OPUS-5

  カナダのプログレッシヴ・ロック・グループ「OPUS-5」。 70 年代のグループ。 アルバム一枚で解散している。 89 年、未発表曲集が発掘さる。 ピアノとフルートを用いたクリアな音色の演奏が特徴。 フュージョン風味もあるフランス語シンフォニック・ロック。

 Contre-Courant

 
Olivier Duplessis keyboards, vocals
Luc Gauthier guitar, vocals
Serge Nolet flute, vocals
Christian Leon Racine bass, vocals
Jean-Pierre Racicot percussion, vocals

  76 年発表のアルバム「Contre-Courant」。 タイトルは「逆流」の意。 内容は、クールな叙情性と切れのいいプレイを特徴とする、クラシカルなシンフォニック・ロック。 技巧的なアコースティック・ピアノと、細かいロールを多用するドラムを軸としたアンサンブルに、メローなポップス風ヴォーカルを乗せ、フルートでファンタジックな味つけをしたスタイルである。 豊かな音色のピアノが、ソロもアンサンブルも、完全に演奏を仕切っている。 ギターも、不協和音を用いたソロやファズを活かしたプレイを決めてゆく。 ピアノが秩序維持とすると、ギターはかき回し役に徹しているようだ。 ただし、3 曲目冒頭のように、アコースティック・ギターのプレイではクラシカルで本格的な腕前を見せている。 ドラムスは、ほんの少しリズム感に難があるようだが、やや性急なマイケル・ジャイルスか抑え目のフリコ・キリコ、といった感じ。 ジャズ風のドラミングであり、小刻みなロールが特徴的だ。 全体が甘くなり過ぎないのは、ひとえにこのドラムスのおかげである。 そして、エレガントなフルート。 存在感があるにもかかわらず、繊細なニュアンスを失わない理想的な演奏である。 このフルートを用いた静かな演奏と、せわしなく刻み動き回る演奏との対比が、アルバムに深みをつけている。 またフランス語のヴォーカルがユーロ・ポップ独特の翳りと感傷をもっているのもいい。 安定感、緻密さという意味では、あと半歩という感じの演奏ではあるが、一瞬の切れ味や刻々と表情を変えてゆくインストゥルメンタルは、かなり面白い。 同じフランス語プログレでも、明確なモダン・ジャズ色、クラシック色が突出している分、ATOLL ほどテクニカルかつポップにこなれた感じはない。 むしろ、イタリアン・ロック風のせわしない曲調の変化が繰返され、その忙しい変化とフランス風ポップスの合体したプログレッシヴ・ロックといえるだろう。 透明感あふれるストリングス・シンセサイザーに代わってメロトロンが入れば、百点満点だったかもしれない。 ケベックのグループらしくヨーロピアンです。

  「Le Temps Des Pissenlits」(9:11) 渦巻く強風と不気味なコラールから始まる作品。 クラシカルなピアノ、フルートによるファンタジックなアコースティック・デュオから、リズミカルで緊張感のあるイタリアン・ロック風のアンサンブルへと展開する。 アコースティック・デュオもスピード感あふれる演奏を見せ、ムーグ・シンセサイザーと巧みに反応しあう。 その緊張と対照するのが、中盤から入ってくる、いかにもフレンチ・ポップ・タッチの歌メロとハーモニー。 そしてピアノの華麗なるオブリガート。 演奏は、ジャズからクラシカル・タッチまでせわしなく変化する。 ドラムスは、フィルで煽り刻み捲くる。 ストリングス・シンセサイザーも要所で奥行きを演出する。 ソフトなヴォーカルをファンタジックなインストゥルメンタルで取り巻いた作品。 70 年代イタリアン・ロックをフランス語で歌っているという表現がピッタリくる。

  「Il Etait Magicien」(11:53) ジャジーで変化に富む作品。 ギターのアルペジオ、コード・ストロークとフルートによるおだやかなアンサンブルに、ピアノ/フルート主導のテクニカルでスピード感のある演奏を組み合わせている。 ファンタジックな雰囲気を維持しつつ、変拍子アンサンブルなども用いて、自由な曲想で飛び跳ねる。 やや崩れ気味ではあるがジャズ・フュージョン風の演奏もある。 タイトルからの連想か ATOLL 風にも感じられる。 しかしジャジーなプレイを中心に次々と変転する演奏は、やはりイタリア風というべきかもしれない。 エンディングの幻想的な演奏は GENESIS 風。 イタリアン・ロックほどは破綻のない、過激な変化が売りの作品。

  「Les Saigneurs」(9:15)クラシック・ギター独奏による序章。 そしてフルート、ピアノ、ヴォカリーズから成るクラシカルなアンサンブルが走り出す。 細かく刻むスネア・ドラムにぴったり合わせて、演奏は自由自在に走ったり止まったり。 ムーグのオブリガート。 コラール、不協和音、突然のランニング・ベース、せわしないユニゾンなど次々と飛び出すアイデア。 ビジーなトゥッティとトラッド調のコーラスのかけあい。 なんとも忙しい展開だ。 終盤に現れるヴォーカルはロマンチックだ。

  「Le Bal」(6:42)チェンバロ、コーラス、フルートが美しい叙情的な作品。 メロディアスなヴォーカル・パートと対比するように、マーチ風にたたみかける演奏が挿入される。 前半はクラシカル・タッチであり終盤はジャズ。 アンサンブルは YES 風。 ギター、フルート、ストリングス・シンセサイザーのプレイには、ラウンジもしくはイージー・リスニング調のノスタルジックな響きもあり。 ふっと途切れるエンディングがすごい。

  「Contre Courant」(3:53)クラシカルでねじくれたプログレらしい小品。 コラールで幕を開けるも、すぐにピアノのオスティナートとギター、フルートによる傾いだようなアンサンブルが緊張感を高める。 またもや、イタリアン・ロック風ということだ。 エレガントな演奏とせわしない演奏がくるくると変転する。 ピアノがエマーソン風だなと思っていると、突如ハモンド・オルガンも唸り出し、瞬間 EL&P

 Serieux Ou Pas

 
Olivier Duplessis keyboards, vocals
Luc Gauthier guitar, vocals
Serge Nolet flute, vocals
Jean-Pierre Racicot percussion, vocals

  89 年に発表された未発表曲集「Serieux Ou Pas」。 第二作として録音されるも、未発表であった幻の作品である。 内容は、カンタベリー調の軽やかなジャズロック。 ユーモラスで余裕のある、暖かくも爽やかなサウンドである。 作風は、ファンキーなジャズロックからフォーク・タッチのアコースティックな歌ものまで多彩であり、アルバムは完成度の高い作品の詰め合わせである。 全体に習作というレベルではなく、確かにアルバム用の作品というイメージである。 演奏は、テクニカルなキーボード(ピアノ、エレピを多用)とフルートがリードする。 ベースは、クレジットからもれているようだが、音は聴こえる。 歌もののまろやかな感触は、HARMONIUM に近い。 さらに個別に楽器を味わってみよう。 ファズ・ギターは、フィル・ミラー風。 存在感抜群のピアノは、なぜかエマーソン風。 そして、フランス語ヴォーカルの響きが、エキゾチックな味わいを強める。 ヴォカリーズが女性ならば、さらにカンタベリー調になったかもしれない。 曲は最長で 6 分少し。 前作よりも全体にジャズ色強しと感じるのは、エレピの割合が高いせいだろう。


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