NOVALIS

  ドイツのシンフォニック・ロック・グループ「NOVALIS」。 ハイノ・シュンゼルとユルゲン・ヴェンツェルを中心に、71 年ハンブルグにて結成。 73 年アルバム・デビュー。 メンバー交代を経つつ 70 年代を通して作品を発表し、85 年解散。
  サウンドは、キーボード主体の「ヘヴィにしてメルヘンチックな」シンフォニック・ロック。 物憂い雰囲気と、洗練され切らないぎこちなさ、初々しさが特徴。 BRAIN レーベル。グループ名は、独自の理想主義的世界観を唱えた夭折の 18 世紀ドイツ・ロマン主義詩人。 2008 年、名ライヴ盤「Konzerte」がようやく CD 化。

 Banished Bridge

 
Heino Schünzel bass
Jürgen Wenzel vocals, acoustic guitar
Lutz Rahn organ, piano, mellotron, synthesizer
Hartwig Biereichel drums, percussion

  73 年の第一作「Banished Bridge」。 キーボードを中心としたハードな演奏とフォーク的なアコースティック感覚が初々しいデビュー作。 ギターは、ヴォーカルのヴェンツェルによるアコースティック・ギターのみであり、シンフォニックなサウンドの要は、キーボードが一手に引き受けている。 往時のサウンドにしては、ヘヴィに盛り上がる場面でも、演奏に直接的なブルーズやジャズの影響は感じられない。 ごく自然にクラシカルかつロマンティックな味わいを醸し出すところは、さすが、大陸独自の伝統なのだろう。 また、逞しき太鼓系のドラム・パーカッションや素朴なアコースティック・ギターに加えて、やや訛りのある英語のヴォーカルが、ジャーマン・ロックらしいエキゾチズムを感じさせる。 SE などもろに PINK FLOYD なところもあるのだが、クラシカルな味わいと素朴なフォーク・タッチ、サイケデリック感などをブレンドした果ての物憂く謎めいた雰囲気はきわめて独特である。 本作の持ち味は、この朴訥にして神秘的な雰囲気だろう。 まさに、ドイツならではのシンフォニック・ロック、という作風である。

  「Banished Bridge」(17:08)牧歌調ののどかさとともに、スペイシーな浮遊感と雄大な包容力をもつシンフォニック大作。 テンポよく突き進むシーンの勇壮な迫力と、オルガン、シンバル、SE、コーラスが生み出す幻想性のブレンドが魅力。 クライマックス直前/直後が延々と続き、やや冗長な気がしなくもないが、聴き込むと独特の酩酊感が味わえる。 オルガンとシンセサイザーは、積み重なるように鳴りっ放し。 ほのかなサイケデリック・テイストは、彼岸の音楽への接近を思わせる。 酩酊は安らかな死への憧れなのかもしれない。

  「High Evolution」(4:28)熱いインストと伸びやかなヴォーカル・コーラスによるバラード調シンフォニック・ロック。 FRUUPP あたりにも通じる遠慮なしの深いエコーのかかったヴォーカルや、オルガンの音などの垢抜けない田舎臭さがなんともいい。 アグレッシヴなオルガンとともにインストを引っぱるのは活発なベースの動き。 初期の DEEP PURPLE を思わせるところもあり、後半はかなり快調に突き進む。

  「Laughing」(9:10)二本のアコースティック・ギターのストロークが美しいフォーク・ソング風のオープニング。 控え目なパーカッションの音も気持ちいい。 スペイシーなドラム・ソロを経て、シャープなリズムでオルガン、シンセサイザーが突き進む。 そして、ブルージーなオルガン・ソロ。 クラシックへも揺れつつ走るオルガンとベースとの絡みがカッコいい。 リズムの消失とともにオルガンが響き渡り、アコースティック・ギターのストロークとうねるようなリズムが戻る。 再び、ブルージーなオルガンがヴォーカルを彩る。 最後もオルガンがたたみかけ、見得を切って終わる。 ドラマのある大作。 リリカルなフォークから始まり、ハードなインストを経て、最後はエネルギッシュなヴォーカル・アンサンブルを成す。 オープニングのアコースティック・ギターと、多彩なフレーズを繰り出すオルガンがすばらしい。 ブリティッシュ・ロックに通じるメランコリーがある。

