イタリアのプログレッシヴ・ロック・グループ「RACCOMANDATA RICEVUTA DI RITORNO」。 72 年デビュー。 同年アルバムを発表し、74 年解散。 解散後ヴォーカルのルチアノ・レゴーニとギターのナンニ・チヴィテニャは SAMADHI 結成へ向かい、ドラムスのフランチェスコ・フランチーカは PROCESSION へと加入する。
| Luciano Regoli | vocals, acoustic guitar |
| Nanni Civitenga | acoustic & electric & 12 string guitar |
| Stefano Piermarioli | piano, Hammond C 3 organ, celeste, piano chiedate? |
| Francesco Froggio Francica | drums, percussions |
| Manlio Zacchia | bass, contrabass |
| Damaso Grassi | tenor sax, flute |
| Martina Comin | word |
72 年発表のアルバム「Per...Un Mondo Di Cristallo」。
邦題は「水晶の世界..へ」。
サウンドは、現代音楽やフリー・ジャズの影響をうかがわせるアヴァンギャルドなヘヴィ・ロック。
フォーク・タッチのメロディを軸にしながらも、アコースティック・ギターとフルートによる妖しげなデュオ、ピアノとサックスらによるフリーキーなアンサンブル、さらにはビジーなユニゾンや強烈なアクセントをもつ決めを多用するところなど、OSANNA、初期 KING CRIMSON の系譜とみて間違いない。
ギター、フルート、コントラバスら、アコースティックで素朴な音が多いにもかかわらず、曲調が大きな振幅で目まぐるしく揺れるために、全体のイメージは過激で耽美である。
アルペジオにしてもベース・ラインにしても、反復の果てに突如としてギラギラと血走るような表情を見せる。
伸びやかなハイトーン・ヴォイスによる狂おしいハーモニーも特徴的だ。
奔放なソロと爆発力のあるアンサンブルが、現代音楽風の無調性や変則拍子などを駆使して、次々とグロテスクなシーンを描いてゆく。
しかし凄まじくアンバランスな場面をつないでゆくのは、意外なほどに安定した演奏であり、しっかりしたトータル・イメージを感じさせる内容になっている。
曲は全てチヴィテニャ、作詞は専任のマルティナ・コミンによる。
OSANNA の「Palepoli」以前にこういう作品があったことも非常に興味深い。
ジャケットは FREE のライヴに似すぎていると思いますが。
1曲目「Nulla(虚無)」(1:03)は、チャーチ・オルガンが荘厳に響き渡る、神秘的なイントロダクションである。
2曲目「Su Una Rupe(崖っぷち)」(5:13)リリカルなフルートの旋律を突き破るギター、ピアノの 8 分の 7 拍子の強烈なリフレインに驚く間もなく、民族的なビートでヴォーカルが狂気の祈りを捧げ、フルート、ギターが激しく反応しあう演奏が繰り広げられる。
狂言回しは、苛立たせるようなリフを繰り返すアコースティック・ギター。
マーチのようなスネア。
再び狂的なユニゾンのリフレインが爆発するが、一転して静寂が訪れアコースティック・ギターのアルペジオの伴奏でヴォーカルがつぶやき始める。
アコースティック・ギターのエキサイティングな間奏を経て、再びミステリアスなヴォーカル・パートへ。
ギターとオルガンがヘヴィに轟き、クレシェンドするアンサンブル。
邪教の祈りのようなヴォーカルそして強烈なリフの一撃。
全てはアコースティック・ギターがリードする魔術的な演奏である。
逃げ場のない狂気と暴力の世界。
曲調の変化の落差が大きい。
3曲目「Il Mondo Cade(Su DI Me)(世界が私に落ちてくる)」(6:48)
