MACHIAVEL

  ベルギーのプログレッシヴ・ロック・グループ「MACHIAVEL」。 75 年結成。 76 年アルバム・デビュー。 97 年に復活、ライヴを続け、99 年に新作を発表。
  初期の三作は、GENESISYESSUPERTRAMP 風のプログレッシヴ・ロック。 流れるようなポップさには、単なるフォロワーでない独自性がある。 オフィシャル・サイトはとてもカッコいいです。

 Jester

 
Albert Letecheur grand & electric & honky tonk piano, harpsichord, string ensemble
  Mellotron, synthesizer, tubular bells, glocken spiel
Roland De Greef bass, cellobass, 6 & 12 string acoustic guitar, carillon, bells, whistle
  comb, tape effects, vocals
Marc Ysaye drums, vocals, tambourine, maracas gong, wood blocks, glass blocks
  broken glass, bell tree, sleigh bells, flextone, nutcracker
Mario Guccio vocals, flute, sax, clarinet
Jean Paul Devaux guitar, 6 & 12 string acoustic guitar, vocals

  77 年発表の第二作「Jester」。 華やかなキーボードを中心とした緻密な演奏と、70 年代後半らしいモダンなポップ・センスをドッキングさせた好作品。 ARP シンセサイザー、メロトロンなどのスペイシーなキーボード・プレイと豊かな表情をもつヴォーカルを、軽快で弾力のあるリズム・セクションが支える演奏スタイルである。 特徴は、メタリックな光沢を放つシンセサイザーとグラム風のハイトーン・ヴォイス、そして、ポップなヒネリを効かせた歌メロ。 キーボードを軸とした、リズムに凝った作風が中期 GENESIS に通じる。 3 曲目のように、12 弦アコースティック・ギターのアルペジオを使ったメランコリックで切ない演奏は、まさしくそういえるだろう。 一方、ギターは比較的オーソドックスであり、センチメンタルなフレーズをしっかりと歌わせるスタイル。 したがって、主としてプログレらしさを担うのは、カラフルなシンセサイザーと、多彩なパーカッションも交えた鋭く折れ曲がるリズム・セクションということになる。 派手なフィル・インを見せるドラムスは、特に貢献大だろう。 また、ヴォーカルは二人がリードをとっているようであり、ハイトーンのヴォーカリストの方はグラム・ロックを経たようなスタイルを見せる。 コーラスも用いており、YES を真似るアメリカのグループのようなイメージもある。
  いわゆるプログレッシヴ・ロックにありがちな露なクラシック、ジャズ指向はなく、歌メロやハーモニーはチャート・ポップスとしても十分通用するほどキャッチー。 せわしなく刺激的な演奏をたたみかけてくるのだが、メロディがいいために、単なるテクニックの見せ場に終わらずきちんとメッセージが伝わってくる。 そして、スケールの大きな展開こそないものの、語り口は小気味よく流れており、何気ないフレーズの音使いにもピリッとスパイスが効いている。 これだけポップだと、プログレッシヴ・ロックにカテゴライズしては迷惑かなと思ってしまうのだが、そのくせしっかり 7 拍子で走ったりする。 音楽的に英米国ものの影響は隠せないが、メインストリームを意識した自分たちのスタイルを確立しており、非常にプロっぽい。 やや巻き舌の英語に違和感はあるが、世界最古のポンプ・ロックは 70 年代だけあって本腰入りである。 唯一残念なのは、あまり録音が明確でないこと。 しかしこの曲の出来なら GENESIS ファンでなくとも納得でしょう。 SUPERTRAMPBAD FINDERJELLYFISH のファンにもお薦め。 ヴォーカルは英語。 プロデュースは、グループとアーウィン。

  「Wisdom」(6:00) FLAME DREAM によく似たグラム調 GENESIS

  「Sparking Jaw」(7:00)聖歌調のハーモニーがスペイシーな広がりとマッチした好作。

  「Moments」(3:17) メランコリックなアコースティック 12 弦ギターとハーモニー、そして翳りあるメロトロンの調べ。 きわめて GENESIS、英国ロック的なバラード。 大袈裟なヴォーカル表現は、後のポンプ・ロックへ直結する。

