PHILHARMONIE

  フランスのプログレッシヴ・ロック・グループ「PHILHARMONIE」。 87 年、元 SHYLOCK のフレデリック・レペーが結成。 作品は五枚。 97 年解散。 レペー氏は現在ソロ活動中。 80 年代 KING CRIMSON の影響下、それをさらにセンスよく深めたギター・インストゥルメンタル。 個人的にかなり好きなグループでした。

 A Complex Nature

 
Frederic L'epee guitar
Julien Vecchie guitar
Stephane Bertrand bass
Volodia Brice drums

  2004 年発表の作品「A Complex Nature」。 PHILHARMONIE 解散後ソロ活動を続けていたレペー氏の新ユニット YANG による初アルバム。 前グループ最終作に参加したドラムスの他は新メンバーである。 2 本のギターがポリリズミックな文様を成す作風に大きな変化はないが、へヴィな音を盛り込み攻撃的な表現を強めたところが新しい。 (80' CRIMSON から 70' CRIMSON 側に揺り戻したのか) したがって、4 ピース・バンドらしいガッツリした重みとキレのよさが際立つ。 もちろん、前グループの作風そのままなソフトなサウンドのギター・アンサンブルもあるし、思い切りジャジーなプレイもある。 バンドっぽいノリを強めながらも、丹念なフレージングから繊細な叙情性がふわっと浮き上がるところがいい。 いわゆる「エレキ」っぽい音が懐かしくも新鮮だ。 エフェクトではなくアンプとギターで音を作っているに違いない。 きわめて多彩な表情を見せるインスト・ギター・ロックなのだが、魅力的なヴォーカリストが入ったらどうなるのかにも興味があります。


(RUNE 197)

 Nord

 
Frederic L'epee guitars, fretless guitar
Lurent Chalef guitars
Bernard Ros Chapman Stick
Jean-Lous Boutin drums

  94 年発表の第三作「Nord」。 二つのエレクトリック・ギターのハーモニーが精緻な紋様を成してゆくギター・インストゥルメンタル作品。 ロバート・フリップのアカデミズムの影響下らしい正確で丁寧なプレイとナチュラル・トーンを活かし、明快かつ爽やかなテーマを透明感あるサウンドで描いてゆく。 そのテーマの反復と時間軸での交錯が得意技だ。 変拍子やポリリズムも多用しているのだが、耳触りのいいクリアなサウンドのおかげで、そういうことをあまり意識せずにすむ。 したがって、その音楽からの連想は、いわゆるプログレよりも、フュージョン・ミュージックから THE VENTURESPENGUIN CAFE ORCHESTRA といったところへ広がる。 また、ニューエイジ・ミュージック風のライトなエキゾチズムや神秘性も感じられる。 もっとも、アンサンブルが自然にシンフォニックな高揚を迎える瞬間もあるし、そもそもリズムのキレがいいために、まったりし過ぎないという何にも増してロック的に重要なポイントがクリアされている。 それでも、テクニカルなプレイに伴いがちな強圧的な姿勢は感じられず、メロディがポップにこなれているために、さざめくようにミニマルな流れの聴き心地がいい。 技巧的にして「控えめ」であることが、作風とぴったり合っている。 したがって、BGM としても十分に機能する。 二本のギターによる幻惑的なハーモニーに加えて、フレットレス・ギターによるポルタメントの効果やチャップマン・スティックのあまりに多彩なバッキングなど、ポイントを絞って聴いてもおもしろい。 全編インストゥルメンタル。

(RUNE 64)

 Rage

 
Frederic L'epee guitars, fretless guitar & other strings
Lurent Chalef guitars, glockenspiel, percussions
Bernard Ros Chapman Stick, percussions
Jean-Lous Boutin drums

  96 年発表の第四作「Rage」。 内容は、80 年代 KING CRIMSON から能天気なヴォーカルを取り除いた、インテリジェンス香るギター・インストゥルメンタル。 リーダーのフレデリク・レペは、ロバート・フリップに私淑し、GUITAR CRAFT のレッスンにも馳せ参じている。 演奏/曲調も、きわめてフリップのそれに近い。 人力シーケンサとアンサンブルの実験のような楽曲が主なのだが、緊張を強いるようなところはなく、全体に音が軽やかで聴きやすい。 今となっては、ギター・シンセサイザー以前の純エレクトリック・ギター的な技巧がかえって新鮮だ。 Fender 系のアンプから出てくると思われるリヴァーヴの効いたナチュラル・トーンが、一瞬 THE VENTURES に聴こえてしまう瞬間すらある。 本家と違い、「太陽」や「Fracture」への呪縛がない分、過剰なヘヴィネスやエキセントリシティは追い求めていない。 むしろ、クールな美感に支えられた叙情性が先に立つ。 反復を基本とするのだが、不思議と眠くはならず、心地よく音に身を委ねられる。 5 曲目が傑作。全曲インストゥルメンタル。