  「Inside Of Me(Inside Of You)」(6:39)クラシカルな高揚感のある PROCOL HARUM 風シンフォニック・ロック。 やはり、オルガンとドラマチックなドラムがおり成す、力強いアンサンブルが魅力。 バロック・トランペット系のムーグに守り立てられるヴォーカルも熱い。 最初から最後まで、クライマックスの連続である。 エンディングは、さらにもう一盛り上がりあるかと思った。

(PMS 7050-WP)

 Novalis

 
Hartwig Biereichel drums
Detlef Job guitar, vocals
Carlo Karges guitar, keyboards
Lutz Rahn synthesizer, keyboards
Heino Schünzel bass, vocals

  75 年の第二作「Novalis」。 ヴォーカル担当のユルゲン・ヴェンツェルが脱退、ギタリストのデトレフ・ヨブとカルロス・カルゲを迎えて、インストゥルメンタル・パートを充実させた。 ハードロック調のややブルージーなギターは、おそらく、この新メンバーによるものだろう。 クラシカルなオルガン・ロックを基調としながらも、さまざまな工夫がある。 つまり、詩人ノヴァリスによる詩を歌詞として採用する、ブルックナーのシンフォニーの主題を展開する、ジャズ風の演奏を試みるなど、さまざまなアイデアによって音楽の幅を広げようとしている。 新しい段階へ進まんとする気概が感じられる作品だ。 垢抜けない演奏やあまりに素っ頓狂な展開は、こういった試みが、若干の勇み足となったせいか、消化され切らないことが原因なのだろう。 それでも、優しく暖かみあるクラシカル・サウンドと、ナイーヴといっていいほどストレートな展開は、十分魅力的である。 シンプルなモチーフをうまく組み合わせて大作を盛り上げていく技もなかなかだ。 ロマンティックなロックやクラシカルなロックのファンにお薦め。 ヴォーカルはドイツ語。

  「Sonnengeflecht」(4:08) シンセサイザーとギターによるエレクトリック・サウンドを強調したシンフォニック・インストゥルメンタル。 冒頭、いかにも野暮ったいシンセサイザーのリフにがっくりするのだが、ギターの出現辺りから、なんとか慣れてくる。 メタリックなオスティナートは、ややよれたトニー・バンクス風。 シンセサイザーとワウ・ギターは、かなりヘヴィな音である。 ピアノによる細かい和音のストロークの後のギター・ソロやピアノ・ソロには、ジャジーな雰囲気もある。 それでも、この曲の主役は、ノイジーなシンセサイザーだろう。 クラヴィネットのリズミカルなリフをバックに、ギターが快調にソロに突入するものの、すぐにテンポがくずれてしまう。 そして、再びオープニングと同じシンセサイザー主導のリズミカルなアンサンブルへ進む。 改めて聴くと、フレーズは、それなりにクラシカルであることが分かる。 テーマがなんとも垢抜けないのだが、エレクトリック・ピアノやシンセサイザーを用いた新たなサウンドを模索中なのだろう。 エレクトリックにして武骨、そして、巧まずしてこっけいなシンフォニック小品。 ジャケットのファンタジックなイメージとは、あまりにかけ離れている。

