イギリスのプログレッシヴ・ロック・グループ「MAGENTA」。U.K. シーンで活躍するプログレ・キーボーディスト、ロブ・リードによるプロジェクト。2009 年現在、作品はライヴ盤を含め五枚。
| Rob Reed | acoustic guitar, electric guitar, bass, keyboards, recorders, mandolin, backing vocals |
| Christina | lead vocals | Chris Fry | guitars |
| guest: | |||
|---|---|---|---|
| Tim Robinson | drums | Martin Rosser | detuned guitar |
| Troy Donockley | uilleann pipes | Steff Rhys Williams | backing vocals, string section |
| Matthew Everlett | violin | Helina Rees | violin |
| Claudine Cassidy | cello | Abigail Blackman | cello |
| Louise Evans | viola |
2008 年発表の第四作「Metamorphosis」。
内容は、メランコリックな表情がやや勝った優美で叙情的なシンフォニック・ロック。
特徴であるしっとりと湿り気をふくんだヴォーカルは変わらぬ魅力を放ち、すっきりとしたサウンド、アンサンブルにも大きな変化はない。
へヴィな音のアクセントや英国ギターロックらしいイコライジング、弦楽奏による奥深さの演出も決まっている。
ただ、美しい音のテクスチャを編み上げながらも、どちらかといえば抑えた表情でたんたんと進み、時おり悲憤がどっとこみあげる、そんな感じになっている。
ノーブルな声による歌唱がリード役なのは間違いないが、単にメロディアスというよりは、屈折した展開にあわせて多彩な表情を見せているというべきだろう。
あくまで前々作、前作との比較だが、素直にメロディにのってカタルシスを得る部分は多くないように思う。
だからといって味わいが減ったわけではない。
ひねりのある器楽をすっとすくいあげるようにヴォーカルが現れる、その呼吸のよさは一層映えるようになっている。
ただ、おおきな波というか、わかりやすい起承転結はない(気づきにくい)ので、アンサンブルの機微とじっくりと腰をすえて対峙する必要はある。
もっとも、プログレ・ファンならそういう聴き方はお手の物だろう。
また、しっかりと味わうには戦争や人の内面など歌詞にこめられたメッセージをしっかり噛みしめる必要もあるのだろう。
うれしいのは、プログレ・イディオム攻めが巧みに散らされていて、妙な目立ち方はしていないこと。
顔色の悪いうつむき加減が明らかに PINK FLOYD になってしまう場面もあるが、そんなに嫌味には感じられない。
70 年代のバンドのみならず、今回は PENDRAGON もターゲットになっているらしい、なんて思ってしまうのは事実だが、それも許容範囲内である。
ただ、キーボードを抑え目にしたらそれがイコールプログレ風味を抑える結果になったのだとすると、やや問題である。
バグパイプの音が印象的。
「The Ballad Of Samuel Layne」(20:17)
「Prekestolen」(3:43)
「Metamorphosis」(23:15)スライド・ギター、弦楽とともに舞い上がるエンディングは感動的。
「Blind Faith」(6:01)「目を覚ませ!」といわれてドキッとしませんか?
(CDTMR006)
| Rob Reed | keyboards, bass, recorders, harpsichord, grand piano, guitars, backing vocals |
| Christina | vocals |
| Tim Robinson | drums |
| Chris Fry | guitars |
| Martin Rosser | guitar |
| Martin Shellard | guitar on 7 |
2004 年発表の第二作「Seven」。
溌剌さとしっとりエモーショナルがタッチがブレンドした YES 風ブリット・ロック。
ジョン・アンダーソンをコケットにしたような女声ヴォーカル、スティーヴ・ハウの影武者のようなギター、オーソドックスながらも音を惜しまないキーボード、さらには軽やかに躍動するリズムでブリット・ポップ調のメロディを爽やかに歌い上げてゆく。
管弦楽のサポートも贅沢に散りばめられているし、変拍子のリフの切れ味もいい。
70 年代だけではなく 80 年代以降の YES もしっかりとカバーしている。
おまけにゲイブリエルな男声ヴォーカルを現れて、メランコリックな場面では GENESIS 的なひずみのある世界も見えてくる。
こうなるとギターもやおらハケット風に訥々と歌いだし、わななくようなシンセサイザーから角張ったハモンド・オルガン、ひたひたと打ち寄せるさざ波のようなピアノまで飛び出すから面白い。
さらには PINK FLOYD の影がちらつくところもある。
もっとも中盤からはあからさまな模倣ではない、湿り気のあるメロディを活かした独特の爽やかな美感をもつサウンドによるパフォーマンスが続いてゆく。
ここで軸になるのは、コケットにしてたくましさもある女性ヴォーカルとハーモニーだ。
SPOCK'S BEARD や THE FLOWER KINGS のような圧倒的な演奏力はないにしろ、胸にしみるメロディを支える演奏はどこまでもタイトで小気味よく、YES とニューウェーヴ、ワールド・ミュージック系女声ポップスとの取り合わせのような作風もいたって自然である。
プログレ・クリシェを使うのにまったく抵抗がない新しい世代による作品であり、どうしても一種のカヴァー、リヴァイヴァルに聴こえてしまうと首をひねるオールド・ファンがいる一方で、こういう音をごく自然に聴いているファン層もすでにたくさんいるはずだ。
