イタリアのプログレッシヴ・ロック・グループ「PLANETARIUM」メンバーなどの情報が一切ない、謎の 4 人組。 アルバム一枚、シングル二枚を発表。
71 年録音の唯一作「Infinity」。
管弦楽や様々な音響効果を用いて、「世界」そのものを描写しようと試みている作品である。
ヴォカリーズ以外は全てインストゥルメンタル。
レーベル・サイドの要請か、メンバーの本名は隠され、作曲者(A.Ferrari)のみがクレジットされている。
CD は VINYL MAGIC からの再発盤。
1曲目「The Beginning」(3:13)雄大なドラマの幕開けを暗示する雷鳴。
そしてコラールとハモンド・オルガンが厳かに轟く。
途中からストリングスも加わる。
壮大なイントロダクションだ。
2曲目「Life」(7:05)驟雨の音に続き、アコースティック・ギターとメロトロン・フルートによる静かなアンサンブル。
エレピがきらめきアクセントをつける。
雨の音は冷却と豊かな水分を意味し、命の誕生を暗示するのだろうか。
アンサンブルが消え、ジャーマン風のパーカッションが訥々と鳴り始める。
続いてジャジーなピアノ伴奏で穏やかなヴォカリーズ。
ベースも加わり、演奏は次第にジャズ色を強める。
遂にギター、メロトロン・ストリングスが湧き上がり、一気にシンフォニックなアンサンブルへと変貌する。
ギターはイタリアン・ロックらしい古臭いジミヘン風。
堅実なハイハット・ワーク、メロトロンをバックに奔放なギター・ソロが続く。
フェード・アウト。
前半の哀愁のアコースティック・アンサンブルから、ジャズ、シンフォニーとテーマが変奏される面白い構成である。
おそらくは、地球が冷えて現れた、最初の「生命」とその多様化をイメージしているのだろう。
ジャジーなピアノやシンフォニックなメロトロンの演奏もよし。
メロトロンは、全ての命を見守って、その活動=生を推し進めてゆく力の象徴かもしれない。
3曲目「Man(part 1)」(1:53)クラシカルなアコースティック・ギターとハモンド・オルガンによる静謐なアンサンブル。
アコースティック・ギターは、アルペジオによるリリカルで味わい深い演奏。
薄暮の太陽のような陰りを持つオルガンに酔いしれる。
4曲目「Man(part 2)」(3:57)3 曲目と同じアルペジオを奏でるアコースティック・ギターとフルートによるアンサンブル。
凝った作りだ。
ここのメロディはクラシックよりも哀愁あるポップス風。
デュオが終り、オーケストラのチューニング風景のような SE が入る。
そして、ピアノとストリングスによるロマンチックな演奏が始まる。
優美だが甘過ぎず、品のあるアンサンブルだ。
オブリガートするピアノは印象派風。
またストリングスの奏でるテーマは、非常にメランコリックである。
透明感のある演奏だ。
5曲目「Love」(2:46)
ピアノとチェロによるシューベルトのようにロマンチックなアンサンブル。
ストリングスは次第に厚みを増し、ギターのアルペジオも湧き立つ泡のように静々と流れる。
優雅で哀しいストリングス。
低音のメロディが非常に美しい。
美しくも悲しい思いが胸をいっぱいにするナンバー。
懐かしい恋を思い出すような切ないピアノとストリングス。
アコースティック・ギターも美しい。
6曲目「War」サイレンに導かれる勇壮な行進曲。
久しぶりにベース、ドラムが活躍する。
ブラスとストリングスのテーマに、爆音や爆撃、機銃掃射の SE が重なる。
抵抗できない大きな力に後押しされて進んでゆく様子が、見事に表現されている。
根底に流れるのは、避け得ぬ運命に対する憤りと哀しみのようだ。
サイレンは声にならぬ怒りの暗喩か。
7曲目「The Moon」(4:03)
ドラムとヴォカリーズが躍動するイントロダクション。
そして一転、幸福感に満ちたヴォカリーズとストリングスによるテーマである。
続いて暗雲垂れ込める不気味なオルガンとギターのデュオ。
再び、ストリングス、オルガンとヴォカリーズによる典雅なテーマへ戻ってゆく。
幸福なムードの演奏から始まり、中間部のややヘヴィな演奏を経て、再びドラマチックに元に戻ってゆく構成。
中盤のギター、オルガンの暴れ方やストリングスの使い方は、コテコテながら効果的。
8曲目「Infinity」(4:21+6:41)ドラマチックなオルガン・ソロによるイントロダクション。
オルガンが止み、トーン・ジェネレータの電子音が舞う中をパーカッションが流れる。
オルガンとピアノのアンサンブルはジャズと民族音楽の中間。
ヴォカリーズが静かに湧き上がり、オルガンが鋭くオブリガートする。
パーカッションの響きが眠りを誘う、マジカルな演奏だ。
ベースが加わると演奏は次第にうねり始める。
電子音を残してフェード・アウト。
ドラムとベースの跳ねるような演奏が始まる。
続いてギター、オルガンが加わる。
スピード感のあるヘヴィなプレイである。
オルガンの鮮やかなグリッサンドをきっかけに、ギターとオルガンの緊張感が強まる。
さらにテンポ・アップ。
ヴォカリーズとオルガンによるシンフォニックな演奏だ。
強調されるリズム。
激しくグリッサンドを繰り返すオルガン。
ややインストが長い。
なだらかなデクレシェンドでフェード・アウト。
クロスフェードでメロトロン、オルガンとヴォカリーズが湧き上がってくる。
厳かなムードだ。
オルガンとヴォカリーズが粛々と響き渡る。
そして雷鳴が。
オルガンを中心にキーボードが活躍するハードな最終章。
ヘヴィな演奏からシンフォニックなエンディングへと向かってゆく。
トライバルなパーカッションとベース・リフ、激しいギターなどハッタリのない演奏である。
もっとも、トーン・ジェネレータの電子音だけはさすがに時代がかって聴こえる。
エンディングでは、コラールとオルガンの調べから、タイトル通りに 1 曲目の頭に戻り、輪廻を描く。
深遠である。
オール・インストで「世界」という壮大なテーマを描く作品。
交響楽及び室内楽とロックの融合という、プログレッシヴ・ロックならではの典型アプローチの一つだ。
ポスト・モダニズムを経てプラグマティックな物質界の充実を見ている現在の感覚では、ロックにここまで重厚な意味を持たせようとすること自体が、驚きである。
時代錯誤と切り捨てられないのは、深刻さばかりでなく、溌剌とした精神の躍動が感じられるからだろう。
細部の展開はシンプルにして、むしろ、大きな流れを強調する作風が明快でいい。
メロトロンとオーケストラで世界をイメージさせる背景を組み立て、フルートやアコースティック・ギターによるアンサンブルで揺れ動く生の機微を描いている。
そして、ギターやオルガン、ドラムがダイナミックにアクセントをつけている。
弱点があるとすれば、分かりやすさに重きをおいた結果、やや演奏の細やかさを欠いていることだろう。
もう少し綿密な構成の方が、楽しみも長続きしたに違いない。
また、いい状態の録音で聴いてみると評価の変わりそうな音とも思う。
(VY/LP 10051 A / VM 019)