SECRET OYSTER

  デンマークのプログレッシヴ・ロック・グループ「SECRET OYSTER」。 BURING RED IVANHOECORONARIAS DAN らを母体に結成。 キーボード、サックスをフィーチュアしたジャズロック。作品は四枚。2005 年米国 Laser's Edge より遂に CD 化さる。

 Secret Oyster

 
Kenneth Knudsen electric piano
Karsten Vogel soprano & alto sax, organ
Claus Boling guitars
Mats Vinding bass
Bo Thrige Andersen drums

  73 年発表の第一作「Secret Oyster」。 本国以外では「Furtive Pearl」という名前で発表される。 内容は、性急にして豪快なハードロック寄りジャズロック。 ギタリストが作曲を手がける A 面では爆発力のあるギター、ドラムスが強引に攻め立て突き進み、ささくれだったエレクトリック・ピアノとサックスが受けて立つ。 70 年代初期なだけに、ためらいなくオルガンが高鳴る瞬間もある。 ヘヴィな音が暴れる中に、垢抜けなさをユーモアにすりかえたようなユニークな表現が現れる辺りが、只者ではない。 前身グループの経験を目一杯活かしているに違いない。 またサキソフォニスト、キーボーディストが作曲を手がける B 面では、ベースが刻む変拍子リフの上でディレイを駆使したエレピが波状攻撃をしかけ、ソプラノが絶叫する SOFT MACHINE 直系の音を披露している。 ZEPPELIN ばりのパワフルなドラム・ソロまで叩き込んだ、一体感あふれる熱い作品である。 全曲インストゥルメンタル。
  
(CBS 65769)

 Sea Son

 
Kenneth Knudsen electric piano, moog
Karsten Vogel soprano & alto sax, organ
Claus Boling guitars
Jess Staehr bass
Ole Streenberg drums, percussion
guest:
Finn Ziegler violin
Hans Nielsen violin
Bjarne Boie Rasmussen viola
Erling Christensen cello
Palle Mikkelborg trumpet

  74 年発表の第二作「Sea Son」。 リズム・セクションがメンバー交代。 ブルージーなハードロック・マインドを封じ込めた、ワイルドかつ叙情的なジャズロックの名品である。 ハードロック調ながらも、細やかなパッセージを快調にぶっ飛ばすギター、そして、バカのようでアタマのいいリズム・セクション。そして、荒々しさからどうしようもないまでの切なさが噴出す瞬間に、泣き崩れずに凛と演奏を支えるのは、端正なキーボードである。 ラリー・コリエルの ELEVENTH HOUSE を、品よくそして、人懐こくしたような演奏といえばいいのかもしれない。
   1 曲目、5 曲目のストリングス・カルテットを交えたリリカルな表現もいい。特に 5 曲目のややシリアスな ECM 調が、本作では、いい感じに異彩を放つ。 2 曲目「Mind Movie」はブルーズ・フィーリングあふれる屈指の名曲。 この哀愁は、ZEPPELIN と同じ。 テリー・キャスばりのワウ・ギター・ソロが鋭利なリズム、端正なピアノに支えられるという奇跡的な演奏である。 4 曲目は、ハードロック。 全曲インストゥルメンタル。 デンマークのマイルス・デイヴィス、パレ・ミケルボルグがゲスト参加、安っぽいのにものすごい切れ味のフレーズを吹き飛ばす。 CD は 3 曲のボーナス・トラック付き。
  
(CBS 80489 / LE 1045)

 Astarte

 
Kenneth Knudsen piano, electric piano, moog, string synth
Karsten Vogel sporano & alto sax, string synth
Claus Boling acoustic & electric guitars, sitar
Jess Staehr bass
Ole Streenberg drums, percussion, harmonica

