NUOVA ERA

  イタリアのプログレッシヴ・ロック・グループ「NUOVA ERA」。 85 年ウォルター・ピニを中心にフィレンツェにて結成。 EL&P の影響を強く受けているそうだ。 88 年アルバム・デビュー。 キーボードを駆使したアグレッシヴなサウンドは 70 年代イタリアン・ロック直系。 2010 年新録音を交えた新作発表。うれしい。

 Nuova Era

 
Walter Pini keyboards
Guglielmo Mariotti bass, guitar
David Guidoni percussion
Gianluca Lavacchi drums on 4-9
Claudio Rogai bass on 4,6
Riccardo Vello voice on 4
Ivan Pini words on 4,5
Alex Camaiti voice & guitar on 5, 7-9
Enrico Giordani bass on 4, 7-9
guest:
Alessandro Papotti sax on 1
Salvo Lazzara guitar on 2

  2010 年発表の作品「Nuova Era」。 企画盤への提供曲 3 曲、既発曲のヴァージョン違いとリアレンジ計 3 曲、87 年のライヴ録音 3 曲から構成される作品である。 とにもかくにも久しぶりのコテコテ・キーボード・プログレ、黙って聴いてしみじみできる、いい内容である。 特に、ダンテをテーマとしたフィンランドの企画盤への提供曲(新曲)、これがカッコいい。 唸りを上げるハモンド・オルガンと呪文のようなムーグ・シンセサイザー、哀愁を吹き上げるメロトロン・ストリングスと重厚なピアノ。これに荒ぶるベースも加わって、ワイルドにして高潔なるアンサンブルを繰り広げる。 再録音も大作を選んでいる。 みずみずしく充実した演奏だ。

  「Torilogia Dantesca」ダンテ・トリロジー。
      「Lasciate Ogni Speranza...Voi Ch'entrale(Lucifero) - Inferno」(6:17)「地獄篇」。
      「Canto xii - Purgatorio」(6:41)「煉獄篇」。
      「Canto ii - Paradiso」(6:22)「天国篇」。
  「Dopo L'infinito」(17:45)第二作収録の大作。リメイク版。
  「Io E Il Tempo」(14:28)第三作収録曲。デモ版。
  「L'ultimo Viaggio」(3:54)第一作収録曲。スイング・ジャズ版。
  「Cattivi」(6:33)ライヴ録音。第一作収録曲。
  「La Tua Morte Parla」(10:33)ライヴ録音。第一作収録曲。
  「Epilogo」(3:04)ライヴ録音。第一作収録曲。

(AMS 187 CD)

 L'ultimo Viaggio

 
Walter Pini organ, synthesizer
Alex Camaiti guitar, vocals
Enrico Giordani bass
Gianluca Lavacchi drums
Ivan Pini words

  88 年発表の第一作「L'ultimo Viaggio」。 どたばたなリズムに難あるも、ギターとキーボードのクラシカルなアンサンブルや挑戦的なキーボード・ソロなどに 70 年代ロックへの憧れが感じられる痛快作である。 JETHRO TULL のようにヘヴィなギターが突然ポルタメントしてスティーヴ・ハケットばりにわななくなど、リーダーのピニは否定しているようだが、英国ポンプ・ロック・ムーヴメントの影響もあるようだ。 また、ヴォーカルはイタリア語であり、少年のような若々しく甘めの声質である。 狙っていると思われるミステリアスな雰囲気を出すには、やや重みに欠けるが、これはこれで魅力がある。 しかし、なんといってもユニークなのは、主役である EL&P をチープにしたような八方破れキーボードの存在である。 シンセサイザーもオルガンもアナログ・キーボード風ではあるがみごとに音が薄っぺらい(キーボードが主役なので特にそう思うのだが、全体に製作にさほど手をかけていないということだろう)。 それでも、ためらいなくクラシカルで勇ましいフレーズを放って前面で暴れまわる。 アンサンブルはよろめいているが、各人の意気込みのおかげで傾いだままながらも突進している、そういう感じである。ポンプでキーボード主体というと初期の CAST 辺りが思い浮かぶが、この未成熟な感じと性急な感じはまさに遠からずである。 音のチープさなぞあふれる情熱と若さがふっ飛ばす、という勢いはある。 そして、技術面で問題を抱えながらも、それに頓着せず、大仰で劇的な展開を繰り広げてゆく。 そういう大胆さ、能天気さまで含めて、全盛期のイタリアン・ロック風だ。 6 曲目のリリシズムには、ポンプとは到底かたづけられない、イタリアン・ポップス王道のフィーリングが感じられる。

