イタリアのプログレッシヴ・ロック・グループ「RICORDI D'INFANZIA」。 73 年 FONIT CETRA からアルバム、シングル一枚づつ出して消えた、謎のグループ。 唯一のアルバムはミステリアスなハードロック。
| Emilio Mondelli | vocals |
| Franco Cassina | guitars, vocals |
| Maurizio Vergani | keyboards, vocals |
| Tino Fontanella | bass |
| Antonio Sartori | drums, percussion |
73 年発表のアルバム「Io Uomo」。
内容は、ハモンド・オルガン、ピアノを用いたハードロック。
野蛮にして詩的なヴォーカル(感極まるとシャウトではなくオペラチックになる)とワイルドなギター・プレイのハードロックに、クラシカルなオルガンが神秘的な深みを加える、典型的 70 年代ロックである。
力ずくの演奏であり、ハッタリなし。
ただし、「泣き」にすら甘美なロマンチシズムが響くところが、英国ではないイタリアンの味わいである。
作曲は、全て Sica-Budano のコンビによる。
オープニングは「Caos(混沌)」(3:04)。
ギターのアルペジオがエコーするミステリアスなオープニング。
不気味な声とオルガンが空ろに響く。
バスドラは、まるで巨人の近づく足音のようだ。
アルペジオとオルガンがユニゾンのリフへとまとまると、一転激しいギターが轟く。
不気味な声とリリカルなオルガン、ギターが交錯しつつ消えてゆく。
絡み合う音がリフへと収束し耳を聾する激しいギター、オルガンが叩き付けられる衝撃のオープニング。
次の曲へと移るが、イントロは、前曲と同じオルガンとギターのアルペジオ。
2 曲目「Creazione」(2:58)である。
しかし、今度は、ヴォーカルが、重い雰囲気を拭い去るように、甘いメロディで歌いだす。
ドラムスは、すさまじいクレシェンドで攻めたてる。
サビでは、ノスタルジックなメロディとオルガン、激しいビートが重なり合う。
深く切ないエコーを残すヴォーカル、そして再び熱くたぎる演奏。
ギターのオブリガートに続き、オルガンのエモーショナルなソロ。
そして、フェード・アウト。
切ない歌メロとハードな演奏がマッチしたノスタルジックなハード・バラード。
3 曲目「L'Eden(エデン)」(2:55)
緊張感一杯のギター・リフで幕を開ける。
オルガンの余韻が静かにヴォーカルを呼び覚ます。
太鼓系のドラムスが、力いっぱい叩き続ける。
サビはオルガンが厚みをつけ、力強いビートが湧き上がる。
ヴォーカルは GS 歌謡調の訴えかけるような調子、そして濃厚なメロディ・ライン。
ギターがリードするオブリガート風の決めがカッコいい。
2 コーラス目は、重厚なヴォカリーズも加わる。
それにしても暑苦しいサビだ。
最後はシンバルが轟き、怒涛のドラミングとともに、全体で激しい演奏を決める。
ヨーロピアンな哀愁の歌メロとヘヴィなギター・オルガンがドラマチックなコントラストをなす、ハードロックの佳品。
ラウドに盛り上がるサビと、受けて立つヘヴィなギター、オルガンの決めは、胸のすくカッコよさだ。
ここまで 3 曲は連続しており組曲風である。
4 曲目「2000 Anni Prima(2000年 第1部)」(4:12)。
情熱を秘めたピアノ・ソロによるオープニング。
荒々しさの中に繊細な表情がある。
余韻もさめやらぬ中、やおら激しく叩きつける決め。
しかしサティ風のピアノが静かにユーモラスに呼応する。
奇妙だが面白い幕開けだ。
不気味なモノローグに重なるトラッド風のヴォーカル、朗々と歌い出すヴォーカルとクレシェンドするピアノの和音の連打。
ドラムスが激しく打ち鳴らされ、オルガンに支えられたコーラスが始まる。
PROCOL HARUM 風。
力強いヴォーカル、ピアノと暖かみのあるオルガン。
再び激しい決めとピアノの呼応。
応ずるリフレインは冒頭でも現れた奇妙なもの。
そのままヴォーカルが重なってゆく。
やがて再び PROCOL HARUM 風のオルガン、ピアノ伴奏のヴォーカル・パートへと戻る。
エモーショナルな歌そしてオープニングとおなじピアノ・ソロへと回帰する。
ピアノ・ソロが物語る不思議なストーリー。
クラシカルなポップス、ハードロックら複数の曲をまとめたような、暴力的な展開による奇妙な味わいの曲である。
しかしヴォーカル・パートはオーソドックスなイタリア風のメロディであり、エモーションに満ちたものである。
イタリアン・プログレによくあるアヴァンギャルドな作風だ。
「Preghiera(祈り)」(4:00)。
ギターとオルガンによるなだらかなハーモニーで始まる。
オルガンとギターのかけ合いには、高尚にしてルーズな独特の雰囲気がある。
オルガンがたたみかけギターが鋭く受けると、オルガン伴奏でヴォーカルが歌い出す。
哀愁に満ちたブリティッシュ・ハードロック調である。
情感を込めながらも、風格を失わなず、どこまでも伸びやかなメロディ・ライン。
再び、ギターとオルガンによる緩やかなユニゾン・リフ。
オルガンのフレーズをツイン・ギターが左右のチャネルで短く受ける。
1 コーラスのヴォーカルを経て、メロディアスなギター・ソロへ。
