OSANNA

  イタリアのプログレッシヴ・ロック・グループ「OSANNA」。 71 年 CITTA FRONTALE を母体に、ダニロ・ルスティチとエリオ・ダーナによりナポリにて結成。 同年ミラノ進出、アルバム・デビュー。 断続的ながらも 78 年まで活動を続け、五枚のオリジナル・アルバムを残す。 サウンドは、フォークやフリー・ジャズなど多彩な音楽性をもつヘヴィ・ロック。 陽光眩いイタリアの風土と表裏一体をなす混沌とデカダンスをイメージさせ、人間主義の暗黒面を象徴するようなヘヴィなサウンドである。 リード・ヴォーカルはイタリアン・ロック界では随一。2010 年来日


 L'uomo

 
Elio D'anna flute, piccolo, tenor sax, baritone sax
Lino Vairett vocals, 12 string guitar, harmonica, hammond organ, synthesizer
Danilo Rusici guitar, 12 string guitar, pipe organ, electronics
Lello Brandi bass
Massimo Guarino drums

  71 年発表のデビュー作「L'uomo」。 内容は、アコースティックな音を用いたサイケデリックなヘヴィ・ロックである。 フルートをフィーチュアしたフォーク・ロックから、泥臭いサックスの入ったハードロック、さらにそこへジャズまで盛り込んだ、ミクスチャー感覚あふれるサウンドである。 根底には、ブリティッシュ・ロックを意識したシャープなセンスがあるようだ。 しかし、あえてゴテゴテとした意匠をかぶり、エキセントリックな面を強調している。 ファズ・ギターとフルートのハードな応酬が、いつのまにか 4 ビートのジャズ・コンボへと変化するような、何でもありの意外性の面白さが、本作の肝である。 唯一声量あるヴォーカルの本格的な歌唱が、戯画的な演奏にリアリティを与えているようだ。 ジャケットの邪教的なメーク(中世イベリア半島にムスリム政権を打ち立てたムーア人は音楽を演じる際に顔を塗りたくっていたという)を施した写真から、アングラ演劇風の秘密めいたステージ・アクトも容易に想像できる。

  1 曲目「Introduzione」 エレクトリックなエフェクトを用いたヘヴィなサイケデリック・ロック。 牧歌的なアコースティック・ギターに、オルガンやフルートが加わり、やがて電子音ノイズの叫びへと塗りかえられる。 フルートは、JETHRO TULL も真っ青の野蛮きわまる奇声トーキング・スタイル。 ワイルドで過激ではあるが、オープニングの混沌を経た後は、自己紹介ソロ回しの役も兼ねる。 いきなりの衝撃。

  2 曲目「L'uomo」 イタリアン・ロックらしいフォーキーなバラードが、絶叫型のサックス、ギターとともに次第に崩れてゆく。 序奏では、クラシカルな響きすらあるのだが。 ヴォーカルは、抑えた歌唱にカンツォーネ風の逞しさを感じさせる本格派。 弾き語り風の歌は、男性的にして繊細である。 サックス、フルートともに力量を感じるが、その力み方が異様。 明暗、緩急の展開はきわめて唐突であり、なんとも取りつくしまがない。 終盤のファルセットによる「Osanna」コーラスは、きわめて 70 年代初期の NTV のドラマのイメージである。 ダーナのサックスは二管吹きのようだ。

  3 曲目「Mirror Train」 2 曲目に続く、快調なサイケ・ロック。 ソウルっぽいスキャットのコーラスがなんとも時代がかっているのだが、今聴くとけっこう新鮮かもしれない。 イージー・ゴーイングにして汗臭いゴーゴー・クラブの空気を感じる。 アシッドなギターと舞い踊るフルートをフィーチュアし、ジャズ・コンボへの変貌やエレクトリックなギミックなど、やりたい放題。それでもジャズの演奏は、なかなかいい感じだ。 終盤のギター辺りまでくると、かなり泥酔状態であることに気づく。