硬質な輝きを放つアコースティック 12 弦ギター・ソロ。
ブルージーな、カントリー風のテイストあり。
応酬するドラムス、そしてパーカッションは、再び民族音楽風である。
原始的な荒々しい雰囲気を貫き、フルートが舞う。
アコースティック・ギターのリフレインがすばやくフェード・アウトすると、代わってコントラバスの響きが険しく湧き上がる。
不気味に謎めいたムード、そして唐突に爆発するヴォーカルとエレキ・ギター。
たたきつけるようなヴォーカルと小刻みなリズム。
けたたましく激しい決めに、間延びしたように、ゆっくりとコントラバスが応える。
再び、けたたましく高まるヴォーカル、リズム、そしてギター。
今度は、決めにピチカートで応えるコントラバス。
激しく揺さぶるような演奏だ。
地鳴りのようなドラムスがフェードイン、ピアノが不気味なリフレインを繰り返し、妖しいヴォカリーズが湧き立つビートをかすめて遠くこだまする。
ブレイク。
エレキギターによる荒々しいオブリガート。
再び狂おしい 8 分の 6 拍子のトゥッティ、不気味なビートが刻まれ、スキャットが散り散りになる。
へヴィなギターがかみつくと、アンサンブルは急激に消えてゆく。
オープニングと同じくアコースティック・ギターのコードをかき鳴らされ、静かに世界が復元されてゆく。
荒々しくも人間臭いドラムス・ビート、そして土の香りに満ちたフルートのさえずりが始まる。
アコースティック・ギターとフルート、ピアノ、エキゾティックなエスニックなパーカッションが三つ巴を成すヘヴィ・チューン。
ブルージーなフォーク・ソングの間奏部分で、エレクトリックでヴァイオレント、耽美なアンサンブルを爆発させる。
コントラバスがボウイングと指弾きの両方でフィーチュアされている。
アコースティック・ギターはブルージーな本格トラッド風の生々しいプレイである。
スキャットのせいで IL BALLETTO DI BRONZO にも通じるイメージあり。
アコースティックにして凶暴な作品だ。
4曲目「Nel Mio Quartiere(私の地区)」(3:53)
サックス、ピアノをフィーチュアしたジャズ・コンボによるオープニング。
そしてモダン・ジャズっぽいスピーディな 4 ビートへと突入。
サックスは、武骨な音色が雰囲気に合っている。
ピアノも荒っぽいタッチながら本格的なジャズだ。
ギターも初めはひずみを抑えたジャズ・スタイルだが、途中から一気にヘヴィに音色を変えてジャズ・コンボに挑戦する。
ギター、サックスのパワフルなユニゾン、そして激しいドラムスの応酬。
下品なテナー・サックスと乱調ピアノをフィーチュアした怪しげなモダン・ジャズ・コンボ。
演奏はアグレッシヴで熱い。
場違いなファズ・ギターが強烈なアクセントとして機能する。
本職とはやや異なる不器用そうな演奏がかえって面白い。
インストゥルメンタル。
最初期 KING CRIMSON の一歩手前、もしくは昔の日活映画で出てきた場末のホテルのビッグ・バンドのイメージ。
5曲目「L'ombra(木陰)」(3:38)
ピアノによる 8 分の 9 拍子のリフレインが幻想的に舞い、ヘヴィなオルガンが居丈高におおいかさなる劇的なイントロダクション。
ピアノとオルガンはすぐに一体化し、せわしない 8 分の 6 拍子のユニゾンでたたみかける。
険しいユニゾンをものともせずに飛び込むのは、伸びやかなベル・カント。
ハードロック風のヴォーカルなのだが、イタリア語のせいかオペラのイメージである。
演奏は狂的に興奮に、高揚し、奇怪に歪む。
たたみかけるピアノのオスティナート、オルガン、フルートによる徹底してせわしないオブリガートが緊迫感を高める。
フルートは祝祭的なけたたましさで攻め立てる。
唐突なブレイク、ミュートしたエレキ・ギターのリフをユーモラスに繰り返すと、一転して物悲しげなアコースティック・ギターのコード・ストロークが始まる。
あっという間に、けたたましい演奏からペーソスあふれるフォーク・ソングに変わってしまう。
