PALLAS

  イギリスのプログレッシヴ・ロック・グループ「PALLAS」 。77 年結成。作品は七枚。ネオ・プログレッシヴ・ロックの草分けグループの一つ。 珍しく GENESIS 系ではない。

 The Sentinel

 No Image
Euan Lowson lead vocals, backing vocals
Graeme Murray vocals, bass, Moog Taurus bass pedals, 12 string guitar, backing vocals
Ronnie Brown keyboards, backing vocals
Niall Mathewson guitars, guitar synthesizer, backing vocals
Derek Forman drums, backing vocals

  84 年発表のアルバム「The Sentinel」。 内容は、ハードできらびやか、感傷的な、いかにも英国らしいシンフォニック・ロック。 YES をぐっとハードロック寄りにして、80 年代産業ロック風味を加えたイメージである。 (同時期の本家 YES の音がここの音よりはるかにポップで明るいところがおもしろい) また、1990 年代以降米国からプログレ・メタルが勃興、隆盛するが、本作品の作風は、その出現前に生み出された孤高のメタリック・プログレということもできそうだ。 センチメンタルな自己陶酔型のメロディやパワーコードは HR/HM 産であり、きらびやかにして退廃ムード漂うサウンドは、ニューウェーヴ、ニューロマンティック路線だが、絢爛大仰にしてリリカルなキーボード(この時期にしては珍しく、パーカッション系デジタル・シンセよりも、金管系の美しいアナログ・シンセ、ストリングス系のサウンドが多用されている)、ヴォリューム奏法と朴訥なアルペジオが得意なギター、ぶんぶん唸るベースラインで取り囲むような演奏は、消そうにも消せない烙印だらけの 70 年代プログレッシヴ・ロックのものである。 ハードロックというか、同時代性というか、やたらと派手なドラム・サウンドも特徴的だ。 軽薄短小気持ち良ければ全て良し時代の BGM となったパンク、ニューウェーヴに色目を使いつつも、初心を思い返してヤケクソ気味にうち立てた反旗は暗黒時代に見事に翻り、後の時代への礎となった。
   アルバムの中核を成すのは、長大な叙事詩「Atlantis Suite」。 YES の大作やアメリカの YES 系プログレ・バンド(STARCASTLE 辺りか)の佳作を連想させる力作であり、率直で力強いメロディ・ラインを多彩なプログレ・クリシェで彩った豊麗なアンサンブルで劇的に、ポジティヴに飛翔する。 終曲の彼岸的盛り上がりは、ジョン・アンダーソンが SEBASTIAN HARDIE に参加した如きである。 また、この大曲だけでなく、前半を固めるキャッチーなナンバーにもどこかトリッキーで尖がったところがあり、プログレ・バンドらしさがよく出ている。 ヴォーカリストがあまりに 80 年代調であることに抵抗がなければ、オールド・ファンにもイけると思います。
   プロデュースはエディ・オーフォード。 84 年のオリジナル LP では、目玉である「Atlantis Suite」が短縮、分断されていたが、2000 年発表の INSIDE OUT 盤では盤構成がメンバーが当初望んだ形に戻されている。

  
(IOMCD 058)

 The Cross And The Crucible

 No Image
Alan Reed vocals, acoustic guitar
Graeme Murray vocals, bass, Moog Taurus bass pedals
Niall Mathewson guitars, acoustic guitar, nylon guitar, tambourine
Ronnie Brown keyboards
Colin Fraser drums

  2001 年発表のアルバム「The Cross And The Crucible」。 実質再結成後の第二作。 内容は、憂鬱で重厚、しかして誠実なる王道シンフォニック・ロック。 荘重なるキーボード・サウンドの城壁に護られ、重く鋭いリズムとしなやかなギターが雄たけびを上げる、勇壮にして人生の悲哀に満ち満ちた物語である。 シンフォニックなプログレ色は、復活作「Beat The Drum」をはるかに上回っている。 アトモスフェリックで厳かなサウンドをロック・ギターが貫くリアリスティックな作風は、東欧の雄、SOLARIS の近作とも共通しないだろうか。 英国ロックらしい陰鬱さが濃密な霧のようにアルバムをおおっており、一部 PINK FLOYD を思わせるところもある。 この陰鬱さの源の一つは、やや声量に乏しいヴォーカリストによる突き抜け感のない歌唱表現であろう。
   6 曲目「Tower Of Babble」はクラシカルなタッチも交え、ややエキセントリックな表情を見せながら変転する傑作。 8 曲目「Midas Touch」は、力の入った歌唱と中近東風のエキゾティックなタッチ、そして堰を切ったように噴き出すインストゥルメンタルが胸を打つ幻想大作。終盤、ENID に匹敵する一大シンフォニック・メロドラマと化す。 この作品には、MARILLIONIQ と同じく YESGENESIS に憧れ、プログレ復権に賭けた男たちの並々ならぬ決意が見える。 終曲「Celebration!」は、人類の営みについて慈愛に満ちたポジティヴなメッセージを送る感動作。いい余韻が残ります。
  
(IOMACD 2024)


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