ドイツのジャズロック・グループ「PASSPORT」。 50 年代から活動するサックス奏者クラウス・ドルディンガをリーダーに、70 年代から活動開始。 グループも彼のソロ活動の延長上のようであり、そのメンバーは多岐にわたる。 ドイツを代表するジャズロック・フュージョン・グループ。 クロス・オーヴァー・イレヴン御用達。
| Frank Roberts | Fender piano, organ |
| Wolfgang Schmid | bass, guitar |
| Curt Cress | drums |
| Klaus Doldinger | tenor & soprano sax, Moog, electric piano, Mellotron |
73 年発表のアルバム「Hand Made」。
内容は、メロディアスなサックスとキーボードを中心とした、クロスオーヴァー・サウンド。
初期 WEATHER REPORT をリラックスしたような音から、ハモンド・オルガン、メロトロン、ムーグが高鳴るプログレ系のジャズロックまで、聴きやすい作品が並ぶ。
3 曲目は、メロトロンをバックにしたメローなサックスのテーマに、ファズ・ギターのヘヴィなパワー・コードがアクセントする、いかにも 70 年代らしい佳作。
4 曲目は、オルガンの音や変拍子による R&B 調のリフ、スペイシーなムーグなど、SOFT MACHINE を連想。
タイトル・ナンバーは、存在感のあるテーマによるブラス・ロック風の佳曲。
ムーグやギターは完全にプログレ。
6 曲目は、ギターのコード・カッティングとクラヴィネットが小気味いいファンキー・チューン。
カート・クレスの重くストレートなドラムが、ソフトな音のなかでうまく活かされている。
全体に、サックスがメローにして力強いブローを見せており、クレスのド迫力のドラムスの存在もあって、フュージョンよりもエレクトリック・ジャズというべき骨太なニュアンスがある。
レコーディング・エンジニアとして、ディター・ディルクスがクレジットされている。
全曲インストゥルメンタル。
「Abracadabra」(7:20)
3 連 2 拍のたたみかけるようなリズムで突き進むパワー・チューン。
ベースのリフがドライヴするビッグ・バンド風のテーマから、サックスのパワフルなソロが飛び出し、エレピ、ベース、オルガンが、次第にサックスへと寄り添ってゆく。
続いてエレピのソロ。
中間部では、リズムのアクセントを 3 拍子へ変えて、ジャジーなプレイも交えている。
ランニングの巧みなベースと重量級のドラムのリズム・セクションが、がっちりと演奏を支えている。
ファンキーだが軽さは皆無。
まさに怒涛の寄り身です。
「The Connexion」(5:33)
アサッテの方を向いたままの、ほどよく抑制された演奏が SOFT MACHINE 的な、奇妙な味わいを持つ作品。
サックスを軸に演奏が形作られるも、執拗なリフからドラムスをフィーチュアしたフリー・フォームの演奏へ進むなど、展開は大胆。
平静なようで、かなりぶっ飛んだ内容である。
「Yellow Dream」(4:20)メロトロンがささやきエレピがにじむスペースをメローなサックスのテーマが貫く。
応ずるは、ヘヴィに轟きファンキーに跳ねるギター。
再びメロディアスなサックスが現れ、ロマンティックに歌う。
ギターがハードロック調で激しく応酬するも、最後も、宇宙や深海を思わせるサックスが高鳴る。
WEATHER REPORT の一作目を思わせる音にヘヴィなギターを結びつけた娯楽作。
「Proclamation」(2:39)クラヴィネットとオルガンがカッコよくリズムを刻むファンキーなナンバー。
8 分の 5+6 拍子でベース、ドラムが小気味よいプレイを見せる。
ソロはひょうきんなムーグ。
「Hand Made」(9:26)クライマックス。
ドラムは 1 曲目よりさらにヘヴィにして敏捷なプレイを見せる。
テーマはサックスとムーグ。
「Puzzle」(4:07)
「The Quiet Man」(4:43)
(ATLANTIC 2292-42172-2)
| Wolfgang Schmid | bass, guitar |
| Curt Cress | drums, electric percussion |
| Kristian Schultze | Fender piano, organ |
