THE MUFFINS

  アメリカのアヴァンギャルド・ジャズロック・グループ「THE MUFFINS」。 75 年結成。 カンタベリー調のジャズロックから出発し、RIO との邂逅を経てフリーでアヴァンギャルドな音楽性を獲得。 フレッド・フリスの「Gravity」への参加でも知られる。 81 年解散。 98 年再編。 2004 年にはミニ・アルバムを含んで再編後三作目となる「Double Nagative」発表。

 Double Negative

 
Dave Newhouse keyboards, sax, bass clarinet, flute, flarinette(?)
Thomas Scott sax, flute, clarinet, keyboards, percussion, programming
Billy Swann bass, acoustic guitar
Paul Sears drums, guitar
guest:
Marshall Allen alto sax
Knoel Scott alto & baritone sax
Doug Elliott trombone
Amy Taylor violin
Kristin Synder viola
Laura Dent cello
Okorie Johnson cello

  2004 年発表のアルバム「Double Negative」。 内容は、管楽器とピアノを多用し、管弦楽のダイナミックなサポートを得たダイナミックかつミステリアスなチェンバー・ジャズロック。 緊密で圧迫感あるアンサンブルによる現代音楽調から、チープなラテン風味漂うビッグ・バンド・ジャズ(渋さ知らズやペレス・プラード楽団などのイメージ)まで、個性的な作品が並ぶ。 弦楽が高まり、映画音楽のようにシンフォニックに盛り上がる場面まで用意されている。 さらには、ストリート系のドラムスやしなやかにいななくサックスなど、90 年代初頭の NY シーンや思わせるヤバさもあり。 ハモンド・オルガン、ピアノ、シンセサイザーなど、キーボードの使い方がプログレらしさを強調する一方、木管と低音系のサックスの音が、神秘的な印象を残す。 音が迸り飛び散るような感じは、管楽器が電気処理されているせいだろうか。 管楽器のアンサンブルには、独特のゴージャス感と邪悪なムードが強まる。 そして、HENRY COW というか NATIONAL HEALTH というか、その方面特有の鮮やかなまでの切り返しや抜き手まである。 全体に、音楽性はきわめて豊かであり、別にプログレだ、シンフォニックだといわずとも一枚のディスクとしてどこへ出しても恥ずかしくない傑作である。 個人的に、2004 年ベスト 10 ランクイン。 SUN RA の入った EL&P ですからね、すごくないわけがない。 初期 KING CRIMSON ファンにももちろんお薦め。 14 曲目は シンフォニックな SOFT MACHINE ともいうべき傑作。 メロディアスな 15 曲目で「ひょっとすると」と思い、サンクスクレジットを確認すると、ちゃんと RASCAL REPORTERS の名前が。 個人的には、このディスクの音質が気に入ってます。

(Cuneiform Records Rune 199)

 Manna Mirage

 
Billy Swann bass, piano, guitar, percussives
Paul Sears drums, gong, xylophone, vibes
 percussives, pots, pans, pennywhistle
Tom Scott piccolo, flutes, soprano & alto & baritone saxes
 clarinets, oboe, soprano recorder, percussives
Dave Newhouse piano, organ, piccolo, flute, alto & baritone saxes
 bass clarinet, cereal box whistle, percussives

  78 年発表の第一作「Manna Mirage」。 マルチ・プレイヤー 4 人編成に、若干のゲストを迎えた作品。 内容は、アメリカのグループながらも HATFIELD AND THE NORTHSOFT MACHINE 直系の本格的なカンタベリー・サウンド、管楽器とキーボードを中心とするジャズロックである。 変則拍子を多用し、HENRY COW 調のフリー・フォームのインプロヴィゼーションも用いながら、木/金管楽器のアンサンブルが音色を活かして重なり合い、不思議なテクスチュアを成している。 おまけに、ファズ・ベースまで現われるのだ。 一見混沌とした音空間を、繊細な音色と緻密なプレイがスタイリッシュにうめてゆき、やがて、活き活きとしたアンサンブルへとみごとに収斂してゆく。 その様子は、本家に劣らない。 転がるようなシロホンとベース、フルート、オルガンによるポリフォニックなアンサンブルは、フリー系の作品に散見される絶叫型や体育会系押し捲りとは異なり理知的であり、飄々としたユーモアと深刻さの境目をスタスタと軽やかにたどってゆくようだ。 とても新鮮だ。 やはり、カンタベリーへとダイレクトに通じる音としかいいようがなく、いわゆるアメリカン・ロックのイメージとはかけ離れている。 ロバート・ワイアットを思わせるドラムスなど、リズム・セクションを筆頭に、演奏は抜群にうまい。 ラフな録音も、かえって生々しい臨場感を与えている。 エピゴーネン然としないのは、曲そのもののおもしろさとフルートの存在だろう。 全曲インストゥルメンタル。 アルバムの謝辞には、元 HAPPY THE MAN のキット・ワトキンスの名前もある。

