イギリスのサイケデリック・ロック・グループ「PORCUPINE TREE」。 スティーヴ・ウィルソン率いるネオ・サイケデリック・ロックの旗手。 ヘヴィなギターとヴィンテージ・キーボードを用いた、深く冷たい空間を意識させるサウンドが特徴。 大胆にいい放つなら「甦る PINK FLOYD」。 99 年作で一皮むけた後も、躍進を続ける。 最近ではフォロワーがひきもきりません。
| Steve Wilson | vocals, guitars, piano, keyboards |
| Richard Barbieri | keyboards, synthsizer |
| Clin Edwin | bass |
| Gavin Harrison | drums |
| guest: | |
|---|---|
| Alex Lifeson | guitar solo on 3 |
| Robert Fripp | sound scape on 5 |
| John Wesley | backing vocals |
2007 年発表の第九作「Fear Of A Blank Planet」。
轟々と鳴りわたるギター・サウンドによるスペイシーなへヴィ・ロックであり、なおかつ繊細な叙情性を伝えるバラードを根底にもった歌心の感じられる作品である。
サウンド面、楽曲、アルバム構成、ポップな聴き心地など、個性的なへヴィなロックとしてあらゆる点で優れている。
ややまとまり過ぎな(自らの作風に対するイラつきや焦りが感じられないということ)感もあるが、自らの性格やスタイルのアドバンテージをリスナーに向けてうまくコントロールできているのではないだろうか。
いってみれば、嫌われないコツというか。
これなら、古くからのファンも満足でき、なおかつ新しいファンも確実にゲットできそうな内容である。
特に、サウンド面での工夫は、ヴィンテージな音(オルガン、メロトロンなど)を含め、本作品でもさまざまに行われている。
個人的には、へヴィ・メタリックなリフが轟くシーンにはやや「引く」のだが、あるところから先に進むと不思議なことにギターの音がささくれ立ったメロトロン・ストリングスに聴こえてくる。
そうすると、吹きすさぶ風に軋むキーボードやアコースティック・ギターの響き、ピアノの調べとともに、切なく胸をかきむしる思いが素直にこちらに伝わってくる。
もはや、あからさまな PINK FLOYD テイストもないし、開き直ったブリット・ポップ調や昨今ややステレオ・タイプ化したポスト・ロック風味が突出することもない。
そういう段階は通り抜けて、へヴィなギター・ロック、個性的なへヴィ・メタル、クールなデジタル・ロック(ちょっと古いが)として、メッセージをきちんと提示できている。
卑俗な感じのない、ピュアでなおかつ逞しいロックだと思う。
内省的なイメージの寒色系のサウンド・スケープは変わらず、ただ、澱んだような深みのトーンではなくシャロウでクリアーなイメージである。
単にエコーやリヴァーヴを抑え気味にしているからだけかもしれないが。
また、キーボード含めストリングス系の音は非常にうまく使われている。次は管楽器系をうまく入れ込んでくれるとうれしい。
「Fear Of A Blank Planet」(7:28)ダンサブルなギター・ロック。
「My Ashes」(5:07)
「Anesthetize」(17:42)傑作。ブリっ子にもほどがある、とかいわないように。
「Sentimental」(5:26)
「Way Out Of Here」(7:37)
「Sleep Together」(7:28)プログレ・ファンにもアメリカの HM ファンにも十分受けそうな力作。このテクノっぽさは初期から営々と受け継がれている。
終盤のストリングス・アレンジが秀逸。
(Atlantic 2-115900)
| Steve Wilson | programmed, produced, performed |
| Clin Edwin | bass on 4 |
| Richard Barbieri | electronics on 5 |
| Suzanne Barbieri | voice on 5 |
93 年発表の第二作「Up The Downstair」。
英国らしいメランコリックなヴォーカルとヴィンテージ・キーボード、ギターをフィーチュアした、新感覚のサイケデリック・ロック。
