イタリアのプログレッシヴ・ロック・グループ「SITHONIA」。 86 年ボローニャにて結成。 89 年アルバム・デビュー。 サウンドは、ツイン・キーボードを活かした、ヴォーカル・メインのメロディアスなシンフォニック・ロック。 喜怒哀楽をユーモアで包むような、素朴な味わいが特徴。 演奏よりも、丹念な展開をもつ楽曲そのものの魅力が大きい、近年珍しいタイプのグループである。 98 年の「Hotel Brun」から 13 年を経て、2011 年新作「La Soluzione Semplice」を発表。
| Orio Cenacchi | drums |
| Oriano Dasasso | piano, synthsizers |
| Marco Giovannini | lead vocals, chorus |
| Roberto Magni | guitar, mandolin, synthesizer programming |
| Paolo Nannetti | organ, mellotron, synthesizer programming, chorus |
| Valerio Roda | electric & acoustic bass |
2011 年発表の第六作「La Soluzione Semplice」。
長らく待ち望んでいた新作がようやく現れた。
BANCO と同じツイン・キーボードをフル回転させて、音色を活かしたシンプルなフレーズを丹念に織り込む誠実な作風と素朴な叙情性はまったくかわらない。
喩えてみれば、初期 GENESIS にイタリア風の脂っこさを加えて思い切り武骨にした感じである。
オープニングのピアノとサウンド・コラージュに卓越したセンスの良さがにじみ出ていると思う。
静かなギターのアルペジオ、訥々とした歌、その歌をなぞるメロトロン、間奏ではシンセサイザーとギターがゆったりと旋律を分け合う。
ハモンドオルガンは荒々しい音を立てるもどこかためらいがちだ。
堅実過ぎるドラム・ビートが全員を乗せてのっそりと立ち上がると、古い映画のような懐かしい情景が広がり始める。
ドン臭いといえばこれだけドン臭い演奏もないと思うが、これだけ誠実に思いを伝えようとする演奏もまた類を見ない。
往年のユーロロックのイメージをそのまま復活させたような佳作。
なぜかインナーには 20 年くらい前の写真が使われている。つまり、この人たちは流行やスタイルにはあまり関係がなく自らの道をずっとたどっているということだ。
なかなかできないことだと思う。
(LOV 004)
| Orio Cenacchi | drums, assorted percussion |
| Oriano Dasasso | Korg K-1 synth, Elka MK44 string synth, Mini-moog, chorus |
| Marco Giovannini | lead vocals, chorus |
| Roberto Magni | Charvel electric guitar, Eko acoustic guitar, Yamaha CS5 synth |
| Paolo Nannetti | Roland JX3P synth, Rhodes 660 electric piano, Mini-moog, chorus, lead vocals |
| Valerio Roda | Squire electric bass |
92 年発表の第二作「Spettacolo Annullato」。
巧みな語り口と緻密なアレンジに音楽的なインテリジェンスを感じさせながらも、あくまで素朴な響きをもつ傑作アルバム。
多彩な音色によるメロディを次々と繰り出して場面を綴ってゆくスタイル、優しく暖かい旋律を用いたクラシカルなポリフォニー、ドラマを演出するテンポ・リズムのナチュラルな変化など、アンサンブルのみごとさは、とても語り尽くせない。
それでいて、キツキツの技巧派や感情移入過多の「泣き」派ではなく、田舎風ののんびり感や垢抜けないユーモアのセンスもあるのだから、始末におえない。
また、70 年代的な音へのこだわりはあるのだが、同時にモダンな面もあり、結果としてあまり時代を感じさせない音になっている。
一つ一つのフレーズよりも、音色と調子のよさとハーモニーに工夫を凝らすことによって、楽曲総体で効果をあげてゆく作風である。
往年のイタリアン・ロックと同じく目まぐるしく展開しているのだが、流れが自然なのと全体に漂う長閑さのおかげで、追いかけてゆきやすい。
はっきりいって頭抜けたメロディや目の醒めるようなプレイがあるわけではなく、演奏は、肉体的なカタルシスとは縁遠い。
その代わりに、良書をじっくり読むような知的な楽しみがある。
これだけ豊かに編みこまれた音のタペストリーは、めったにないだろう。
いわば、超絶技巧のない超絶アンサンブルなのだ。
全体に、多彩なアナログ・シンセサイザーの活躍が大きい。
また豊かな音色を誇りながらも、極端なダイナミクスの変化がないのも、この独特なのんびり感の理由だろう。
一曲目の大作は、映画のサウンド・トラックかミュージカルを思わせる、多様な音楽性を誇る作品。
「Supper's Ready」に通じるものがある。
アルバムのエンディングはそのままこの一曲目の冒頭につながり、テーマへと変化する。
現代シンフォニック・ロックの代表作の一つ。ヴォーカルはイタリア語。ところで「SITHONIA」という名前の都市がギリシャにありますが、関係あるのでしょうか。
(MMP 115)
| Orio Cenacchi | drums, assorted percussion |
| Oriano Dasasso | Korg K-1 synth, Elka MK44 string synth, Mini-moog, chorus |
| Marco Giovannini | lead vocals, chorus |
| Roberto Magni | Charvel electric guitar, Eko acoustic guitar, Yamaha CS5 synth |