  4 曲目「Non Sei Vissuto Mai」 乱調としかいいようのない下品なハードロック。 3 曲目のエンディングのギターが、そのままオープニングとなり、最後に 2 曲目のテーマが復活するため、ようやく 2、3、4 曲目は組曲になっているらしいと判別できた。 内容は、クラシカルなテーマをもち、ジャズ・コンボやハードロックへと変転するプログレらしい作品ということになるのかもしれないが、歌以外はあまりに荒っぽい。 ギターの無茶なセンスには唖然である。 音も悪いが、弾き手の性格はさらに悪そうだ。 それに比べると、管楽器奏者は荒っぽくプレイしているが、意外に正統的。 中盤のスペイシーなパートでは、泥酔した上に感電死しそうである。 太鼓のようなドラムも録音の悪さのせいだけではなさそうだ。

  5 曲目「Vado Verso Una Meta」 ギター、フルートのリフで攻めるブルージーなハードロック。 こちら方面にはあまり明るくないのだが、英国モノの影響を受けた典型的なスタイルである。 なんとなく、ヴォーカルがクリス・ファーロウに聴こえてくる。 間奏の奇妙なユニゾンやハーモニー、カントリー風の演奏など、ヒネリもある。 メイン・パートのような演奏では、かなりオーセンティックな印象だ。

  6 曲目「In Un Vecchio Cieco」 クラシカルなフォーク・ソングが加熱の果てにフリー・ジャズ(初期 CRIMSON か)調の混沌へと突進してしまう怪曲。 イントロはかなりノイジーで波乱含みなのだが、メイン・パートは枯れた風情に色気の漂うフォーク・タッチである。 このままゆけば、なかなか聴きやすかったのだが、中盤からは大混乱となる。 思い切った構成による面白い試みだが、前半はそのまま別の曲にした方がよかった。 イントロは、やはり来るべき波乱を告げていたのだ。

  7 曲目「L'Amore Vincera' Di Nuovo」 ロマンチックな「静」と激しい「動」が対比するバラードの傑作。 どんなにヘヴィな音でも、根本には弾き語りがあると納得させてくれる。 この人たちは、素面だとこんなにいい曲が書けるのだ。 やはりただの泥酔ロックではない。 おだやかなテーマ部のヴォーカルは英語であり、それもほとんどネイティヴと区別がつかない。 このヴォーカリストは、やはりただならぬ逸材である。 笑い声に包まれる最後は、真面目に終わるのがテレ臭いのかもしれない。 名曲です。

  8 曲目「Everybody's Gonna See You DieHAMBLE PIEFREE のように、粘っこくもタイトで切れのいいロックンロール。 ワイルドなギター・リフ、レイ・チャールズのバンドのようなサックス。 ハイトーンのシャウトやレイド・バックしたムードなどは、ややアメリカ風かもしれない。 ヴォーカルは英語。

  9 曲目「Lady Power」 英国ロックの影響色濃いブルーズ・ハードロック。 とりあえず、LED ZEPPELINDEEP PURPLEFREE など有名グループの持ちネタをきちんとカヴァーしている。 サビをコーラスで決めるあたりもニクい。 ここまで最後の 3 曲は、きわめて高品位のブリティッシュ・ハードロックである。 荒っぽい音にも、かかわらず音楽的なセンスは P.F.M に匹敵。 最後の輪廻は意外でした。