  「Eterna Sconfitta」(5:34)
  「L'ultimo Viaggio」(12:55)堂々と歩む力作。
  「Cattivi Pensieri (I)」(2:13)
  「Cattivi Pensieri (II)」(3:22)
  「La Tua Morte Parla」(9:14)起伏ある展開に加えて神秘性、邪悪さも演出する、比較的まとまったシンフォニック作品。
  「Ritorno Alla Vita」(4:55)クラシカルでエレガントなイタリアらしい歌もの。
  「Epilogo」(4:55)

(CONTE 122)

 Dopo L'infinito

 
Walter Pini organ, synthesizer, piano
Alex Camaiti guitar, vocals
Enrico Giordani bass
Gianluca Lavacchi drums
Ivan Pini words

  89 年発表の第二作「Dopo L'infinito」。 内容は、70 年代テイストあふれる、エネルギッシュかつ情感豊かなキーボード・ロックである。 前作からの飛躍的な進歩は、1 曲目のテーマとなる旋律を耳にすれば歴然である。 情熱的なメロディとパワフルで怪しげな演奏がバランスよくかみ合い、バタバタ感を意識させない、自然で安定した語り口が生み出されている。 フレーズやサウンドもじっくりと練られているのだろう、一度聴いただけで耳に残るものが多い。 これは、丹念な作曲/アレンジの研鑽の賜物であり、製作面に力を注いだ結果だろう。 EL&P ばりの押し一辺倒から GENESIS 風のアンサンブル志向にシフトしている、というのもあるかもしれない。 モダン・プログレの文脈では圧倒的な技巧、音圧や刺激の強さを売りにする作風が主流となるなか、簡にして素朴、なおかつ華もあるという作風は、新鮮である。 キーボードは、今回もハモンド・オルガン、ピアノ、アナログ・シンセサイザーで変拍子を交えたプレイを連発、MUZEO ROSENBACHBANCO を思わせるクラシカルかつ重厚、そしてどこか親しみやすい語り口で、ぐいぐいと押し進んでくる。 特に、二番目の組曲の第二楽章のキーボード・プレイはかなりのもの。 たたみかけるようなソロから逸脱調の展開まで、めまぐるしくも巧みな語り口でストーリーを紡いでいる。 ギターもキーボードに負けず凝ったフレーズを繋ぎ合わせてめまぐるしい動きを見せている。 荒っぽい音が目立った前作とは打って変わった感じである。 ゴリゴリの押し捲りと無常感漂うバラードを交錯させながら、ときにクラシカルに、ときにスペイシーに迫るとくれば、もはや降参するしかないでしょう。 とにかく、いわゆるプログレらしさはてんこもりです。 英国寄りの音が多い中、大健闘の正統イタリアン・プログレ後継者。 バロックな輝きを放つ逸品です。

  「Dopo L'infinito(時空の果てへ)」
    「Nel Nulla(誕生前夜)」(4:34)
    「Odissea(オディッセア)」(2:48)インストゥルメンタル。
    「Tra Te Stelle(星の物語)」(1:45)インストゥルメンタル。
    「Dentro Tignoto(未知空間)」(8:43)
    「Rassegnazione(失望の時)」(2:53)インストゥルメンタル。
  「Pianeta Trasparente(透明の惑星)」
    「Ai Margini Dell Olimpo(オリンポスの縁)」(5:18)
    「Miraggio Cosmico(蜃気楼)」(9:50)
    「Scomparendo Nell'addio(消えゆく幻想)」(7:44)

(KICP 17)

 Il Passo Del Soldato

 
Walter Pini keyboards
Claudio Guerrini vocals
Enrico Giordani bass
Gianluca Lavacchi drums
Ivan Pini words

