MALIBRAN

  イタリアのネオ・プログレッシヴ・ロック・グループ「MALIBRAN」。 87 年結成。 シシリー島出身。 90 年アルバム・デビュー。 シアトリカルなヴォーカルとヘヴィなギターを中心としたメロディアスな作風は、この時期のグループに多いスタイル。フルートやピアノによる端正でクラシカルな演奏とハードロック色が共存し、そこはかとなく芳しきイタリア 70 年代の香りが魅力。
  2001 年現在オフィシャル・ライヴ・ブートも含め五枚のアルバムを発表。 2009 年新作発表。

 Oltre L'ignoto

 
Giancarlo Cutuli flute, sax, piccolo
Jerry Litrico electric guitar
Angelo Messina bass
Alessio Scaravilli drums, percussion
Benny Torrisi piano, keyboards
Giuseppe Scaravilli vocals, electric & acoustic & Wah-Wah & slide guitar, flute on 4, all on 3,5,6
Vitto Germena violin on 2,3
Antonio Longo cello on 2,3

  2001 年発表の第四作「Oltre L'ignoto」。 PINK FLOYD や初期の GENESIS のエッセンスを手にしたクラシカルにして透明感あるシンフォニック・ロック。 HR/HM やポンプ風など表現対象と合わない手癖を払底し、クールなロマンティシズムにあふれる内容となっている。 いろいろと凝りながらも聴きやすさもちゃんと心得ており大人のカッコよさがある。 優美な歌心、繊細で丹念な表現、ダイナミックで悠然とした力強さ、ナチュラルな曲展開、全てを満たした最高傑作といえるだろう。GERMINALE の新作と同じくスネアやエレピの音、軽めのリズムなどがかなり今の流行もたっぷり意識している。 そしてそれと同時にイタリアン・ロックの伝統たるフォーク的なメロディ・ラインや優雅なサウンドもきちんとある。 メロディアスに歌うところとリズミカルに跳ねるところのメリハリなど自然な展開というのがいかに大切であるか再認識させられました。 最終曲の一部でやや大人気ない演奏も見せるのだが(もっとも他の部分の良さがそれを補って余りある)他の作品では鮮やかな新生面を見せている。 おそらくプロダクションもかなりいいのだと思います。 ヴォーカルは全曲イタリア語。 最後に気の利いたオマケつき。

  「Si Dira DI Me」(12:20)優美豊麗にして力強さもあるシンフォニック・ロックの傑作。 フルートら管楽器とシンセサイザーのハーモニーによるテーマが印象的。 モダンで軽妙なパートの挿入も効果抜群。 エンディングがハードロック版 VdGG のようでカッコよし。

  「Oltre L'ignoto」(8:03)「Watcher Of The Skies」を思わせる序章からクラシカルなテーマへと進むメロディアス・チューン。 チャーチ・オルガンが象徴するようにバラード的な雄大で自信あふれる流れがあり、その上で巧みなアクセントをつけている。 もう少し本格的だと EZRA WINSTON なのだが、キュートなところも捨て難い。 フルート、ヴァイブはここでも活躍。

  「L'incontro」(2:48)アコースティック・ギター弾き語りに弦楽器が彩りを添える小品。 いかにもイタリアン・クラシックらしい瑞々しい音が印象的。 P.F.M風の小品でしょう。

  「Cerchio Mobile」(5:14) ギターのコードの響きが印象的なモダン・ロック。 いささか矛盾するようだがナチュラルなエレクトリック・サウンドを極める、という昨今の一方向へと向いた作風である。 UK ギター・ロックと同じ棚にあっても問題なし。 演奏の頼りなげな風情が瑕にならないのはイタリア語のふくよかな響きのおかげかもしれない。

  「La Via D'acqua」(2:52) エレクトリック/アコースティック・ギター、キーボードによるジャジーで官能的な小品。 「Jetlag」を思い出します。

  「Verso Sud」(2:12) リズミカルでジャジーな弾き語り。 短二度の不安げな響きが余韻となる。

  「Mare Calmo」(4:50)丹念なアルペジオが呼び覚ますプログレ古典の世界。アナログ・シンセサイザーのメランコリックな歌、乾いた音で時を刻むドラムス、そしてむせび泣くギター。