  荒々しいファズ・ギター、けたたましいフルート、野性味あふれるサックスをフィーチュアした、エキセントリックなロック。 ダークなリフで一丸となって突進するヘヴィネスと、思考停止なサイケ色が入り交じったところが特徴だ。 下品なギターの音に、サイケデリック・ロックからハードロックへ移ろうかという時代の流れも、垣間見える。 それでも初めの組曲や 7 曲目には、邪悪なイメージを強調した独特の神秘的な空気が感じられるし、壊れ気味ながらも音楽的な大胆さをもつ 6 曲目などには、あふれんばかりの個性がある。 サイケ馬鹿ではなく、爆発的な才能が勢いあまってしまった、と考えるべきだろう。 特に最後の 3 曲は彼らのセンスを証明している。 また、明確かつ叙情的なアコースティック・ギターのプレイや、ワイルドな熱気の中でも伸びやかなヴォーカルとコーラスが映えるところなど、イタリアン・ロックの醍醐味もちゃんとある。 素朴な弾き語りを原点に、思い切り誇張してゆがませてしまったのがこのサウンドなのかもしれない、という思いにもとらわれる。 ものすごい熱気が、時代を越えて吹き荒れる作品だ。 外人はコワいです。

(FONIT CETRA CDM 2037)


 Milano Calibro 9

 
Elio D'anna flute, piccolo, tenor sax, baritone sax
Lino Vairett vocals, 12 string guitar, harmonica, hammond organ, synthesizer
Danilo Rusici guitar, 12 string guitar, pipe organ, electronics
Lello Brandi bass
Massimo Guarino drums
Luis Enriquez Bacalov Arrangement & Direction

  72 年発表の第二作「Milano Calibro 9」。 同名映画のサウンド・トラックであり、その内容は、狂乱するフルート/サックス、アシッドなギター、ワイルドなリズム・セクションによるサイケデリックなハードロックと、ルイス・エンリケ・バカロフによる美麗極まる弦楽オーケストラを合体した、バロックな構築物である。 劇伴の常か楽曲が細切れであるため、圧倒的な質感、迫力というわけにはいかないが、濃厚過激な世界を十分に垣間見ることができる。 奇怪なギター・リフ、野太く荒れ狂うサックス、ノイジーでペラペラなキーボードが生み出すギトギトの演奏と、ヨーロピアン・エレガンスを体現する流麗華美なヴィヴァルディ調ストリングスのテーマが錯綜する展開は、いわゆる「クラシックとロックの融合」などという生やさしい表現では、到底物足りない。 失神しそうな乱調美の極致である。 相反する音が化学変化を起し、苛烈にして豪奢という、きわめてアンバランスな世界ができている。 存在感が強いのは、よくも悪くもギター、そしてフルートだろう。 特にギターは、リリカルで味のあるプレイや衝撃的な音を見せる一方で、安易なブルーズ・ロック/ハードロック調にも平然と堕ちこんでしまう。 この節操のなさは、さすがである。 また、変化の多い曲調を、多彩にして安定したプレイで支えているドラムスも見逃せない。 音も、イタリアン・ロックにしてはうまく録れている。 もっとも、個々のプレイよりも、アンサンブル全体の調子や勢いで聴かせるタイプの音なので、あまり初めから細部に拘泥する必要はないだろう。 まずは、呆気に取られて、この勢いに押し切られるのが、正しい聴き方かもしれない。
  2 曲目のように、シンセサイザーがかそけき管楽器のようにリードを取ってストリングスがぐっと盛り上げる場面や、英語のヴォーカルによる 3 曲目と終曲は、やや古めかしいものの、THE MOODY BLUES など初期の英国プログレの手法を、みごとに消化している。 4 曲目のヴォーカル・ハーモニーも、イタリアというよりは英米の音に近い。 また、ジャジーで隙間の多い即興風の演奏には、KING CRIMSON などの影響が感じられる。 したがって、後に、英国ロックの潮流とともにジャズロック志向へとつながってゆくのも、また、むべなるかなである。

Prelude」(4:10)ストリングスと下品なバンドが真っ向衝突する。

Tema」(4:50)ギターによるマカロニ・ウェスタン風のテーマ。隙間風のように寂しげなシンセサイザーが特徴的だ。

Variatione 1」(2:15)KING CRIMSON 直系の 8 分の 6 拍子、どうしようもなく荒っぽいギターと泥酔したメル・コリンズのようなサックスで迫る。下品な KING CRIMSON