  「Monkey With The Golden Eyes」(4:03)カンタベリー風ながら、重層的な管楽器のオーケストレーションとシロホンのトレモロが美しい佳作。

  「Hobart Got Burned」(5:56)細身のサックスがさえずるフリー・フォームからシャープな 8 分の 6 拍子のジャズロックへと進展するカッコいい作品。 二管の緩やかなアドリヴ応酬にドラムスが過激に反応する、本作では特異な存在だ。 HENRY COW 的な深刻さとユーモアが同居する。 バラバラとした即興プレイが、エレピのリフとともに鮮やかにまとまりを見せ、疾走し始める。 この瞬間にえもいわれぬ快感がある。 凶暴なファズ・ベースや、ディレイを効かせた管楽器とエレピが一気にクライマックスへと登りつめる勢いなど、「Fourth」または「Fifth」辺りの SOFT MACHINE そのものである。

  「Amelia Earhart」(15:45) 幻惑的な演奏が次々と繰り広げられる、夢の迷宮のようなオムニバス大作。 拍子、テンポとともに、曲の表情がめまぐるしく変化する。 また、フリーな流れに、いかにもアメリカン・ポップス調の暖かみあるテーマを唐突に放り込むところなど、RASCAL REPORTERS とも共通する高度なセンスがあると思う。 丹念なライド・シンバルと痛快な打撃、伸びやかな管楽器(フルートが官能的なアクセントになっている)、饒舌なベース、SE が組み合わさった唐突でユーモラス、万華鏡のような演奏は、HATFIELD AND THE NORTH の一枚目や GILGAMESH の一枚目、または、PICCHIO DAL POZZONATIONAL HEALTH と直結する世界を示す。 攻めたてる調子とそれを受け流すユーモラスなプレイの呼吸がいい。 音は弛緩し薄く広がってゆくかと思えば、みるみる凝集し小気味よく響き合う。 要所のファズ・ベース、シロホンも効いている。

  「The Adventure Of Captain Boomerang」(22:46) エレピとソプラノ・サックス、フルートなど管楽器による躍動感あるジャズロック大作。 フルート(ジミー・ヘイスティングスそのもの)、エレピによるファンタジックな展開が HATFIELD AND THE NORTH を思わせ、しなやかなサックスのブロウと強固な反復は SOFT MACHINE である。 前曲が、たまに怪しげな表情を見せたのとは対照的に、こちらは、筋の通ったストーリーに勢いあるトゥッティとメロディアスなプレイが散りばめられていて聴きやすい。 ベースとフルート、エレピ、マリンバらによるクラシカルなアンサンブルもある。 タイトルや変拍子による舌をかみそうなユニゾンからくるイメージは、HAPPY THE MAN にも近しい。

(Cuneiform Records 55004)

 185

 
Tom Scott flutes, soprano & alto saxes, clarinets
Dave Newhouse piano, organ, soprano & alto & baritone saxes, whisper clarinet, clarinets
Billy Swann bass, guitar, vocals, tenor sax on 1, mysterious low noise
Paul Sears drums, percussion, sax, vocal noise
guest:
Fred Frith prepared piano, guitar, violin (on 1,2,4,7,8,9)
Dave Golub clarinet shuffling, shouting & squeaking(on 2,3,4)
George Daoust shuffling & shouting(on 4)

