アメリカのプログレッシヴ・ロック・グループ「RASCAL REPORTERS」。 74 年結成。 フレッド・フリス提唱の「MAIL TAPE」メソッドを駆使(ゴア氏の解説)、宅録活動ながらも美しいメロディとユーモアが特徴のカンタベリー調現代音楽を産する。 2009 年スティーヴ・ゴア逝去。 EGG、SUPERSISTER ファンにお薦め。
| Steve Kretzmer | keyboards, guitars, bass, melodica, clarinet, drums, percussion, voices |
| Steve Gore | keyboards, guitars, bass, melodica, clarinet, drums, percussion, computer, voices |
| guest: | |
|---|---|
| Nick Didkovsky(DR.NERVE) | guitar |
| Steve Feigenbaum | guitar |
| James Grigsby(U TOTEM) | percussion |
| Dave Kerman(U TOTEM) | percussion |
| Dave Newhouse(MUFFINS) | flute, sax |
| Guy Segers(UNIVERS ZERO) | flute, sax |
96 年発表のアルバム「Happy Accidents」。
88 年発表の LP をリミックス、リマスターし、ボーナス・トラックを追加した CD リリースである。
内容は、キーボードを主体とした暖かみとユーモアのある現代音楽風のジャズロック。
ノスタルジックなラウンジ、イージー・リスニング風味を保ちつつ、込み入ったリズムとともにさまざまな場面が交錯するキッチュな作風である。
いわゆるカンタベリー・タッチが膨らんで、EGG から HATFIELDS までもを連想させる内容となっている。
親しみやすいテーマとは裏腹に強圧的な反復アンサンブル、ノイジーな効果音、メカニカルなビート、スピード感などは、RIO 展開の申し子、MUFFINS や SAMLA とも共通するものだ。
ゴア作曲の旧 LP A 面の作品「Weigh In On The Way-out」では、CARPENTERS でヒットした「Goodbye To Love」のメロディ・ラインがテーマとして全体を貫き、さまざまな楽器で繰り返される。
個人的にこういう仕掛けにはお手上げである。
クレツマー作曲の旧 LP B 面の作品「Trucks」は、抽象的な主題を忙しなくひねくりまわす、さらに現代音楽風の作品。子供じみたエネルギーがあり、暖かい親しみやすさと無慈悲で容赦ない感じが同居するところが特徴だ。
ボーナス・トラックは、さらにカンタベリーらしさを強調したとしか思えない佳作揃い。
最終曲は、ザッパに捧げられた 25 分にわたる新作である。
大掛かりな音響処理などの製作は行われていないので、一般的な水準からすると音がチープに感じられると思うが、それすらもすでにこのユニットの音楽の特徴となっているといっていいだろう。
「Weigh In On The Way-out」
「Pilgrim's Pride」(10:10)
「The Chalky Substance Variations」(5:08)
「Karen's Chalky Pilgrim」(5:32)
「Trucks」
「Thunderstruck」(10:15)
「Moonstruck」(8:15)
以下ボーナス・トラック。
「Sent Flying」(2:47)
「Bones Charale」(1:55)
「Anothe Excerpt From "Psychlops"」(4:37)
「Stabbing At Air」(25:30)
(ZNR CD -1010)
| Steve Kretzmer | keyboards, drums, clarinet, guitars, bass, recorder, melodica, percussion, voices | ||
| Steve Gore | keyboards, drums, clarinet, guitars, bass, recorder, melodica, percussion, voices | ||
| guest: | |||
|---|---|---|---|
| Bill Andrews | voice on 3 | Rick Barenholtz | voice on 1, bass on 14 |
| Shawn Finkelstein-Gore | attic door on 11 | Fred Frith | extraneous taped material, singing on 3 |
| Tim Hodgkinson | alto sax on 5, voice on 3 | Paul Kretzmer | bass, acostic guitar, voice on 12, 17 |
| Dave Newhouse | alto & tenor sax, percussion on 8 | Mary Ellen Rollins | cello on 3 |