Variatione 2」(4:58)フルート、ヴァイヴによる幻想を序章に、シンセサイザーが力強く歌い上げるかと思えば、パストラルな弾き語りに変貌する。FAIRFIELD PARLOUR のような英国フォークロックを思わせる演奏である。終盤、ギターが大きくフィーチュアされると、SMALL FACES のような感じになる。

Variatione 3」(1:38)トーキング・フルートをフィーチュアした悪夢的、錯乱気味の作品。

Variatione 4」(1:31)壊れたハードロック。

Variatione 5」(2:10)ストリングスとシンバル、バスドラの呼応。

Variatione 6」(2:49)きらびやかなヴァイオリンのトリルに応じるワイルドなドラムス、そして炸裂するギター。タメのないメタリックな調子は BLACK SABBATH のイメージである。 やおらエレクトリック・サックスとギターによるジャジーなデュオに変貌し、終盤は狂った KING CRIMSON と化す。

Variatione 7」(1:28)モダン・ジャズ風のリズムでファズ・サックスが吼える。後半、細かいリズムによるリフが提示されると、一気にノイズが爆発に。

Canzona」(4:54)ピアノ伴奏、メロディアスなヴォーカルをフィーチュアしたロマンティックな歌もの。ヴァイレッティのヴォーカルに酔う。狂おしいサックスと弦楽奏が鮮やかにオーヴァーラップ。 英語。

(K32Y 2115)


 Palepoli

 
Danilo Rustici guitars, organ, vocals
Elio d'Anna sax, flute, piccolo, vocals
Lello Brandi bass, bass pedai, guitar
Lino Vairett vocals, 12 string guitar, mellotron, synthesizer
Massimo Guarino drums, percussion, vibraphone, bell, vocals

  73 年発表の第三作にして最高傑作「Palepoli」。 内容は、怖気立つような邪教的エキゾチズムが爆発するヘヴィ・ロック。 風土と精神の暗黒面のパワーを注ぎ込まれた近代音楽の奇怪な混血は、歴史と日常に封印された、あらゆる禍々しいものを白日の下へと解き放ち、底知れぬほど暗く、限りなく捻じ曲がった奇形児を生み出した。 OSANNA は、喜怒哀楽をデフォルメする歌、電気の呪術を媒介するギター、声よりも肉感的なサックスらを総動員し、音を暗黒の坩堝で煮えたぎらせ、ロックの可能性を暴力的に押し広げた。 作曲からアレンジ、制作まで全てメンバーの手になる野心作である。 ユーロ・ロックの代名詞の一つといえる傑作である。 その強烈なインパクトは、一度耳にすれば納得がいくだろう。

  「Palepoli - Oro Caldo」(11:21) この異様なオープニングを聴いて、誰がポップ・ミュージックだと思うだろう。 まるで、怪しげな宗教儀式のようではないか。 この異教の呪文のような響きを導入部として、奇妙な哀感を漂わせつつ、ドラマは幕を開ける。 そして、音楽が始まったときには、すでに泥沼のような祝祭の真っ只中に放り込まれており、電気の嵐で全身を震わせなければならない。 特徴的なのは、ヒステリックに切りかわる動と静。 狂ったような「動」に対して、「静」の部分に、むきだしの切なさと弱々しさがあるところも興味深い。 ヴォーカル、フルートともに、叙情的というには、あまりに繊細な素顔を見せるのだ。 にもかかわらず、ひとたび動き出せば、演奏はあっという間に命がけの全力疾走となり、サックスに象徴されるように、毛穴から血が噴き出しそうな勢いで力み返る。 厳かな祈りのようなメロトロンですら、狂気で膨れ上がったアンサンブルに蹴散らされてしまう。 フルート、ギターも、発狂したとしか思えない勢いで、竜巻のように暴れまわる。 これは、宗教儀式におけるトランス状態に近いのかもしれない。 それでも、このバーレスクまがいの儀式を執り行う男たちには、明確な意図と意識がある。 パート 1 のエンディングに向けて、狂熱のアンサンブルが電気の魔力を放埓に撒き散らし、あたかも疫病のように猛威を振るう。 恐るべきイントロダクションである。 シャフルのタランテラに満ちる、陽気というよりは泥酔したような調子、バラードにおける切実な説得力など、すべてがパノラマのように過ぎ去りながら、強烈な印象を残してゆく。