  「In The Reign Of Queen Pollution」(6:56)「月影」GENESIS の世界に近いメロディアスなシンフォニック・チューン。 冒頭からのメロトロン・クワイアに支えられた哀愁のシンセサイザー・ソロが胸を打つ。 ヘヴィに轟くベース、シアトリカルなヴォーカル・ハーモニー、まろやかな管楽器、パーカッションのアクセントなど、ぜいたくな音を配しつつ、緊張した雰囲気が続く。 メロトロン・コーラスの尾を引きながら、アップ・テンポで快活に走り出すアンサンブルのみごとさ。 後半の、エレピに導かれるイージーなロックンロールへの展開が、スティーヴ・ハケットのソロ作や SUPERTRAMPBAD FINGER を思わせる。

  「The Jester」(5:20) ややジャジーなテイストのロマンティック・バラードが、軽快なロックンロールへと変貌する。 オープニング、エンディングのジャズ風味は、エレクトリック・ピアノの響きや 7th 系の和声のせいだろう。 中盤以降はシアトリカルなヴォーカルが冴えるロックンロール。 伴奏は、ギターよりもエレピ、ムーグなどキーボードが目立つ。 終盤の 7 拍子への変転は、ちょっとやり過ぎ気味ではあるが、みごとなまでに GENESIS になる。 かなりいろいろな演奏スタイルを詰め込んだ作品だ。 IL VOLO そっくりのプロローグとエピローグがカッコいい。

  「Mr.Street Fair」(7:55) マーチング・スネアとシンセサイザーに彩られた行進曲風の歌ものから、メランコリックなバラードへ。 つややかなシンセサイザーがヴォーカルに絡みつき、リードする。 間奏のメロディアスなギターとシンセサイザーのハーモニーが泣かせる。 メロトロン・コーラスがゆったりと広がり、ヴォーカル・ハーモニーとともに演奏が高まる。 小刻みなハイハット、語りあうようなヴォーカル・ハーモニー。 再び 7 拍子を刻むキーボード、リズム・セクション。 メロディアスでレガートな歌、ギターと、せわしなく刻むリズムの対比がおもしろい。 忙しい 7 拍子アンサンブルに、メロトロン・コーラスが、ゆっくりと立ち上がり重なってゆく。 「A Trick Of The Tail」直系のトリッキーなナンバーである。 最後はオルゴールの音。

  「Rock, Sea And Tree」(9:52) いかにもなアナログ・シンセサイザーと静かな歌による序盤。 エレクトリック・ピアノがやわらかく伴奏する。 2:30 辺りからリズム・セクションが加わり、テンポ・アップ、THE BEATLES /英国王道ポップスを思わせる軽やかなポップチューンへと変貌。 PILOTBAD FINGER 辺りのファンが喜びそうな展開である。 中盤、再びスロー・テンポでじっくり歌いこむヴォーカル中心の展開へ。 流れるようなシンセサイザーとともにテンポ・アップ、小刻みなビートがドライヴするスリリングな演奏は、またもやきわめて GENESIS 的。 鮮やかなアッチェレレーション、そして尾を引くメロトロンの響き。

  「The Birds Are Gone」(1:49)ボーナス・トラック。
  「I'm Nowhere」(2:22)ボーナス・トラック。

(spalax 14282)

 Mechanical Moonbeams

 
Mario Guccio vocals
Marc Ysaye drums, vocals, percussion
Albert Letecheur electric & acoustic piano, string ensemble, Mellotron, synthsizers
Jean Paul Devaux electric & acoustic guitars, steel guitar, mandoline
Roland De Greef bass, bass pedals, acoustic guitar