もっとも、リーダーシップをとっているロブ・リードはかなりのベテランなので、彼としてはプログレへの憧憬をすなおに表現しているに違いない。
全体としては、70 年代プログレ風アレンジを散りばめた(サンプリングした)、ポップな癒しのブリット・ロックといえるでしょう。
メロディアスで華やかなロックのファンヘお薦め。
吐息が上品な女性ヴォーカルというのはなかなかいいものです。
個人的には、3 曲目後半のようなプログレ・クリシェから離れたポップな演奏が好み。
透明感のある繊細なタッチは個性的だが、アメリカの IZZ と感覚は近いような気がする。
活気のある演奏とは裏腹に、7 曲並んだ楽曲はそのまま「七つの大罪」を現す。
傑作。
「Gluttony」(12:07)あまりのインパクトに目もくらむプログレ総覧チューン。YES 直系のプレイをバンバン放ってくるが、個人的には、中盤の GENESIS 風のエモーショナルな展開に力量を感じる。びっくりさせてハートをつかむという役割のアルバム・オープナーです。
「Envy」(10:10)RENAISANCE と GENESIS に倣った作品。ささやかなメランコリーとつややかさを交差するヴォーカル・パートの表現がとてもいい。著作権侵害訴訟が起こったらかなりこじれそうです。
「Lust」(12:29)弦楽を巻き込んだ躍動感ある作品。ストレートな表現になると、SOLSTICE とも共通する。
「Greed」(13:55)名曲。ベース、ドラムスが何気なくもカッコいい。カヴァーっぽくなくてもこんなにいい曲が作れるという証。緩急自在。
「Anger」(5:13)
「Pride」(12:31)
「Sloth」(10:08)
(F2 MUSIC 200403)
| Rob Reed | bass, guitars, backing vocals, recorders, tambourine, grand piano, mandolin, acoustic guitars |
| Christina | vocals |
| Allan Mason-Jones | drums |
| Chris Fry | guitars |
| Martin Rosser | guitar |
| Dan Fry | bass |
2006 年発表の第三作「Home」。
リード・ヴォーカルを中心にドラマ性を強調した佳作。
イギリスからアメリカへと移り住んだ女性の心情を綴るトータル・アルバムらしい。
情感豊かにして抑制の効いた品のある歌唱を、メロディアスかついかにもプログレらしい器楽が取り巻く。
基調は感傷的、叙情的ながらも、小気味のいいメリハリもある。
暖かみと透明感を兼ね備えた稀有の女性ヴォーカルがフロントなのだが、RENAISSANCE というよりは、PINK FLOYD、YES、GENESIS 的な音を生かした作風ではないだろうか。
また、メロディ・ラインは、PENDRAGON のセンスにかなり近い。
一方、器楽はハウ風のギターやバンクス調キーボードなど 70 年代プログレのエッセンスを品よく丁寧に織り込んだものであり、MANGALA VALLIS に勝るとも劣らない。
英国ポップスの王道を堅持した作風でもあり、70 年代以降の音楽ファンであれば必ずどこかに魅力を見出すことができそうだ。
一つだけ気になるのは、メドレー風の効果を狙っているのか、どの曲もオープニングに比べるとエンディングがあっさりとしていること。
ただし、全体の流れは確かにいい。
70 年代の音で育った方には、無視しようにも無視できない音です。
凝った演奏を分かりやすく聴かせるアレンジメントも冴えている。
そう、音数が多くなくても劇的な描写は可能なのだ。
細かい霧のような翳りが全体を包み、物憂くもしっとりとした落ちつきを感じさせる内容は、夜一人静かにたしなむべきものである。
第一曲「This Life」は、デリケート極まるバラードの序章。わななくような情動が凛と表現されている。
決して涙声にならない女性はすてきです。
第二曲「Hurt」は、ネオ・プログレらしさをバーンと思い切り解き放った小気味のいい作品。
「ハウ/ギルモア」ギターが活躍。
第三曲「Moving On」は、英国的なセンチメンタリズムとハードボイルド・タッチがブレンドした 007 の OST ばりの力作。
チェンバロを加えたアレンジに脱帽。
後半は、わりとあからさまに PINK FLOYD だが、ナイーヴな歌唱に救われる。
第六曲「The Journey」は、GENESIS で始まり YES へと展開する力作。というか、ギターがハウでオルガンがバンクス。
重苦しすぎないところが奏効している。
個人的には、ヴァイオリンはないのだが、SOLSTICE を思い出した。
第七曲「Towers Of Hope」は、タイトルとおりオプティミスティックな響きが心地よい小品。
ほのかな明るさを控えめに讃える感じががいい。
第八曲「Demons」は、ツイン・ギターのユニゾンが印象的な作品。
弦楽奏とともに盛り上がるギターがカッコいい。
第十曲「Joe」も変化に富む力作。ここでも弦楽奏が効果的。第三曲のテーマが再現されているようだ。
YES、GENESIS どころか第十二曲「The Visionary」のようにスティーヴ・ハケットのソロ作のタッチすら継承しているからすごい。
ボーナス・ディスク・バージョンは二枚目に「New York Suite」収録。
こちらでは、一枚目では相対的にやや抑えられたプログレ・タッチの器楽が全開。
ただし、伸びやかな歌唱をより活かせているという点では、一枚目に軍配が上がる。
ロブ・リードの楽器クレジットにエレクトリック・キーボードが記載されていないのは、すべてプログラミングによるものなのだろう。録音も APPLE Mac G5 上で行われている。
ロブ・リード氏、もはや完全に「イギリスのニール・モース」である。
(F2 MUSIC 200606A/B)