MIRIODOR

  ケベックのプログレッシヴ・ロック・グループ「MIRIODOR」。 80 年結成。 2009 年現在作品は七枚。 初期の管楽器、キーボードをフィーチュアしたユニークなジャズロックから次第に RIO 色を強める。 メンバーの一部は CONVENTUM にも関連があるらしい。 2009 年新作「Avanti!」発表。

 Avanti!

 
Bernard Falaise guitars, fretless bass, mandolin, banjo, keyboards, turn table
Pascal Globensky keyboards, synthesizer, piano
Remi Leclere drums, percussion, electronics
Nicolas Masino bass, keyboards, piano
guest:
Pierre Labbe tenor sax, baritone sax
Marie-Chantal Leclair soprano sax
Maxime St-Pierre trumpet

  2009 年発表の第七作「Avanti!」。 チンドン調は若干抑えて、80 年代 KING CRIMSON にも一脈通じるドライヴ感ある変拍子ミニマル・プログレとなる。 ギターやオルガンが、やや気難しげながらもダイナミックなプレイで迫り、時にパロディ風のユーモラスな流れも取り込みながら、しなやかに進んでゆく。 即興はほとんどなく、各楽器のフレーズを重ねたり、ずらしたり、対比させたり、異なるリズムを重ねたりといったシナリオを練り上げた感じの演奏である。 管楽器もジャズ的なアドリヴはせず(効果音的なプレイはある)、アンサンブルの一ラインに徹している。 また、音響効果はあまり取り入れられておらず、そのままライヴで再現できそうな内容だ。(もちろんこの譜面を覚えて再現するのは相当たいへんだろう) 執拗に奇妙な幾何学文様を描き続けるアンサンブルなのだが、そのしつこさ、反復とともに強まる息苦しさは、ユーモアとうっすらとしたペーソスで巧みに和らげられている。 そして、タイミングよく、印象的なテーマや音が浮かび上がるように仕掛けられている。 KING CRIMSON があれば、脱力系のユーモアもあり、アーバンな先鋭ジャズ、N.Y.C タッチもあるという、多様な音楽スタイルの断片を繋ぎ合わせた目まぐるしい変化の相が音楽の今をよく映していると思う。 フリージャズではなく、あくまでロックにモダン・ジャズと現代音楽をかけ合わせた音楽であり、北米レコメン勢の強度にしんどくなったらこれくらいで耳を休めるのも一つの方法である。
  いわゆるシンフォニックなプログレ・ファンには見向きもされない作品だと思うが、オールド・ファンはぜひ試していただいて、VdGGGENTLE GIANTKING CRIMSON が出発点にあることを確認してもらいたい。
  
  「Envoutement(Bewitchment)」(9:13)
  「Bolide Debile(Dare Devil)」(8:40)
  「La Roche(Meeting Point)」(9:12)
  「Ecart-Type(Standard Deviation)」(6:35)
  「A Determiner(To Be Determined)」(10:24)
  「Avanti!(Avanti!)」(8:13)
  「Reveille-Matin(Shadow Of The Alarm Clock)」(7:54)

(RUNE 288)

 Rencontres

 
Francois Emond flute, violin, synthesizer, electric piano, clarinet, voice
Pascal Globensky electric piano, 12 string guitar, bass
Sabin Hudon soprano & alto & tenor sax
Remi Leclere drums, percussion
Marc Petitelere synthesizer, organ, bass, electric piano
Denis Robitaille bass, electric guitar, stick, voice

  86 年発表の第一作「Rencontres」。 CD 化は 98 年 CUNEIFORM によって行われた。 86 年発表の第一作 LP(1 曲目から 6 曲目)に 第二作カセットからの作品が追加された内容である。 また、追加曲は 96 年にリミックスされている。
  最初期の 6 人編成によるサウンドは、管楽器とキーボードのアンサンブルによるアコースティックとエレクトリックのバランスのよいジャジーなインストゥルメンタル。 カンタベリーと KING CRIMSON のブレンドの如き独特のメロディアスなジャズロックと、RIO 調のチャレンジングな音楽性を兼ね備えるところがユニークである。 曲によっては、かなりクラシカル、シンフォニックな面もあり、特に目立つのは、サックスのリードによるメロディアスかつ緻密なアンサンブル。 リード楽器は明快なテーマによるメロディアスなプレイを見せるのだが、激しくもつれる演奏やクラシカルなのに不協和音の反復が現れるなど、アヴァンギャルドの血は隠せない。 ときおり見せる複合拍子や強迫的な演奏スタイルは、フリー・ジャズまたは現代音楽的なニュアンスをもつ。 それでも、硬派に徹底するだけでなくリラックスしたユーモラスな面もしっかりと見せる。 かなり聴きやすい音ではないだろうか。 音の質感は、キーボードとサックスらによるデリケートで知的なアンサンブルのイメージから考えて、HAPPY THE MAN が深刻になった感じといえば近いだろう。 歌のほとんどない VAN DER GRAAF GENERATOR という意見もあるが、アヴァンギャルドな面の類似はあるものの、やや音が軽く内省的な感じはない。 個人的には、純シンフォニック系のグループでは決して聴かれない冷ややかなシンセサイザーと、多彩なアコースティック楽器のアンサンブルが好みである。
  7 曲目以降はやや趣向を変え、70 年代プログレの影響色濃い叙情的な作風が現れている。 こちらはまさに、VAN DER GRAAF GENERATOR や初期の KING CRIMSON を思わせる内容だ。