  75 年発表の第三作「Astarte」。 本国では「Vindunderlige kaelling」の名前で発表された、同名の前衛バレエの劇伴音楽。 内容は、キーボード、サックスによる繊細な表現が冴え渡るジャズロック。 例えるならば、初期 WEATHER REPORT をうんとファンタジックにしたような、KING CRIMSON の演じるフュージョンのような、または中期 CAMEL のような音である。 ギターとサックスがきわめて英国プログレ的なニュアンスをもつ一方、キーボードが入ると格段にジャジーになる。 全体として、技巧はもちろん、表現力という意味でも米国メインストリームと全く遜色ない一線級である。 メロディアスでファンタジックなプレイをじっくりと歌わせてゆくうちに、いつしかそこを軸としてスリリングなアンサンブルへと発展してゆく、その進展の仕方がなんともカッコいい。 躍動するような演奏とともに、優美でクラシカルでプレイも自然に配置されている。 丹念に音色を変えてフレーズを紡ぐシンセサイザーやシタールの存在もユニークなのだが、何よりも、つかず離れず絶妙の距離感で緊張とも弛緩とも異なる不思議なテンションをキープするアンサンブルの妙こそが、音楽性の肝だろう。 謎めいた哀しげなパフォーマンスで空間を切り取ってゆくダンサーが目に浮かぶような語り口である。 劇伴ながらも(だからというべきか)音にはイントロからアウトロまで全体を通したストーリーが感じられる。 ブリッジ風のタンゴがいい。

  
(CBS 81208 / LE 1043)

 Straight To The Krankenhaus

 
Claus Boling acoustic & electric guitars
Kenneth Knudsen keyboards
Jess Staehr bass
Ole Streenberg drums
Karsten Vogel sax

  77 年発表の第四作「Straight To The Krankenhaus」。 内容は、メロディアスにしてファンタジック、ファンキーにしてややメランコリックなジャズロック。 ファンキーというと通常は汗が飛び散りそうなイメージが浮かぶのだが、本作のファンキーさは他の要素とも相まって一味違う。 冷ややかなまでに鋭利でクールなのだ。 おそらくこの印象は、主として、研ぎ澄まされたリズムにドライヴされるタイトなアンサンブルとキーボードの音作りからくるのだろう。 例えるならば、練習量を 10 倍に増やして頭の良くなった KRAAN といった感じでしょうか。 また、メロディアスなテーマによる叙情的な表現もみごとなのだが、そこでも、たっぷりとした哀愁や情感とともに、どこかニヒルな雰囲気がある。 いわゆるクロスオーヴァー/ジャズロックの文脈で見て特徴的なのは、ガッとユニゾンにまとまってカタルシス、といった瞬間がほとんどないことだろう。 キャッチーなテーマを巡って楽器同士が微妙な距離を取って呼応し、ソロを回しつつ係り結びを作ってゆく。 アンサンブルとしての妙味はたっぷりある。
  さて、そういった第一印象から少し進んで、プレイとサウンドを味わってみよう。 キーボードはストリングス系シンセサイザーを多用し、CAMEL を思わせるようなファンタジックな音作りをするとともに、大胆な音や効果を使ってソロを取る。 おそらくストーリーテリングのリードは、このキーボードのプレイと音だろう。 ギターはナチュラル・ディストーション・サウンドでわりとラフなアドリヴに決めてゆくのだが、多めの音数にもかかわらずフレーズがきわめて自然に聴こえる。 あまりこねくり回さずに突っ放すようなところもカッコいい。 私が古いのだろうが、ワウやコンプレッサの使い方がうまいギタリストは大好きである。 そしてリズム・セクションは、変拍子でもグルーヴィにしてキレのあるビートを放っており、爆発的パワーもあり。 ハイハット、シンバル主体の組み立てが個人的にはうれしい。 キーボードがクールなだけに、饒舌で「ベタ」なサックスのプレイが個性的なアクセントになっている。 モダン・ジャズを経た猛者に違いない。
  デリケートな歌心を見せながらも、素早い変わり身と込み入った技巧的な動きを平然とこなすようなところがあり、したがって、常に予測不能のスリルがあり、おまけに薄笑いを浮かべるようなユルいところと濃密なまでに耽美な表現が矛盾なく両立している。 マイルス・ディヴィスが創始し、RETURN TO FOREVERMAHAVISHNU ORCHESTRA が築いた音楽観から、すでに一歩進んだ独自の境地を拓いているといっていい。 ユーロ・テクニカル・ジャズロックの名盤であり、個性的なフュージョン、ジャズロックの見本の一つである。

  「Lindance」(1:11)
  「Straight To The Krankenhaus」(2:45)
  「My Second Hand Rose」(4:14)
  「High Luminant Silver Patters」(5:34)
  「Delveaux」(7:51)
  「Stalled Angel」(3:54)
  「Rubber Star」(4:09)
  「Traffic & Elephants」(6:10)
  「Leda & The Dog」(5:47)
  
(CBS 81434)


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