  「Wer Schmetterlinge lachen hört」(9:16) 教会風のオルガンと CAMEL 風のエモーショナルなギターがフィーチュアされた、クラシカル・ロック大作。 歌メロとオルガンは PROCOL HARUM を思わせる正調クラシック。 歌曲風ですらある。 フォーク・タッチのギター伴奏も美しい。 ヴォーカルを支えるリズムも多彩。 また、間奏部では、オルガンとギターによるドラマチックな演奏から、シンセサイザーとヴァイオリン奏法ギターそしてファルセットのヴォカリーズによるファンタジックな演奏へと進む。 ここの雰囲気はかなりいい。 アナログ・シンセサイザーの変調音がたたみかけ、緊迫感は増すばかりだ。 後半は、ギターのリードで勇ましい歩みを見せ、ロカビリーなノリまで披露。 オルガンが 3 連でたたみかける場面は、DEEP PURPLE に似る。 終盤は、チャーチ・オルガンの荘厳な演奏にマーチング・スネアがオーヴァーラップし、劇的に幕を引く。 全体に正攻法であり、ていねいに進む格調高いシンフォニック・ロックである。 泣きのメロディと重厚なサウンドがよくマッチしている。 ミドル・テンポのため、リズムの甘さが見えてしまうのが難点。

  「Dronsz」(4:53) オルガンのロングトーンが、位相を変えつつ揺らぎながら流れてゆく、ミステリアスなイントロダクション。 テープの速度を落としたようなヴォイスによるモノローグ。 ゆっくりとベースがビートを刻み始めると、オルガンとともに電子音も切れ切れに漂う。 可聴域を大きく上下し、ポルタメントするシンセサイザー。 オルガンは変わらず揺らぎながら流れている。 単調なリズム。 つぶやくようなギター。 ノイズ。 ドラムをきっかけに、ノイジーなシンセサイザーがテーマを提示する。 シンセサイザーとベースのユニゾンが、淡々とテーマを繰り返す。 さらに歪んだ音のエレピが重なる。 オルガンは、いつの間にか 6 連のクラシカルなリフレイン。 あまりに唐突な終わり。
  POPOL VUH の後期や CAN を思わせる、シンプルな反復ビートによるインストゥルメンタル。 エレクトリックなノイズがささくれ立つも、全体に甘めである。 酩酊するにはリズムが丸っこすぎる。

  「Impressionen」(8:57)ダークなオルガンの旋律が湧き上がり、ハイハットと重厚なベースが、ボレロ風のリフレインを叩きつける。 重く悲劇的なオープニングだ。 一転、スリリングなギターのリードで、アンサンブルは鮮やかに走りだす。 CAMEL を思わせるみごとな展開だ。 一瞬のクライマックスを経て、落ちついたテンポでシンフォニックな演奏が始まる。 オルガンのリフレインとともに、ストリング・アンサンブルによる重厚なテーマ(ブルックナーらしい)が、静々と盛り上る。 そして、ブルージーなギターが受ける。 再びブルックナーのテーマからややテンポを上げ、シンセサイザーはノイジーな音で左右のチャネルを駆け巡る。 オルガンのオスティナート。 小刻みにシンバルを用いる手数の多いドラムは僕の好みです。 ドラムがボレロ風に戻ると、三度オルガン、ストリングス・アンサンブルによるシンフォニックなテーマへ。 うねるように歌上げるギターは、うっすらとワウも用いて広がりをつける。 またもブルックナーのテーマ。 続いて、ギターがテーマをなめらかな音色で変奏する。 クラシカルなオルガンが受け継ぐ。 再びブルージーなギター・ソロ、そしてリズムはストップ。 哀しげなチャーチ・オルガンのソロを経て、リズムが復活し、オルガンとシンセサイザーによる演奏へ。 そのままチャーチ・オルガンのソロとヘヴィな演奏を繰り返しつつ、最後には重厚なボレロへとまとまって、勇壮なエンディングを迎える。 クラシック然とした和音のピッチがぐっと上がって、吸い込まれるように消えてゆく辺りは、もはや様式美の世界。 淡々としながらも圧力をもって迫る演奏が心地よい、シンフォニック・ロック・インストゥルメンタル。 緩急の変化やテーマの繰り返しなど、シンプルながらも効果的である。 特に、すっと走り出す瞬間の演奏がいい。 キーボード中心のクラシカルな曲調に、ブルージーにしてメロディアスなギターのアクセントがいい感じだ。