ギターは、線は細いものの、深いリヴァーブとディレイなどエフェクトを多用し、メロディアスなプレイを決めてゆく。
比較的オーソドックスなスタイルだ。
ポンプ・ロックの影響もないわけではないようで、きわめてロマンティックなフレーズを紡ぐことも多い。
もっとも、ブルーズ・フィーリングを露にしないところが、オールド・ファンには物足りないかもしれない。
キーボードは、アトモスフェリックな使い方ながらも 70 年代プログレへと直結する音。
したがって、ノスタルジックなイメージは強い。
SE をきっかけに、PINK FLOYD を思い起してしまうのもしかたないだろう。
一方、醒めたような表情のヴォーカルは、ニュー・ウェーヴ以降のブリット・ロックのものであり、打ち込みテクノ・ビートとともにやはり今の音なのだ、ということを思い出させてくれる。
漆黒のアンビエントともいうべき耽美センスも、やはり今風というべきだろう。
脈動するシーケンス、テクノ・ビート、そして冷気が迸る音響による無機世界と、プライヴェートでセンチメンタルな内面世界が交差するところも特徴だ。
興味深いのは、強烈なテクノ・ビートの嵐にあっても、ハウスのような忘我のダンス・ミュージックといったニュアンスは皆無であり、どこまでもナイーヴでメランコリックであることだ。
ヘヴィに激情を叩きつける演奏にしても、アコースティックで空ろな歌ものにしても、デリケートな内面がうかがえる。
肉体派ではなく圧倒的に精神派なのだ。
そしてディープなドラッグ・ワールドをイメージさせる音ながらも、自分だけはしっかりと覚醒して全てを見すえたいといった感じの若々しさを感じさせる。
若々しさといえば、本作で感じられる内省的な暗さそのものも、いわば「素直な屈折」を匂わせるいかにも若々しいものだ。
ベタなユーモアやフィジカルなグルーヴなくしてはロックできないよん、ということをわきまえてバカに徹している OZRIC TENTACLES とは対照的に、こちらはメランコリックなくせに鼻っ柱は強くどこまでも青臭い。
(GONG になると OZRICS よりさらにうわてであり、精神世界の深淵とバカがシームレスになっていることをちゃんと知っている)
しかし、スタイリッシュななかに頑なさと繊細さが見えるというのが、ロックのカッコよさの柱の一つであるのも確かである。
(こういうクールでナイーヴな男はモテるしな)
せんじつめると PINK FLOYD のナイーヴな詩的感覚とテクノを組み合わせたような英国サウンドであり、これからまさに花開くモダン・プログレの旗手の一つということになるだろう。
「下り階段を昇れ」というタイトルに込められたのが熱い反骨心であるならば、孤高はまだ誇りと結びついているぞ。
特に最終二曲の昂揚と冷気の迸る展開はみごと。
プロデュースはスティーヴ・ウィルソン。
キーボーディストは、もちろんあの「JAPAN」のバルビエリ。
「What You Are Listening To...」(00:58)
「Synesthesia」(5:11)
「Mouments Burn Into Moments」(00:20)
「Always Never」(6:58)
「Up The Downstair」(10:03)
「Not Beautiful Anymore」(3:26)
「Siren」(0:53)
「Small Fish」(2:46)
「Burning Sky」(11:07)
「Fadeaway」(6:20)
(DELEC CD 020)
| Steve Wilson | guitars, keyboards, vocals |
| Richard Barbieri | keyboards, electronics |
| Clin Edwin | bass |
| Chris Maitland | drums, percussion, hum-wah |
95 年発表の第三作「The Sky Moves Sideways」。
ウィルソンの個人ユニットからバンド形態へと移行。
サウンドは前作と同じ方向性を持つが、メランコリックな閉塞感からほんの少し解き放たれたようだ。
深遠な空間を意識させるヴィンテージ・キーボード・サウンドによって、内省的なトーンのなかに、ダークなシンフォニック色が浮かび上がっている。
