RUPHUS

  ノルウェーのプログレッシヴ・ロック・グループ「RUPHUS」。 70 年代に六枚の作品を残す。 英国録音も果たす。 後期の作品のプロデュースは、テリエ・リピダル。 パンチのあるヴォーカルを活かしたハードロックからジャズロックまで、時代の音に敏感に反応したセンスのいいサウンド。 初期はやや YES 似。

 New Born Day

 
Hans Petter Danielsen guitar
Kjell Larsen guitar, flute
Hakon Graf organ, piano, bass
Thor Bendiksen percussion
Asle Nilsen bass, flute
Gudny Aspaas vocals
Rune Sundby vocals, acoustic guitar, sax

  73 年発表のアルバム「New Born Day」。 内容は、男女混声によるハイトーンのヴォーカル・ハーモニーとオルガンをフィーチュアしたハードロック。 ラウドなギター・リフによるハードロックを基調にしつつも、サイケ、R&B っぽさからリズムに現れるジャズ・テイストまで、きわめて雑多な雰囲気がある。 まさに、同時期のブリティッシュ・ロックそのものというべき内容である。 「押し」「引き」の呼吸もよく、ハードロックの直線的な運動性に、しなやかな弾性とシンフォニックな余韻も加えている。 演奏面では、敏捷にして存在感あるベース・ライン、フォーキーなメロディ、そして幅広い音楽性をもつキーボードの存在が決定的だ。 さらに、フルートを用いたラウンジ/モンド/映画音楽調や、サックス、ヴァイヴによるジャジーなアクセントなども印象的。 初期 DEEP PURPLE に端を発し、ATOMIC ROOSTER を経てイタリアン・ロックへと流れ込むヘヴィなオルガン・ロックもあり、全体として、シンフォニックなプログレとハードロックの中間くらいといえばいいかもしれない。
  演奏がテクニカルな一方で、テーマとなるメロディはもろに R&B 調だったりポップス風だったり、分かりやすい。 ドラマティックというか、ベタな「泣き」もたっぷりある。 ごった煮風なのだが、一つ一つの場面で見せる表情はそれぞれかなり本格的であり、大所帯の音楽的な多面性を十分に生かしているというべきだろう。 ハーモニー、オルガン、積極的なベースらが、初期 YES を思わせるかと思えば、リフとトゥッティで攻め込むスタイルは、一転して DEEP PURPLE であり、さらには THE NICE を思わせるハードなオルガンのプレイもある。 その上、アコースティックで叙情的な音も巧みに使いこなしている。 70 年代初期の英国の音を受け止め、すばやく打ち返したようなみごとな内容です。 ヴォーカルは英語。 プロデュースはスタイン・ロベート・ルドヴィグセン。

  「Coloured Dreams」(4:04)
  「Scientific Ways」(5:59)

  「Still Alive」(4:35)ATOMIC ROOSTER のようなオルガン・ヘヴィ・ロック。

  「The Man Who Started It All」(5:28)

  「Trapped In A Game」(6:06)パンチのある女性ヴォーカルが歌いこみ、管楽器が重厚に守り立てるバラード。 カルメン・マキを思い出す。

  「New Born Day」(5:43)力強いリフ、ワイルドなオルガンがほとばしるシャフル・ビートのヘヴィ・チューン。

  「Day After Tomorrow」(8:47)ハードなオルガンと雄々しくもリリカルな歌が交錯するバラード。 オープニングのパーカッションを効かせたオルガンがカッコいい。 ギターは思い切りワウ。 EL&P に迫る。

  「Flying Dutchman Fantasy」(3:08)ボーナス・トラック。 ムーグも用いておりコーラス、ベースは YES に酷似。
  「Opening Theme」(3:18)ボーナス・トラック。 ノリノリのテーマとオルガンが THE NICE 風。 インストゥルメンタル。
(PANCD 012)

 Ranshart

 
Rune Ostdahl vocals
Kjell Larsen guitar
Hakon Graf keyboards
Asle Nilsen bass, flute
Thor Bendiksen percussion