  「Es färbte sich die Wiese grün」(8:18) オルガンによる愛らしいリフレインとアコースティック・ギターのアルペジオ、そしてメロトロンに支えられ、ヴォーカルが静かに詩を歌い上げる。 そして、前曲と同じようなシンセサイザーの重低音をバックにした、ブルージーなギター。 続いて、生音に近いギターが、少しユーモラスなリズムとともにソロを繰り広げる。 クラヴィネットのソロ、ギターのオブリガート、ジャジーなエレピのソロ。 再び、練習曲風のユーモラスなピアノのリフレイン。 ハードロック風のエモーショナルなギターも加わる。 ギターとリズムが消えると、オープニングのオルガンのリフレインがフェード・イン、アコースティック・ギターとともに、ヴォーカルはトラッド風のメロディを歌いだす。 リズムが戻り、ノイジーなシンセサイザーのテーマ。 枯れ果てたメロトロンの響き。 続いてハードロック風ギター・ソロが泣く。 エンディングは、一転長調の和音を轟かせるシンフォニー風のもの。 ギターのピッキング・ポルタメント。 クラシカルなキーボードとハードロック・ギターを中心に、フォーキーなヴォーカル・パートから長い間奏を旅して戻ってくる作品。 間奏前半には、珍しくジャズ風の演奏まである。 さまざまなスタイルに変化しつつも、しっかり曲想があるようで流れは自然。 リズミカルにしてひょうきんなキーボードのリフは、1 曲目にも通じる。 歌詞は、詩人ノヴァリスの詩に基づくらしい。

(PMS 7063-WP)

 Sommerabend

 
Detlef Job guitar, vocals
Lutz Rahn keyboards
Heino Schünzel bass, vocals
Hartwig Biereichel drums

  76 年の第三作「Sommerabend」。 ギターのカルゲが脱退し、再び 4 人構成に戻る。 内容は、三つの大作から構成される、濃厚なロマンチシズムあふれる素朴なシンフォニック・ロック。 不器用ながらも、眠りを誘うようにおだやかでメランコリックな幻想作であり、サウンドとメロディが絶妙の均衡を見せる。 クラシカルなオルガンとヘヴィなギターのコンビネーションが、力強い流れを(やや強引ながらも)作り、ストリングス・シンセサイザー、メロトロンの神秘の響きと丹念なビートが、すべてを薄暮の宇宙へと浮かび上がらせる。 技術的には、実直としか誉めようがないが、クラシカルなフレーズを丹念にまとめており、素直なリリシズムが宗教的な高揚にまで高まってゆく。 さらに、リズム・パターンの変化による展開の係り結びが実に明快であり、納得がゆく。 いい曲であることとテクニカルであること必ずしも一致せず、の典型だ。 そして、2 曲目の冒頭に現れるアコースティックなヴォーカル・アンサンブルこそが、このグループのサウンドの本質ではないだろうか。 また、この時代のグループ、特にドイツのシンフォニック系のグループとして、当然ながら、ハードロック的なニュアンスも強い。 全編、降り注ぐようなストリングス・シンセサイザー、メロトロンが印象的です。 反復の多い演奏なのだが、きめこまかく音を散りばめつつもためらいなく突き進む姿勢が、好結果を生んでいると思う。

  「Aufbruch」(9:37) オルガンとギターによるハードかつメロディアスな演奏に、シンセサイザー、電子音による浮遊感を大胆に加味したシンフォニックなインストゥルメンタル。 冒頭、ポリリズム気味の演奏はややぎこちないが、1:50 付近のギターによるテーマ辺りから、なめらかに動き出す。 5 分付近では思い切ったハモンド・オルガン・ソロも。 重たい CAMEL

  「Wunderschätze」(10:41) アコースティック・ギターの minor アルペジオがさざめく「泣き」のヴォーカル・パートにメロトロンが湧き上がる、感動のロック・シンフォニー。 間奏におけるクラシカルでアタックの強いオルガンと、メロディアスなギターによるエモーショナルなアンサンブルがいい。 ノってくると、ドラムスのせわしなさからお里が知れるというか、DEEP PURPLE が透けて見える瞬間も多い。 終盤の演奏には鋭さがあり、盛り上がる。 歌詞は詩人ノヴァリスの作品に基づく。 ギターのアルペジオとメロトロン、哀愁のヴォーカルの三位一体には、KING CRIMSON の「Epitaph」のイメージもある。 繰り返しが多いが、シーケンスごとに微妙な変化があるために、飽きるということはない。