シーケンス/テクノ・ビートによるエレクトリックなトランス・サウンドももちろんあるのだが、それ以上に、苦悩し絶叫するようなエモーションの発露が感じられる。
鮮烈な SE、ヴォーカル・ディレイ、アコースティック・ギター、人力ドラムらによるドラマチックな展開は、まさしく PINK FLOYD の後継である。
特に、ややアメリカナイズされたメロディ・ラインやダルなリフなどに、かの「Dark Side Of The Moon」の面影すらちらつく。
(そういえば曲目に「Moon」という言葉も散りばめられている)
5 曲目は、まちがいなくオールド・ファンの胸に響くだろう。
6 曲目も、「Money」のようなリフから CRIMSON のような高密度のヘヴィ・シンフォニックへと変貌する好作品。
もちろん OZRIC TENTACLES ばりの原色テクノデリックもあるし、TEARS FOR FEARS か THE SMITH かという繊細でニュー・ウェーヴな歌ものもあり。
しかしやはり、怒涛の如く湧き上がるギターと甘美な悪夢のようなキーボードが圧巻なのだ。
個人的にはベストです。
音は思い切りプログレなのですが、プログレでくくられてしまっていいのだろうかという思いもあり。
本作品は、Terumi さんとニック・ドレイクに捧げられている。
「The Sky Moves Sideways Phase One」
「The Colour Of Air」(4:39)
「I Found That I'm Not There」(3:47)
「Wire The Drum」(6:18)
「Spiral Circus」(3:55)
「Stars Die」(5:00)
「Moonloop」(8:10)
「Dislocated Day」(5:24)
「The Moon Touches Your Shoulder」(5:51)
「The Sky Moves Sideways Phase Two」
「Is...Not」(12:00)
「Off The Map」(4:43)
(CS 85242)
| Richard Barbieri | analogue synthesizers, Hammond organ, Mellotron |
| Clin Edwin | bass |
| Chris Maitland | drums, percussion |
| Steve Wilson | vocals, guitars, piano, samples |
96 年発表の第四作「Signify」。
メタル、サイケ、アンビエント、アコースティックな歌ものまで、ぐっとプロデュースが明快になり、洗練された印象を与える名作。
耽美なデジタル・ビートの澱みに沈み込むようだった作風は整理され、もはや混沌にも意図がある。
苦悩と一体となったような重苦しさは残るも、サウンド的には長足の進歩を遂げている。
ポップ化というと揶揄するようなニュアンスが生まれるため、むしろ、多様な音楽性の発揮と表現力の向上というべきだろう。
燃え上がるハードネスから哀愁の歌ものまで、楽曲の振幅は大きい。
そして、どの曲もくっきりとした輪郭が浮かび上がっている。
アンビエントな音とパーカッシヴなデジタル・ビート、PINK FLOYD 風 SE によって、ニューウェーヴっぽさとプログレっぽさがうまく結びついた、きわめて珍しいタイプの傑作といえるだろう。
ただし、サウンドの性格がはっきりとした分、ギルモア風ブルーズ系とハケット系ネオプロ系の中間ぐらいであるギターのプレイが今一つに聴こえてしまう、というのは酷だろうか。
しかし、それをさほど意識させないほど、キーボードやギターによる全体の空気感はいい。
「Bornlivedie」(1:41)
「Signify」(3:26)開き直ったようなリフがカッコいい快速ヘヴィ・チューン。
「Sleep Of No Dreaming」(5:24)英国アンダー・グラウンドの王道の如きダークなバラード。
病み方に貫禄がある。
「Pagan」(1:34)
「Waiting Phase One」(4:24)緩やかな響きと小気味いいビートが冴える感傷的なナンバー。
スライド、ワウ・ギターがフィーチュアされる。
オシャレな PINK FLOYD。