  74 年発表のアルバム「Ranshart」 ギタリストの脱退やヴォーカリスト交代など、若干のメンバー変更あり。 それとともに、音質はヘヴィさよりも弾力性と瑞々しさが顕著になり、メロトロンも加わって一気にシンフォニックに変化。 はっきりいって「YES 化」である。 シンプルかつ口当たりのいいリフやリッケンバッカー・ベース、クランチなギターのプレイ、奥行きと厚みを生むキーボードのコンビネーションなど、ややアメリカナイズされた初期 YES といった感じである。 翳のある声質ながらも、どこかアッケラカンとしたツイン・ヴォーカルも、英国よりはアメリカに近いだろう。 おそらく、誰しもが冒頭のギター一発で「わ、YES」と思うはずだが、ファルセットのスキャットがハーモニーで入ってくると、いよいよもって YES である。 本家ほどはドラムに切れ味がないのが残念だが、まとまりのある小気味のいいアンサンブルは、かなりの健闘といえるだろう。 一方、アコースティック・ギターのアルペジオが訥々と語り始めると、すっかりふつうのフォーク・ロックになってしまう。 そういう落差もおもしろい。 YES を思い浮かべると純正プログレ・ファン向きの作品になってしまうが、デリカシーのあるポップスと思って聴けば、そういうよさもちゃんと感じられる。 かなりの傑作ではないだろうか。 ヴォーカルは英語。 フルートをフィーチュアした 4 曲目の大作は、哀愁あるクラシカルなアンサンブルの中で後のファンキー路線をも示唆する、充実したインストゥルメンタル。

  「Love Is My Light」(6:12)
  「Easy Lovers, Heavy Moaners」(4:37)ギターのアルペジオ伴奏によるおだやかな歌、そして湧き上がるメロトロンとなめらかなムーグ。 スティーヴィ・ワンダーのバラードを思わせる小洒落た感じが懐かしい。
  「Fallen Wonders」(5:51)
  「Pictures Of A Day」(8:30)
  「Back Side」(8:10)

(PACD 017)

 Let Your Light Shine

 
Hakon Graf keyboards
Asle Nilsen bass, flute
Gudny Aspaas vocals
Thor Bendiksen percussion
Kjell Larsen guitar

  76 年発表のアルバム「Let Your Light Shine」。 第一作の女性ヴォーカルが復帰。 内容は、なんとギターとムーグ、エレピを中心とした典型的ジャズロック/フュージョン・スタイル。 MAHAVISHNUORCHESTRA や中期の RTF を思わせるサウンドである。 ほんのりファンキーで突っ込み気味の演奏とスキャットが、なんとも懐かしい。 ハードロック、YES ときて、またもや時代の音を取り入れて転身したわけだ。 恐るべきは、これだけ大きな変化を遂げたにもかかわらず、演奏が堂に入っていることである。 たいした演奏力である。 ハードに疾走する場面のみならず、リリカルなフルートとアコースティック・ピアノによる、幻想的かつ叙情的な演奏もある。 ムーグのスピーディなピッチ・ベンドや、渦を巻くようなストリングス・アンサンブルなど、シンフォニックな味つけも完璧。 ファンタジーの香りのするジャズロック作品としては一級品。 スネアの緩いドラムスがかなりうるさいですが。 プロデュースはテリエ・リプダル。 リプダルは一部でシンセサイザーも演奏している。

  「Sha ba Wah」(7:19)ファンキーなスキャットで押し捲る快速チューン。
  「Nordlys」(1:45)
  「Corner」(4:21)北欧の FOCUS というべきポップで愛らしいインストゥルメンタル。
  「Second Corner」(6:35)小ぶりなチック・コリア RTF
  「Let Your Light Shine」(8:16)
  「Grasse」(1:50)
  「Brain Boogie」(9:54)

(BRAIN 0060031)

 Inner Voice

 
Thor Bendiksen drums
Sylvi Lillegaard vocals
Kjell Larsen guitar
Asle Nilsen bass
Jan Simonsen keyboards

  77 年発表のアルバム「Inner Voice」。 ソウルフルな新女性ヴォーカル、新キーボードディストによるエレクトリック・ピアノを中心とするファンキーかつスペイシーなジャズロック。 作曲の要であったハコン・グラーフが脱退し、作曲はギタリストが主として担当している。 曲調は、前作よりも挑戦的なところが少なくなり、メローになったといえるだろう。 ヴォーカルは、荒っぽさはあるものの、フローラ・ピュリム路線から黒っぽいソウル・スタイルまでなかなか芸風が広い。 そこへエレピとくれば、もはや完全にフュージョン・スタイルなのだが、ナチュラル・ディストーションでソリッドな存在感を見せるギターがとても素朴で力強いアクセントになっており、なめらかになり過ぎない歯止めとして働いている。 B 面ではシンセサイザーが可憐なプレイを見せて、ファンタジックな曲調になっており、ファンキーでも決して汗臭くならないところが特徴だろう。 また、前作でフルート、アコースティック・ピアノで見せていたようなメランコリックな面はあまり感じられない。 プロデュースはテリエ・リプダル。

(BRAIN 60.060)


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