  「Echec Et Mat(Checkmate)」(4:49)
  「Les Passants(The Stowaway)」(5:40)
  「L'Allee Des Martyrs(Road To Martyrdom)」(10:12)
  「Brouillard(Fog)」(9:02)
  「Rencontres(Encounters)」(7:44)
  「La Maison-Dieu(A Tower Struck Down)」(8:43)英語のヴォーカル入りのシンフォニックな作品。 フルートやヴァイオリンがロマンティックな美しさをたたえる。
  「Lac D'Orgueil(Lake Of Vanity)」(4:37)
  「L'Expatrie(The Expatriate)」(7:05)
  「L'Homme Fangeux(The Miry Man)」(5:22)
  「Egregore(Assembly Of Spirits)」(7:30)

(RUNE 108)

 Miriodor

 
Pascal Globensky piano, synthesizer
Francois Emond violin, synthesizer
Sabin Hudon sax, synthesizer, percussion
Remi Leclerc percussions, synthesizer, sequence

  88 年発表の第二作「Miriodor」。 内容は、第二作 LP から全曲と 86 年のカセットからの作品が 5 曲。 4 人編成へと移行し、サウンドはサックス、キーボードを軸にロマンティックなリード・プレイと精密なアンサンブルを組み合わせたチェンバー・ジャズロック。 ややフリー・アヴァンギャルド色が強まり、めまぐるしい演奏が増えている。 それでも、いわゆる RIO ほど度外れたところはなく、夢想的な空気を大事にしたまとまりある演奏である。 ユーモアとペーソスが一体となった音楽は、いわば「サーカス」のイメージだ。 暗く落ちつきのあるプレイにはクラシック的なものも感じる。 瞬発力、破壊力、奔放さではなく、丹念なメロディ・和声の計画と工夫を活かすタイプの知的な作家なのでしょう。 ラウンジ、イージー・フュージョン調のサックスがごく自然に聴こえていい感じだ。 後半 86 年のカセットからの作品は、ジャズ・フュージョン色もあり親しみやすいメロディ・ラインが活かされている。 こんなにプログレ/ジャズロック・ファン向きなのに RIO、チェンバーというレッテルがオーディエンスを狭めているようでもったいないです。

(RUNE 14)

 3e Avertissement / 3rd Warning

 
Pascal Globensky piano, synthesizer
Sabin Hudon sax, synthesizer
Remi Leclerc percussions, synthesizer

  91 年発表の第三作「Miriodor」。 トリオ編成による作品。 サウンドはサックス、ピアノ、ドラムスのトリオにシンセサイザーを重ねたチェンバー風のジャズロック。 饒舌なサックスを中心にビート感あるピアノと安定したリズムを活かしたメリハリのあるジャジーな曲調が主。 ダークなユーモアや現代音楽調のシリアスな展開もあるのだが、メロディアスなサックスが中心にいるだけにチェンバーというよりはジャズロックというニュアンスである。サックスにはほのかにエキゾチックな響きやチンドン屋風のペーソスもあり。 目の醒めるような強烈さよりも、アクセスしやすさが売りだろう。

(RUNE 32)

 Jongleries Elastiques

 
Pascal Globensky piano, synthesizer
Remi Leclere drums, percussion, octapad, synthesizer
Bernard Falaise guitars, bass, mandolin, synthesizer, percussion
guest:
Sabin Hudon sax, accordion
acoustic ensemble trombone, violin, cello, flute, trumpet, voice