ヘヴィなコードを決めつつ、泣きのギターが左右のチャンネルを縫いながら続いてゆく。
豊かに鳴り響くオルガン。
フェード・アウト。
哀愁のメロディ・ラインとキャッチーなリフ、そして泣きのギターと三拍子揃ったブリティッシュ・ロック風ナンバー。
雄々しくも気品があり、かみ締めるような哀感があるところは、PROCOL HARUM と LED ZEPPELIN が合わさったような雰囲気といえばいいだろう。
ディストーション・ギターがいい音だ。
名曲。
「Morire O Non Morire(死か生か)」(4:56)。
バスドラが、マーチング・ドラムスのように重量感たっぷりに行進曲のリズムを刻む。
エコーにひたったギターが、アドホックなプレイを散りばめる。
オルガンの響きに導かれるように、ドラムスがロール、野性味たっぷりのヴォーカルが口火を切る。
ギター、オルガン、ヴォーカルのラウドなユニゾンでオブリガートするハードな展開だ。
ギター、オルガンが激しく叩きつける決めに続き、ヴォーカルのキメはなぜか民謡風。
変拍子である。
ファルセットから再びワイルドながらも行進曲風のリズムへと変化、オルガンが高らかに勇壮なメロディを歌い上げる。
ギターはヘヴィなコード・カッティング。
一転、オルガンのおだやかなリフ、そして轟音ギターが呼応する。
そして、哀愁漂うヴォーカル・パートへ。
ギター、オルガン、ファルセットのヴォーカルに続き、再び、ヘヴィなギター、オルガン、ヴォーカルの決め。
再びマーチ。
そして、オルガンが狂おしく唸りを上げるソロへ。
激しいグリッサンドから、一転、おだやかなギターのコード・ストローク、そして泣きのオルガンへ。
エンディングはドラムスが激しくアクセントをつける。
ハードなオルガン・ロック。
ヘヴィなサウンドを基本にさまざまな変化をつけた、おちつきない怪作である。
マーチ風のドラムスや民謡調のキメなど曲調/テンポの変化は、なかなか強引だ。
「2000 Anni Dopo(2000年 その後)」(4:04)。
「2000 Anni Prima」とは演奏上の関係はないようだ。
男性的なヴォーカルがギターのコード・ストローク伴奏で歌い出すメロディアスなフォーク・ロック調のオープニング。
やおらヘヴィなギターが轟き、ドラムスも暴れはじめる。
ハードロックに変貌だ。
オルガンはクラシカルなリフを繰り返し、ヘヴィなギターとドラムスとともに力強く突き進む。
一転、轟音が渦巻くキメ、そして、跳ねるようなリズムへと変化した後は、無調風のオルガン・リフがたたみかけ、不協和音風のいびつなギターが受けて立つ。
不安をかきたてるような過激な演奏だ。
堰を切ったように荒々しいオルガンが走り出す。
波乱含みのまま、ヴォーカルも走り出す。
ミステリアスだ。
再び、オルガンのクラシカルなリフレイン。
テンポが落ち、ギターがヘヴィなリフを轟かせて、ひきずるように演奏をリードする。
オルガンがアドリヴ風のプレイで反応するも終わり。
フォーク・タッチのイントロからヘヴィ・ロックへと変貌する作品。
クラシカルなオルガンの伴奏で突き進むヴォーカル・パートは、イタリアン・ロックらしい濃厚さ満載。
やや呪文めいたヴォーカルが強烈だ。
間奏部分のアヴァンギャルドな展開は、KING CRIMSON を思わせる。
鋭い縦揺れビートと極端な変化は、プログレ・メタルの原点かもしれない。
逸品。
「Uomo Mangia Uomo」(6:18)。
冒頭のギター・リフは、FORMULA TRE のパクリではないだろうか。
ヴォーカルは、やや素っ頓狂な、たたきつけるような歌い方だ。
バックもリフ中心のハードな演奏。
ギターとオルガンのユニゾンから一転音が静まり、再び冒頭とおなじギターのアルペジオが始める。
しかし、ノイジーなファズ・ギターがおおいかぶさる。
轟々たるデュオが続く。
これだけうるさくても、催眠効果があるようだ。
そして、フェード・アウト。
今度はオルガンに導かれ、ヘヴィなヴォーカル・パートへと突入。
オルガン、ギター、ヴォーカルがユニゾンで攻めたてる。
ヴォーカルがフェード・アウトした後は、ギター・リフにのって、オルガンがアグレッシヴなソロを繰り広げる。
ノイズが渦を巻き終り。
ギター・リフを中心にまっしぐらに進むメタリックなハードロック。
シャウトというよりも伸びやかでオペラチックなヴォーカルと、やたらヘヴィなギターが、思うさま暴れ捲くる。
中間部の魔術的なギター、オルガンのアンサンブルが面白い。
エンディングのオルガン・ソロは、ジャジーな音も加味したすばらしいプレイだ。
メタリックかつアヴァンギャルドなオルガン・ハードロック。
イタリア風の濃いメロディをラウドな演奏が支える、理想的なパターンである。
荒々しいディストーション・ギターと伸びやかなヴォーカル、そして太いリズムのコンビネーションは、英国ものの翻案というには、あまりにみごとな存在感である。
シャープなリフや泣きのフレーズも取り揃えており、ハードロックの水準を軽くクリアしているのではないだろうか。
感情移入はイタリア人らしいナチュラルな感性にまかせる一方、アヴァンギャルドな演奏には明確な意思をもって突き進むところなど、英国ロックよりも、芸術としての計算がしっかりしている気がする。
ハードロック・ファン、オルガン・ロック・ファンにはお薦め。
(CDLP 426)