RARE BIRD

  イギリスのプログレッシヴ・ロック・グループ「RARE BIRD」。 ツイン・キーボード、ギターレスが特徴のグループ。 69 年結成。 75 年解散。 作品は五枚。 初期の二枚は古色蒼然たる趣とポップ感覚がないまぜになった、英国らしいオルガン・ロックである。 三作目を前にグレアム・フィールズが脱退、作風はギターも取り入れたファンキーなもの(それがまたなかなかすばらしい)へと変化する。 RARE BIRD には「変人」というニュアンスあり。 現在出ている CD は、再発クレジットが明確でなく、プライヴェート盤である可能性が高い。

 Rare Bird
 
Graham Field keyboards
David Kaffinetti keyboards
Steve Gould lead vocals, bass
Mark Ashton drums

  69 年発表の第一作「Rare Bird」。 内容は、ハモンド・オルガン、エレクトリック・ピアノのツイン・キーボードをフィーチュアした、クラシカルかつジャジーなアートロック。 ファズ・ギターがない分、この時代にしては、全体にまるみのあるおだやかなサウンドになっている。 さて、キーボード・ロックというと THE NICEEL&P のイメージが強いせいか、派手なプレイが期待されるが、そういう目から見ると本作の演奏は、ビート・ポップ調の歌もののインストゥルメンタルをやや拡充した程度の、おとなしいものに映る可能性が高い。 しかしながら、本作の正しい聴き方は、荒々しい弾き捲くりではなく、テーマの響きや伴奏・間奏のピリっとしたプレイとアンサンブルを楽しむことである。 そして、そうやって味わうと、オルガンとエレクトリック・ピアノの音色をていねいに使い分けた堅実なキーボード・プレイは、演奏に厚みとシンフォニックな広がりをもたらしており、キーボード・ロック・ファンにはこたえられない内容になっている。 特徴的なのは、オルガンのプレイが THE NICE よりもぐっとブルージーであり、サイケで狂おしいというよりは、メランコリックで感傷的な響きを帯びているところである。 また、エマーソンのような、本格的なモダン・クラシック風のテクニックもあまり見られない。 リズム・セクションも、ティンパニも用いる手数の多いドラムス、ファズ・ベースなどアイデアあるプレイが見られる。 そしてヴォーカルは、男性的でソウルフルなタイプ。 1 曲目「Iceberg」は、オルガンを中心にエレクトリック・ピアノでアクセントをつけ、緩急を巧みに変化させるドラマチックなナンバー。 GREENSLADE の曲と同じエレクトリック・ピアノによるスピーディな 3 連フレーズが現われるが、偶然にしてはあまりにでき過ぎな気もする。 ともあれ、ドラマチックな曲調の変化がおもしろい傑作だ。 「Beautiful Scarlet」は、ヴォーカルをフィーチュアしたバラード風のロマンあふれる佳曲。 また、PROCOL HARUM の「A Whiter Shade Of Pale」を思わせる「Sympathy」は、ヨーロッパで予想外の大ヒットを記録し、CHARISMA レーベルの基盤をつくったという。 さらに最終曲「God Of War」では、プログレらしいスリリングなインストがフィーチュアされている。
  結論は、エレクトリック・ピアノが入る分、いわゆるオルガン・ロックよりもジャジーでソフトな音が特徴のキーボード・ロックである。 クラシカルなバラードと R&B 調が基本だろう。 バカテク・ソロよりも曲調/ヴォーカルを大事にした演奏によるポップさ加減と、60 年代末らしいひんやりしたエコーがうれしい。 渋好みの英国ロック・ファンにお薦め。
   プロデュースはジョン・アンソニー。 時おりピッチが揺らぐようだが気のせい?

  「Iceberg」(6:54)本作を総覧するようなドラマチックな作品。

  「Times」(3:25)変調したようなエレクトリック・ピアノのプレイがディストーションのかかったギターのように荒々しい。

  「You Went Away」(4:40)やはり PROCOL HARUM 風の泣きのバラード。 教会風のオルガンがいい音だ。 最後はドラム・ソロ。

  「Melanie」(3:29)アップ・テンポの軽快なナンバー。 この曲はリード・ヴォーカルが異なるようだ。 ジャジーなキーボードが冴えている。 3 拍子や 7 拍子へと変化する。

  「Beautiful Scarlet」(5:44)たたみかけるようなオルガンのテーマがカッコいいドラマチックなハードロック。

  「Sympathy」(2:46)泣きの大ヒット。 クラシカルで憂鬱だが、こういうのがちょうどウける時代だったのでしょう。

  「Natures Fruit」(2:38)一転してアメリカンな乾いた感じのアートロック。 冷ややかなメイン・ヴァースがユニーク。 サビの熱さはもう定番。

  「Bird On A Wing」(4:18)かわいらしいワルツのテーマからシャフル・ビートへと変化する作品。 ハイドンを思わせるオルガンのリフレイン。 シャフルで走るエレクトリック・ピアノのソロはギターなみにブルージー。