| Klaus Doldinger | tenor & soprano sax, Moog, electric piano, Mellotron |
74 年発表のアルバム「Looking Thru」。
内容は、サックスとキーボードが中心となる WEATHER REPORT、SOFT MACHINE 編成のジャズロック。
ギターは 3 曲目のアコースティックと 6 曲目のワウ・バッキングのみだ。
音は、もう完全にあの時代のあの音。
あまり黒っぽくない WEATHER REPORT とリング・モジュレータ・オルガンの代わりにムーグを使う SOFT MACHINE が混ざったような音だ。
やはり、ヨーロッパのグループらしく、アメリカの開放感よりもブリティッシュ・ロックに通じる翳りがあるように思う。
サックスは、ウェイン・ショーターに聴こえたり、エルトン・ディーンに聴こえたりする饒舌型であるが、平均するとソフトなトーンでなめらかなフレージングを聴かせるタイプだろう。
明快でメロディアスなプレイが主である。
また、カート・クレスのドラムスも、手数こそ多いが、きわめてロックっぽい 8 ビートを叩いている。
シンバルもどことなく不似合いである。
この非ジャズ的ドラムのおかげで、いわゆるクロスオーヴァー・フュージョン的なサウンドにおいても、オリジナリティが出ているようにも思う。
もっとも、それでも万事尖がり具合はさほどでなく、マイルドな触感である。
テク至上というスタンスではないのだろう。
ソロは、主としてサックス、エレピとムーグが決め、バッキングはなんとメロトロン。
このメロトロンの音が、全体の印象をフュージョンからぐっとブリティッシュ・プログレへと引き寄せている。
エレピのバッキングでサックス・ソロが始まると、いかにもフュージョン調の爽快感が現われるが、ムーグがけたたましく暴れメロトロンが背景を埋めると世界が一変するのだ。
緩急硬軟変化に富むキーボード・アンサンブルと比較的オーソドックスなモダン・ジャズ調のサックス・ソロがタイトなリズムに乗って暴れまくるとかなり面白い。
ハードロックみたいなリフまである。
テクニックはあるのに、メカニカルなシャープさよりも、素朴でロマンチックな味わいが感じられるのもアメリカのグループとは異なるところだ。
曲は実に様々である。
1 曲目のイントロでは、ムーグとメロトロンの心温まるアンサンブルへテクニカルなドラムが雪崩れ込むというプログレ的な展開もある。
4 曲目は、パワフルなブラス・ロックの味わい。
7 曲目は、リズムもジャジーなテンション高いジャズロック。
エンディングは超速スペース・ジャズ。
瞬間 BRAND X といっても可。
あちこち美味しいところ取りをした結果、実にとっ散らかった内容になったが、とにかく楽しい音である。
ジャズロック、フュージョン、ジャーマン・ロックのファンにお薦め。
前作、次作と比べると、ソロを削ってポップな小品集にまとめた印象もある。
「Eternal Spiral」(3:59)
「Looking Thru」(7:58)
「Zwischenspiel」(1:31)
「Rockport」(3:31)
「Tarantula」(4:48)
「Ready For Take Off」(4:47)
「Eloquence」(5:12)
「Things To Come」(2:45)
(ATLANTIC 2292-44144-2)
| Klaus Doldinger | tenor & soprano sax |
| Johnny Griffin | tenor sax |
| Volger Kriegel | guitars |
| Wolfgang Schmid | bass |
| Brian Auger | organ |
| Pete York | percussion, drums |
| Alexis Korner | guitars, vocals |
| Curt Cress | drums |
| Kristian Schultze | piano, electric piano, moog, mellotron |
74 年発表のアルバム「Doldinger Jubilee Concert」。
内容は、オールスター・キャストによるジャズロック大会。
