イタリアのネオ・プログレッシヴ・ロック・グループ「MOONGARDEN」。 トニー・バンクスとニック・バレットの共演の如き、緻密かつメローなノスタルジック・サウンドとコンテンポラリーなテクニカル・ロックが融合した新世代の音楽。 スティックからキーボード、作曲までも手がけるロヴェルシ氏がリーダー格と思われる。 2002 年には分家の SUBMARINE SILENCE も作品発表。 2010 年現在、作品は六枚。現代プログレ・シーンの牽引車の一つ
| Simone Baldini | lead vocals |
| Adolfo Bonati | drums, assorted percussion |
| David Cremoni | 6 & 12 string acoustic guitar, guitar |
| Cristiano Roversi | keyboards, bass |
| Cristian Melli | flute |
| Giorgio Signoretti | jazz guitar solo on 4 |
94 年発表の第一作「Moonsadness」。
内容は、ギターがややヘヴィながらも GENESIS、CAMEL、EL&P など 70 年代プログレへのオマージュたっぷりのロマンティックなシンフォニック・ロック。
昨今、隙間なく音で埋め尽くすような作品が多いなかで、過剰でない音使いで場面ごとの主役をきっちりと演じさせる姿勢にただならぬセンスを感じる。
2 曲目のポップ感覚、ジャズギターも盛り込んだ 4 曲目の大胆な展開など、ただのクローン・バンドとは思えないものをもっている。
リード・ヴォーカリストは、やや訛りはあるものの英語で堂々たる歌唱を見せる実力者。
ギタリストは、ヘヴィなプレイとともに 3 曲目の歌心ある誠実なソロが印象的。
ただし、元々デモ作品だったため、最終プロダクション前のような音質であり収録時間も 38 分と短い。
(MMP 244)
| David Cremoni | 6 & 12 string acoustic guitar, Pradise guitar, guitar |
| Cristiano Roversi | organ, mellotron, piano, Polymoog, synthesizers, bass pedal, bass, thumbing |
| Dimitri Sardini | heavy rhythm guitar |
| Massimiliano Sorrentini | acoustic drums, wind chimes, woodblocks, assorted percussion |
| Riccardo Tonco | vocals interpretation, tambourine |
| Marco Olivotto | additional pad on 2, granular noise & viola on 11 |
95 年発表の第二作「Brainstorm Of Emptyness」。
内容は、よく歌うギターとキーボード・オーケストレーションによる耽美派モダン・シンフォニック・ロック。
ポンプ・ロック第二世代であり、喩えてみれば GENESIS と PINK FLOYD を合せて今様ヘヴィネスをブレンドしたようなスタイルの完成度の高い作品だ。
ヴォーカルは、英語が不自然でない美声の持ち主であり、低音の魅力とネオプロ風があからさまでないところがいい。(ガブリエルというよりはデヴィッド・ボウイに近い)
ブリット・ポップの伝統を感じさせる本格派である。
それにしても、2 曲目冒頭で見せるウォーターズ氏そのもののようなつぶやきスタイルには驚き。
他の曲でも、このヴォーカリストがモダンな曲の表情に大きく貢献している。
そして、ギターはさりげなくもテクニシャンであり、なおかつラティマー/ギルモア風の泣きとサスティンをもしっかりカバーする。
このフォロワー振りには、ニック・バレットもたじたじだろう。
また、GENESIS そのものといべき 12 弦ギターの端正なアルペジオもあり。
しかしながら、彼らのサウンドをもっとも本格的なものにしているのは、重厚にして情感に満ちたキーボード・オーケストレーションだろう。
傑出したソロではなく、背景に静かに鳴り響き、いつしか曲全体の色合いを決めてゆくような存在感のあるプレイであり、音にも昨今なかなか見られない厚みと深みがある。
もちろん、バンクス直系のピアノやシンセサイザーのプレイも交え、メロトロンもきちんと鳴らしている。
いや鳴らしているどころか、鳴りまくり。
70 年代プログレ再構築を超越する本グループのユニークネスは、ヘヴィ・メタル的な凶暴で過激な場面転換である。