  「Palepoli - Stanza Citta」(9:01) このオープニングは、不思議なことに、エンディングを幾度も繰返しているようにも聴こえる。 この逆説的な幕開けは、全体を象徴である。 ギターのコード・ストロークを経て、クラシカルな歌が流れ、ようやく曲としての体裁が現れる。 しかし、間髪いれずに、攻撃的で無秩序な演奏へと発散する。 いや、発散というよりも、奈落へ堕ちてゆくような演奏だ。 スリリングなリフレインすら、フリージャズのクライマックスのようなプレイへと飛び散ってしまうのだ。 アコースティックなヴォーカル・パートへの回帰や、壊れたメリーゴラウンドのようなアンサンブルへ突入するなど、展開は予断を許さない。 一瞬たりとも、息をつき、身を委ねる場所はない。 短いモチーフが次々と繰り出され、振り回されているうちに、物語は結末を迎える。 そして、パート 1 の序章の儀式が繰返されるのだ。 最後の叫びが消えてゆくと、どうしようもない疲労とたまりにたまった闇雲なエネルギーが、身体をほてらせる。 狂気と邪悪、そして、人間の抱えた暗黒に一歩踏み込んでしまったような、後味の悪さだけが残る。 細部までゆるぎなく緻密であり、それでいて、全体像は狂人の意識の断面のように、猥雑でどこにも焦点がない。 それでも音が飛び散らずにいられるのは、すべてこの未曾有の狂気のエネルギーが縛りつけるからである。

  「Animale Senza Respiro」(21:33) フリージャズの手法とエレクトリックな効果音を駆使して、リスナーを禍々しい世界へと追いたて、邪悪の洗礼を浴びせる恐るべき音楽である。 息もつかせぬようなフレーズをマニアックにたたみかけ、邪念の奔流の如き暴力的で理不尽な展開で、引きずりまわす。 サックスとギター、ドラムによるパワフルで緊密なコンビネーションが、これだけ恐るべき演奏となるのも珍しい。 なんといっても最大の魅力は、先行きを全く予期できないスリルだろう。 そして、時おり現れるアコースティックなヴォーカル・パートが、かろうじて一筋の光明となり、白魔術的なフルートのメロディが、つかの間の安息となる。 しかし、ふと気づけば、再び抜きさしならぬ混沌に足を踏み入れてゆくことになる。 もう遅い、嵐のように牙をむいて襲いかかってくる音を立ち尽くして待つのみだ。 サディステックな演奏のもつ真の恐怖は、直接的な衝撃/威嚇だけではない。 哀れみのフルートの調べに、この猛り狂う演奏は実はわれわれの心の鏡像なのだ、というメッセージを読み取ったとき、リスナーは改めて恐怖に慄然とすることになる。 恐るべき音楽である。 メロトロンからこぼれ落ちる叙情は、すでに幾人もの人間が喉を潤しており、次の一滴は残っていないかもしれない。 全ては、人間を哀れむ歌なのだ。 本作は、「Palepoli」から宗教という意味を剥ぎ取り、さらに根本へと推し進めたものではないか。 ロックという化け物に、餌を与え続けた結果の産物かもしれない。