  81 年発表のラスト・アルバム「185」。 フレッド・フリスがプロデュースおよびゲストで参加。 管楽器がリードする演奏の凶暴さ/素っ頓狂度が強まり、メロディアスな部分は、ウネウネした変拍子アンサンブルにほのかに残る程度になった。 音には、楽器から力づくで切り出したかのようにゴツゴツした手触りがあり、録音云々ではない存在感がある。 ぐいっと胸を張って居座るような音なのだ。 特に、ドラムスの武骨で生々しい音が印象的。 フリー・ジャズやアヴァンギャルド・ミュージック、ノイズといった要素が束ねられた現代的なサウンドは、まさにアメリカの HENRY COW という呼び名にふさわしい。 もっとも、強迫的でヘヴィな面が強調されていても、無調風のテーマによるアンサンブルが深刻さと軽妙なユーモアの間をするすると自然にゆき交ってしまうところが、ユニークである。 イカレたヴォーカルが飛び込むと、"瞬間フランク・ザッパ" になってしまうこともある。 また、楽曲はぐっとコンパクトになり、スリルも凝縮されている。 CD では、オリジナル・メンバーのみの演奏によるリミックス・トラックが、ボーナス・トラックとしてついている。 フリス参加ヴァージョンとの聴き比べもおもしろい。

  「Angle Dance」(4:10)
  「Antidote To Dry-dock」(4:57)
  「Zoom Resume」(7:13)
  「Horsebones」(2:25)
  「Subduction」(0:55)
  「Dream Beat」(3:32)
  「Under Dali's Wing」(3:08)
  「These Castle Children」(7:34)
  「Queenside」(5:36)
  「Street Dogs」(1:13)
  「Angle Dance」(4:09)ボーナス・トラック。
  「Antidote To Dry-dock」(4:51)ボーナス・トラック。
  「Zoom Resume」(7:13)ボーナス・トラック。
  「Horsebones」(2:26)ボーナス・トラック。
  「Under Dali's Wing」(3:05)ボーナス・トラック。
  「Queenside」(5:35)ボーナス・トラック。
  「These Castle Children」(7:10)ボーナス・トラック。

(Cuneiform Records 55013)

 Open City

 
Dave Newhouse piano, organ, soprano & alto & baritone saxes, bass clarinets, percussion
Tom Scott soprano & alto saxes, clarinets, oboe, flutes, percussion
Billy Swann bass, guitar, percussion, vocals
Paul Sears drums, percussion
guest:
Fred Frith guitar, piano(on 8,9)
Mark Hollander alto sax on 8

  85 年発表のアルバム「Open City」。 グループ解散後に発表された未発表曲集。 94 年 CD 化の際に、大幅に曲を追加し、グループの活動全体を見渡せる作品となった。 1-7 曲目が「185」期のスタジオ・ライヴ、8、9 曲目が「Gravity」期、10-14 曲目が「Manna Mirage」期の未発表曲。
  1-7 曲目は、強力かつアナーキーな金管のフレーズやファズ・ベースが推進力となって、重量感のあるリズムとともに、ドリルのように突き進む演奏。 ネジが外れてしまったようなフレーズを強力に押し出すかと思えば、いきなり壮絶なテンポ・アップやダウンを見せるなど、予断を許さぬ展開をもつ。 特に、「Manna Mirage」収録の 2 曲目「Hobart Got Burned」は、シンバルの予兆から始まるスピーディなドラミングに乗ってテナー・サックスが疾走する、無茶苦茶カッコいいナンバー。
  また 10 曲目からの未発表曲では、HENRY COW 的なサウンドへ到達する以前のジャジーでメロディアスな演奏も現れる。 フルートやクラリネットの広がりをもつ豊麗な音が美しい。 12 曲目は、ほとんど SOFT MACHINE。 13 曲目は、ユーモアも運動性も繊細な音も HATFIELD AND THE NORTH 風の名品。 硬軟のメリハリは、本家以上に効いている。 カンタベリー・ファンは、この後半が楽しいかもしれません。

  「Queenside」(5:19)デイヴ・ニューハウス作。
  「Hobart Got Burned」(2:40)デイヴ・ニューハウス作。
  「Horsebones」(2:40)トム・スコット作。
  「Anitdote To Drydock」(5:06)デイヴ・ニューハウス作。
  「Zoom Resume」(1:28)デイヴ・ニューハウス作。
  「Boxed & Crossed」(5:38)デイヴ・ニューハウス/ビリー・スワン作。
  「Under Dall's Wing」(3:17)デイヴ・ニューハウス作。
  「Vanity, Vanity」(2:47)フレッド・フリス作。
  「Dancing In Sunrise, Switzerland」(3:11)フレッド・フリス作。
  「Blind Arch」(8:51)グループ作。
  「Expected Freedom」(2:21)デイヴ・ニューハウス作。
  「In The Red」(5:08)グループ作。
  「Not Alone」(13:38)デイヴ・ニューハウス作。
  「Open City」(0:52)グループ作。