スピーディな演奏の生み出すドライヴ感と鋭利なエネルギーの発散は、まさしくコンテンポラリーな味わいといえるだろう。
落ちつきのあるリズムとアンサンブルに徹した老成したプレイが安定感と深い情感を生むなかに、若々しく情熱をたたきつけるプレイがタイムリーに散りばめられてゆく。
叙情的な演奏にうまみがあるだけに、突如湧き上がる攻撃的なプレイにも、すなおに魅せられる。
晩秋の空気を思わせるアコースティックで透明感あるセンチメンタリズムと、エレクトリックでエネルギッシュな才知の迸りが自然に同居する辺りが、いかにも情報処理の巧みな現代のロックだといえる。
英国風の深みがあれば重苦しい音でもかまわない、という方、特に ARENA のファンにはお薦めです。
内容はおそらくファンタジックなトータル・コンセプトもの。
歌詞は英語。
「Sea Memories」(11:26)翳のあるヴォーカル・テーマに GENESIS 風の典雅なキーボードと軽やかにすべってゆくようなギターが加わった、シンフォニック作品。
ヴォーカル・テーマにはポップな味つけも施されており、聴きやすい。
演奏そのものと録音のバランスがよいせいか、ポンプ的な内容が格段によく聴こえる。
「Who's Wrong ?」(9:46)
フィル・コリンズ、ゲイブリエルはもちろん、ロジャー・ウォーターズから 80' ポップ調まで、ヴォーカルの表情がめまぐるしく変化するロマンティックなシンフォニック・ロック。
ピアノ、ストリングス系の音とメロトロンが美しい。
パーカッションを効かせてごぼごぼと低音で渦を巻くハモンド・オルガンもある。
終盤、シンセサイザー・ソロからギター・ソロへの流れは、ポンプの様式に堕する気がしなくもないが、そのプレゼンスは堂々たるものである。
IQ 辺りと同レベルの風格がある。
もっとも、最後のスキャットだけはやり過ぎかも知れないが。
ややパッチワーク風だが、PINK FLOYD と GENESIS をつなぐという珍しい作風の佳作。
PENDRAGON の近作をより大袈裟にデフォルメした感じ。
「Sonya In Search Of The Moon (Part. 1) Silver Tears」(1:26)暗鬱なギターのアルペジオ。
教会風のオルガンが静かに鳴り風がざわめく。
「Gun Child」(8:28)
ヘヴィなギターと跳ね上がるようなリズムによるアグレッシヴなポップ・チューン。
メイン・ヴォーカル・パートの曲調と歌唱スタイルは、完全にニューウェーヴ。
それなのに、メロトロン・クワイアを背負ったシンセサイザー・ソロがみごとなまでに中期 GENESIS なのだ。
中盤、攻撃的なギター・リフにモノローグとメロトロンがオーヴァーラップし、捻れてゆくところが見せ場。
ギシギシとインダストリアルなタッチに、メロトロンの乾いた音とワイルドなオルガンが意外とマッチする。
ラストには、エレアコ・ギターがつぶやくレクイエムによるエピローグが。
目まぐるしく予想を覆しつつ突進するモダン・プログレ。
おもしろい作品です。
「Is He Mommy's Little Monster ?」(3:39)
女性を真似るファルセットによる朗唱。
そして、伴奏はオルゴール。
笑い声、壊れたハーモニウムのような和音の響き。
老いぼれ風の男性低音ヴォーカル。
一転して、伸びやかなテノールによる哀愁のバラード。
シアトリカルなヴォーカル・パフォーマンスによる妖しげなワルツ。
タイトルから「怪奇もの」であることに気がつくと、GOBLIN のイメージも。
「Sonya In Search Of The Moon (Part. 2) Alone In The Nightfield」(3:16)
エレアコギターのアルペジオを伴奏にメロトロン・フルートが哀しげに歌い、やがてストリングスがどこまでも広がってゆく。
悲劇を超えて救済が訪れるようなイメージだ。
「Chrome Heart」(9:29)
「Epitaph」風のトラジックな序章、そして日本のフォークに通じるギターのアルペジオ。
メロトロン・ストリングスとともに演奏は短調と長調を揺れ動き、妖美なヴォーカルを呼び覚ます。
ヘヴィなギターが突如唸りを上げ始めるのだが、妖しい表情は変わらない。
ギターとシンセサイザーのコンビネーションによるプログレ・メタル風の盛り上がり、ヴォーカルがリードするエキセントリックなパフォーマンスを経て、朗々たるギターとともに一気にしなやかで自信あふれる展開となる。
終盤のメロトロンの響きがいい。
耽美なバラードを基本に大胆に表情を変化させて突き進む怪作である。
スロー・テンポでヴォーカルが歌い込むと貫禄がある。
「Sonya In Search Of The Moon (Part. 3) The Search」(1:54)