  94 年の第四作「Il Passo Del Soldato(兵士の行進)」。 内容は、90 年代の作品ということがにわかには信じられない正調 70 年代風キーボード・ロック。 前作まで在籍したギタリスト兼ヴォーカリストが脱退し、より声量ある専任ヴォーカリストが加入した。 演奏の中心はこのヴォーカルとオルガン/ムーグ・シンセサイザーであり、勇壮にして神秘的、邪悪にして崇高というキーボード・シンフォニック・ロックの典型ともいうべき世界が繰り広げられる。 古めかしくもパーカッシヴで勢いのあるハモンド・オルガンがたたみかけ、ベルカントで伸びやかに歌い上げれば、往年の BANCOを、より EL&P 寄りにした世界が広がる。 ヴィンテージ・キーボード群は、音色だけではなく呼吸やタイミングなども含めて、心憎いまでにキーボード・プログレ・ファンのツボを押してくる。 武骨ながらもサービス精神旺盛なリズム・セクションも格段の進歩といえるだろう。 どの曲も中心となるメロディ・ラインがしっかりしているため、アクセスしやすいという強みもある。 タイトルと冒頭の軍靴の響きから想像するに、戦争を主題としたトータル・アルバムと思われる。 ヴォーカルはイタリア語。 EL&P ファンにはお薦め。

  1曲目「All'ombra Di Un Conflitto(紛争の影)」(6:42)は勇壮なマーチ。 軍靴の響きとともに、マーチング・スネアが響き渡り、メロトロンが不安げな旋律で盛り上げる。 繰り返しの部分でメロトロンにハモンド・オルガンが重なり、金管風のシンセサイザーがオブリガートするキーボード・ロックならではのカッコよさ。 メロトロンとシンセサイザーの提示する旋律を、レスリーでひずんだハモンド・オルガンが食いつくようなフレーズで塗りかえると、伸びやかなヴォーカルが始まる。 豊かな声量とサスティン。 重量感のあるドラミングとハモンドの取り合わせもいい。 ややゆったり目のテンポがいい感じだ。 2コーラス目では、またもシンセサイザーがファンファーレ風のオブリガートする。 ヘヴィなハモンドのリフから 8 分の 6 拍子へと変化し走り出す。 この緊迫感がたまらない。 ヴォーカルは一際高々と力強く歌い上げ、4 拍子へ戻るとともに、メロディアスな余韻を響かせる。 二重の意味でクラシックな、正統キーボード・プログレである。 細かいところに気を配った流れがうれしい。

  2曲目「Lo Spettro Dell'agonia Sul Campo(不惑の幻想)」(7:28)は、16 分の 6+7 拍子で挑発的な音のシンセサイザーのリフが高鳴る、スリリングなオープニング。 オルガン、チェンバロ、ドラムも重なって、演奏は一気に走り出す。 シンセサイザーがオクターヴを駆け上がり、ムーグとオルガンが不気味に数回決めを轟かせると、ヘヴィなオルガンがリードする演奏へと変化する。 オルガンが一歩引くと、巻き舌ヴォーカルが勢いよく歌いだす。 オブリガート、伴奏はオルガンだ。 2 コーラス目はムーグも伴奏で暴れる。 間奏は、8 分の 6 拍子のムーグのリフにオルガンがゆったり重なる。 再び粘っこいヴォーカルとオルガン。 オペラ風の巻き舌が面白い。 今度の間奏は凶暴なオルガン・ソロ。 続いてファンファーレ調のムーグ。 オルガンが湧き上がり、シンセサイザーを押し上げる。 たたみかけるオルガン、ドラム。 オルガンからシンセサイザーの大見得。 最後はオープニングの過激なリフが復活、オルガンがたたみかけ、メロトロンが哀愁の旋律を響かせる。 ミドル・テンポながらも、ぐいぐい力強く突き進むハモンド・オルガンと金管を思わせるムーグがすばらしい作品。 同じテーマを楽器を変えて繰り返すなど、ここでも細かなアレンジが活きている。 変拍子リフはもはや常套句と化す。