  「Le Dernier Heraut(The Ultimate Herald)」(6:42)独特のエフェクトで加工したギター・トーンを活かした、やや柔らかめの「DisciplineCRIMSON。 ミニマル、ロングトーン、拍子ずらしパターンはあるのだが、コードによるテーマが潔いため、フュージョン風に聴こえなくもない。 8 分の 6 拍子をきちっと刻むドラムスも好み。 次第に落ちついた調子へと変わってゆく。

  「Hexacorde - La Ferme(Shut Up)」(0:37 + 7:12)マンドリンを思わせるアコースティック・ギターによる序奏を経て、一気に飛び出すハイテンションの快速ツイン・ギター。 エコーがなんだか懐かしい感じだ。 オーヴァードライヴとイコライザでアタックを消した、フリップそのもののようなトーンで、みごとなソロを綴ってゆく。 ここでもシンプルにして切れのいいリズムが効果的。 ミュートした人力シーケンス、アルペジオ、的確なベース音、ナチュラルトーンによるジャジーなプレイなど、多彩な演奏をめまぐるしく繰り広げてゆく。 自由闊達に、はじけるような演奏が特徴だ。

  「Thesis」(5:42)点描風のツイン・ギターが精緻な模様を編み出してゆくミニマル風の作品。 暖かみが特徴的。

  「Sur Un Fil(On A Wire)」(6:07)ややワールド・ミュージック風味のある緊迫感のない CRIMSON

  「Ouigaa」(4:30)シャフル・ビートと轟々たるギターによる力強い作品。 民族風のドラムス、攻撃的なプレイ、得意のディレイと「変拍子パターンずらし」も交えて堂々と突き進む。 ハード・ギター・シンフォニック・ロック。 SHYLOCK というよりは HELDON か。

  「Manadrin Mecanique(Clockwork Mandrin)」(6:43)曲名の通りやや中華風味のある作品。 メインのギターがオリエンタルなアルペジオ・フレーズを次々と繰り出して、サブのギターが裏拍パターンやヴァイオリン奏法などさまざまに応じてゆく。 バルトークの「中国の不思議な役人」への言及もあるような。

  「Bourree Tropicale(Tropical Bourree)」(7:22)ややニューエイジ風の即興によるオープニングから、「独特の」爽やかさをもつ演奏へ。 背景の轟音と前景のフュージョン・タッチが、眩暈のするようなコントラストをなす。 いわば、ノイローゼ気味の VENTURES である。中盤から一気に 「DisciplineCRIMSON。 ドラムス、ベースもしっかり見せ場を作り「Sailor's Tale」ばりの轟音ストロークから大団円へ。 過激な変転が特徴だろう。

(RUNE 84)

 The Last Word

 
Frederic L'epee guitars, fretless guitar & other strings
Bernard Ros Warr guitar
Volodia Brice drums

  97 年発表の最終作「The Last Word」。 編成はトリオへと縮退し、グループとしての最終作となった。 レペーの変則チューニング・ギター、フレットレス・ギターとロスの WARR ギターの特性を活かした、静かなる音の迷宮である。 作風は初期と比べると厳かで険しいものになっている。 全編を超絶的な技巧のぶつかり合いから飛び散る火花のような緊張感が貫く。 ただし、サウンドそのものにはエレキギターらしいまろやかな温かみがあるため、厳しい印象はない。 ポリリズミックな反復アンサンブルが生む脳髄を麻痺させるような幻想美もあるのだが、暗くうつむき張詰めた表情が底流にある。 レペーのプレイは、フレットレスによるポルタメントを用いた独特のフレージングよりも、ロバート・フリップ直系の凶暴にうねるロングトーンや驚異的に精緻な幾何学文様を描く細かく挑発的なパッセージが主である。 ノイジーでインダストリアルな音になるところもあるし、バーンと突っぱねるようにパンキッシュな表現も見せる。 このヘヴィなタッチ、ある意味、洗練され研ぎ澄まされた SHYLOCK とはいえないだろうか。
   冒頭 1 曲目「Rondo Argentin」は、きわめてドラマティックな大傑作。 80' KING CRIMSON が奏でるラテン・ミュージック。 5 曲目のタイトル曲「Le Dernier Mot(The Last Word)」は、スリリングなヘヴィ・ロック。変拍子でたたみかけるアンサンブルがカッコいい。

  「Rondo Argentin」(6:22)
  「Métamorphose」(6:20)
  「Sans Réponse」(5:30)
  「Bruine」(6:31)
  「Le Dernier Mot」(8:00)
  「Hannibal  Capoue」(9:30)
  「Campanile」(5:28)

(RUNE 124)


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