ディーター・ディルクスの編集やリハ不足のいい加減さも含めて、あふれる個性を楽しむべき演奏である。
ブライアン・オーガーは、自身のステージのように(というか、主役と思っているんだろう)ブルージーなプレイで暴れまわる。
求道者フォルガー・クリーゲルも楽しそうにロック・ギターをぶちかましている。
そして、圧巻は、カート・クレスの超弩級ドラミング。
この後、ほぼ同名の「Jubilee Concert 75」も発表している。
(ATLANTIC 2292-44175-2)
| Kristian Schultze | keyboards, synth |
| Wolfgang Schmid | bass, guitar, harmonizer |
| Curt Cress | drums, percussion |
| Klaus Doldinger | tenor & soprano sax, Moog, voice, keyboards |
76 年発表のアルバム「Infinity Machine」。
ファンキーさがやや強まるが、「Looking Thru」の音から大きな変化はない。
スペイシーなキーボード群とまろやかなサックスによるメロディアスな演奏を、がっちりしたリズム・セクションが引き締めるジャズロック/フュージョンである。
シンセサイザー、クラヴィネット、エレピの音が躍動感を生み出し、サックスがなめらかに歌ってゆく気持ちのいい演奏だ。
メロトロンやシンセサイザーによる空間的な効果も健在であり、エレクトリックな処理も大胆に取り入れている。
その、きわめてモダンなサウンドを、あくまでメロディアスでジャジーなサックスが飄々と貫くところが特徴だろう。
したがって、全体の印象は、メインストリームを席巻したラテン・タッチの爽快感やハンコック流のブラックな野性味とはやや異なる、ファンタジックでキュートなものになっている。
サックスに導かれてメローな曲調が主と思っていると、4 曲目のタイトル曲では疾走感あふれる豪快な演奏でねじ伏せられ、5 曲目では、ふと気がつけば、サイケデリックな暴走に巻き込まれている。
6 曲目も、サックスのソフトなソロとエレピによるグルーヴィな演奏がある一方で、吸引力のあるストリングス系シンセサイザーとアコースティック・ギターらによる静かに波打つような曲調が宇宙の神秘を感じさせてくれる。
初期 WEATHER REPORT から高踏趣味・晦渋さをなくしたようなイメージともいえるかもしれない。
「Ju-Ju-Man」(10:04)マシンのようでいて弾力性もたっぷりのジャスト・ビートの上で、ファンキーなソロ回しが続く。
ソロの抑揚よりも、デジタル・ビートといわんばかりに強めにミックスされたリズムに支配されており、テクノ風味すらある。
これはアメリカのフュージョンにはない感覚だ。
「Morning Sun」(5:49)冒頭のレガートなサックスのテーマ、そしてクラヴィネットのビートの上で、ピアノとベースが見せるインタープレイが、きわめてナベサダ/フュージョン・タッチなのだが、どこか異なるニュアンスがある。
モダン・ジャズもしくはロックの孕むスリルが感じられるのかもしれない。
後半、ハードなリズムで、奔放なソプラノ・サックスを歌わせるなど、一ひねりがいい。
ドルディンガーの海千山千的センスに脱帽。
「Blue Aura」(3:02)ピアノとサックスによる神秘の世界。
ピアノのアクセントがおもしろい。
「Infinity Machine」(5:12)思い切ったエレクトリック・ビートに不意打ちを食らい、眩暈を感じる暇もなく、ハードな演奏へと巻き込まれる。
迫力満点、痛快極まるジャズロック。
まさに爆発的なドラムス、ワイルドに変調したエレピのソロがすごい。
サックスだけはいかにもジャズらしいのですが「You」GONG といってもいい内容。
傑作。
「Ostinato」(7:37)エレクトリックなオスティナートに酩酊するスペース・ジャズロック。
透き通るようなシンセサイザーが、ニール・アードレイの作品を思わせる。
終盤 1 分間はディープなサイケ/テクノ。
しかし、テーマは頑固にメロディアスである。
「Contemplation」(6:39)アコースティック・ギターやエレピを用いたメローなナイト・ミュージック風の作品。
シンセサイザーが美しい。
サックスはいつもの通り。
(ATLANTIC 2292-44146-2)