  78 年発表の第三作「Mechanical Moonbeams」。 内容は、70 年代後半らしいポップ・フィーリングを強めた GENESISYESQUEEN 風の明朗なシンフォニック・ロック。 洗練されたメロディアスなヴォーカル・ハーモニーを中心に、エレピやモノ・シンセサイザー、エレキギターの暖かみのある音色がふんわり包み込む作品である。 全体に演奏の水準は高い。 コーラスとギターのアンサンブルは YES 風、そして、シンセサイザーのソロや変拍子で快調に走る場面では、とたんに「静寂の嵐」GENESIS に変貌する。 透明感あるヴォーカル・ハーモニー付の GENESIS とは、なんともぜいたくではないか。 さらに、変拍子も交えた演奏にややこしさがまったく感じられないのは、ポップなメロディ、ヴォーカル/コーラスのうまさに加えて、リズム・セクションが敏捷に動き、安定した音楽的な枠組みを供給し続けているからだろう。
  全体的に 70 年代初期の幻想性よりも、ぐっと現実感のある音質である。 個人的にこの時代をリアルに生きたせいもあるだろうが、この音が、プログレの成長の一つの到達点なのかもしれないとも思う。 いわゆるプログレ・ポップという名前が似合いそうな凝った音なのだ。 そして、素朴な GENESIS "wannabe" にしてはメロディがよすぎる。 やはり、ELOKAYAK が到達した、プログレを進んだ果てのポップスなのだろう。 プロダクションは今一歩なようにも思うが、音楽と商売が互いにハッピーだった最後の時代の贈り物の一つであるのは間違いない。
  白眉は 5 曲目。 アコースティックな音からヴォコーダーまで使った、軽快にしてロマンに満ちたロックンロール大作である。 いくつもの流れが次第にまとまりを見せ、やがてほうき星のように、夢を噴きながら天翔けてゆく。 QUEEN もあり。 6 曲目は、アコースティック・ギター・アンサンブルによるファンタジックなバラード。 7 曲目は、シンセサイザーがフィーチュアされた透明感のある GENESIS 風幻想絵巻。 これ以上ポップになったら、ここでは取り上げないぎりぎり限界の名作。

  「Beyond The Silence」(6:10) 「The Yes Album」を思わせる序盤から目まぐるしく変転する作品。 シンセサイザーの変拍子オスティナートは、中期 GENESIS そのもの。 メロディアスなヴォーカル構成にもかかわらず、リズムの過激な変化からトリッキーなイメージを与える。 メロトロン・クワイヤをバックにしたシンセサイザー、ギターのテーマ演奏は、そのままポンプ・ロックへと継承されてゆくスタイルだ。エンディングも大仰であり、意外なほどプログレてんこもりなオープナーである。

  「Summon Up Your Strenght」(5:03)多声ハーモニーを活かしたバラードは、あっという間にロックンロールへと変化し、夜空に舞い上がるように走り出す。 エレクトリック・ピアノの和音が、やんちゃなロックンロールに都会的で AOR チックなテイストを与えている。

  「Rope Dancer」(3:40) ファンタジックにして優美なバラード。 初期 GENESIS 風の影響を受けているのかもしれない。 星の歌のようなシンセサイザーが切ない。 KAYAK か安全地帯なみの甘くみごとなメロディ・ラインです。

  「Rebirth」(7:10) クラシカルなタッチを活かしたメロディアスなシンフォニック・ロック。 YESGENESIS に AOR タッチを加味したような作風であり、軽やかに走る。 キーボードを中心としたクラシカルなアレンジが冴えている。 ヴォーカルがローランド・オーザヴァルに聴こえる、と思ったら、メロディ・ラインとシンセサイザー・ソロは完全に「The Cinema ShowGENESIS

  「After The Crop」(7:55)QUEEN 調のドラマティックなロックンロール大作。 アコースティック・ギター弾き語りによる序盤では、英国 SSW 直系の繊細きわまる表現がみごと。 シンセサイザーが高まってからは、ゆったりとスペイシーな幻想で世界を染め上げてゆく。 泣くギター、打ち鳴らされるドラムス、エキセントリックなパワーを迸らせるヴォーカル、すべてが頂点を目指して駆け出し、ギターの轟きとともに、スターシップが離陸する。 アルバムのクライマックス。

  「Mary」(4:10)

  「The Fifth Season」(7:25)

  「Wind Of Life」(6:12)ボーナス・トラック。 81 年録音。
  「I'm Not A Loser」(5:42)ボーナス・トラック。

(spalax 14261)

