イギリスのプログレッシヴ・ロック・グループ「RARE BIRD」。 ツイン・キーボード、ギターレスが特徴のグループ。 作品は五枚。 初期の二枚は古色蒼然たる趣とポップ感覚がないまぜになった、英国らしいオルガン・ロックである。 三作目を前にグレアム・フィールズが脱退、作風はギターも取り入れたファンキーなもの(それがまたなかなかすばらしい)へと変化する。 RARE BIRD には「変人」というニュアンスあり。 現在出ている CD は、再発クレジットが明確でなく、プライヴェート盤である可能性が高い。
| Graham Field | keyboards |
| David Kaffinetti | keyboards |
| Steve Gould | lead vocals, bass |
| Mark Ashton | drums |
69 年発表の第一作「Rare Bird」。
内容は、ハモンド・オルガン、エレクトリック・ピアノのツイン・キーボードをフィーチュアした、クラシカルかつジャジーなアートロック。
ファズ・ギターがない分、この時代にしては、全体にまるみのあるおだやかなサウンドになっている。
さて、キーボード・ロックというと THE NICE や EL&P のイメージが強いせいか、派手なプレイが期待されるが、そういう目から見ると本作の演奏は、ビート・ポップ調の歌もののインストゥルメンタルをやや拡充した程度の、おとなしいものに映る可能性が高い。
しかしながら、本作の正しい聴き方は、荒々しい弾き捲くりではなく、テーマの響きや伴奏・間奏のピリっとしたプレイとアンサンブルを楽しむことである。
そして、そうやって味わうと、オルガンとエレピの音色をていねいに使い分けた堅実なキーボード・プレイは、演奏に厚みとシンフォニックな広がりをもたらしており、キーボード・ロック・ファンにはこたえられない内容になっている。
特徴的なのは、オルガンのプレイが THE NICE よりもぐっとブルージーであり、サイケで狂おしいというよりは、メランコリックで感傷的な響きを帯びているところである。
また、エマーソンのような、本格的なモダン・クラシック風のテクニックもあまり見られない。
リズム・セクションも、ティンパニも用いる手数の多いドラム、ファズ・ベースなどアイデアあるプレイが見られる。
そしてヴォーカルは、男性的でソウルフルなタイプ。
1 曲目「Iceberg」は、オルガンを中心にエレピでアクセントをつけ、緩急を巧みに変化させるドラマチックなナンバー。
GREENSLADE の曲と同じエレピによるスピーディな 3 連フレーズが現われるが、偶然にしてはあまりにでき過ぎな気もする。
ともあれ、ドラマチックな曲調の変化がおもしろい傑作だ。
「Beautiful Scarlet」は、ヴォーカルをフィーチュアしたバラード風のロマンあふれる佳曲。
また、PROCOL HARUM の「A Whiter Shade Of Pale」を思わせる「Sympathy」は、ヨーロッパで予想外の大ヒットを記録し、CHARISMA レーベルの基盤をつくったという。
さらに最終曲「God Of War」では、プログレらしいスリリングなインストがフィーチュアされている。
結論は、エレピが入る分、いわゆるオルガン・ロックよりもジャジーでソフトな音が特徴のキーボード・ロックである。
クラシカルなバラードと R&B 調が基本だろう。
バカテク・ソロよりも曲調/ヴォーカルを大事にした演奏によるポップさ加減と、60 年代末らしいひんやりしたエコーがうれしい。
渋好みの英国ロック・ファンにお薦め。
時おりピッチが揺らぐようだが気のせい?