  「In Viaggio」(10:00) ヘヴィなギターとなめらかなキーボードが織り成すポンプ完成形というべきハード・シンフォニック・チューン。 流れを折り曲げるような独特のコラージュ風の展開を見せる。 CP80 のようなピアノが印象的。 JETHRO TULL に影響されたアメリカのプログレ・メタル・バンドのようなところは一種のネタなのかもしれない。(オマケで納得) 終盤は堂々たるシンフォニック・ロック。

(MMP 409)


 The Wood Of Tales

 
Giancarlo Cutuli flute, sax
Jerry Litrico lead electric guitar, classical guitar
Angelo Messina bass
Alessio Scaravilli drums, percussion
Giuseppe Scaravilli lead vocals, electric & acoustic guitar
Benny Torrisi keyboards

  90 年発表の第一作「The Wood Of Tales」。 内容は、ヘビメタ+ハケット風ギターとクラシカルなピアノ、凛とした存在感あるフルートによる抒情的な演奏である。四つの長編とブリッジ風の小品から構成されている。 曲調は、全般にメランコリックかつファンタジック。 フルートは、クラシックからエキゾチックな中東風のプレイまでをカバーする本格派である。 さえずるような音色が印象的だ。 キーボードは、ピアノ、ストリングス系シンセサイザーとハモンド・オルガンまでを一通りをこなす。 全体に流れが緩やかなだけに、ノイジーなギターによる衝動的なプレイがいいアクセントとなっている。 また、ヴォーカルの歌唱、声質は、ポンプというよりは、イタリアン・ロック独特の濃厚さとモダンなさわやか系の折衷様式というべきである。 残念なのは、全体にリズムにしなやかさが無いことと、全体に薄味なこと。 薄味が決して悪いわけではないが、この作風だともっとスピーディかつシリアスかつリリカルに深みにはまった方が、好き嫌いは分かれても、面白味は増したろう。 ギターのアルペジオを伴奏にシンセサイザーがゆるゆると響き渡る、ファンタジックかつ涼感ある雰囲気は、決して悪くはないのだが、あまり印象に残らない。 また、ソロにはいいフレーズがあるのだが、曲の眼目となるテーマにあまり魅力がないようだ。これも全体を薄味に思わせる理由の一つだろう。
リズムの弱いうっすらポンプに抜群のフルートとメタル・ギターのアクセント、これだけなら食指は動かないが、実直に音を積んでゆくアンサンブルの魅力は捨てがたい。 多旋律の生む微妙な色合いを大切にしたドラムレスのパートに、より美意識が明確に見える。 ヴォーカルは英語。

  「Malibran」(8:41)うっすらと幻想的なオープニングが HM 調のヘヴィな演奏へと進むかと思えば、ピアノ、フルートの演奏はクラシカル、おまけにベースはわりとモダンでジャジーなタッチ。 この何でもありなサウンドによる演奏を次第に支配して曲調を決めてゆくのは、やはりフルートだ。 力みかえる演技を見せるヴォーカル。 ギターのガツンとくるアクセントは、説得力のあるフルートとアルペジオによるデリケートな曲想には効果的。 終盤、ジャジーに熱くなるフルートにリズム、ギター、ピアノ、オルガンが重なってゆく展開には、プログレ的醍醐味あり。

  「The Wood Of Tales」(8:41) ファンファーレ風のシンセサイザーに導かれるメイン・テーマは、切ないギターの歌である。 ここでもフルートが寄り添い、テーマを刻み込んでゆく。 ここのメロディは、本作では、もっとも印象に残るものだ。 ミドル・テンポのテーマとたたみかけるような倍速のトゥッティを繰り返して、緊張感を高める。 後半は重いビートでややダークに変化し、ギターも邪悪な表情を見せる。 アンサンブルはクラシカル。 メロトロンも加わる。 最後もフルートとギターのユニゾンによるテーマ。 長調の和音の余韻がいい。 インストゥルメンタル。