  95 年発表の第四作「Jongleries Elastiques」。 ギタリストの加入とともに管楽器奏者はサブ・メンバー化したらしい。 内容は、ギター、管楽器とシンセサイザーによるぐにょぐにょしたリフとともに間断なくリズムが変化するアヴァンギャルドなものである。 ギターやキーボードはあるが、サウンドはアコースティックである。 そして、演奏は、即興ではなくきちんと決められたアンサンブルが主。 ソロのアドリヴももちろんあるが、基本的には、変拍子を多用するも全体演奏の駆動力=ロックなドライヴ感で耳を惹きつけるタイプである。 無調のフレーズ、ユニゾンによる圧迫感、ポリリズミックなアンサンブル、はたまたナンセンスな脱力感など、ギターを主に見れば朗らかな KING CRIMSON であり、管楽器やピアノを主に見れば、やはり機嫌のいい UNIVERS ZERO である。 そして、折り重なる奇妙なパターンの狭間からセンチメンタリズムのようなものも漂ってくる。 アヴァンギャルドではあるが、HENRY COW のような厳(いかめ)しさ、険しさ、攻撃性はなく、どちらかといえば SAMLA のようにペーソスとノスタルジックな詩情が勝っている。 また、MANEIGE と同様に、ストレートなジャズ感覚やクラシックのセンスが顔をのぞかせるところもある。
  弦楽器やピアノらアコースティック・アンサンブルの高踏でシリアスな響きを、独特のおフザケ(ヴォードヴィル調というか、SAMLA 調というか)の中へ解き放って生み出した新しい音楽である。 サウンド面でびっくりするようなところがない(各楽器のナチュラルな音が使われているし、大幅な加工もない)ため、印象が地味かもしれないが、クラシックやジャズと同じくアコースティックでライヴな演奏と考えれば別にこれでいいわけだし、この録音がほぼスタジオ・ライヴの一発録りだとしても何ら不思議はない。 疾走感あふれる 10 曲目「Igor, L'ous A Moto」がお薦め。 ギタリスト、ベルナール・ファレーゼは、Ambiances Magnetiques レーベル系でも活躍する気鋭の存在。

(RUNE 78)

 Mekano

 
Pascal Globensky piano, synthesizer
Remi Leclere drums, percussion
Bernard Falaise guitars, fretless bass, turn table
Nicolas Masino bass, piano, keyboards
guest:
Marie-Chantal Leclair sax
Marie-Soleil Belanger violin
Nemo Venba trumpet

  2001 年発表の第五作「Mekano」。 ベーシスト/ピアニストが加入、再びカルテットへ。 内容は、正統チンドン屋風から SAMLA 風のパワフルにして脱力なアンサンブル(明らかに「The Fate」の影響大)、後期 UNIVERS ZERO 直系のヘヴィ・チューンまで、きわめて多彩なアヴァンギャルド変拍子ロック。 いわゆるレコメンと一線引くのは、こんがらがったアンサンブルを貫くきわめて明快な主題と、緩急やピアノ/フォルテによる正統的な係り結び表現の巧みさ、さらには、幻想的なアクセントがあるところだろう。 アヴァンギャルドといったときの過剰な運動性や脱構築性を、素朴なユーモアで包んでブレイクスルーしたグループは多いが、このグループのように、クラシカルな色彩感、美感と共存させたパターンはあまりなかったように思う。 ヴァイオリンの寄与は大きいといえるだろう。 (THINKING PLAGUE のようなレコメンにしてシンフォニックという、特異性は通じながらもやや異なるベクトルをもつ稀有な存在はある) そういった意味でも「ユーモラスで機嫌のいい UNIVERS ZERO」という表現はなかなか的を得ていると思う。 ジャジーでワイルドな表現が KING CRIMSON を思わせる場面もあり、初期の英国ロックの影響は大きいのではないだろうか。
  13 曲目「Avatar」はジャジーなエレクトリック・ピアノによるクロスオーヴァー風の演奏がいつしか凶暴なレコメン調へと変貌する衝撃作。 14 曲目「La Fantome de M.C.Escher」はメロトロン・ストリングスが唸りを上げる「Uzed」期 UNIVERS ZERO 直系の重厚な作品。
(RUNE 148)

 Parade

 
Bernard Falaise guitars, fretless bass, turn table
Pascal Globensky keyboards, synthesizer, piano
Remi Leclere drums, percussion, electronics
Nicolas Masino bass, keyboards, piano
guest:
Marie-Soleil Belanger violin
Marie-Chantal Leclair sax
Lars Hollmer accordion, melodica, keyboards, voice on 10,13,16
Lisa Miller bassoon on 4,6,10,12,16

