フランスのプログレッシヴ・ロック・グループ「NEMO」。 2000 年結成。作品は七枚。フランス・ロックの希望の星。 おそらく SPOCK'S BEARD の大ファン。
| Guillaume Fontaine | keyboards, chorus, flute |
| Jean Pierre Louveton | guitars, vocals |
| Jean Baptiste Ltier | drums, chorus |
| Lionel B. Guichard | bass, chorus |
2009 年発表の第八作「Barbares」。
内容は、ダークで荒々しく劇的なハード・シンフォニック・ロック。
ヴォーカルの表情やメロディ・ラインはセンチメンタルでどこか不器用、無作法な感じ(フランス製「ニューシネマ」のような)があり、へヴィなギターやリズムとの取り合わせが、否応なくドラマを紡ぎ出している。
そのメロディが叩きつけるビートと交錯する合間を縫って、古めかしいメロトロン・ストリングスが高まったり、アコースティック・ギターがささやきかける。
もちろん、アコースティック・ピアノも変わらずフィーチュアされている。
いわゆるへヴィ・メタル、プログレ・メタルのような無駄にテクニカルでまとまり切っている感じがまったくなく、どうしようもなく情緒優先なところがいい。
初期と比べると、小刻みな場面展開をなめらかできわめて自然な語り口でこなすようになっている。
ヴォーカルがリードするかと思えば、ギターが印象的なリフで飛び出し、またヴォーカルが重なると今度はピアノが歌いだす、かように演奏者の呼吸を感じさせる編曲になっている。
クリシェに飛びつくようなところもないし、奇を衒うような未熟さも払底している。
まさに、「ながら」で聴いているリスナーをスピーカの前に正座させる音であり、はや風格が備わったといっていい。
この感じ、YES や PINK FLOYD が大好きなハードロック少年がそのまま大人になったみたいだ。
とにかくユニットやプロジェクトやセッションや寄り合い所帯ではない、「いいバンド」である。
かすかに古びた音の風合いは、1981 年辺りのコミック・タッチのジャケットとよく合っていると思う。
そういえばジェイン・フォンダの「バーバレラ」も元はコミックでしたっけ。
ジャジーな音や現代的でスタイリッシュな音もさりげなく散りばめている。南米ベネズエラの雄、TEMPANO にも通じる懐の深さを感じます。
5 曲目「Faux Semblants」は名曲。タイトル曲は 25 分を超える大作であり、伝承音楽風のタッチが新鮮な佳作。
今のところ本アルバムが最高傑作でしょう。
(QUAD-17-09)
| Jean Pierre Louveton | guitars, vocals |
| Guillaume Fontaine | keyboards, vocals, acoustic guitar |
| Benoit Gaignon | bass |
| Pascal Bertrand | drums, marimba, percussion |
2002 年発表のアルバム「Les Nouveaux Mondes」。2007 年のリマスター盤。
内容は、ギター、ピアノをフィーチュアしたパーカッシヴなシンフォニック・ロック。
ハードロック調もたっぷり交えた、一体感あるアンサンブルによる痛快な演奏であり、ECHOLYN や IZZ といったオルタナティヴ・ロック以降のスタイルとの共通点を感じる。
リズム・セクション、ピアノ、ギターそれぞれがアタックを効かせて跳ね回って重なり合い、ヘヴィな音ほどには HM 的ではない、一種小気味のよさが特徴となっている。
ギターが親しみやすく明快なフレーズを次々とためらいなく打ち出してくる(最終大作冒頭の変拍子リフの鮮やかなこと!)ところも特徴的だ。
そういう運動神経のよさを活かした作風を基本に、アコースティック・ギター弾き語りやクラシカルなキーボードの高鳴り、果てはオリエンタルなエキゾチズムの演出も盛り込んで、幅広い表現でストーリーを展開する。
ストレートなようで全体演奏にはヒネリがあり、ギターとキーボードを中心にしたアンサンブルもいろいろ工夫されている感じだ。
また、重さが耽美な手触りに変わり音に深みが出てくるような場面では、MARILLION のバラード作品のような色気とインパクトもある。
そこへフランス語のヴォーカルが声色も使って重々しく迫り、毒気と洒落っ気も放つのだから、ANGE を思い出すなという方が無理である。
バラード調の歌い込みで見せる鬼気迫る表情や、物語調の展開での器楽とヴォーカルの呼吸のいいやり取りを想像して欲しい。
もっとも、どちらかといえば、幻想譚の澱みに沈み込むよりはロックな爆発力を活かして跳び回る方が得意なようであり、その割合の違いがそのまま ANGE との違いになっている。
また、こちらはヴォーカルは二人で分け合っている。
密度濃くテンションの高い作品が並ぶが、特に最終大作は、多彩な音と雰囲気を活かし切った傑作。
おそらくかなり意図的にオールド・ファッションな音、スタイルに則っているんだろうが、それがカッコいいのだから問題はない。
クラシックやジャズに寄り過ぎて、または泣きのメロディ・ラインに頼り過ぎて、ロックなカッコよさやダンディズムを忘れた耳には新鮮な刺激になるでしょう。
グループ名とジャケットからしててっきり「海底二万里」かと思ったが、曲名からするとモチーフはややマイナーな処女作「気球に乗って五週間」のようだ。
タイトルは「新世界」。
「Abyssses」(9:04)
「Dr Fergusson Et Les Caprices Du Vent Vol.1 : Au Dessus Des Toits」(6:19)
「Danse du Diable」(2:58)
「Tempete」(7:11)
「Dans La Lune Encore」(6:07)