  「Sarabanda」(5:12)タイトル通りエレアコ・ギターとフルートのデュオによる室内楽風の演奏。 素朴なテーマと沸き立つアルペジオは、SP 盤風のいい雰囲気を持っている。 フルートは間違いなく本格派である。 インストゥルメンタル。

  「Pyramid's Street」(11:03) 序盤はきわめて夢想的かつクラシカル、そしていかにも初期 MARILLION なヴォーカル・パートを経ると、そこはフルートによる中近東風のテーマとマーチ風の独特のリズムによるエキゾチックな世界である。 さえずるようなフルート、自棄気味のヘヴィなギター、けたたましいシンセサイザーが入り乱れて、アラビア風の奇想を綴る。 毛色の変った作品だ。

  「Prelude」(10:25)前半はメロディアスなフルートを軸としたドラムレスの演奏。 豊かな情感を訴えるフルートの表現はみごとなものだ。 後半はリズムも入って、抑えてきたギターが一気にほとばしリ、アラビア風味のエキゾチックなソロを見せるインストゥルメンタル。 ドラムスは、リズム・キープこそ危ういもののプレイはなかなか工夫されている。 メロディアスなソロをフィーチュアしひっかかりの多いアンサンブルで進むインスト中心のナンバーだ。 エピローグもヘヴィなギター・ソロである。

(RSLN 019)


 Le Porte del Silenzio

 
Giancarlo Cutuli flute, sax, vocals
Jerry Litrico lead electric guitar, classical guitar
Angelo Messina bass
Alessio Scaravilli drums, percussion
Giuseppe Scaravilli lead vocals, electric & acoustic guitar
Benny Torrisi keyboards

  93 年発表の第二作「Le Porte del Silenzio」(沈黙の門)。 内容は、ほぼ前作と同じで、ややメリハリのついた GENESIS 調叙情派シンフォニック・ロック。 鮮やかな存在感あるフルート、ヘヴィメタル風のプレイで切り込むかと思えばハケットするギター、重厚なピアノとカラフルなシンセサイザーら多彩なキーボードなど役者は変わらない。 サックスが前面に出る場面があり、タイトにレベル・アップしたリズム・セクションとともにジャズ・フュージョン的な演奏も見せるところが新境地だろう。 面白いのは、静かな場面はもとより、ハードでリズミカルな展開にもヨーロッパ風の哀感があることだ。 変拍子パターンの繰り返しやメロディ・ラインは、やはりポンプ・ロックの影響大である。 朗報は、ヴォーカルが一部イタリア語であること。 タイトルナンバーは 27 分あまりの起伏に富んだ大作。 1000 枚の限定プレスのため、CD には通し番号が書いてある。

  「Livin' Alone」(10:40) 前作よりもはっきりと GENESIS 的なスタイルを見せる佳作。 走り気味のリズムやギター、シンセサイザーのソロなど完全に中期の GENESIS である。 やや繰り返しが多く緊張がもたないところがある。 オープニングのクラシカルなアンサンブルへ流れ込むところや、終盤のインストゥルメンタルが白熱するだけに残念。

  「I Know Your Soul」(7:25) 渋い歌メロと表情豊かなヴォーカルを軸になめらかなシンセサイザー、フルートが彩る AOR 調の作品。 ミドル・テンポの 8 ビートからシャフル・ビートへ移るなど、リズムが頻繁に変化し調子も変わる。 インストゥルメンタル・パートも GENESIS 風である。

  「Libero」(7:28) アップ・テンポのハードポップ・チューン。 フルート、サックス、シンセサイザー、ギターによる分厚いアンサンブルとメロディアスなソロがフィーチュアされる。 短いアンサンブルが積み重ねられており、曲調はくるくると変わってゆく。 ヴォーカルはやはり原語がいい。 オルガンとヴォーカルの組み合わせは、まさしくに甦る 70 年代プログレである。