「Waiting Phase Two」(6:15)エスニックなパーカッション・ビートにピアノやギター、シンセサイザーが散りばめられてゆく。
リズムを強調した眩惑世界から、緊張の高まりとともに、次第にエモーショナルなパート 1 に近い世界へと移ってゆく。
「Sever」(5:30)狂気を孕むエキセントリックなヴォイス/演奏とメロディアスなハーモニーが対比するグロテスクなヘヴィ・チューン。
うがって見ると、ロジャー・ウォーターズ風といえなくもない。
「Idiot Prayer」(7:37)
「Every Home Is Wired」(5:08)
「Intermediate Jesus」(7:29)
「"Light Mass Prayers"」(4:28)
「Darkmatter」(8:57)
(61868 10013 2 4)
| Richard Barbieri | analogue synthesizers, Hammond organ, Mellotron |
| Clin Edwin | bass |
| Chris Maitland | drums, percussion |
| Steve Wilson | vocals, guitars, piano, samples |
| guest: | |
|---|---|
| Theo Travis | flute, sax |
| East Of England Orchestra | strings |
ライヴ盤を経て、99 年に発表された第五作「Stupid Dream」。
遂に新たな世界へ突きぬけてしまったか、轟音の一撃を経て、ゆったりと響き渡るアコースティック・ギターと穏やかなメロディ・ラインが胸を打つ作品となる。
ヘヴィなリフは確かに轟いているのだが、ナイーヴな表情と切なる思いがそれを上回り、いつしかブリティッシュ・フォークの世界になってゆく。
清らかな世界へと導く調べは、まるで RADIO HEAD か SIGUR ROS のようだし、また、前作のアコースティック部分を取り出したようなイメージもある。
新世紀のブリティッシュ・ロックか、はたまた、原点回帰なのか。
嵐のようなサイケデリック・ミュージックを乗り越えただけに、内省的なアコースティック・サウンドにも嘘っぽさが無い。
感極まった様に噴出するストリングスやオルガンが、胸を満たす思いとともに交響曲的高揚を生み出し、やがて悠然とうねる音楽にとけこんでゆく。
エンディング前には挑戦的なサイケデリック・ロックが炸裂するが、ラストはやはり内省的なヴォーカル・ナンバーである。
ぼんやりとした心象風景を綴る作風に、メロディラインの芯が一本通った今、ネオ・サイケデリックというレッテルはすでに不適切だろう。
この繊細な歌もの志向は、次作品で一つの頂点を見る。
フルート、サックスで、セオ・トラヴィスが参加。
もちろん、過激なアジテーションがないわけではない。
11 曲目「Tinto Brass」は、イタリアのエロ映画監督の名前をタイトルにした挑戦的で扇情的な作品。
件の日本人女性が日本語で略歴を読み上げる。
2 曲目「Piano Lesson」は、60 年代末を思わせるキャッチーな作品。
6 曲目「Don't Hate Me」は、感動的な大作。この絶唱には、現在の MARILLION と同じ種類のインパクトを感じた。
9 曲目「Stranger By The Minute」は、ルー・リードやポール・マッカートニーとつながる、ヒリヒリした感性のポップ・センスに酔わされる名曲。シングルにもなりました。
(KSCOPE 128132)
| Richard Barbieri | synthesizers, Hammond organ, fairground, percussion, Fender Rhodes, clavinet, Mellotron, insects |
| Clin Edwin | fretless bass, saz, drum machine, guimbri |
| Chris Maitland | drums, percussion, backing vocals, |
| Steve Wilson | vocals, guitars, Mellotron, piano, hammered dulcimer, banjo, harp, samples, percussion |