この変貌ぶりにはビックリだ。
ヴォーカルも笑い声を交えるなど、別人のようにとぼけた味わいだ。
エレキギターのオブリガートが消え入りそうに呟く。
奇数拍子、変拍子のリフがドライヴする狂騒的な演奏から弾き語りへと雪崩れ込むイタリア特有の不可逆ロック。
現代音楽風のピアノそしてヘヴィなオルガンという衝撃的なイントロから一気に走り出すアンサンブルは、KING CRIMSON 的なヘヴィネスと歪曲した不気味さを持つ。
伸びやかなヴォーカルと荒々しい演奏のコントラストもきつい。
ところが後半は、大胆にもヴォードヴィル調のフォーク・ソングへ移ってしまうのだ。
このグループの音楽を象徴する作風でしょう。
6曲目「Un Palco Di Marionette(あやつり人形の舞台)」(10:06)アコースティック・ギターとフルートのデュオによる、密やかなイントロダクション。
アルペジオに支えられて、夢見るようにフルートが舞い続ける。
進んでは立ち止まり、そしてまた息を吹き返す。
やがてフルートは波打ちながら静かに去り、内省的なギターの余韻が残る。
そして、つぶやくギターを追いかけるようにドラムスが加わり、柔らかなピアノが湧き上がる。
フルートも静かに復活だ。
ジャジーなシンバルに導かれ、メロディアスなヴォーカルが歌いだす。
オブリガートは、フルートと華やいだピアノが応える。
ジャジーにしてフォーク・タッチのメロディと、朗々たるハイトーン・ヴォイス。
アコースティック・ギターがブルージーで鋭いコード・ストロークを見せると、演奏全体が緊張し、一瞬ヘヴィな調子で巻き起こる。しかし再びピアノ、フルートが取り巻くゆったりとしたヴォーカル・パートへ。
ふたたびアコースティック・ギターのブルージーなカッティングに、フルート含め全てが追従するが、ピアノ、フルートの余韻とともに全ては消えてゆく。
きわめて OSANNA に近い雰囲気である。
静寂。
ピアノの弦をはじく金属音と、アコースティック・ギターの音が深くこだまする。
イコライジングされた不気味な男のモノローグ。
ブレイク。
一転、クラシカルなチェンバロ独奏が始まるも、一瞬で消えてゆく。
アコースティック・ギターの力強いストロークが始まる。
ピアノ、フルートも加わって、一気にヘヴィなトゥッティへ。
勇ましいテーマはフルートがリードし、ベースが唸りを上げ、シャフル・ビートで力強く突き進む。
激しい決め、そしてフルートとピアノが舞い上がり、ヴォカリーズが虚空へと消える。
再び、吼えるようなギターのストローク。
そして叩きつけるような激しい決めが連発される。
ピアノが舞う。
強烈な決めの連続。
フルートの導きで、凄まじい全体演奏が突如湧き上がる。
再びギターのパワフルなストロークからヘヴィな決め。
そして再びフルートのリードで、勇ましいテーマ演奏へと回帰する。
高らかに叫び走る演奏。
追い詰め、迫りくる 8 分の 6 拍子。
激しいギターのストローク。
突如飛び込むサックス、エレキギターによるヘヴィなユニゾン。
一気にブルージーな 8 ビートのブギー、ハードロックへと変貌する。
リフから飛び出したサックスが叫ぶ。
一瞬のブレイク。
エンディングはピアノが堂々たる和音を鐘のように叩きつけ、行進曲のような力強いドラムスの連打。
フォーク、ジャズ、ヘヴィ・ロックと変貌するオムニバス風の大作。
リリカルでファンタジックな導入部から、ジャジーなヴォーカル・パートを経て、強引な力強さと狂的な執拗さをもつヘヴィ・プログレへと突き進む。
どういう感じで始まったのかを忘れてしまうほどに、落差の大きい展開を見せる。
前半は脈絡が感じられるが、伸びやかで美しいヴォーカル・パートをブルージーなギターのストロークで変調させる辺りから、ストーリーは怪しく捻じれてゆく。
中盤からは、呪術的なリフとエネルギッシュにたたみかけるトゥッティが繰り返され、狂気をたっぷり注ぎ込んだあげくに、勇ましくも荒々しい行進曲へと発展する。