  「God Of War」(5:31)冷気が漂うミステリアスでアグレッシヴなナンバー。 怪しいコラール風のヴォーカルとティンパニ、オルガンが重厚に轟く。 後半すさまじいドラム・ビートとともにエレクトリック・ピアノ、オルガンとソロが爆発する。 こういう曲を気持悪いと思わずのめり込んで聴ける方は、真のプログレ・ファンでしょう。(暗いだけかもしれませんが)

(CAS 1005 / RF 603)

 As Your Mind Flies By
 
Graham Field organ, assorted keyboards
David Kaffinetti electric piano, assorted keyboards
Steve Gould lead vocals, bass
Mark Ashton drums, vocals

  70 年発表の第二作「As Your Mind Flies By」。 内容は、ツイン・キーボードのインタープレイを中心に、クラシカルで暖かみのあるサウンドが充実したキーボード・シンフォニック・ロック。 派手さはないが、クラシックの厳かさ、重厚さとジャズの機敏な運動性を取り入れたプログレッシヴな音である。 特徴的なのは、PROCOL HARUM 風のオルガン・サウンドにアクセントをつけるエレクトリック・ピアノの音。 静々と高まってゆき、いつしか感情を高ぶらせる演出も憎い。 荒々しいファズも効果的だ。 もちろんオルガンも巧みなトーン・コントロールで多彩な表情を見せている。
   A 面はミドル・テンポの歌ものシンフォニック・チューン中心。 英国ロックらしいブルーズ感覚に満ち、情感胸に迫る作品が主である。 1 曲目「What You Want To Know」は、厳かで力強い広がりのある佳曲。 4 曲目「I'm Thinking」は、インストゥルメンタルとポップなヴォーカルがほどよくマッチした作品。 そして圧巻は、B 面いっぱいを用いた組曲「Flight」。 コラールも交えた四部構成のクラシカル大作である。 スリリングなテーマがすばらしくカッコいい。 英国キーボード・ロックの傑作の一つだろう。
   プロデュースはグループ。 なおアルバム・タイトルは、本曲の第一楽章の歌詞からとられているようだ。
  さて、リーダー格のグレアム・フィールドは、演りたいことをやり終えてしまったせいか、本作でグループを離れる。 キーボード主体ながらも THE NICE とは異なり、あまやかなポップ感覚のあるサウンドは、後の GREENSLADE へとつながっていったのではないだろうか。 ちなみに GREENSLADE の第一作 1 曲目は「Feathered Friend(翼のある友)」。 想像力を逞しくさせるタイトルではないか。

  「What You Want To Know」(5:59) 讃美歌風のスローなバラード。 ソウルフルなヴォーカルとオルガンがリードするスローなヴァース、そしてサビでぐっと盛り上がる。 間奏は、クラシカルなオルガンとファズでひずんだエレクトリック・ピアノのアンサンブル。 セカンド・ヴァースでは、エレクトリック・ピアノが不調法でエキセントリックだがどこかユーモラスな伴奏を放り込み、エンディングではレイド・バックしたピアノが寄り添う。 ヴォーカルの黒っぽさ、熱くて冷たいオルガンの音色など STILL LIFE に通じる作品だ。

  「Down On The Floor」(2:41) クラシカルなアレンジの効いた力強い朗唱。 頼りなげなヴォカリーズ(ドラムスのアシュトンだろうか)を支える、雅でおだやかなチェンバロ。 リード・ヴォーカルはあいかわらず野太いのだが、旋律は厳かな調子である。 エンディングは、二台のチェンバロによる重々しい演奏。 優雅なつなぎの小品だ。

  「Hammerhead」(3:31) ファズ・ベースがギターばりのヘヴィなリフを繰り出すハード・チューン。 オルガンのオブリガートは凛々しくもどこか切ない。 ヴォーカルが声色で表情を巧みに変化させ、ハードロック調の直線的な演奏にアクセントをつける。 エンディングは、フルートのようなオルガンとエレクトリック・チェンバロによるか細く消え入るようなデュオ。 オルガンのトーン調節を駆使してさまざまな音を作り出し、場面を演出する。

  「I'm Thinking」(5:40) オルガンの音がノスタルジーをかきたてる BEGGARS OPERA 風の作品。 クラシカルかつキャッチーな演奏であり、テンポやヴォリュームの変化で骨太にストーリーを描いてゆく。 ヘヴィさとシャンソンを思わせる洒脱さが共存するあたりは、人情の機微のようだ。 たなびくオルガン、ローリングするエレクトリック・ピアノや泣きのメロディなど、1 曲目と同じく 70 年代初期の香りでいっぱいのすてきな作品である。

  「Flight」(19:38) 旧 B 面を占める四部構成の大作。 ヴォーカルおよび混声合唱入りの勇壮なツイン・キーボードによるテーマ部から、混声ヴォカリーズをバックにしたオルガンとエレクトリック・ピアノのかけ合いなど密度の高い演奏を経て、ドラムレスのフリーなインタープレイに突っ込み、錯乱の果てに、やがて快速ハードロックへと流れ込む。 そして終盤、ラベルの作品をモチーフにした勇壮なボレロへと展開し、コラールを経て、ブルージーなヴォーカル・パートへと回帰する。 ドラマチックながら、けれん味よりも渋い落ちつきを感じさせる傑作。 B 面をいっぱいに使った大作だ。

(CAS 1011 / RF 606)


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