| guest: | |
|---|---|
| Stuart Gordon | violin, viola |
| Nick Parry | cello |
| The Minerva Quartet |
| Katy Latham | violin | Lisa Betteridge | violin |
| Sarah Heins | viola | Emerline Brewer | cello |
2000 年発表の第六作「Lightbulb Sun」。
ギターとキーボードが轟々と迸るヘヴィ・チューンを軸に、繊細なメロディのバラードやフォーク・タッチの歌ものなどを散りばめた、ヴァラエティに富む傑作アルバム。
楽曲の多彩さはそのままに、前作と同様、全体としてはスペース/サイケデリック色はさらに後退した。
しかしながら、自由で自然な形で語ることにより、思いは今までよりもしっかりと伝わってくる。
スタイルへの依拠という足かせが外れたのは、よかったのではないだろうか。
リヴァーヴ/イコライジングを的確なポイントに絞ったり、古楽器や弦楽によるアコースティック・サウンドを交えるなどのアレンジメントにも、ギミックではない正統派としての風格がある。
深みのある音響処理とヴィンテージ・キーボード群も、ヴォーカルによる物語りを際立たせるのが一義のようだ。
そして、ヴォーカルにつきしたがう丹念なコーラスや、オリエンタルな味つけもいい感じだ。
アーシーなアメリカン・ロック感覚もあって実に興味深いのだが、身を苛むようなセンチメンタリズムとクールなサウンドのコンビネーションにはやはり英国気質がにじみでていて、まずはそこが魅力になっている。
ときおり頑なな若さをのぞかせつつも、力みは消え、よりナチュラルな方向へと、静かに自信を持って踏み出した「歌もの」アルバムである。
これならメイン・ストリームでも十分勝負できると思います。
ピーター・ハミルの片腕スチュアート・ゴードンがゲスト参加。
2 曲目「How Is Your Life Today ?」は、ノスタルジックなタッチにポップ・センスが冴える小品。
3 曲目「Four Chords That Made A Million」は、エキセントリックなようでキャッチーな完成度を誇るブリット・ロックの傑作。ウィルソン節である。
6 曲目「The Rest Will Follow」は、小品ながらもストリングスをフィーチュアしアーシーな広がりを感じさせる新境地。
7 曲目「Hatesong」は、サイケデリックなインストゥルメンタルの充実した憂鬱なヘヴィ・チューン。
9 曲目「Russia On Ice」は、内省的なムードが貫く PINK FLOYD 的な大作。
ヘヴィ・メタルからプログレ、テクノまで、英国サウンドの集大成の如き多彩な変化を見せる。
前々作までのヴォーカルの深いエコーとイコライジングも甦っている。
最終曲「Feel So Low」は、VdGG の作風に似た悠然たる終末観を示す感動作。
SIGUR ROS や GODSPEED YOU BLACK EMPEROR にも通じる世界です。
(KSCOPE SMACD827)
| Steve Wilson | guitars, keyboards, vocals |
| Richard Barbieri | keyboards |
| Clin Edwin | bass |
| Gavin Harrison | drums |
2002 年発表の第七作「In Absentia」。
ドラマーが脱退、交代でベテラン・セッション・マン、ギャビン・ハリソンがクレジットされる。
作風、サウンドは思ったほど大きくは変わっていない。
得意のクールで内省的なサイケデリック弾き語り調と荒々しいデジタル・ギター・ロック調を自在に行き交っている。
エレキギターの音の飛躍的な力強さは、緻密なサウンド・エンジニアリングのおかげだろうか。
曲毎の性格と展開が明快であり、非常に聴きやすく、それでいてインパクトも一貫した雰囲気もあるという、みごとな内容である。
開巻劈頭、メロディアスなヴォーカルとヴィンテージ・キーボード、超ヘヴィなギター・サウンドのみごとなコントラストでドラマを描き、コンパクトに、キャッチーにまとめ上げるという大物アーティストのような風格を見せる。
澱みっぱなし、沈みっぱなしではなく、緩やかながらもなめらかな動きがある、つまり劇的なのだ。