熱気の源泉はパワフルなギターのコード・ストローク。
これだけアヴァンギャルドなのにもかかわらずサウンドは、アコースティック・ギター、フルート、ピアノなどアコースティック中心なのだから驚きだ。
7曲目「Sogno Di Cristallo(水晶の夢)」(6:33)
アコースティック・ギターでミュートしつつ和音をかき鳴らす、軽快なイントロダクション。
リズムが加わり、フルートのリードで演奏が走りだす。
演奏はやや重たいが、ヴォーカルは伸びやかで軽やかだ。
8 分の 5+6 拍子による呼応するようなパターンがおもしろい。
明るいイメージのスピーディな演奏である。
ブレイク。
弦楽奏をフィーチュアする間奏の始まりだ。
ジャジーな 4 ビートを刻むシンバルに、低音ストリングスとピアノが重なりテーマを提示。
クラシカルなうわものと、ジャズのリズム、ピアノの組み合わせである。
ギターも加わってヘヴィにテーマを繰り返す。
オブリガートのストリングスがギターと重なる。
鮮やかなピチカートのユニゾン。
うねるようなストリングスと飛び散るピアノ。
低音ヴォカリーズから、再びヘヴィなテーマの繰り返し。
そしてピチカート。
静かにうねるストリングス。
突如テープ早回しのように、全ては加速しちぎれ飛んでしまう。
なんともとりつくしまのない展開だ。
イントロのおだやかなアコースティック・ギターが復活。
背景には、ムーグと思われる電子音が舞い踊る。
きらめくピアノと、素朴で美しいフルートのデュオ。
ヴォーカルは夢見るようにおだやかな表情で歌い出す。
電子音が舞う。
間奏は力強いピアノとギター、フルートのユニゾン。
ヒラヒラと舞いヴォーカルを彩るフルート。
美しいアコースティック・アンサンブルだ。
ヴォーカルの最後の一声は、ピアノの不協和音で断ち切られ唐突な終わり。
パストラルなフォーク、クラシック、ジャズをつなげたアコースティック・ロック。
イタリアン・ロックらしい牧歌的なフォーク・ソングから、ストリングスをフィーチュアしたハードで重苦しい間奏を経て、ゆったりとしたフォーク・ソングへと回帰する。
ストリングスを用いた演奏は、ロマンチックなものが多いが、ここではまったく違う。
不協和音の響きや重いリフを用いて、不気味に蠢くような演奏なのだ。
ジャズ的なリズムと重苦しい弦楽の取り合わせもユニークである。
この長い間奏部が、楽曲のアヴァンギャルドな印象を強めている。
したがって、エンディングのヴォーカル・パートに救済を感じる。
これだけ先の読めない展開をもつ作品は、イタリアン・ロックのなかでも別格級だろう。
アコースティック・ギターやフルートによるフォーク・ソングをハードで歪曲したインストゥルメンタルが取り巻くヘヴィ・ロック。
フルートやサックス、ピアノが鮮やかな印象を残す。
ひょっとするとアシッドなサイケ・フォークが、出自なのかもしれない。
コントラストのきつい動と静を激しくゆきかう演奏は、いかにもイタリアものらしいといえるだろう。
サックスやピアノにはフリー・ジャズの影響も顕著である。
ヘヴィなユニゾン・リフや 8 分の 6 拍子によるたたみかけるようなフレーズは、英国ジャズロック、より特定的には初期 KING CRIMSON の影響だろうか。
また、演奏そのものが破天荒なわりには、曲の展開には奔放ながらも流れと構成が感じられる。
おそらくしっかりと作曲、編曲されたものなのだろう。
逆に、同タイプの OSANNA と比べるとやや小粒でおとなしい感じがする理由は、この計算され具合によると思う。
アヴァンギャルドな展開も確かにあるのだが、先読み不能のぶっ飛んだスケールの大きさよりも、きっちりしたまとまりを感じさせる作風である。
フリー・ジャズとハードロックそしてイタリアン・フォークを突きまぜ、叙情と暴力性そしてアカデミックなセンスを同居させた、いかにもこの時代らしいプログレッシヴな内容である。
この調子ならライヴは相当面白かったでしょう。
(WARNER FONIT 3984 28186-2)