| Gary Schumaker | guitar on 2 | ||
2006 年発表のアルバム「Ridin' On A Mummer(Twentieth Anniversary Edition)」。
84 年に LP で発表された作品にボーナス・トラックを追加した「20 周年記念盤」であり、リミックス、リエディット、リマスターが行われている。
ジャケットも LP のものから変更されている。
内容は、電子オルガン系キーボードを多用し、さまざまな効果音を盛り込んだ変拍子ジャズロック。
マニアックな実験音楽志向で、なおかつキュートなユーモアもあるところが、EGG によく似ている。
凶暴さや素っ頓狂なところはほとんどなく、少しづつずれてしまった旋律が折り重なって歪ながらも美しい模様を成しているような音楽であり、どこかで必ずまろやかで暖かみのあるメロディがささやかれている。
そして、「おもちゃ」っぽい楽器の音が音楽の過激さを和らげている面もある。
バッキング以外のギターやクラリネット以外の管楽器は、ゲストのサポートを得ている。
ライナーノーツによれば、当初は、ポップソングとアヴァンギャルドな作品の両方から構成される(ノスタルジックなポップ・センスの冴えは後の作品からも明らかなので、このアプローチは決して間違っていないと思う)二枚組を予定していたが、試行錯誤の結果、アヴァンギャルドな作品だけを残したアルバムとなったそうだ。これらの「ポップ・サイド」に入る予定であった作品の一部はボーナス・トラックとして収録されている。(レノン/マッカートニーを思わせる「Paper Love」は名曲)
こうした構成になっているため、他の作品と比べると攻撃的な前衛色が強く出ている。
フレッド・フリスとのテープ交換によって作成されたパートを盛り込んだ「Rio」は、シリアスな面が強調された力作。
(元になったテープからフリスが発展させた作品をフリスのソロ・アルバム「Speechless」の CD 版で聴くことができる)
また、「Bones Chorale」では、レコードのスクラッチが使われているようだ。
聴くたびに、カシオのミニキーボードだけでも何かできるかもしれない、と思わせてくれるアルバムです。
(HEBBARDESQUE RECORDS)
| Steve Kretzmer | keyboards, drums, percussion, voices |
| Steve Gore | keyboards, drums, percussion, computer, electric guitar, voices |
| guest: | |
|---|---|
| Kris Cottrell | bassoon on 2 |
| Dave Newhouse | sax on 2 |
95 年発表のアルバム「Purple Entrapment」。
内容は、89 年から 90 年にかけて録音製作された同名テープ作品の再ミックス、再録音盤。
ブライアン・ウィルソンの「PET SOUNDS」を思わせるノスタルジックなトーンと夢見るような美しさ、そしてユーモラスでほんのりルーニーなタッチを交えたメロディアスな楽曲が主である。
メロディアスといっても「演歌」的なものではなく、もっと明朗かつ運動性に富んでファンタジックであり、子どものようなエネルギーを発揮する作風である。
したがって、暖かみある歌がみるみるうちにスリリングな展開へと進むところも多い。
何にせよ、作者のデリケートなセンスを感じ取ることができる内容である。
宅録の延長にある製作なので、通常の音楽 CD と比較すると音のチープさは否めないが、巧みな作曲とともに、小気味のいいオルガン、しっかりとしたリズム・セクション、さまざまなパーカッションといった演奏の要素が生み出すグルーヴは、普通のバンドにまったく引けを取らない。
音楽的な楽しみという意味では問題ない。
ボーナス・トラックには、74 年から 94 年までの作品が収められており、20 年にわたる活動を一望できる、というか最初期のプログレ全開な姿(ライヴ作品もある)と卓越したメロディ・センスに唖然とするばかりであり、HAPPY THE MAN に匹敵する優れたグループであることが分かる。
余計なお世話ですが、CD のペイパー・スリーブは、リバーシブルです。
また、スリーブの一番下に「私たちは死ぬまで音楽を創り続けます。」という決意表明があります。
個人的には、70 年代をアメリカの音楽を聴いて過ごしたせいもあるため、こういう音には滅法弱いです。
(WAFER 9)
| Steve Kretzmer | keyboards, melodica, acoustic guitar, drum set, various percussion, voice, radio |
| Steve Gore | keyboards, telephone, clarinet, guitr, bass, drum set, various percussion, voi, glockenspiel, farfisa organ, grandfather clock chimes, pre-recorded environmental sound, ukulele, koto, computer |