 Virtual Sun

 
Mario Guccio vocals
Marc Ysaye drums, percussions, vocals & loop on 5, vocals on 9, chorus
Thierry Plas electric & acoustic guitar, chorus
Roland De Greef bass, Taurus pedals, 6 & 12 string acoustic guitars, Fx & loops, keyboards on 9
Herve Borbe keyboards

  99 年発表のアルバム「Virtual Sun」。 96 年のベスト・コンピレーション発表を契機に二度目の再結成を行い、遂に新作発表へとこぎつけた。 オリジナル・メンバーは、ドラムスのマーク・セイヤ、ベースのローランド・デ・グリーフ、ヴォーカルのマリオ・グッチオの三人。 ギターのセリー・パラスは、87 年の再結成時のメンバーなので、新メンバーはキーボードのエルヴェ・ボルベということになる。
  内容は、濃密な情念をしみわたらせたコンテンポラリーなギター・ロック。 作品は、70 年代風のメロディアスな部分を現代のサウンドでリアレンジしたようなデリケートなロックから、迫力のハードロック、アコースティックなナンバーまで多彩だが、通低するのは、ポスト・ロックを意識した独特の暗く重い色調である。 どの作品も、ヴォーカル中心に必要十分なアレンジを効かせ、本来の魅力を活かしつつも、よりシンプルな流れを重視しているようだ。 リード・ヴォーカリストを中心にメンバー全員が歌えることの強みも、しっかり生かしている。 甦ったベテランバンドの作品にありがちなスタイリッシュな HR/HM っぽさは皆無であり、「いいたいこと」の熱さから必然的にパワフルな演奏になった、必定ヘヴィなトーンになったという感じである。 時代に迎合するということを意識するには、プロ過ぎるのだろう。 やるせなくも荒々しい轟音ギターが迸るポスト・ロック調の音にメロトロン・ストリングスが浮き上がり、あのグラムっぽい歌声までもが高まると、この作品が、現在における彼らの志向をしっかりと反映していることが分かる。
  細かくいえば、ギター主体のインストゥルメンタルが単調に思えてしまうところもあるのだが、だからといって、キーボードが効果音以上に活躍してしまうと、サウンドの幅こそ広がるかもしれないが、あまりにプログレ然としてしまって、結局彼らの今の意図とは異なるものになってしまうのだろう。
  特筆するなら、オープニング・トラック。 ダークなベースの響きとイコライズされたヴォーカルがミステリアスに迫り、サビで華麗に弾けるダイナミックかつデリケートな佳作。 そして 2 曲目は幻想的なイントロから始まり、シンプルなヴォーカル・リフレインとメランコリックなギターが心の暗部をえぐるように進む作品。 ハードロックでもキーボードの音は独特である。
   スタイルへの依拠を主にするのではなく、センスあふれるアンテナがキャッチした今の音とオリジナルなアイデアに根ざした作品を、年季の入ったスタイリッシュなアプローチでひねるのだから、悪いわけがない。 プログレッシヴ・ロックは超えており、コンテンポラリーなヘヴィ・オルタナティヴ・ロックとして個性を発揮している。 メロディアスでありながら暗黒を抱えて鬱々と突き進み、突如炸裂する作風は、非常に面白い。 スタイリッシュな洗練という点では、ANGE を越える力作である。 プロダクションも、一流グループらしい堂々たるものです。

  「Until The End」(4:58)U2VdGG、いや ANGE だろうか、暗く力強いアルバム・オープナー。
  「Something」(6:40)絶唱。ギターがカッコいい。
  「It's A Dream Again」(4:36)
  「Down On My Knees」(6:27)
  「Dirty Hands」(4:58)
  「All Around The World」(2:57)
  「The Rumour」(4:50) LED ZEPPELIN がまだ現役だったらこんな音?と思わせるロックンロール。
  「Calling You」(4:21)ピアノ、アコースティック・ギターによる弾き語りが、こんなにカッコよく変貌する。グラムっぽい歌声も健在。
  「Mary's Dream」(3:38)
  「Forget Your Hate」(5:17)風格あるヘヴィ・チューン。ダークにしてキャッチーという、どうしようもないカッコよさ。
  「Running In The Desert Again」(7:53)幕開けはシタール。再び LED ZEPPELIN の面影が。

(CNR 2102552)


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