  3曲目「La Parata Dei Simboli(軍隊)」(3:00)は、エチュード風ながらも素朴な美しさのある、切ないピアノ演奏から始まる。 テーマは、ピアノからトランペット風のムーグとストリングス・シンセサイザーのデュオへと引き継がれる。 リズムはマーチング・スネア。 さらになめらかな音色のシンセサイザーも重なって、三声のアンサンブルとなる。 転調し変調したオルガンがテーマを引き継ぐ。 そして、オルガンとムーグのアンサンブルによるテーマ演奏から、オルガンはフリーなソロへ。 再びテーマ演奏へとまとまり、激しいドラムとともにリタルダンド、悠然たるエンディングへ。 様々な音色で重なりあうシンセサイザー・アンサンブルによるテーマ演奏から、ハモンド・オルガンのアンサンブルへと移り、やがて、それぞれが交互にメロディと伴奏を取り合う展開部へと進む巧みな構成。 地味だが、メロディアスなテーマをもち丹念に作られたクラシカル・ロック・インストゥルメンタルである。

  4曲目「Il Passo Del Soldato(兵士の行進)」(12:13) ロマンティックだが、練習曲のような素朴なソロ・ピアノによるイントロダクション。 一転して、凶暴なハモンド・オルガンとドラム・ビートが、行進を始める。 高鳴るシンセサイザーのテーマ、支えるオルガンの轟き。 ミドルテンポで断続的な強いアクセントとともに、ずしりずしりと歩みは続く。 メイン・ヴォーカルは力強くもどこか怪しく、ハモンド・オルガンがのっそりと、しかし噛み付くように追いすがる。
  再び、のっそりとしたシンセサイザーとともに呪文のような歌が始まる。 ヘヴィなオルガンと派手派手しくきらめくシンセサイザー。
  オルガンが新たなテーマを刻み始める。邪悪な音だ。 うねりながら飛び出すシンセサイザー。 ドラムスも乱れうちを始め、一気に、エネルギッシュながらも混沌とした演奏へと突入する。 ストリングスはメロトロンだろう。 オルガンのテーマにシンセサイザーが無茶に絡みつくも、強引にインテンポへとひきずり戻してゆく。
  再び高鳴るシンセサイザーの第一テーマ。 そして伸びやかながらも呪文風のヴォーカル・ハーモニー。
  終章は再びオープニングのピアノが再現、次第にリズミカルな演奏へと変化し、オルガンのリードで悠々と進む。 ハモンド・オルガンのジャジーなアドリヴ、トロンボーンを思わせるシンセサイザー。 最後はテーマを三つのキーボードが折り重なるように奏で、軽やかなリズムで走ってゆく。
   ミドル・テンポでクラシカルなテーマを悠々と綴ってゆくオムニバス風の大作。 薄い音を逆手にとったような明快きわまるアンサンブルである。 巻き込まれるような勢いはないが、テンポに合わせてゆったりと味わうことができる。 邪悪なハモンド・オルガン以上に、序盤と終盤のアコースティック・ピアノに存在感あり。

  5曲目「Armicrazia(アルミクラツィア)」(7:40)(狙撃兵のことらしい)は、シンセサイザーの厳かな旋律と風の音の SE に続いて、炸裂音とともに始まる。 リズムとともに、シンセサイザーの重厚な旋律が流れ始める。 シンセサイザーの余韻を経て、激しいドラムとオルガンがフェードイン、アグレッシヴなリフで攻め立てる。 十字砲火のようにオルガンが攻めまくる。 シンセサイザーが加わってリフに重なると、テンポが落ち、美しいピアノの演奏とメロトロンをバックに、メランコリックにヴォーカルが歌い始める。 憂鬱と哀愁。 再び、オルガンは和音によるリフを刻みつつ、狂気じみたソロを壮絶なスピードで繰り広げる。 緊張と狂気の高まりは、狙撃兵の心情か。 電子音も飛び交う。 そして、演奏はリフへと収束し、攻め立てながらも、再びテンポが落ちつき、シンセサイザーが空しさに堪えないような旋律を奏でる。 トランペットのような音もキーボードだろう。 シンセサイザーが繰返されて、消えてゆく。 張り詰めたシンセサイザーのテーマを受け、爆発的なハモンド・オルガンが暴走気味に突っ走る作品。 シンセサイザーは理性を、ハモンド・オルガンは反対に野性に戻ってしまった精神を表現しているようだ。 ハモンド・オルガンによるリフとソロは壮絶の一言。

