。 ギターとムーグ・シンセサイザーによるスペイシーかつグルーヴィなかけあいから、終盤は EL&P がジャズロックをやっているようなカッコいい展開となる。

  「J'un Oeil」(4:44)GENTLE GIANT のような変拍子リフを狂言回しに、フレンチ・ポップ風のメロディアスなヴォーカル・ハーモニーと緩やかなキーボードの響きとともにファンタジックにスペイシーに展開する。

  「Algebrique」(6:32)憂鬱なアコースティック・ギターのアルペジオ、WEATHER REPORT なエレピ、YES のようなギクシャクしたアンサンブル、ソウル調のメイン・パート、変拍子反復など、通常の脈絡を拒否したような分裂症気味の作品。 テクニカルな変拍子アンサンブルを決めながらも、断片的でズッコケ気味である。 ヘヴィなサックスやドラムスのプレイもフィーチュア。 GENTLE GIANTKING CRIMSON が思いつきでプレイしているような奇妙な作品だ。 テクニックはみごと。

  「Potage Aux Herbes Douteuses」(7:10)R&B、ディスコ調の軽妙なノリの演奏と強圧的なリフでたたみかける演奏が交錯し、やがて、シンフォニックな高まりとともに宇宙へと解き放たれる。思い切りの足りないハービー・ハンコックか。 後半オルガンとギターで突き進む場面は、プログレど真ん中。
  
(RCA KPL1-0126)

 Stadaone

 
Rejean Yacola Fender Rhodes, Wurlitzer piano, Horner clavinet, mini-moog, piano
Martin Murray Hammond B-3, mini-moog, Wurlitzer piano, Solina string ensemble, soprano sax, tambourine
Caroll Berard electric & acoustic guitar, talk box, percussion
Pierre Hebert bass
Andre Roberge drums, percussion
Gilles Ouellet celesta, percussion

  76 年発表の第二作「Stadacone」。 内容は、R&B テイストのあるユーモラスでポップなジャズロック。 ツインキーボードを生かしたキレのあるアンサンブルだが、キツキツの技巧派という印象は無く、人懐こくソフトなポップ・タッチが主である。 前作のあからさまなプログレ風味は減退するも、リズムを強調し過ぎずメロディアスにユーモラスに迫っており、フュージョンと似て非なる音楽である。 スリリングなフレーズにあふれるクールなジャズ・フィーリング、そして、キーボードの暖かく太い音色が特徴だ。 ファンキーになっても、どこかに確実にハードなロックのマインドがある。 オランダの SOLUTION やベルギーの ALQUIN 辺りを思い出す音である。 ヴォカリーズ風のコーラス以外はインストゥルメンタル。

  「Stadacone」(10:16)
  「Le Cosmophile」(5:39)
  「Il Faut Sauver Barbara」(4:15)
  「Ad Hoc」(4:27)
  「La 'Baloune' De Varenkurtel Au Zythogala」(4:54)
  「Isacaaron」(11:21)
  
(RCA KPL1-0177 / MPM 36)


  close