97 年発表のアルバム「We're God」。
80 年のカセット・テープ・リリースをリマスター(一部リミックス)し、6 曲のボーナス・トラックを追加した CD リリースである。
内容は、おもちゃの楽器のようなサウンドとメロディアスなテーマ、ポリリズム/変拍子を多用したカンタベリー風チェンバー・ロック。
リズム・セクションのほかは、キーボードと各種管楽器が演奏の主役になっており、ヴォーカルもかなり入っている。
じつは、HATFIELDS と共通する感触は確かにあるのだが、ジャズロックというにはあまりジャズでもロックでもなく(スタンダード風のノスタルジックなスウィング・ジャズ調はあるが)、どちらかといえば、クラシックのエチュードを複雑怪奇にしたような作風である。
多重録音ではあるが、「アンサンブル」という表現は正しいと思う。
いやむしろ、多重録音だからこその容赦や制限のない「足し算アンサンブル」になっているというべきか。
交錯する奇妙な反復パターンに加えて、散りばめられた SE やサウンド・コラージュ風のしかけは、独特の逸脱感と乾いたユーモアを感じさせる。
確かにこの音を細かく編む作風でユーモアがまったくなかったら、リスナーは疲弊してしまうだろう。
また、精緻ではあるが演奏のダイナミズムはさほどではないので、圧迫される感じは他のアルバムと比べると少ない。
音が集中したときの HENRY COW のような厳格でコワい感じはない。
ただ、あたかも秩序の次元をふっ飛ばすような取りつくしまのなさ、愛らしい旋律がいつのまにか無機的な図形を描いているような不気味さがある。
なににせよ、ライヴな演奏のうまさとは異なる、緻密なパッチワークの結晶としての存在感がある。
おそらく、MIKE OLDFIELD や ザッパと共通する音楽家としての資質があるんだろう。
70 年代終盤に 2 トラック・レコーダーで録音された作品もあり、手を入れたとはいえさすがに音質は最上級ではないが、音楽そのものの傲岸不遜なゆるぎなさははっきりと分かる。
得意の CARPENTERS は断片として現れる。
珍しくセンチメンタルなヴォーカルとメロトロンが入る「Fidget Stomp」は名曲。10 曲目「By The Harbour」は、ザッパ風。
(WAFER 7)
| Steve Gore | various keyboards, drums, guitar, bass, clarinet,mellotron, various percussion, voices |
| Steve Kretzmer | various keyboards, drums, guitar, bass, clarinet,mellotron, various percussion, voices |
| guest: | |
|---|---|
| Dave Newhouse(MUFFINS) | sax, bass clarinet, flute, all flute and horn arrangement |
2001 年発表のアルバム「The Four-Tempered Clavier」。
内容は、可愛らしいオルガン系のキーボードと管楽器を中心とした緻密なアンサンブルによるカンタベリー風ジャズロック。
今までも現代音楽風の無機的な調子はあったのだが、今作品では、いつになくアヴァンギャルドな面が強調されている。
緩急や音量の変化による、いわばクラシック風の普通な抑揚をあえて拒否するところもあり、可愛らしい音やフレーズのわりには強圧的で容赦がなく、下手をするとややキチガイじみたところもある。THE CARPENTERS もコラージュの嵐の一断片になっている。
しかし、やや性急で気まぐれではあるが基本的な語り口、係り結びの具合はいい。
したがって、翻弄されて楽しいタイプの音である。
音色こそ暖色系だが、切り刻むような変拍子リフと断片的なフレーズが渦を巻きながら降り注ぎ、息詰まるような緊迫感が生まれ、そしてまたその緊張をゆったりとしたギターやユーモラスなオルガンのささやきでかわして、一転してノスタルジックなポップスへと流れ込む。
へヴィなところは、オルゴールのような音で KING CRIMSON をやっていると思えばイメージはつかめる。
もちろん、ジャジーでメロディアスなポップスを素材にした得意のアレンジは冴え渡っており、イージー・リスニング調とメティキュラスなひねりがいい感じにブレンドされてじつにすてきな聴き心地になっている。
EGG にたとえられることが多いが、荒々しい面が現れると、スイスの ISLAND の唯一作や、ドイツの SFF に近いイメージも現れてくる。もちろんフランク・ザッパ崇拝もあり(献辞もある)。
今回も管楽器担当として、MUFFINS のデイヴ・ニューハウスが参加。
また、珍しくメロトロンがゴーッと吹き荒れるところがあり、スリーヴの解説から判断しても 70 年代プログレを意識した作風になっているようだ。
お勧めは 10 曲目「Sarahbella」。ニューハウスの管楽器をフィーチュアし、一番美しいときの HENRY COW に迫ります。
(PLGR 004)