遠く微かに光が見えたような、ポジティヴな余韻のあるブリッジ。
「Sherylin's Mistake」(8:45)
弾き語りから幕を開けるも、ためらいなく妖美なプログレ・メタルへと展開する。
アコースティックな音とキーボードをこういう風に入れると、メタルがプログレ・メタルになるらしい。
ギターとシンセサイザーが大活躍。
みんな「Watcher Of The Skies」が好きなのです。
勢いがある傑作。
「Sonya In Search Of The Moon (Part. 4) Moonman Return」(8:13)
Part.3 の余韻を引き継いで、ジャジーでメローなファンタジーへと進む。
高鳴るシンセサイザーとハモンド・オルガンはやがてトニー「Cinema Show」バンクスそのもののように流麗なシンセサイザー・ソロへとつながり、そして、コリンズを思わせる歯切れよいドラムに現代的なギターが絡んでゆく。
ギターはやがて美しく暖かな調べを紡ぎ出し、メロトロン・ストリングスが祝福の讃歌を歌い上げる。
この後半のインストゥルメンタルが圧巻。
明朗なファンタジー性がみごと。
アルバムのクライマックスたるシンフォニック・チューンである。
「The Losing Dawn」(5:01)深くたゆとうオルガンの響きとピアノの爪弾き、そして、再びロジャー・ウォーターズを思わせるささやき。
(MMP 284)
| Emilio Pizzoccoli | drums, percussion, tambarine |
| David Cremoni | 6 & 12 string acoustic guitar, guitar |
| Cristiano Roversi | electric piano, moog, polymoog, mellotron, bass pedal, analog frequences |
2001 年発表の作品「Submarine Silence」。
MOONGARDEN のキーボーディスト、ギタリストによるサブユニットの作品である。
内容は、中期 GENESIS そのものであり、美しくもはかなく、感傷的だが豊かなシンフォニック・ロックである。
星の子を吹き上げるようなストリングス・シンセイサイザー、吟遊詩人の奏でる竪琴のようなアコースティック・ギター、古の機械の昔語りのようなメロトロンの調べ、叫びのような祈りを歌い上げるギターが、夕凪の茜空に緩やかに響きわたる。
最終曲には「泣くまで止めません」という決意のようなものすら感じられる。
スティーヴ・ハケットの初期ソロ作のファンにはお勧め。
全曲インストゥルメンタル。
けったいなジャケット画は、名匠ポールホワイトヘッド画伯。
バンクス氏がこういうソロ作を出してもいいと思うのですが。
(MMP 419)
| Luca Palleschi | lead vocals |
| Massimiliano Sorrentini | drums, samples |
| David Cremoni | 6 & 12 string acoustic guitar, guitar |
| Cristiano Roversi | keyboards, stick on 1 |
| Mirko Tagliasacchi | bass |
2004 年発表の第四作「ROUNDMIDNIGHT」。前作に続き、RADIOHEAD、MARILLION、PORCUPINE TREE らと共通する質感をもつポスト・ロック風ネオ・プログレ。
メランコリックなヴォーカルを中心に、メロトロンやアナログ・シンセサイザーもたっぷり使って、狂おしいが爆発し切れないもどかしさを音にしてゆく。
ロックが激情を叩きつけられなくなって久しいが、この、クライマックスの迎え方を知らずに燃え尽きてゆくような表現には、切なさや空しさが驚くばかりのリアリティをもって込められている。
とはいえ、魂の絶叫というには、本作の表現はきわめてスタイリッシュであり、優れた物真似といわれても仕方がない面もある。
プログレ・ファンには、最近の MARILLION と同じに聴こえるだろう。
ただし、孤独が生む寒々しくとりとめのない幻想、そして、理由のない火照りは確実に伝わってくる。
若い頃、あてどなく街を彷徨った記憶があるならば、共感できる音だろう。
ギターは、今回も上品にしてプログレ一直線な味わいあるプレイを見せる。
フランコ・ムッシーダやマリオ・ミーロを思わせる堂々たる演奏だ。
このギターの存在が、英国風の物憂げな語り口に、エレガントな、イタリアらしいといってもいい、豊かな含みをもたらしているような気がする。
ヴォーカルは英語。
5 曲目の冒頭、チェロとオーボエによるクラシカルなアンサンブルに不覚にも涙が出た。
(GALILEO 73655)