RUMBLIN' ORCHESTRA

  ハンガリーのプログレッシヴ・ロック・グループ「RUMBLIN' ORCHESTRA」。音楽一家によるクラシカル・シンフォニック・ロック。2004 年現在作品は二枚。

 Spartacus

 
Ella Bela keyboards, vocals
Szabo Jusztin drums, percussion, bass, vocals
Ella Beatrix flute
Ella Kitti cello
Ella Attila trombone
Ella Daniel oboe
Ella Miklos violin
guest:
Demeter Gyorgy lead vocals on 2,5
Varga JanosEAST guitar on 5
Simai Laszlo trumpet
Toth Tamas trumpet

  98 年発表のアルバム「Spartacus」。 内容は、混声ヴォーカル、コーラス、大胆なキーボードをフィーチュアしたオペラティックなクラシカル・シンフォニック・ロック。 ドラムスとベース兼任のプレイヤーとキーボーディストを除くメンバーは、フルート、オーボエ、トロンボーン、ヴァイオリン、チェロであり、人数の割合は、チェンバー・ミュージック系の方が高い。 それでも、演奏のダイナミズムという点では、キーボードと音数の多いリズム・セクションがリードしており、そこへクラシカルな要素を入れ込むという作風になっている。 テーマは、ドイツ TRIUMVIRAT の名作と同じく、帝政ローマを揺るがせた「クアラディドルの乱」。 奴隷王スパルタカスによる反乱を巡るドラマである。
  さて、改めて、演奏は、管弦、キーボード、打楽器のオーケストレーションによる王道的なものであり、SE も駆使して主題を描いてゆく。 全体にテンションは高く、勇壮で重厚、無窮動で突き進んでは、朗々たる歌のパートでややゆったりするものの、すぐさま再びティンパニとともに勢い込んで走り出す、といった感じである。 もっとも、サウンドが軽やかなせいか、いっしょに走り続けてもヘトヘトになることはない。 ヴォーカルはオペラ風であるばかりでなく、メロディアスでポップなところも多く、その点でも TRIUMVIRAT と同じような感覚をもっているようだ。 ムーグ・シンセサイザーによる挑戦的なプレイ、オーボエ、フルート、チェロらによる気品あふれるアンサンブル、ジャジーなピアノ・ソロ、ラグタイム調など、豊富なイディオムも散りばめており、高尚なだけではない血をかきたてるような内容になっている。 ギターがあまりにがんばってしまうとよくある HM/HR 系のロック・オペラもの、もしくは MASTERMIND になってしまうのだが、そこはうまくしたもので、一曲のみのゲスト参加(もっとも EAST の名手ヤノス・ヴァルガという驚きの抜擢)であり、あくまで主役はキーボードとクラシック・アンサンブルである。 これはオールド・ファンにはうれしい。 最終曲で、TRIUMVIRAT のフレーズが現れたような気がするのだが..... ボーナス・トラックは、自ら出自を明らかにするようなレナード「Westside Story」バーンスタインの「America」のライヴ録音。 客席はものすごい盛り上がりである。
  さて、ハンガリーということでどうしても AFTER CRYING と比較することになるが、こちらは、AFTER CRYING と比べると KING CRIMSON への思い入れがほとんどなく、SOLARIS 辺りと同じく、ロックというスコープでは HM/HR 的な現代のロックに目が向いている気がする(AFTER CRYING はほぼ完全に 70 年代プログレが立脚点になっているといっていい)。さらに、こちらは圧倒的にオペラ風である。 そして、EL&P 度は両者譲らずである(ヴェドレス・シャバがいない今の AF は分が悪いかもしれない)。いずれにしても、同じ国から、これだけスケールの大きなクラシカル・ロック・グループが二つも同時代に生まれること自体、驚きである。

  
(BGCD 022)

 The King's New Garment

 
Ella Bela keyboards
Ella Beatrix flute
Ella Kitti cello
Ella Attila trombone
Ella Daniel oboe
Ella Miklos violin
Szabo Jusztin drums, percussion, bass on 6,8
guest:
Demeter Gyorgy lead vocals
Szosznyak Ildiko lead vocals
Gaal Zoltan trumpet
Csavics Sandor trumpet
Hetsch Laszlo guitar
Gyenes Bela sax

  2000 年発表のアルバム「The King's New Garment」。 内容は、再びけたたましくも軽やか、そして上品なクラシカル・シンフォニック・ロック。 管弦、シンセサイザー、ハードなギターらが、メイン・テーマでは一線に並び、間奏部では華やいだプレイで折り重なる。 何気ない変拍子や大胆なテンポの変化によるアヴァンギャルドな表現もみごとに決めており、いかにもモダン・クラシックらしい刺激的な内容になっている。 そして、本格的なオーケストラ演奏と思わせておいて、突如エマーソン直系のハモンド・オルガンやイタリアン・プログレへのオマージュ(LOCANDA DELLE FATE ?)を決めてゆくなど、サービスは惜しみない。 ただし、邪悪さやワイルドさはあまり重視されていないようで、攻めたてるようなフレーズやメランコリックな表現でも上品さときらきらとした華やぎがある。 基本的にオプティミスティックで、育ちのいい感じの表現が得意なようだ。 今最も正調クラシカル・ロックといえば、この作品になるでしょう。 圧巻は、20 分近くにわたる冒頭のタイトル組曲。 そのまま映画のテーマ音楽になりそうなくらい充実した多彩な演奏が盛り込まれている。 オープニングは、まるで目の前で花々が音を立てて咲き乱れるように華麗なるアンサンブルであり、全編、軸となるキーボード、弦楽器および木金管とリズム・セクションとのサウンドのバランスも見事である。 さまざまな音が詰めこまれているが、常に軽快なノリのよさが保たれているので、聴き心地がとてもいい。 曇り空で肌寒い日には、暖かな部屋でこの CD をかけると心も温まりそうだ。
  管弦を動員しクラシカルな表現を主とするも、あくまでポピュラー音楽っぽさをキープし、シンフォニックなロック足り得ている逸品です。

  「The King's New Garment - Suite」(18:23)
  「Overture Fantasy」(9:34)
  「Awakening」(4:27)
  「Over The Clouds」(5:43)
  「Dance Suite」(10:12)
  「Big Run」(8:36)
  「Merry-go-round」(5:09)
  「The King」(8:35)
  「Farewell」(1:42)
  
(BGCD 060)


  close