  風土と人間のもつ歴史的な暗黒を強烈にイメージさせる傑作。 彼らは様々な音楽をひきちぎってロックに放り込み、多面的なイメージを喚起するフリー・フォーマットなロックを生み出そうとしたようだ。 現代音楽は、その実験性の影響範囲がアカデミズムの世界に限定されていた。 しかし、時代の熱狂を孕み広範な影響力をもつロックに、マニエリスティックな変革を強引に持ち込んで作られたこの作品は、おそるべき即効力で、同時代の人々に強烈なイメージを突きつけ、様々なリアクションを促し、問題意識をかきたてたであろう。 定型/様式化する前のロックが持っていた不気味な力を弄んだ結果、恐るべき原始の怨念を甦らせるとともに、人間のクリエイティヴな側面にも、大いな刺激を与えたに違いない。 前衛ロックとして突っ走りながらも、ルネッサンスのイタリアらしくテーマはあくまで人間の営みである。 イギリス以外のヨーロッパのロックの中で一、二を争う問題作。 必聴。

(KICP 2703)


 Landscape Of Life

 
Danilo Rustici guitars, organ, vocals
Elio d'Anna sax, flute, piccolo, vocals
Lello Brandi bass, bass pedai, guitar
Lino Vairett vocals, 12 string guitar, mellotron, synthesizer
Massimo Guarino drums, percussion, vibraphone, bell, vocals

  74 年発表の第四作「Landscape Of Life」。 本作発表時、グループは、すでに活動休止状態にあった。 本作では、毒々しいサックスと耽美なフルートは冴えるものの、肉感的で熱狂的なプログレ色は後退する。 どちらかというと、パストラルかつシンフォニックなバラードや DEEP PURPLE ばりのハードロックといったオーソドックスなスタイルが基本になっている。 OSANNA らしい粘っこく酸味があってワイルドなサウンドを聴くことができるのは、メロトロンが使われた 1 曲目くらいだ。 他は、さまざまなしかけはあるものの、基本はハードロックとバラードで占められている。 ギターの音もかつての乱調サウンドとは異なる、洗練された、ディレイ付きのへヴィ・ディストーション・サウンドになっている。 それでもさすがなのは、アコースティックな歌パートがすばらしいところだ。 フルートも歌を受けとめるときの繊細な表情がいい。 最終曲では、のどかなフォークロック調が一陣のつむじ風とともにシンセサイザーとメロトロンに支えられた華麗なエンディングを迎える。 ヴォーカルが一部英語であるなど英国ロックの影響が見られるのは、本作録音前に、ルスティチとダーナが渡英して「UNO」を作っていたせいだろう。 ただし、作風がブリティッシュ・ロック調になっても、独特の生々しさや官能性といった危険なエキスが染み出しているのもまた事実である。 イタリアン・ロック恐るべし。 本作を最後に、75 年、OSANNA は解散する。 各曲も鑑賞予定。

Il Castello Dell'es」(8:55)ドロドロの OSANNA 節全開の傑作。
Landscape Of Life」(6:00)
Two Boys」(3:43)DEEP PURPLE にサックス、フルートを加えたようなハードロック。「Fireball」ですな。
Fog In My Mind」(7:45)PROCOL HARUM ばりのオルガン、歌唱で迫る感動の序章から、テクニカルかつ情熱暴走気味の「らしい」演奏に変転する力作。パーカッションもフィーチュア。
Promised Land」(1:32)これはダニロがメイン・ヴォーカルでしょうか。弾き語りフォークプラスサックス。
Fiume/Somehow, Somewhere, Sometime」(8:20)パストラルなフォークロック。ヴァイレッティの歌がすばらしい。

(FONIT CETRA CDLP 424)

  その後、ダニロ・ルスティチとエリオ・ダナは、平行して活動していた NOVA に力点を移し、英国のミュージシャンとともに活動を始める。 一方、マッシモ・グアリノ、リノ・ヴァイレッティは、CITTA FRONTALEを結成、アルバム一枚を残す。 そして 77 年、OSANNA は再々結成し、「Suddance」を発表する。


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