  6曲目「L'armistizio(休戦)」(4:00)。 チャーチ・オルガンのリフレインから幕を開ける。 リズムとともに、ハモンド・オルガンは激しいリフとともに攻めあがる。 ブレイクとハモンドのリフの連発。 一転、ピアノによるリリカルな演奏が始まり、メロトロンが流れ出る。 そして、哀愁のヴォーカルへ。 暗闇のどこかに明かりを見出そうとするかのようなシンセサイザー。 ハモンド・オルガンが追いかける。 8 分の 6 拍子に変ってハモンド・オルガンが走り、最後はブレイクとハードな和音のリフの連続でしめる。
  ついにチャーチ・オルガンが登場、一瞬厳かなムードになるも、すぐさまハモンド・オルガンの攻撃的なリフで取って代わられる。 中間部は、ピアノとヴォーカルによる叙情的なアンサンブルである。 シンセサイザーの橋渡しで、再びアグレッシヴなハモンド・オルガンのプレイに回帰する。 短いがドラマのある作品だ。

  7曲目「Riflessi Di Pace(静寂の訪れ)」(2:51)は、鐘の音が響く祝祭的なシンセサイザーから始まり、活気あるヴォーカル・パートへ。 ヴォーカルは、シンセサイザーのバッキングで伸びやかに歌う。 間奏のシンセサイザーも、祝福に満ちた明るい音である。 鐘が響く。 明るいシンセサイザーの音色が活きた小品だ。

  8曲目「Epitaffio(墓銘碑)」(4:36) 不気味なピアノの打撃音、シンセサイザーは音色こそ鮮やかだが、メロディ・ラインは不安を煽りたてる。 前曲の明るさは、かき消されてしまう。 シンセサイザーは、4 分の 4 拍子から 4 分の 7 拍子へと変化し、オルガンのユニゾン・リフがさらに挑発的に煽り立てる。 オルガンとシンセサイザーが絡みながらフェードアウトすると、一転ハモンド・オルガン伴奏でシンセサイザーが勇壮なメロディ(戦闘の再現?)を奏でる。 リズムが行進曲風に変化し、メロトロンをバックに低い声のモノローグ(死者の声?)が入り、バスーンのようなシンセサイザーが響く。 多くの人の声が、さまよう亡霊のように錯綜し、吸い込まれるように音が消えていく。 シンセサイザーがさまざまに使われる、暗くミステリアスな作品。 変拍子をリードするハモンド・オルガンは、強烈に歪んでおり、神経に触る。 破綻気味に展開し、最後は非常に不気味な亡霊達の声に耳を傾けなくてはならない。 PINK FLOYD にも通じる、暗い展開である。

  9曲目「Nuova Era Atto Secondo(ヌオヴァ・エラ、第二世代)」(4:50)は、オルガンによるハードなリフとシンセサイザーによる東洋風のメロディが印象的な EL&P 風の作品。 叩きまくるドラムスも本家を彷彿させる。 挑戦的なハモンド・オルガンのリフと突っ走るソロ、さらには煽り立てるようなシンセサイザーのテーマ。 シンセサイザーの電子音が、ショーケースのように次々と現れる。


  オペラ風の歌唱をハモンド・オルガン、ムーグ・シンセサイザー、メロトロンが守り立てる 70 年代王道風キーボード・ロック。 感電しそうなほどパーカッシヴなハモンド・オルガンのプレイ、挑戦的なシンセサイザーのリフ、極太のアコースティック・ピアノは EL&P 直系であり、おまけにそこへ郷愁のメロトロンが吹き上げる。 IL BALLETTO DI BRONZOBANCO かという、ヘヴィなロマンある世界である。 アグレッシヴなプレイと柔らかくメロディを歌わせるシーンの対比など、キーボードの使い分けも巧みである。 ただし、音質そのものは、ややチープな気がしなくもない。 これは、機材によるものなのだろうか、それとも製作作業によるのだろうか。 全体に逞しい筆致で明確なテーマを描いていゆくスタイルであり、アルバムのトータル・イメージもある。 こじんまりとまとまり過ぎているところもあるが、無闇な迫力そとクラシカルな場面での格調の高さは、並々ならぬものである。 リズムがもたつくところも不思議と曲調に合っていて不自然に感じさせない。 ギターやヴァイオリンかフルートなど、何か他の旋律楽器がいれば、さらにアンサンブルの妙味を楽しめそうな気がする。 伸びやかなヴォーカルも合わせて考えると、やはり 90 年代の BANCO ということになりそうです。

(KICP 2819)


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