  「Nel Labirinto」(1:30) ベース・ソロによる小曲。 幻惑的なプレイがおもしろい。

  「Le Porte del Silenzio」(27:08) 壮大なイントロダクションからハードな演奏によるテーマを持ち回り、クラシカルなアンサンブルやシンセサイザーによるアンビエントな演奏など様々な場面を展開する超大作。 テーマにあまり魅力がないために、全体にサラッと流れてしまう。 しかし、フルートとハケット風のギター・ソロは存在感抜群、みごとなプレイだ。 シンセサイザーは、ソロはいいのだが、他の部分ではあまり活躍していない。 そのためか、やや演奏に色彩を欠いている気もする。 また、リズム・セクションの力量か、全体にガチャガチャしたイメージである。 やはり GENESIS 流を極めるには、相当腕におぼえがないと難しいのだなあと実感した。 エンディングはもう少しドラマをまとめてもよかったのでは。


  スピード感、クリアな音色そして AOR 調のメロディの優美さが象徴するネオ・プログレッシヴ・ロック。 整った現代的なサウンドである。 演奏は、フルートやオルガンによる中世風アンサンブルを中心に、ハードな方向とメロウな方向へ揺れ動くスタイル。 ギターは、伸びやかなフレージングや、タイミングよく切り込みながらも弾き過ぎないところなどセンスを感じる。 またツイン・ギターの絡みも巧みだ。 シンセサイザーは、ネオ・プログレッシヴ・ロックにありがちな伴奏専門型。 全体ににぎやかなわりには力強さに欠ける原因は、リズムの乱れと薄味のヴォーカルだろうか。 特にヴォーカルは、美声でないだけに、表情や個性さにもうひと味ほしかった。 タイトル・ナンバーの大作は力作。 英国よりもアメリカのグループに近いようなイメージである。

(PGO-002)


 La Citta Sul Lago

 
Giancarlo Cutuli flute, sax
Jerry Litrico lead electric guitar, classical guitar
Angelo Messina bass
Alessio Scaravilli drums, percussion
Giuseppe Scaravilli lead vocals, electric & acoustic guitar
Benny Torrisi keyboards、piano

  98 年発表の第三作「La Citta Sul Lago」。 初期 GENESIS 路線を堅持したまま、音楽的なおもしろさは格段にアップ。 いわゆるプログレにこだわらず、むしろその呪縛から逸脱するような奔放な解釈が現れているようだ。 そして、メタリックなギターによるハードな場面とアコースティックで優美なアンサンブルを使い分けるスタイルはそのままに、メリハリがはっきりとし、リズムがたまにヨレる以外は、演奏力が着実に上がっている。 フルートとピアノのクラシカル・テイストに頼り切りだった一作目とは、別のグループのような変貌ぶりだ。 また、ジャジーでリラックスした音や明快で爽やかな音など、短調のシンフォニック調以外の要素もうまくブレンドされている。 安定感が増した分、ヘヴィに突き進んだ後に訪れるフルート、サックス、ギターによるアコースティック・アンサンブルの味わいがいっそう深まった。 全体に安心して聴いていられる演奏になっているといえるだろう。 前作からのイタリア語ヴォーカルは大成功(できれば全部イタリア語にしてほしかった)であり、手癖ではなく脈絡のあるヘビメタ・ギターにも音楽的な効果がちゃんとある。 クラシック的なアンサンブルとフォーク的なメロディ・ラインそして唐突なアレンジとくれば、これはもうイタリアン・プログレ以外の何ものでもない。 元来どこかフワーとしていた作風に、ほのぼの感も現れてユニークな世界となっている。 タイトル・ナンバーはひょっとして PINK FLOYD を意識? 緩いジャズ・タッチに憤激しないで耳を傾ければ、しみじみとした味わいに気づくはずです。
  最後から二番目の大作は、ハードロックで幕を開け GENESIS 調の感動的なエンディングを迎えるめまぐるしい展開の佳作。 H2OFINISTERRE ら若手に負けない音です。

  「Distanze」(2:06)
  「Nuovo Regno」)(9:35)
  「La Citta Sul Lago」(10:00)
  「In The Time part 1/ part 2」(9:13)
  「Magica Attesa」(5:27)
  「La Stagione Del Re」(5:15)
  「Nuvole Di Vetro part 1 / part 2 」(10:49)
  「Interludio」(1:12)
  「On The Lightwaves」(12:33)
  「Richiami」(2:18)

(MMP 357)


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