  「Sommerabend」(18:19) シンセサイザーとメロトロンのハーモニーが朗々と響き渡る、優美なシンフォニー。 第一章は、湧き上がるストリングスをバックに、ムーグ・シンセサイザー(トーン調節したオルガンかもしれない)のテーマが切々と流れる、哀しげな物語の幕開けである。 第二章「Am Strand」にて、アコースティック・ギターがアルペジオを奏で、ヴォーカルが入ってくるところは、またも、おセンチな「Epitaph」といった趣である。 その後のアンサンブルでも、重厚/荘厳なムードは初期 KING CRIMSON と共通する。 第五章「Ein neuer Tag」は、一転してシンセサイザーが迸り、ギターとオルガンが走るロックンロール。 そして、最終章「Ins Licht」は、再び厳かなヴォーカル・パート。 オルガンが高らかに鳴り響き、ドラムはドラマチックな打撃で盛り上げる。 シンセサイザーの奏でるテーマはアコースティック・ギターに吸い込まれ、再びオープニングと同じメロトロンとシンセサイザーによるスペイシーなアンサンブルへと旅立つ。 朝日に映える山々を眺望するかのような、感動的な終章である。


  初期英国プログレの荘厳な神秘性や叙情性を、ドイツらしい素朴さで包んだシンフォニック・ロックの大傑作。 曲の成り立ちがシンプルで展開が明快であり、そのために感情移入しやすく、なおかつ、長く楽しむことができる。 器楽のバランスとしては、キーボードが中心であり、メロトロン、ムーグ・シンセサイザー、オルガンらによる「雰囲気」作りが、作品のイメージを決めているといえるだろう。 そして、シンフォニックで悠然とした調子が主であるにもかかわらず、メロディは、意外なまでに純朴である。 思い切ってフォーク風といってもいいだろう。 思いの丈を誠実に切々と訴えてゆくところに本作最大の魅力があり、これを臭過ぎといってしまっては何も始まらない。 もっとも、巷の名盤としての評価は、主としてメロトロンの多用に帰せられるようにも思うが。
(PMS 7079-WP)

 Brandung

 
Detlef Job guitar, vocals
Heino Schünzel bass, vocals
Lutz Rahn hammond organ, PPG-synthesizer, clavinet, mellotron, flugel, electric piano, string ensemble
Fred Mühlböck vocals, acoustic guitar, flute
Hartwig Biereichel drums, percussion

  77 年の第五作「Brandung」。 ヴォーカル専任のフレッド・ミルボックを迎え、メロディアスでキャッチーな面が強まった作品である。 時代の移り変わりとともに、ヘヴィなオルガン・ロック的なサウンドから、哀愁と甘美なロマンがより明快な形で提示された洗練されたサウンド/演奏へと変化している。 快調な 1 曲目のオープニングが新鮮である。 もちろん、ポップにはなっても、優美にしてほのかなメランコリーをもつメロディ・ラインや含みのあるヴォーカルに漂う格調のようなものは失われていない。 何度か耳にするうちに、独特の素朴で暖かみのあるサウンドが以前と変わらないことに気がつくはずだ。 自然な流れと分かりやすい展開が、特徴の好アルバムである。
   2 曲目は、アコースティック・ギターとエレピが美しく哀しいロマンティックなバラード。 ヴォーカル・ハーモニーが切ない。 3 曲目は、しなやかなギターがカッコいい CAMEL 風のナンバー。 スペイシーなキーボードと朗々たるヴォーカルも用いたシンフォニックな曲調に、キャッチーなメロディを巧みに活かしている。 オープニングなど、やや R&B っぽいところもある。 後半独走するギター(調子に乗ったときのジョン・リーズ風でもある)から、ピアノ、ヴォーカル・ハーモニーへと落とす呼吸もみごと。 旧 B 面を占めるのは、AOR 調も交えたロマンティックな大作組曲。 キャッチーな表現もあるのだが、それ以上に、オルガン、フルート、ピアノ、歌メロにあふれかえる詩的なムードが、いかにもドイツのシンフォニック・ロック・グループらしい。 ヴォーカルはドイツ語。