「Dr Fergusson Et Les Caprices Du Vent Vol.2 : Au Dessus Des Pyramides」(5:46)
「Phileas」(20:22)エキゾティックな演出もある超大作。全然長さを感じさせません。
「a)Depart-Europe」(4:50)
「b)Les Fleuves Sacres」(3:18)
「c)Luna」(6:05)
「d)Nouveau Monde」(6:09)
(QUAD 15-07)
| Guillaume Fontaine | keyboards, vocals |
| Benoit Gaignon | bass |
| JB Ltier | drums, marimba, percussion |
| Jean Pierre Louveton | guitars, vocals |
| guest: | |
|---|---|
| Pascal Bertrand | marimba on 6 |
| Olivier Soumaire | vocals on 11 |
2003 年発表の第二作「Présages」。2007 年のリマスター盤。
内容は、再びギター、ピアノ、フランス語ヴォーカルをフィーチュアした小気味のいいシンフォニック・ロック。
弾けるリズムに灼熱のパワーコードが轟き、きらめく音の粒がピアノから放たれると、すっかり忘れていた熱くしなやかなグルーヴが胸に湧きあがる。
自信にあふれた語り口は冒頭からガッチリとリスナーをつかみ、集中力をすべて音に注ぎ込むように仕向けてくる。
勢いよく走り続ける演奏には、ベタつくような泣きはないし、ヘヴィなギターの音をうるさく感じさせることもない。
なにせ、一度ギターの轟音をフレンチヴォイスが受けとめると、けたたましさは一瞬にして薄暗く耽美な響きを帯びて揺らぎ、気がつけば、エレクトリックな原色の混沌を厳かな弦楽奏が憂鬱な調べとともに拭い去ってゆくのだから。
もちろんアコースティック・チューンには華やぎと洒落っ気もある。
ギターが弾き捲くって全体をリードするなど、全体にライヴなプレゼンスを考えたアレンジながらも、アイデアのままにさまざまに
音を振り回して、どこまでも劇的に迫ってくる。
じつは激しい表現も叙情的な表現もけっこうスタイリッシュなのだが、それがイヤミにはならず、あふれる演奏力の勢いに身を任せようという気持ちにさせてくれる。
こんなに「生な」エレキギターの音はひさしぶりに聴いた気がする。
THE FLOWER KINGS のように大人なメッセージを歌い上げるのもいいけれど、俺たちゃついつい口調が荒っぽくなっちゃうのさ、別に若ぶってるわけじゃないけど、この足腰ならいつでも次の冒険に飛び込めるぜ、というような音なのだ。(笑)
この開き直ったような、何もかもを放り出すような姿勢がすごくカッコいいのである。
虚々実々無限のドラマを、ものすごく分かりやすいメロディ、フレーズとハードロックのサウンドで骨太に描くフレンチロックの傑作であり、英国ギターロックとプログレメタルの 10 数年が生み出した大成果の一つ。
オープニング 1 曲目の堂々とした王道モダン・ロック調にはかなりの感動が。シンプルでキャッチーなリフ、フレーズを盛り込んで勢いよく走る姿は、絶好調時の SPOCK'S BEARD(「V」の頃ですかね) に匹敵します。
タイトルは「前兆」。
(QUAD-06-03/2)
| Guillaume Fontaine | keyboards, vocals |
| Benoit Gaignon | bass |
| Jean Baptiste Ltier | drums, backing vocals |
| Jean Pierre Louveton | guitars, vocals, banjo |
| guest: | |
|---|---|
| Pascal Bertrand | marimba |
| Joanna Sobezak | violin |
2004 年発表の第三作「Prélude À La Ruine」。2007 年のリマスター盤。
内容は、パワフルでパーカッシヴ、ロマンティックにしてスカッと突き抜けたハードロック風プログレ。
前作よりもさらに明快、イノセントなロマンチシズム、ヒロイックな冒険心と秘境の神秘への無限の夢を取り込んだ男の子向けのサウンドである。
勢いあるフレーズ、ノリのいいリフ、切れのあるオブリガートでギターとキーボードが追いかけあうアンサンブルを、ピアノ、ヴァイオリン、マリンバといった品のあるアクセントで整え、フランス語やアラビア風旋法などのエキゾチックな響きも散りばめ、つむじ風のようなビートに乗せてきっちりとまとめている。
ピアノやヴァイオリンそして時にはギターがリードするクラシカルなタッチの演奏も堂に入っているし、芝居っ気あふれるヴォーカリストは、ちゃんとシャンソン風にも決めてくれる。
とにかくこの無窮動のしなやかでたくましい演奏、いきなりクライマックスな演奏が魅力である。
メタルっぽいギターが分かりやすいフレーズとともにガンガン走り回るのだが、不思議と知的に整理された印象を与えるアンサンブルになっていて、ジンマシンが出るどころか、頬は緩むはむやみに元気になるは、個人的にはかなり珍しいことです。
音を惜しまずオカズもたっぷりのロック・ドラムスにも喝采を送りたい。
いってみれば、ANGE と同じ「粋」の境地に FESTA MOBILE みたいなピアノが加った、ギターが目立つ SPOCK'S BEARD である。
ハードに攻め、クラシカルに引き、ラテン風にかわす、走り澱みまた走る、その呼吸は本当によく SB に似ている
とにかく、小難しいことはいわず荒っぽささえ感じさせる音なのに、知性と真摯な姿勢がにじみ出ている。
ユーロロックの伝統に則ったクラシカルな奥深さがあるといってもいい。
こういう音ならオールド・ファンは間違いなく破顔、そして若者だって虜になると思う。
大傑作。
タイトルは「破滅への序曲」。
(QUAD-xx-xx/x)