  2005 年発表の第六作「Parade」。 CD 二枚組で、一枚目は新作スタジオ録音、二枚目は NEARFEST でのライヴ録音。 スタジオ盤は、管楽器、ヴァイオリン、ギター、キーボードらによるポリフォニックな変拍子チェンバー・ロック。 勢い任せだったり、一つの雰囲気に寄りかかりっぱなしでは決してない、機知あふれる変化に富んだ演奏である。 複雑なリズムを使った、音の込み入ったアンサンブルだが、いわゆるチェンバー・ロックの強面ばかりでは迫らず、テーマとなる旋律や音色によって玩具の楽団のような愛らしい表情が見えることが多い。 自宅録音(まあ今や作業の大半は自宅なんだろうが)風のプロダクションによるのか、チープシックというかどこかもの悲しい雰囲気もある。(製作については、ホルメル氏担当の作品の方が音がいい気がします) もっとも、その雰囲気はチンドンの汗臭いペーソスではなく、生まれたときからインターネットと繋がってます的なプラスティックな感触の哀愁である。 この奇妙な叙情性が今回の特徴だろう。 そして、その叙情性の原点には、英国プログレの感性があるように思う。 ゲストは、なんとラーシュ・ホルメル。今回の作風にはハマリ過ぎの人選です。 ライヴ盤は、透明感あるサウンドと正統派の演奏力に感動。こんがらがったアンサンブルが不思議と耳に馴染みやすいのは、クリアーなサウンドのおかげだろう。(エンジニアは名人ボブ・ドレーク) 管楽器奏者の卓越した技量にも注目。 レコメン系苦手の方にもお薦めしたい。
   個人的には、一部の曲についてどうしても初期 KING CRIMSON にジェイミー・ミューアが入ったようなイメージが捨てられません。 6 曲目「Contrees Liquides」は、力強い集中力も見せる佳作、8 曲目「Boite A Surprises」は、ヴァイヴ、ソプラノ・サックス、ヴァイオリン、オルガンらによる長調 UNIVERS ZERO な "正統" チェンバー・ロック。 10 曲目「Talrika」は、疾走するシンフォニックなジャズロック。というか魔女と踊る快速フォークダンス。文句なしにカッコいいです。13 曲目「Bonsai Givre」(盆栽?)もフレッド・フリスばりのギターやリンゼイ・クーパーのような管楽器にホルメルさんのアコーディオンが加わって、レコメンながらも和みテイストある佳曲。 16 曲目「Foret Dense」も哀愁と深刻さ、ヘヴィネスが合体したレコメン系の傑作。 結局、最も耳を惹くのはホルメル氏の参加した作品のようだ。

(RUNE 208/209)

 Copie Zéro

 
Tommy Babin contrabass
Bernard Falaise guitars
Pierre Tabbé tenor sax, flute
Rémi Leclere drums, percussion
Claude ST-Jean trombone, percussion, rhodes

  99 年発表のアルバム「Copie Zéro」。 「Jongleries Elastiques」に参加したトロンボーン奏者のクロード・セントジャンがリーダーを務める楽団「LES PROJECTIONNISTES」の第一作である。 内容は、パワフルな管楽器ユニゾンとギターが火花を散らす、即興も交えたジャズロック。 フィルム・ノワール調のサスペンスフルなタッチとサイケデリックな音響が冴える掘り出し物である。 ベルナール・ファレーズ、レミ・ルクレールがメンバーとして参加している。 最終曲のみ、ライヴ録音によるメチャメチャな即興大作。

(AM 071 CD)

 Risque Et Pendule

 
Pierre Labbé tenor sax, flute
Nathalie Bonin violin
Julie Trudeau cello
Bernard Falaise guitars
Fredéric Alarie bass
Claude Lavergne drums

  2003 年発表のアルバム「Risque Et Pendule」。 「Avanti!」に参加したサキソフォーン奏者ピエール・ラベのリーダー作。 内容は、弦楽器をフィーチュアしたフリージャズ。 ヴァイオリンやチェロによるフォーク風味が特徴である。 サックスとチェロやヴァイオリンとのデュオをきっかけにすると、室内楽風のクラシカルで厳格なタッチも生れてくる。 弦楽器の特徴を活かしたなだらかなトーンの動き(あえて「メロディ」とは呼びません)と呂律が回りすぎる早口サックスとの対比も面白い。 また、弦楽器の重音パッセージがアコーディオンのような響きに聴こえることも多い。 ベルナール・ファレーズが参加し、弦楽器やサックスと空気をよく読んだヴィヴィッドなやり取りを見せている。 薄い音でじっくり聴かせる、雅楽のようなニュアンスもある演奏です。

(AM 117 CD)


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