アルゼンチンのプログレッシヴ・ロック・グループ「NEXUS」。 70 年代後半にブエノス・アイレスにて結成。 97 年アルバム・デビュー。 2007 年現在作品は五枚。 2009 年、キーボーディストは別プロジェクトで新作発表。 サウンドは、EL&P のヘヴィネスと GENESIS の潤いと宗教的厳粛さをもつ本格的なシンフォニック・ロック。
| Lalo Huber | organs, pianos, synthesizers, vocals |
| Daniel Lanniruberto | bass, fretless bass, synthesizers, vocals |
| Carlos Lucena | electric & acoustic guitars, vocals |
| Luis Nakamura | drums, percussion, bells, vocals |
| Mariela Gonzalez | lead vocals |
97 年発表のアルバム「Detrás Del Umbral」
内容は、キーボード主体の重厚かつカラフルな 70 年代型シンフォニック・ロック。
あまり知らないのですが、ゴシック系メタルにも通じそうな峻厳な音と、ニューエイジ風のマイルドかつ豊麗な音が交錯した、独特の世界である。
おそらくは、宗教音楽的なものがベースにあるのだろう。
ハードでありながらメロディアス、そして途方もないスケールの大きさもある。
さまざまな時代のポピュラー音楽を乗り越えてきたベテランらしいサウンドともいえる。
オールド・ファンが色めきたつのは、なんといっても、ハモンド・オルガンとシンセサイザーのプレイ。
キース・エマーソン直系のエキサイティングな演奏が、ややメタル寄りの演奏を一気にプログレ側に引き寄せている。
特に、存在感ある女性ヴォーカルを取り巻くオブリガートや伴奏、間奏でのピリっとしたプレイやミステリアスなテーマでのプレイが出色。
結局、ストーリー・テリングにキーボードのプレイがしっかりと組み入れられているということなのだろう。
全体に、メロディアスに歌うシーンでもスリリングなプレイを矢継ぎ早に繰り出すシーンでも、演奏はていねいかつ堅実であり、安心して聴いていられる。
かといって音が古臭すぎるということもない。
ギターはたしかにやや HR/HM 風だが、キーボードとの分量・音色のバランスのおかげでさほど気にはならない。
いろいろな意味で、キーボードを用いたモダンなシンフォニック・ロックの典型といえるだろう。
また、宗教色と官能がシームレスにつながり、ダークなゴシック色にすら清涼感が感じられる辺りが、いかにも南米産の音のように思える。
73 分の一大シンフォニック・スペクタクル。
4 曲目は、MASTERMIND、Pär Lindh Project のファンの胸躍らせる佳曲。
7 曲目は、クラシック、ヒーリング、大河ドラマ・ファンにも通用するシンセサイザー・オーケストレーション。
ルーカス/スピルバーグばっかじゃいやになるけど、それでもたまに見ると意外と感動するでしょ。
難点は、インストゥルメンタルの一部で繰り返しが多いわりに、効果の感じられないところがあること。
(RR-0220)
| Lalo Huber | organs, pianos, synthesizers, vocals |
| Daniel Lanniruberto | bass, fretless bass, synthesizers, vocals |
| Carlos Lucena | electric & acoustic guitars, vocals |
| Luis Nakamura | drums, percussion, bells, vocals |
| Mariela Gonzalez | lead vocals |
2001 年発表のアルバム「Metanoia」。
内容は、重厚かつ峻厳なシンフォニック・ロック。
月並な表現だが、70 年代プログレ、80 年代のニューエイジや HM/HR などを吸収/消化した音である。
前作との違いは、ギター、ドラムスのプレイのヘヴィさが若干増して、HR/HM のフィールドでも十分通用しそうな音使いとなったこと。
しかし、今回もこの本格的なシンフォニック・ロックの屋台骨となっているのは、ハモンド・オルガン/シンセサイザーのプレイと、決めどころで見せるスネアとシンバル主体の手数の多いドラミングによる「ヘヴィなのに軽やか」なリズムなど、EL&P 的なプログレの醍醐味、そして魂のこもった女性ヴォーカルである。
特に、キーボードは、ヒーリング系から荘厳な管弦楽、さらにはキース・エマーソンまで、ほぼ完璧といっていいバランスのある演奏だ。
ゴシック・ロマン調という点では、Pär Lindh Project と相通じる世界である。
もっとも、Lindh 氏がキーボードを中心にした本格クラシックに力点を置き、丹念な構築性を誇る分ロックとしてのカッコよさが後付けになりがちなのに対し、こちらは、あくまで EL&P 的なキーボード・ロックが重心にあり、けれん味含めカッコよさを優先したプレイで俊敏に切り込むタイプである。
ともにキリスト教周辺の雰囲気を用いつつも、北と南で感触が異なるというのもおもしろい。
峻厳さや演奏技巧そのものは前者かもしれないが、バンドとしてのグルーヴは、こちらに軍配が上がりそうだ。
最近のキーボーディストのテクニックは、もはやエマーソンを追い越しているようだが、バンドとなったときの演奏に不思議と感動がないのは、この辺に起因するのかもしれない。
要は「ノリ」の問題です。
また、ヴォーカルが「舌足らずコケット系」でも「美声ソプラノ系」でもないフォーク系アルト・ヴォイスであることも、楽曲に落ちつきと説得力を付与している。
朗々たるうまさとは異なる、ややぎこちない表情(スペイン語ということも関係するかもしれない)が、かえって説得力を感じさせるのだ。
一方、メロディアスなプレイを強調するエレキギター(9 曲目の大作のエンディングではみごとなハケット流を披露する)や、アコースティック・ギターとヴォーカルがたおやかなハーモニーをなしてフレットレス・ベースがささやく場面などの透明感ある美しさなども、決して悪くはないのだが、さすがに使い古されたパターンに思えてならない。
むしろ、エマーソンばりの弾き倒しにバンド全体が引っ張られて、華麗さをかなぐり捨てて前傾してゆくようなシーンの一瞬の興奮が、キーなのではないだろうか。
また、重厚でミステリアスな演出はゴシック・メタル辺りのセンスなのだろうが、全体の音色のおかげでみごとに甦るシンフォニック・プログレというイメージになっているところも興味深い。
意図的なのかどうかは分からないが、うれしいところだ。
北米勢が、たとえバークリーを出ていても、実利的なロックンロールから離れられないのと対照的に、南米には、ヨーロッパ生まれの深い闇と天上の光の織り成すマニエリスティックで耽美な世界観をもつ音が育つ素地があるようだ。
プログレ含め文化継承の地は、まさに南米大陸なのかもしれない。(脱線)
そして、これだけ濃厚な音にもかかわらず、甘みというか尖りきらないまろやかさと若々しさ/爽やかさがあるのも特徴だろう。
もっと目の覚めるようなコントラストやダイナミクスをつけて感性を刺激する、もしくは、厳しく突きつめてリアルな現代性と対峙するアプローチもあるだろうが、この音はこれで居場所をしっかり確保しているように思います。
前作に比べると、リズムや曲の流れはぐっと自然になり、その中で生まれるドラマも手応えを増している。
情感は SAGRADO、重さは HR/HM、キーボードは EL&P といえるかもしれない濃密な音。
無駄を削ぎ落としたようで今回も 72 分。
なんだかんだいってかなり好きなのです。
今回もメタル・ファンにしか注目されないのだろうか?
(RR-0330)