人力ブレイクビーツ、ポスト・ロック風のイコライジングなどのアクセントも決まっているし、エキゾチックなアクセントも冴えている。
個人的にはやや HM 風味が過ぎると感じるところもあるが、これは現代ロック・ファンのハートをつかむには必須項目なのだろう。
一方で、アコースティック・ギターで弾き語る歌には、耽美で魔術的な魅力が満ちている。
イギリス(湿気とメランコリー)の出ながらアメリカンな肌触り(アーシーな乾き)にこだわっているような音は、やはり PINK FLOYD を参考にしているのでしょうか。(もちろん、これもまた常に米国と干渉しあう英国ロックの宿命の現れの一つなのかもしれませんが)
全体に、独特の「アンビエンス=空気感」をきちんと音にして伝えることのできている作品だと思います。
この上さらに染み出すようにヤバげな毒気やシニカルなユーモアがちらつくと、もっとカッコよかったかもしれません。
夜中にヘッドフォンで大音量で聴くにはうってつけ。
意図的にプログレっぽさをあまり出さずに(さりげない変拍子はあるが)まとめた可能性もある。
そう思うと、MARILLION と同様なタッチにも気がつく。
「マンネリ」というか「作風」というか。
ヨーロッパ盤は、ボーナス CD つきの二枚組仕様。
プロデュースはスティーヴ・ウィルソン。
(7567 93I63-2)
| Steve Wilson | guitars, keyboards, piano, hammered dulcimer, bass, vocals |
| Richard Barbieri | keyboards, synthsizer |
| Clin Edwin | bass |
| Gavin Harrison | drums, percussion |
| guest: | |
|---|---|
| Adrian Belew | guitar solo on 1,4 |
| Mikael Akerfeldt | harmony vocals on 1,3,5, second guitar solo on 5 |
2005 年発表の第八作「Deadwing」。
耽美な現代版 PINK FLOYD のまま、さらにアクセスしやすくなった傑作。
アルバムは遠慮なく開巻劈頭から全開、1 曲目のタイトル曲で思わず膝を打つ。
この曲、センチメンタルな面もアグレッシヴな面も、すっかり素直に音になっている。
全体に、自然な気分の変化に合わせたような、ヘヴィな音とアコースティックな音の組み合わせ方、切りかえ方が巧みなのだ。
3 曲目はバラード。
4 曲目は「Stupid Dream」辺りから確立してきた PT 流サイケポップ。
5 曲目はうつむくような弾き語りから、ダイナミックな変転を繰り広げる大作。PINK FLOYD 直系です。
6 曲目は、ドノヴァン風の弾き語りから、MARILLION のようなメロー・タッチへ。「ボク」な僕。
8 曲目は非常にメロディアスな展開が印象的な、ある意味ネオプログレ然とした作品。泣かせます。
メタルなギター・サウンドは、広い世代に自然に浸透するには、もはや欠かせぬ一要素なのでしょう。
ただし、元々、繊細でメランコリックな英国ロックらしいトーンが基本だっただけに、変拍子ヘビメタには決してならない。
(プログレって DREAM THEATER みたいなやつだろ、というのは完全な勘違いですので、ご注意)
そして、そんな時代になっても、メロトロンはちゃんと聴こえてくる。
低く雲が垂れ込める丘を越えると、霧に包まれた森の向こうに湖がうずくまる....そんなときに聴こえてきそうなメロトロンです。
ちなみに、写真やイラストをコラージュしたスリーヴというのは、今やまったく珍しくないですが、本作のスリーヴは、いかにも一流レコード会社らしい手のかかったもののように思えます。
ただし 15 年くらい前のもののように思えてしまうのはなぜでしょう。
そういえば、音もそのころ流行ったグランジっぽいところが。
たとえば、PEARL JAM ?
プロデュースはスティーヴ・ウィルソン。
エイドリアン・ブリューがゲスト参加、1 曲目(8:00 付近の音 ?)と 4 曲目でソロをフィーチュア。
個人的には、2005 年愛聴盤ベスト 5 入り。
(7567 93437-2)