  「Irgendwo, Irgendwann」(4:38)
  「Wenn Nicht Mehr Zahlen Und Figuren」(3:05)
  「Astralis」(8:54)
  「Sonnenwende
    「Brandung」(3:41)
    「Feuer bricht in die Zeit」(3:49)
    「Sonnenfinsternis」(3:01)
    「Dammerung」(5:42)

(PMS 7069-WP)

 Vielleicht Bist Du Ein Clown?

 
Detlef Job electric & acoustic guitars, vocals
Fred Mühlböck vocals, electric & acoustic & 12 string guitars, flute
Lutz Rahn Hammond H-100, electric & acoustic piano, stringensemble, Mellotron, PPG synthesizer, D 6 clavinet
Hartwig Biereichel drums, percussion
Heino Schünzel bass, vocals

  78 年の第六作「Vielleicht Bist Du Ein Clown?」。 70 年代終盤風のシティ・ポップス風味とこのグループらしいハードでロマンティックなスタイルが非常にうまくマッチした傑作アルバムである。 楽曲、器楽、ヴォーカルは充実し、YES のようなポジティヴで変化に富む歌ものシンフォニック・チューンに加えて、2 曲のインストゥルメンタルも含んでいる。 ロマンチシズムがそのまま甘めのサウンドとつながってしまうと、その場の味わいは格別でも後で胸焼けがするのだが(前作はややそういう感あり)、本作では、武骨な叙情性が同時代的な垢抜けたサウンドでうまく薄められている。 意図したものかどうかは分からないが、とても効果的だと思う。 演奏の安定感やサウンド・メイキングも一流のポップロックグループのようだ。 また、タイトル曲含め、同時代の CAMEL の作風を取り入れることで流行との折り合いをうまく付けているように感じられるが、こちらの根っこには、ブルージーな泣きのハードロックに加えてより思いつめた生真面目さや真剣さがある。 洒脱でおどけた感じなど、合い通じるものはあっても、ロマンチシズムの根底にあるものの質は英国ロックとは異なるようだ。 ヴォーカルは英語。 遅れてきたプログレッシヴ・ロックの佳作というイメージです。

(SPV 49842 CD)

 Flossenengel

 
Lutz Rahn keyboards
Heino Schünzel bass, vocals
Fred Mühlböck guitars, vocals
Detlef Job guitars, vocals
Hartwig Biereichel drums, percussion

  79 年の第七作「Flossenengel」。 BRAIN レーベルから離れ、TELDEC 系の AHORN レーベルから発表された作品。 内容は、シャチの天使アトラントの旅を描いた、ファンタジックなコンセプト・アルバムである。 メルヘンチックなタイトル、コンセプトにもかかわらず、サウンドは安きに流れず、飛躍的に安定した演奏と巧みなアレンジによる完成度の高いものになっている。 CAMEL 的なリリシズムとポップ・センスに PINK FLOYD 的な音の奥行きをあわせもっており、語り口が非常にいい。 そして、ブルージーなハードロック的なマインドがいまだ旺盛なところが、おもしろい。 70 年代終盤のシンフォニック・ロック作品としては、屈指の出来映えだろう。 まろやかなシンセサイザーの歌声が耳に残る。 邦題は「凍てついた天使」。

  「Atlanto」(4:38)
  「Im Brunnen Der Erde」(4:29)
  「Brennende Freiheit」(2:22)
  「Im Netz」(8:08)
  「Flossenengel」(3:27)
  「Walzer Fur Einen Verlorenen Traum」(3:28)
  「Sklavenzoo」(5:06)
  「Alle Wollen Leben」(5:07)
  「Ruckkehr」(5:22)
  「Ob Tier, Ob Mensch, Ob Baum」(3:01)

(K22P-157)


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