「Iceberg」(6:54)本作を総覧するようなドラマチックな作品。
「Times」(3:25)変調したようなエレピのプレイがディストーションのかかったギターのように荒々しい。
「You Went Away」(4:40)やはり PROCOL HARUM 風の泣きのバラード。
教会風のオルガンがいい音だ。
最後はドラム・ソロ。
「Melanie」(3:29)アップ・テンポの軽快なナンバー。
この曲はリード・ヴォーカルが異なるようだ。
ジャジーなキーボードが冴えている。
3 拍子や 7 拍子へと変化する。
「Beautiful Scarlet」(5:44)たたみかけるようなオルガンのテーマがカッコいいドラマチックなハードロック。
「Sympathy」(2:46)泣きの大ヒット。
クラシカルで憂鬱だが、こういうのがちょうどウける時代だったのでしょう。
「Natures Fruit」(2:38)一転してアメリカンな乾いた感じのアートロック。
冷ややかなメイン・ヴァースがユニーク。
サビの熱さはもう定番。
「Bird On A Wing」(4:18)かわいらしいワルツのテーマからシャフル・ビートへと変化する作品。
ハイドンを思わせるオルガンのリフレイン。
シャフルで走るエレピのソロはギターなみにブルージー。
「God Of War」(5:31)冷気が漂うミステリアスでアグレッシヴなナンバー。
怪しいコラール風のヴォーカルとティンパニ、オルガンが重厚に轟く。
後半すさまじいドラム・ビートとともにエレピ、オルガンとソロが爆発する。
こういう曲を気持悪いと思わずのめり込んで聴ける方は、真のプログレ・ファンでしょう。(暗いだけかもしれませんが)
(RF 603)
| Graham Field | organ, assorted keyboards |
| David Kaffinetti | electric piano, assorted keyboards |
| Steve Gould | lead vocals, bass |
| Mark Ashton | drums, vocals |
70 年発表の第二作「As Your Mind Flies By」。
内容は、ツイン・キーボードのおだやかなインタープレイを中心に、暖かみのあるシンフォニックなサウンドが充実。
派手さはないが、クラシックとジャズを巧みに取り入れた新鮮な音である。
特徴的なのは、PROCOL HARUM 風のオルガン・サウンドにアクセントをつけるエレピの音。
静々と高まってゆき、いつしか感情を高ぶらせる演出も憎い。
A 面はミドル・テンポのヴォーカル・ナンバー中心。
ブルージーで情感胸に迫る作品が主である。
1 曲目「What You Want To Know」は、厳かで力強い広がりのある佳曲。
4 曲目「I'm Thinking」は、インストゥルメンタルとポップなヴォーカルがほどよくマッチした作品。
そして圧巻は、B 面いっぱいを用いた組曲「Flight」。
コラールも交えた四部から成る劇的なクラシカル大作である。
スリリングなテーマがすばらしくカッコいい。
キーボード・ロックの傑作の一つだろう。
なおアルバム・タイトルは、本曲の歌詞からとられているようだ。
さて、リーダー格のグレアム・フィールドは、演りたいことをやり終えてしまったせいか、本作でグループを離れる。
キーボード主体ながらも THE NICE とは異なり、あまやかなポップ感覚のあるサウンドは、後の GREENSLADE へとつながっていったのではないだろうか。
ちなみに GREENSLADE の第一作 1 曲目は「Feathered Friend(翼のある友)」。
想像力を逞しくさせるタイトルではないか。
「What You Want To Know」(5:59)
讃美歌風のスローなバラード。
ソウルフルなヴォーカルがリードするスローな演奏は、サビでぐっと盛り上がる。
間奏は、クラシカルなオルガンとファズでひずんだエレピのアンサンブル。
セカンド・ヴァースでは、レイド・バックしたピアノがいい感じの伴奏をする。
黒っぽさ、熱くて冷たいオルガンの音色など STILL LIFE に通じる。
「Down On The Floor」(2:41)頼りなげなヴォカリーズ(ドラムのアシュトンだろうか)とチェンバロのおだやかな伴奏がすてきなナンバー。
リード・ヴォーカルは、あいかわらず野太い。
終盤ツイン・チェンバロとなり重々しく幕を閉じる。
前曲と同様にクラシカルな響きが印象的だ。
優雅なつなぎの小品だ。
「Hammerhead」(3:31)ファズ・ベースによるギター風のヘヴィなリフで迫るハード・チューン。
オルガンのオブリガートが切なくも凛々しい。
ヴォーカルが声色で表情を変化させ、比較的直線的な演奏にアクセントをつける。
エンディングでは、フルートのようなオルガンとエレクトリック・チェンバロによるか細く消え入るようなデュオを見せる。
「I'm Thinking」(5:40)
リリカルなオルガンが印象的な PROCOL HARUM 風のバラード。
リズム・テンポを変化させながら、クラシカルでポップな演奏が続く。
たなびくオルガン、ローリングするエレピや泣きのメロディなど、1 曲目と同じく 70 年代の香りでいっぱいのすてきなナンバーだ。
「Flight」(19:38)
ヴォーカルおよびコラール入りの勇壮なツイン・キーボードによるテーマ部からドラムレスのフリーなインタープレイを経て、ハードロックへと流れ込む。
そして終盤、ラベルをモチーフにした勇壮なボレロへと展開し、コラールを経て、ブルージーなヴォーカル・パートへと回帰する。
ドラマチックながら、けれん味よりも渋い落ちつきを感じさせる傑作。
B 面をいっぱいに使った大作だ。
(RF 606)