(Cuneiform Records 55010)

 Chronometers

 
Stuart Abramowitz drums, voice
Dave Newhouse electric piano, organ, percussion, toy xylophone, voice
Tom Scott clarinets, flute, soprano & alto saxes, oboe, bell tree, xylophone, melodica, voice
Billy Swann bass, backwards organ, percussion, voice
Mike Zentner guitar, violin, harmonica, voice

  93 年発表のアルバム「Chronometers」。 オリジナル・メンバーらによる初期曲集。 75 年及び 76 年録音の作品から 21 曲を収録、70 分以上にわたる内容であり、「Manna Mirage」以前の活動を知るための貴重な音源だ。 タイトル・ナンバーは、22 分にわたるめくるめく超大作。 変則リズム・パターンと目まぐるしいリズム・チェンジの中で、ギター、クラリネット、キーボードらがメロディアスなテーマ、ソロと奇妙なインタープレイを繰り広げ、テープ・コラージュや ザッパ調のヴォーカル、マリンバ、ヴァイオリンも現れる。 挑発的なのだが、まろやかな感触であり、シンフォニックな瞬間もある。 他の曲は、後の作品のモティーフのような小品が主なのだが、高密度の演奏と編集の妙(キット・ワトキンスのクレジットあり)のおかげか、充実した聴き応えがあり、細切れな感じはない。 RASCAL REPORTERS にも共通する、チャレンジングな演奏とマイルドな音の取り合わせは、カンタベリー・ミュージックのアメリカにおける優れた咀嚼の一つといえる。 全体に、イメージは、HENRY COW というよりも、ややサックスの饒舌な HATFIELDS、緩めの PICCHIO DAL POZZO といった感じである。 現代音楽的な厳格さよりも、素朴な誠実さやルーズで直截的なユーモアが感じられる内容であり、ETRON FOUSAMLA を思わせる瞬間も。 ファズ・ギターやヴァイオリン、木管、メロディアスなユニゾンなど、あまりに「マンマ」なので、勝手にリチャード・シンクレアの声が聴こえてきます。 即興である 16 曲目を除き、全曲デイヴ・ニューハウスの作品。

(Cuneiform Records 55007)

 Bandwidth

 
Dave Newhouse piano, organ, baritone sax, tenor sax, bass clarinet, flute
Thomas Fraiser Scott alto sax, soprano sax, flute, clarinet
Billy Swann bass, guitar on 2,9
Paul Sears drums, guitar on 2,4,5,8,9
guest:
Doug Elliot trombone on 2,3,7,8
Amy Taylor(ex-GRITS violin on 10
Amy Cavanaugh cello on 10
Kristin Snyder viola on 10

  2002 年発表のアルバム「Bandwidth」。 ミニ・アルバム「Loverletter #1」に続くまさかの新作。 内容は、サックス、クラリネットなど管楽器主導のジャズロック。 今回はブラスのアンサンブルに力点があるらしく、ブラス・ロック、ビッグバンド風のニュアンスもある。 主役は管楽器とワイルドなベース、ノイジーなギターなどだが、フルート、ハモンド・オルガン、ゲストの弦楽奏などのワン・ポイントもきわめて効果的。 強圧的なフリー調の演奏ばかりではなく、意外なまでにジャジーでメローなプレイもある。 特に二管、三管のアンサンブルが特徴的だ。 全体としては、骨太で挑戦的なプレイの応酬にメロディアスな歌心が浮かび上がってくる、まさしく改心の内容といえるだろう。 モダン/フリー・ジャズの雰囲気とざらざらしたサイケ、オルタナティヴ調の合体は、70 年代初期の英国ジャズロックを甦らせたイメージである。 HENRY COWSOFT MACHINE を思わせる瞬間ももちろんある。
   9 曲目「Out Of The Boot」は、プログレ・ファン向きの傑作。 10 曲目「East Of Diamond」は、メロディアスな名曲。 ヒュー・ホッパーのバンドものの近作と比べたくなる雰囲気あり。 全曲インストゥルメンタル。

(Cuneiform Records Rune 161)


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