| Paolo Nannetti | Roland JX3P synth, Rhodes 660 electric piano, Mini-moog, chorus, lead vocals |
| Valerio Roda | Squire electric bass |
94 年発表の第三作「Folla Di Passaggio」。
まばらながらも暖かい拍手で幕を開けるライヴ・アルバム。
緩やかなキーボード、情熱的ながらも朴訥なヴォーカル・ハーモニーなど、ほのぼのしたイメージを主にし、丹念に物語を綴るスタイルはそのままに、ライヴな勢いもある好作品である。
無闇な大作はなく、最長でも 7 分あまりの曲があるのみ。
すべての曲に、ギターを中心とした不協和音を用いる緊張感あるパートと、アコースティックにメロディアスに朗々と歌うパートの配置の妙がある。
音楽的には、使い古された陳腐な係り結びが多すぎると感じるかもしれないが、ここでこういう風に音があればと誰もが思う音がちゃんとあるのは、すごいことだ。
それでいて不思議とうんざりせずに、最後まで音についてゆく気にもさせるのである。
おそらく彼らは、芸術家であると同時に、サービス精神というものをしっかり理解している、大人のエンターテイナー集団なのである。
アコーディオンを思わせるキーボード、クラシカルなピアノ、そして大袈裟にならない程度にお芝居風のパフォーマンスを見せるヴォーカルもいい。
歌ものシンフォニック・ロックの佳作である。ヴォーカルはイタリア語。
(MMP 228)
| Orio Cenacchi | drums |
| Oriano Dasasso | keyboards |
| Marco Giovannini | vocals |
| Roberto Marni | guitars |
| Paolo Nannetti | keyboards |
| Valerio Roda | bass |
| guest: | |
|---|---|
| Francesco De Martino | tenor sax on 9 |
| Silvia Lipparini | backing vocals on 7,9 |
| Gian Luca Gadda | sample timpani on 1 |
| Tobia Henson | conductor of The Scindigher Synth Orchestra |
95 年発表の第四作「Confine」。
内容は、ツイン・キーボードによるクラシカルで豊かな音と朗々たる歌をフィーチュアしたシンフォニック・ロック。
管弦楽(クレジットには指揮者のいるシンセサイザー・オーケストラとある)、アコーディオン、サックスから SE までさまざまな音もぜいたくに配して、巧みに物語を綴ってゆくスタイルである。
演奏よりも、楽曲そのもののよさが売りだったのだが、本作では、インストゥルメンタル・パートを拡充した上に、機敏な変化など難しい演奏をも試みたせいか、ややガチャガチャしているイメージがある。
ヘヴィなギターのアクセントそのものは悪くないが、音が重なりすぎて、演奏の芯というか主役が見えにくくなっているところが多い。
そして、キーボードこそ全ての場面にオールマイティに対応しているが、あまりバウンスしない固めのリズム・セクションのおかげで、一気呵成に走る場面に今ひとつスリルがない。
むしろ、リリカルでスローなパートの表現の方がしっくりとくる。
しかしながらそれでも、アルバムを通した起伏や楽曲の流れ、アンサンブルを含めた語り口には卓越したものがある。
もっとメロディアスな歌そのものに重きをおき、素朴なユーモアを散りばめれば、前作と同じような感動があったろう。
とはいえ、新境地を拓くことそのものは、大歓迎だ。
たとえば 9 曲目のような作品は、非常におもしろい。
そして、それを完成品にすることの難しさも今回は実感させられたということだ。
(MMP 271)
| Orio Cenacchi | drums, assorted percussion |
| Oriano Dasasso | Korg K-1 synth, Elka MK44 string synth, Mini-moog, chorus |
| Marco Giovannini | lead vocals, chorus |
| Roberto Magni | Charvel electric guitar, Eko acoustic guitar, Yamaha CS5 synth |
| Paolo Nannetti | Roland JX3P synth, Rhodes 660 electric piano, Mini-moog, chorus, lead vocals |
| Valerio Roda | Squire electric bass |
98 年発表の第五作「Hotel Brun」。
歌を中心にした安定感あふれる演奏で、ロマンティックな物語を綴る。
二人のキーボーディストを活かした、プログレ然としつつも、暖かいサウンドによる品のいいポップスという見方もできる。
しかし、メロディアスなようで不意を突くような切り返しがあったり、優美なリフレインが変拍子であったり、硬派な表現を見せるなど、やはりその血統は明らかだ。
二つのキーボードを使った演奏を考えると、思い切って 90 年代の BANCO といってしまってもいいかもしれない。
ドラムスが手数を惜しまないところもうれしい。
聴きものは、やはり 20 分余りのタイトル作だろう。
これが最終作としたら、あまりに残念。
「Con Akltri Occhi」(4:49)
「Festa In Collina」(3:43)
「Comprate Le Stelle」(5:07)
「Ombra Nella Nebbia」(4:00)
「Ruscelli」(2:45)
「Hotel Brun」(23:35)
「Risvegli」(2:56)
(MMP 351)